あと群馬なのと変な設定なのは許して。
第1話
気が付くと生まれ変わってた、よくある二次創作なんかでよく見る神様転生とかそんなのなんだけど、まさか自分がそうなるとは思わんかったわ。
なんだ?前世でなんか悪いことしたか?普段から冷静、悪く言えばなんか冷めてるとか言われてたがテロとか犯罪とかした覚えはない。
生まれは平凡な一般家庭で、独り立ちしたら大企業の支社勤め、しいて言えば30超えてなお独身だったけど、それは結婚に関心なかっただけやねん。
ぶっちゃけ女性に金掛けるより趣味してたほうが人生色鮮やかだったのでな。ミリタリ型雑食オタクだったから女受け悪かったもんよ。だからってこれはないでしょ…
「ひひぃん…」
馬なんだよ。しかもリアルなほうなのよ。なんで畜生道に落とされにゃならんのだ、動物ならもっとネズミーとかユニバーサルな感じだったりフレンズ的なのとかやろ。
百歩譲って愛と勇気だけが友達な食物兵器でもよし、命がいくつあっても足りそうにないけどな。
古典ならあの白いヤツな感じなのかもしれんが、それだと俺は初手で詰んだも同然だ。何しろ生まれが生まれだからね。
「ひぃぃぃん…」
あかん、思い出したらまたため息が出た。要はあれだ、俺は望まれて生まれた馬じゃなかった。母馬のヤツは生んだら育児放棄かまし、父親は文字通り蹴り入れてきやがった。
母親の育児放棄で代わりに一緒に過ごさせようとしたら一緒に来た厩務員さん諸共馬房から蹴りだすんだもん。
一緒に押し出されたときは同伴してくれた厩務員と顔見合わせたあと一緒に呆れちゃったよ。
血のつながる祖母もダメだったし、祖父はいないし、継母についてくれる馬も居ねぇの、それどころかすごい気味悪そうにみんなするんだ。
それ以来、その厩務員さんが担当になって人工保育よ。まさかこの年になって哺乳瓶でミルク飲むことになるとは思わなんだ。
しかも生まれた理由が面白い。入りたての新人がどっかの馬房のカギを閉め忘れて、その馬が逃げて思いっきり盛った結果だそうだ。
結果は御覧の通りだし被害もひどかったらしい、最初は堕胎するつもりだったけどなんやかんやあって出産の方向になったそうだ、俺としちゃ笑うしかねぇよ。
だってそうだろ、転生したけど生まれる前に居なかったことになる寸前な上に生まれたときから借金?いや宿命?とにかく厄介なの背負うとかさぁ…これもう生存戦略とかそんな次元じゃねぇよ?
どう媚売ろうがアピールしようが成るようにしかならんよこれ、糞が…
「この子がそうですか?」
「えぇ、ツインロックの仔です。賢い子ですよ、人懐っこくて物わかりのいい子です」
「なんかため息ばっかりついてるように見えるんですが…まさか持病でも?」
「いえいえ、なんというか…まぁ賢い子なので、時々ナイーブになっちゃうみたいで。ほら、おいで」
ふと顔を上げるといつの間にか馬房の中には見慣れた厩務員さんと見慣れないおっさん、いつの間に入ってきたんだこの人たち?忍者?
