気儘に生きた転生馬物語   作:イナダ大根

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いつも多くの感想と誤字報告、ありがとうございます。
シマカゼがイカレなら騎手も当然発想がイカレテルお話、ついでに群馬競馬も。




第14話

 

 

 

今日も今日とて群馬トレセン、トレーニング場はまだ朝8時と少し早いにもかかわらず騎手や調教師たちの掛け声と馬たちの嘶きに包まれている。

俺もいつも通り最近は常連状態の芝コースを走行中、ノルンファングを相手に逃げ足のトレーニングである。

鞍上は敏則、親父さんはモンスニー爺さんのほうに乗ってるからな。今頃、一緒に次世代の仔馬どもをシゴいてるはずだ。

 

「相変わらずタービンはきれいな走りだな、敏則」

 

「そうですかね?」

 

「あぁ、なんか気品あるんだよな。乱暴なのに」

 

「ブルッ?」『なんぞ?』

 

敏則とノルンの騎手さんが軽く言葉を交わす。それならノルンファングのほうがきれいな走りしてると思うけどな。

芝とダートで正攻法やってるこいつに比べたら、俺はほぼ自己流だし。

モンスニー爺さんに一通り習ったけど、そこからかなり自己改造加えてっから原型ないと思うぞ。

 

「ま、うちのはモンスニーと走り屋仕込みっすからね。そろそろ行きますよ、タービン」

 

敏則が合図をすると同時に走りのギアを上げる。慣らしは十分、全開走行開始だ。

 

『やっぱり速いですね、相変わらず!』

 

『まだまだこんなもんじゃねぇぞ?』

 

体感時速60㎞、スタートから走行距離500メートルくらいでまずまずの立ち上がり、そろそろ一つ目のコーナーだ。

朝の気持ちいい空気を吸い込みながら、芝のコースを俺たちは全力疾走で駆け抜けていく。

後ろにノルンファングがついてきてるのを確認するため少し振り向く、いつもの白い馬体が相棒の騎手さんを乗せてしっかりついてきている。

俺の逃げ足にどこまで付いてこられるか、今回の訓練はそれだ。

 

『ついてこい、まずはインベタだ』

 

コーナーに入る直前、一歩さらに踏み込んで加速を入れながら柵のぎりぎりまで体を寄せてインベタをがっつり踏み込むグリップ走行で走る。

距離は3200メートル、右回り、次にノルンファングが挑戦するレースの距離らしい。

4月の大阪杯でダイオーが暴れた場合、たぶんいつもの走りだとマークされそうだから戦法を増やしたいんだと。

こいつの親父さんも逃げ馬で、逃げ自体もできないわけじゃないから磨けば光るかもということらしい。

 

『キッツいですね!』

 

『まだまだ、たった時速65だぞ?』

 

まだまだ速度に乗れてない、俺の場合はな。内側の柵にきっちり7センチほどまで寄せる、それに伴って敏則も体を内に傾ける。

それに合わせてノルンもゆっくりと馬体を寄せてきっちり止める。

すぐ横で柵がビュンビュン言ってるのが気持ちいい、もう少し飛ばせれば馬体も安定するがそれだとノルンをおいてっちゃうから無理だ。

ノルンの鞍上の騎手さんが若干青い顔してるがこれでもだいぶマシになったほう、敏則なんか平気な顔してるしな、こうなるくらいには慣れんとインベタグリップなんて習得できんぞ。

 

『このまま一気に曲がり切って、コーナー終わりに立ち上げて再加速、踏み込みに遅れるな』

 

『了解』

 

インベタグリップできっちり回るとどうしても推力を逃しがちになって速度が気になるからな、立て直しに一加速入れると安定する。

コーナー終わりに後ろ足を思いっきり踏み込んで加速を入れながら直線に突入。さーて2本目、直線で速度を稼ぐ。

体感時速70㎞まで増速だ、上げられるだけ上げて距離を稼ぐ。逃げ馬が逃げ切るには、ちゃんとリードを取らなきゃな。

 

『上げられるだけ上げろ、後ろを見るな、前を見ろ』

 

とにかく出せる速さで走りまくる、前には誰も入れさせない、取れる限り最小限のルートを取る。

俺が教えられるのはそれくらいだ、追い付かれたら終わりだと思え。抜かれたら疲れた足じゃ追い抜くのは難しい。

 