ま、俺が勝手に落ち込んで拗ねてただけですよネ、すんません。厩務員が手招きしたのでとことこと傍による。するとそれを褒めるように彼は撫でてくれた。
ひどいよな、この手の温かみと愛情は本物なんだから。今生の生みの親が親なもんだからこういうのに敏感になっちまった。
だから厩務員の人たちとか牧場長とか、大切にしてくれてんの分かるんだもの。経営預かってる人からは冷たく見られてるけどな。
「さぁ、この人がお前の馬主さんだ。挨拶できるか?」
え、生まれてからすぐ馬主っているもんなの?そりゃ挨拶しなきゃな、どうも、と頭を下げてお辞儀をする。
顔を上げると見慣れない男のほうは目を丸くしていた。
「驚いた、お辞儀するのかい?」
「人間が挨拶をするときはこうすると覚えちゃったんですよ、言ったでしょう?賢い子だって」
そりゃ中身は人間やがな、しかも未来人だぜ?少しだけどな。ちなみに詳しくは分からんけど大体西暦2002年くらいらしい。
2021年に暮らしてた身としては懐かしいよ、過去の俺いるかもしれんぞ。うわ、絶対会いたくねぇ。
「人に育てられたせいかもしれないですが色々と人間臭い奴です、生まれの事も理解してんじゃないかって言ってるのがいるくらいでね…ここだけの話、連れてくなら早いほうがいいでしょう。ここはつらいことが多すぎますから」
そうね、その通りだよ。この牧場って資金繰りそんな良くないらしいじゃないの、それなのに予定外の出産で出費痛かったそうじゃないの。針の筵やねん。
「フブキも妙にこの子を嫌ってまして、昨日なんて目にした途端走って蹴りに行こうとしたくらいなんです、今まで走らなかったのに」
何それ知らん、昨日って外に出されたときでしょ?そういえばすぐに呼び戻されたっけ。生みの親に殺されかけてたのん?うそでしょ、畜生道って辛い…
「ヨシミも最近機嫌が怪しいし、ツインロックはどこ吹く風だし…」
最悪、好美って祖母ちゃんの北海好美の事だよ。祖母ちゃんも俺を見る目怪しかったけど実害出始めてんのか。
クソはクソだが、おふくろがマシだったのが笑えるわ。実の仔とか言わないで近づいたら見慣れないガキの扱いだったけど普通だったし、実に馬鹿っぽい姉ちゃんだったよ。
というか生んだこと忘れてやがった、カマかけたら親父と会ったらしい時期から記憶がぽっかりとないらしい、嘘だろ母ちゃん。
俺もうこんな牧場嫌だ、俺この人んとこいくだ。もうこの際肉になってもいいわ、せめておいしくいただいてちょ。
「…解りました、今日連れて帰りましょう」
うまうまうーまーうーまー、こうまをつーれーてー…
◆◆◆◆
『懐かしい夢見た』
最後は親父さんのハチロクに乗せられて峠を攻めて…と、これはもう2年前の話だ。
あの時はかなり拗ねてたけどもなんだかんだ住めば都、身の丈に合った生活できりゃそれはそれでええねん。
なっちゃったんだからこれから先の事考えるわ、とりま頭のいい馬ってこと解ってもらえりゃ道は開ける。で、開いたわけよ。
なんせ俺の馬主さんすごい理解ある人でほかの馬より頭がいいってわかってくれたら扱い変わったもんね。
俺の城である物置小屋を改造した馬房から顔を出すと、仕切りで区切られた放牧場らしきもの。といってもテレビで見たような広さはない。
ほんのり酒の香りが流れてくるほうを見ると、見慣れた酒蔵の戸が開いてるのが見えた。今日も朝から仕込みが始まってる。
つまりここは酒造会社の敷地内にあります、衛生面とかは少し離れたところにあるから問題ないらしいね。衛生管理のあんちゃんが言ってたよ。
『おはようタービン坊主』
はい、自分の名前はシマカゼタービン。競走馬だと思ったか?地方酒蔵の輓馬だよ!! そう、俺は勝ったのさ、勝負事の世界じゃなくて匠の世界に入ったのさ!!