『できるだけ内回りに、ギリギリまで詰めて最短ルートだ。足場は気にするな、そんな余裕はないだろ?』

 

『あ、ありま、せん!!』

 

内側は荒れてる場所が多いというが、逃げを取るならそんなものは誤差だ。俺の場合、荒れてようが踏み込んで無理やり走る。

そのためには不整地にも慣れてなきゃならんから、これ終わったら次はダートな?ダートと芝と裏山のローテだ。

走れ走れ、とにかく走って体力付けながら自分の走れるペースを体にしみ込ませろ。

3200で逃げるなら速さと一緒にとにかく体力だ、走って走って追い込んで、体を作らにゃ話にならん。

 

『次のコーナー、このままツッコむ。インベタできっちりついてこい』

 

遅れたらその時点で訓練は中止だ、バテバテでもいいからきっちりついてくること。

これくらいできるようになれば、次のステップに行ける。

 

『2000メートル、まだいけるか?』

 

『行けます!』

 

その割には足が鈍ってきたな?時速70で飛ばしてこれか…本番は65くらいで走る予定らしいが、それでもちょいと厳しいかも。

敏則も少し怪訝そうにしてる、本番は60くらいにしたほうが現実的か?騎手さんもそんな顔してるし。

でもそれだと不安なんだよな、敏則曰く大逃げさせたいらしいんだが…うーむ?ダメかもしれんな、これ。

 

『加速入れるぞ』

 

ま、いいか、そこはおいおいだ。今は限界をギリギリまで突き詰める、そこから判断しよう。

 

『なん、で、よゆうある、んですか!?』

 

『無駄口をたたくな』

 

時速75㎞、今の俺が巡航速度で振り回せる限界速度だ。この場合は芝コースを二周で限界。結構ギリギリだぞ。

それ以上はスタミナ一気に持ってかれるからラストスパートにしか使えん。

 

『前だ、前だけ見て、ゴールだけ見て走れ、逃げ馬やりたきゃ見るのはゴール板だけでいい。どれだけきつくなろうがどんなことがあってもそれだけは忘れるな』

 

逃げ馬はいつでも先頭だ、ずっと先頭で駆け抜けるのが逃げ馬だ。だから気にするのは後ろの奴らじゃない、他の馬は抜かれたときに考えりゃいい。

 

『難しいことなんざねぇよ。逃げ馬が気にするのはゴール板とタイムだけだ、だれよりも早く走り切っちまえばいいだけなんだ』

 

本気でひた走る、だれよりも速く、だれよりもうまくコースを攻略して走り切る自分勝手なタイムアタック、それが許されるのが逃げ馬だ。

前に馬が居なきゃいいんだ、後ろにいる連中なんか勘定に入れる理由もない。ほかの奴らが2分で走る、なら俺は1分50秒で走ればいい。

相手が1分50秒だったら、俺は1分48秒で勝てばいい。自分が遅けりゃ負ける、速けりゃ勝つ、極論テクもくそもねぇのが逃げってやつだ。

 

「タービン、墜とせ」

 

『まだダメか』

 

残り800、敏則の合図でスパートをかける。一瞬後ろを振り返ると、ノルンは限界といった感じで騎手さんも首を横に振っている。

完全にバテてる、しかも足元がふらついてる、ダメだな、普段から逃げやってないからしょうがない。でも最後まで手は抜かない。

今の俺の全力を見せよう、時速80、距離750からのロングスパート、俺の走りをよく見てろ。

ノルンファング、親父に憧れるお前にもできるはずだ。逃げの走りは目に焼き付いてんだろう?お前の糧になるはずだ。

 

「飛ばせ」

 

「ブゥン!!」

 

体感80、そこから腹に力を込めて踏み込む。残り700、息を吸い込む、姿勢を整える、鼓動に集中、筋肉の動きを感じる、走りに神経を研ぎ澄ます。

一歩、ダメだ呼吸が合わない、もう一歩、ダメだ筋肉と鼓動が合わない。ここではエンジンの回転とギアがうまく噛み合わない。まだ、まだ…ここか。

 

「ヒヒッ…ブゥン!!」

 

680、一瞬の減速、体から力を抜いて連動をすべて切り惰性に。イメージはクラッチだ、そこから体の全てを最終加速に合わせて切り替える。

半クラッチにしてシフトレバーを切り替えて4速から5速、エンジンとギアの回転を合わせてクラッチを入れ、がっちり体の全てをつなぎ合わせて最高の状態につなげる。

全てがうまく繋がる、さらなる高速域へ踏み込める準備が整った、アクセルペダルをベタ踏みに、体の全てを走る速度に、目指す先はゴールのみ、一気に限界速度まで!