我が家は群馬県の芦名山、その麓にある地方酒蔵『瀬名酒造』で熟成型日本酒『馬練り』が一番人気、なんと俺が仕込みをやってるのよ。
背中に乗せて歩くだけだからって嘗めちゃぁあかんよ、この酒造で飼育してる馬の中じゃ俺が一番うまいんだ。
だから特別にこんな個室を貰えて…すんません嘘です、部屋に関しては新しく作った場所に一番最初に入っただけです。
ついでにこの放牧地の馬房は別に立派なのがあります、まだ誰もおらんだけです。俺だけボッチです…
『おはようブチ、気持ちよく寝たわ。ざっと6時間くらい』
馬房の入り口わきであくびをする三毛猫はブチ、家族の中でも最古参で俺もお世話になったボス猫だ。
ちなみに今は朝7時、昨日は遅かったでやんす。親父さんも俺も眠かった…そういや親父さんは家に帰ったのかな?一緒に馬房で寝た気がするんだがいなかったぞ。
『おはよう。お前さんがよく寝る馬なのは知ってるけど寝すぎは感心しないぜ?ちょいとたるんでんじゃねーか?』
そうね、馬になって知ったけど馬って人間みたいに寝ないんだってね。けど俺は寝る。
『おはようコマツ、そういうお前は相変わらずちっさいけど飯食ってる?コーラ飲む?』
『うっせうっせ!これから大きくなるんじゃい!!』
瓜坊みたいに小柄で愛嬌のある猪豚はコマツ、実はこれでも成獣なんで合法ロリってやつだな。だが雄だ。
ここの会社の親父さん、つまり俺の馬主さんの知り合いがやってる牧場で猪豚を生産してるんだけどその中で育たなかったやつを引き取ってきた。
もう出荷時期も過ぎた成体なんだけど子供みたいな体躯のまんま、姿も愛くるしくて会社じゃ女性社員によく可愛がられてる。
最初は突っかかってきたけど今はこのマイルドツッパリ、自分は運がいいってこと教えてやったからね(暗黒微笑)
『では私にくださいな』
『おはようレッド』
パタパタの背中に降りてきたのはレッド、近所に住んでるカラス。瀬名酒造で飼育されてるわけじゃないから近所の姉ちゃんみたいな感じ。
けどほかの家族よりエンカウント率高い気がする。ちなみにレッドっていうのは両目がルビーみたいだから俺がつけた、ほかの奴と違ってホントキレイなんだよね。
『おはよう、タービン。インテリジェンスな私に糖分たっぷりなコーラはお似合いでしょう?』
なんていってるけど…うん、カラスは鳥だから、うん。ポンコツ姉ちゃんよ。別のカラスにいいようにからかわれてるところ何度も見たもの。
期待した目で見てくれるのは悪いけどもほんとに買う気は…いや、やっぱ後で買ってあげよ。
『昨日は帰りが遅かったけどどうしたの?また峠にでも寄ってきた?』
『いや、トレーニングセンターでちょっと絡まれちゃってさ。延々と勝負させられちゃって長引いたんだよ』
ちなみに酒造りのほかにもバイトで地方競馬の練習相手だったり誘導馬だったりの仕事もしてる。
一応地方競馬の登録もしてるぞ、でかい大会に出たことはないけどな。草レースみたいなもんなら何度か勝った。
そんなこともあるから行くときゃ行くのよね、お呼ばれあったりするから。昨日は練習相手に呼ばれたから行ってきた。
『確か…ディープインパクトとかいったっけ、負けん気強くて何度も挑んできたから大変だったぞ』
『群馬じゃ聞かねぇな、新人か?』
『地方じゃなくて中央のらしいよ。東京から遠征練習に来てた』
ふと昨日の仕事を思い出す、俺に散々突っかかってきたあの鹿毛のサラブレッドの追い込みからの追走圧はすごかった。同い年とは思えん。
前世のどっかで聞いたような気もするけど、なんだっけ、映画かなんかだった気がする。
そもそも練習にわざわざ来るってことは…場所が取れなかったのか?こっちに来るくらいだからそんな強くないのかもしれんけど、あんなのがそんな扱いの中央競馬か…魔境だな。
そんなとこいくより俺はここで馬並みに酒造りしてるほうがいいわ。さーて今日も頑張るぞい!
そんなこと考えてると遠くからエンジン音が聞こえてくる、このスーパーチャージャー音は…敏則のAE101か。
あれを転がしてるのは久しぶりだな、ということは…合格したな、さすが敏則。
くそ、良いよな人間。俺もインプレッサが買いたい、馬でも乗れる車が開発されねぇかな?
「タービン、起きてっかー」
「オゥオゥ!」
「久しぶりだな、元気してたか。今日から俺も復帰だ」
「ぶふっ!?」
「わかるか、帰って来て早々だぜ?あのクソ親父」
少ししてやってきたどこにでもいそうな優男、瀬名敏則はこの瀬名酒造の跡取り息子。趣味で芦名山の走り屋やってる。
つい最近までは騎手の資格取るために家を開けてた。時々帰ってきてたけど長い2年だったもんな。きっと卒業ついでに峠を流してきたんだろう。
それ加味してもいきなり仕事か、親父さんは変わらんねぇ。
『合格したか?したよな?うん?』
「やめろやめろ。そんなにせかすな、合格したよ」
鼻先で突っついて結果を言うようにせかすと敏則はすぐに理解してくれた。
良しよくやった、人間も動物も会社でさえ資格の魔境である瀬名酒造、地方とはいえ競馬騎手の資格持ちとは一段輝くぞ!