踏み込む足が芝を蹴り上げる、最大推力で体を前へ、前へ、体を前へ、とにかく前へ。

ラストコーナー、インベタにきっちりつけつつ速度をさらに上げる。オーバースピードだ、敏則がいる分、遠心力がかかって足が滑る。

だがコーナーに入るのに合わせて敏則も柵に向けて体を寄らせて、片足が柵にぶつかりそうなくらいギリギリまで重心を寄せながらしがみ付いてカウンターを取る。

コーナーが終わる、ゴール目掛けて一直線だ。

距離400、再加速、体感速度88、敏則が背中に戻ってきてがっちりしがみ付く、それと同時に一気に加速してゴール板の前まで駆け抜けた。

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 

人のざわめきが聞こえてくる、その耳障りな音に俺は重い瞼を開けて気付いた。いかん、寝ていたようだ。

朝からノルンと一緒に走りまくってたからな、そのせいか。居眠りはあんまり好ましくないのだが…今何時だ?

 

「ヒンヒンヒンヒン!!」

 

「うーむ…もう一周!」

 

練習場に目をやると芝コース近くの練習場に一直線に置いた赤いパイロンを左右交互に避けながら駆け抜けるスラローム練習をするホクリクダイオー。

レースで追い抜きとか垂れてきた馬を避けるための練習で、群馬競馬の連中が良くやるお手軽な練習だ。

パイロンとほどほどに広い場所があればいつでもできるからな、費用もさほど掛からん。

その向こうではツバキプリンセスがジムカーナ練習、練習場一面全てを使ってパイロンを置いてその中に作ったルートをひたすらに回ってる。

回避練習とレースでのコーナリング、コーナーの入りと出での加減速の切り替えの総合訓練だ。

コーナーを確実に曲がり切り、かつ素早く加速して足を取り戻し、前をふさがれれば他の馬の隙間を抜くという感じだな。

どっちともいい感じだが…ダイオーがもたついてる、今日は半テンポ遅い。

練習場近くの時計に目をやる。どうやら居眠りといってもほんの20分程度らしい、まだ午後2時だ。居眠りする前より足のキレがわずかに鈍いな。

 

『お目覚めか?』

 

『ディープ?来てたのか』

 

不意に横から声を掛けられてそちらに目をやると、ディープインパクトが俺と同じように座り込んで寛いでいた。

 

『あぁ、ついさっきな。居眠りとは珍しい』

 

『今日は朝から走りまくってたんだよ、お前だって遅かったじゃねーか?』

 

とはいえ寝たおかげで元気にはなったけどな、軽くあくびしながら大きく伸びをして体のコリをほぐす。

 

『あぁ、ちょっと面倒事がな』

 

『なんかあったのか?』

 

『あぁ、あれ見てくれよ』

 

ディープインパクトが顎で指す先、練習場の端っこだ。そこには見慣れない厩務員と調教師とスーツの女、外国人の騎手と一緒に見慣れない馬がいる。どっかで見た気がするが…あ、ハーツクライだ。

騎手は大竹さんと何か喋ってるな、あ、親父さんとモンスニー爺ちゃん、桜葉理事長までまでいるぞ。何やってんだ?

 

『ありゃハーツクライか。なんで群馬にいるんだよ』

 

『珍しいな、知ってるのか?』

 

『有馬でお前とツバキ相手に騎手と一緒に目ん玉ひん剥いてたろ、テレビで見てたよ』

 

『そうだったのか!?どうだ?俺のレースは』

 

『見事なもんだ、さすがだよ。まさか俺の真似してくるとは思わんかったがな』

 

『あの時はああするしかなかったのさ、じゃなきゃ負けてた。お前こそ、俺のスタートを真似しやがって』

 

あ、ということはこいつも俺のレースを見やがったな。

 

『バレたか、参考にさせてもらったぜ。おかげでいい食いつきができた。お前こそどうだ?俺のバトルは?』

 

『あぁ、イカレたヤツだなお前は。まさかあんなレースをしてたとは思いもしなかった、道理でバカみてーな走りしてると思ったぜ』

 

『言いやがったなこのやろー』

 

互いに顔を突き付けあって笑う。馬鹿とは何だ馬鹿とは、お前のあのドリフトもどきこそバカみたいな走りだぞ。

あんな中途半端な加速じゃ結構足に負担掛かっただろうに、まったく無茶しやがるぜ。

 

『で、お前次は阪神だって?ダイオーから聞いたぜ』

 

『あぁ、長距離レースだって言ってたな。3000だ』

 

『大阪杯って長距離だったのか?珍しいな』

 

確かダイオーは2000とか言ってた気がするんだが…俺の記憶違いだったのかな。だがそうなると珍しい判断をしたもんだ。

ダイオーのレースプランは基本的に適正距離以上の走りはさせないことにしてるはずだ。あいつに3000はきつい、長くても2600くらいだったはず。

それ以上はばてるし垂れるしで危険なだけだからあんまり走らせたくないって、プラン作ってる調教師が話してんの聞いたぞ。

 

『え?大阪杯?』

 

『そう、大阪杯、僕も出るんだぞ!』

 

会話に割り込んできたのは汗だらだらのホクリクダイオー。なんだ休憩か?騎手さん、まずは体拭いてやれよ。

ええと…あ、騎手さん居ない。なんか遠くで喋ってる、こいつ勝手にこっちに来やがったな?まったく。

 

『ディープ!君の不敗神話も大阪で終わりだよ!大阪は僕が勝つ!!』

 

『はいはい、まずは体拭け。風邪ひくぞ』

 

クーラーボックス横に置いておいたバスタオルを咥えてダイオーの体に掛けてやる。まったく、体は大切にっていつも言っとるだろうに。

ほら、あと水も飲む。さっきまで散々走り回ってきたんだからクールダウンしなさい。

 

『こいつから聞いたんだよ、次は大阪杯とやらだってな。ま、頑張りな』

 

『それには出ないぞ。俺が次に走るのは阪神大賞典だ』

 

『んぐっ…なぬ!?』

 

うん?なんかおかしいぞ、俺はダイオーからそう聞いてたが?

 

『は、阪神競馬場行くんだよね!?当然産経大阪杯に出るんだよねぇ!!?』

 

『いや、同じGⅡだがそっちじゃないんだ』

 

『ウソダソンナノォォォォ!!』

 

ダイオー…お前勘違いしてやがったな。大方どっかでディープが次に走るのを阪神競馬場って聞いて思い込んでやがったんだろ。

あーあー、すっかりしょぼくれやがって、泣くな泣くな。たぶんあちこちに喋ってたんだろうなぁ、これ。

 

『ぞんな、ぜっがぐ、だのじみにじでだのにぃ…れんじゅう、いっばい、じでだのにぃぃ…』

 

『なんか…すまんな』

 

『こいつが思い込んでただけだ、お前が悪いわけじゃねーよ』

 

『じぐじょー』

 

あーあー鼻水垂れ流しやがって、ほらタオル、GⅠ競走馬が情けねぇぞ?むしろ良かったんじゃねぇか?勝てる可能性が増えたんだし…いや、違うか。

トロフィーよりもディープとやれるの楽しみにしてたんだ。この四冠千切って勝つって気合い入れてたもんな。

 

『づぎぃぃ…』

 

『天皇賞だ、春の』

 

『にゃがいぃぃぃぃ…』

 

ありゃりゃ、よりにもよって長距離か。こいつは出走できねぇな、絶対負けるわ。

 

『お前はまた今度だな…ってかディープ、まだG2とか出るんだな?少し意外だ』

 

『いや出るだろ、これステップレースだし』

 

『中央競馬のGⅠ走って勝ちまくってるお前にはもう縁遠いもんだとばかり思ってたからな』

 