厩舎、調教師、騎手などなど一端の競走馬育成資格はそろってたが若手もゲットで未来も安泰だな。
…酒造会社って何だっけ?こいつら取りたい資格は何でも取る我が道を行く家系だからって限度あるだろ普通。
「にゃぁ!にゃごにゃぁ!!」『やるじゃねぇかとし坊!鼻が高いぜ!!』
「ぷも!ぷひぃぃ!!」『ちくしょー!!俺だってなんかとりてーー!!』
「カーカー!」『さすがね、お姉さん感心だわ!』
「おいこらやめろって!!」
ブチとコマツに飛びつかれて頭をぐりぐりされながら尻もちをついた敏則は、レッドに頭に乗られたままくすぐったように笑う。
ドーベルマン先生がいたら怒るかな…いやきっと苦笑いするだけだろうな。
『はいはいやめやめ、これからお仕事だからね』
一声かけるとみんな敏則から降りて近くに座る、敏則はそれを見て微笑むと一匹一匹頭を撫でた。
俺もライアンカットとかいう短く切った鬣を梳かれる。まったく撫でるのがうまい奴だよお前は。
『今晩は楽しみだな!きっと飯は豪華だぞ!!』
『今夜はとんかつだな!ちがいない!!』
『コマツ?あなたそれ意味…いえ、いいわ、そんな澄んだ瞳で穢れた私を見ないで!』
コマツ…まぁそういうの乗り越えたもんね君。
「じゃぁ行くぞタービン、まずはスプリンターから仕込もうか」
寝起きから全力疾走とはお前も鬼だな敏則!?
◆◆◆
こいつを見たときからただの馬じゃないのは理解できた。親父がめちゃくちゃいい顔で手に入れてきた仔馬の目には、確かに理性があったからだ。
血統はぱっとしないというか、競走馬の血が入ってるけど戦績から見てもなんというかロマンでしかない。
親父はその馬のファンで、いつか馬主になってやるとか意気込んでたのはガキの頃から覚えてる。で、その血が入った馬をまじで買ったわけだ。
普通なら誰かが止めるべきなんだろうけど、買うことも扱うこともうちの酒蔵じゃ当たり前だしこのド田舎にも聞こえるスター性となれば反対するやつはいやしない。
俺自身当時は分かってなかったし、こいつ自身も頭がいい大当たりな奴だったしね。
夜の峠道をパカラパカラと軽快な足音を立てて軽く走るシマカゼタービンの栗毛の体に応急処置セットとかを積んだ軽トラックで併走しながら、タービンの背中に着けた酒入れがズレてないか確かめる。
競馬で見るゼッケンみたいなやつを袋にした酒袋は、片方に一升瓶5本が入るようになっていて一度に10本背負える。
タービンはそれを背負って毎日こうやって走って、うちの主力商品『馬練り』の最後の仕込みをするのが仕事だ。
『馬練り』は熟成型の日本酒で、一年熟成させた後に馬の体に乗せて走らせることで酒を練り、味に変化を持たせる変わった工程を持っているのが特徴の変わり種なんだ。
何でもご先祖様が酒の納品する時に走った距離で味が変わるのを見つけてから代々改良を続けてきたんだと。
だから最後の仕上げをする馬によって味の良し悪しが変わる。下手な馬がやると飲めたもんじゃなくなるからどんな馬でもいいわけじゃない。
競走馬みたいに見極めが必要なんだ…というか、ぶっちゃけ競走馬とほぼおんなじかもしれん。それでいえばこいつは大当たりだ。
こいつは自分の走りが酒の味を変えるのを知ってる、だからペース配分とかがうまい。走るのも大好きだし、競馬的に言えば逃げ馬とはいえただ逃げるだけじゃないってところもある。
今の走りだと切れのある酒になるが…あ、黄色のインプレッサ。
「なんだ、あの下手くそ」
「ブルルッヒィン」
思いっきり飛ばして坂を上がってくるインプレッサを避けるために少し端に寄せると、なんだかすげぇ馬鹿にしたような眼でこっちを見てきやがった。
見た感じ走り屋っぽかったけど…まだビギナーって感じかなぁ、このゆるい道を飛ばして粋がってるっぽかったし。