というか、ぶっちゃけGⅡじゃお前が蹂躙するだけで終わるだろ。同じレース走る奴ご愁傷様じゃねぇか。

そんなん経由しなくてもお前なら直で次のGⅠ出られんじゃねぇの?ほかの大会の優先出走権とかあるって聞いたけど。

 

『お前がそれを言うか?聞いたぞ、地方のオープンと条件戦だと?お前がか?』

 

『俺はそれくらいでいいんだよ』

 

オープンと条件戦だけで十分、白蛇記念の賞金も入着で100万くらい出るから狙うだけだしな。仮に5着でも稼ぎにゃなる。

中央GⅠの賞金額と比べたら雀の涙、獲得賞金額だって全く届きゃしない、かすりもしない。

 

『高崎のSPⅠ、白蛇で優先出走権取れなかったか?』

 

『あるな、使わんが』

 

白蛇記念は上半期と下半期に各2回あってな、開催時期に合わせて上のレースに走る出走権を争うステップレースになってんだ。

去年はその両方を俺が掻っ攫って宝の持ち腐れにしちまった、元から出ないつもりだったからいらんのだがね。

大きな話題にはならんかったけど一緒に走ったヤツラからの視線はしばらく痛かったっけな、模擬レースで黙らせたが。

 

『出ればいいだろ、SPⅠなら賞金はもっと多いぞ。お前の親父さんも楽させてやれるだろうに』

 

『重賞はおまけも多くなるからめんどくさい、地方でも重賞クラスなら動く金がでけーんだ』

 

そうなると色々面倒なんだよな、勝てば勝つだけ次だ次だってさ。しかも勝手に期待して勝手に裏切られた気分になって、そこに金が乗るとかもう最悪だ。

俺はそういうのが嫌いでね、いらんもん背負わされて走るのをキライになりたくねぇんだ。

ディープ、お前は生まれながらの競走馬だからそういうのは慣れてんだろうけどさ。俺はだめだ。

それに親父さんにも会社にも負担がデカくなっちまう、うちはほどほどに稼いで気楽に気儘に過ごしていきたいんだよ。

 

『それよかダイオー、スラローム少しもたついてたぞ。足悪いのか?』

 

『うじゅじゅ…あ、バレた?』

 

分からんわけあるか、こちとらお前と何度訓練してると思ってる。

 

『あれでもたついてんのかよ、うちの連中が新馬に見えてくるぜ』

 

『うー…さっきから足に視線感じてやりにくいんだよ。足は元気なんだけどさー、ほらほら』

 

俺の前の前で泣き止んだダイオーが左右にひょこひょこステップを踏んで歩いてみせる。

すると遠くから驚きの黄色い声が…って、ハーツクライのところのスーツの女だ。

なんか手帳持ってるけど…どっかの記者かあいつ。なんだ、テイオーステップって?

ダイオーがステップ踏んだら驚いたってことはずっと見てたってことだな、随分とまぁご熱心だ事。

 

『ほんとか?我慢してないだろうな、医者に行ったほうがいいんじゃないか?』

 

『ホントホント、悪かったらちゃんと厩務員の人にお願いしてるもん。それに変な感じなの、ついさっきからなんだよね』

 

心配そうにダイオーの足を見つめるディープにダイオーは不思議そうにする。

 

『ディープ、ダイオー、あいつのせいじゃね?ハーツクライのところの記者』

 

『え、あ、あれかーなるほど謎は解けた』

 

乙女の生足をじろじろ見るとは無粋な記者だ、ほれ見ろ後ろでモンスニー爺さんが呆れた目をしてるぞ。

そりゃ自分が取材する陣営からよそ見してこっち見てははしゃいでりゃそーなるわな。

あ、なんか理事長から話を聞いて感極まったように震えてるぞ。しかもすげぇ締まりのねぇ顔、なんだありゃ、変態か?

 

「すぅんばらしぃ!!」

 

変態だった。

 

 

 

 





あとがき
実はシマカゼタービンのフォーム原型は旧式メジロ、もう別物だが面影は残ってるかもしれない。
モンスニー爺さんが馬の走りを教えるの一番うまかったからしかたないね。

ハーツクライも来たし記者入り避けられないんで、先に変態(逆輸入品)置いときますね?



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