本命はこの先の下りなんだろう、でもあの分じゃ明日にゃ板金コースだな。この芦名山は有名どころほど名は知られてないが難所だぞ。
そんな風に考えながら走らせてるともう頂上だ、トイレと自販機エリアしかないパーキングエリアは昼間は閑散としているけど夜はそうじゃない。
ここの峠を攻めに来た走り屋たちが顔を出してきていていつもそれなりの人気がある。おかげでここの自販機は設置主が奮発してて豪華だ、しかも値段も町中価格で安いし。
俺がタービンを連れてパーキングに入ると興味深げな視線があちこちから飛んでくる。
どうやら遠征組が多い日らしい、ここらを拠点としてる奴らならタービンとは顔なじみなんだがな。
「敏則にタービン、なんだお前も来たのか。GT-Zはどうした?まさかそれでやる気かよ?」
端っこに車を停めると顔なじみの走り屋がこっちに寄ってきた、顔色からして何かあるらしいな、俺は知らんが。
「何の話だよ良助、見てのとおりタービンと仕込みしてるだけだぞ」
「なんだ、じゃぁただの偶然か?何も聞いてないのか?」
「だから何の話だ?」
「今日は榛名と赤城の連中がやるんだ、聞いてないのか?」
「交流戦か?知らねぇよ、騎手の資格取るのに忙しかったし」
なるほど、だからこんなギャラリーが集まってんのか。榛名山のチームと赤城山のチームの交流戦か、ここなら互いにアドバンテージが無いから対等だもんな。
ここらの連中も滅茶苦茶盛り上がってる、ここの連中はお祭り好きだもんな。
「タービン!お前も見に来たのか!!今日はすげぇぞ、赤城と榛名の対決だってよぉ!!」
「ブルッ!?ブォンブォン!!」
「そうだろそうだろ、見ろよ!あの黄色のEG6と青のS13、ガチガチにチューンされててエンジン音がすげぇんだ!!サイッコーにクールだぜ!!」
「ブゥンブゥゥゥン…」
仲のいいいつものギャラリーと喋るタービンは興奮気味に右後ろ足を掻いて鳴らす。アクセル踏みたいってうずうずしてんな、これ。
親父のハチロクで遊んでたのを思い出したか、でかくなって運転席に座ることもできなくなってからはしばらく落ち込んでたもんな。
「タービン、いっちょ飛ばしてみるか?」
タービンに声をかけるとほんとに良いのか?と見つめ返してきた。良いだろ、夜の仕込みはこういうお茶目ができるから楽しいんだ。
「仕込みは終わったんだ、思いっきり遊ぼうぜ。下り一本、追走するから好きに走りな」
瞬間、タービンが大きく嘶いてにかりと笑う。じゃぁさっそく準備だ、まずタービンが仕込んだ酒を荷台の専用ボックスに入れてしっかりと固定する。
そのあと荷台に乗せておいた反射板付きの馬着を着せる。工事現場の誘導員みたいなやつだ、尻の部分がテールライトみたいになってる。
あとは首からライトを掛けさせて準備は完了、タービンはやる気十分で鼻息を荒げてる。
「良助、次の連中が下りたら俺たちが下りていいか」
「なんだよもう行くのか。できれば新米の先導してほしいんだがなぁ…」
「邪魔しちゃ悪い、メインイベント前にタイムトライアルして帰る」
このあたりの奴らならタービンの事はよく知ってるが、ほかの連中から見たら異物でしかないしな。目立たないうちに退散するとするさ。
そういうと良助は納得してトランシーバーでどこかと連絡を取り始める。
「こちら良助だ、次はもう走るか?割り込みで悪いんだが一組こっちで入れたい…え?タービンと敏則だ、さっき来たんだよ…誰とバトルって?タイムトライアルだよ、行けるか?」
馬と軽トラでEG6とS13相手にやるってか?何の冗談だ、ましてや走り屋チームとなんてやってられっか。
あとがき
見切り発車で始まりました馬時代編、ウマ娘編は別からスタートする予定。
この主人公の前世にウマ娘にも競馬も興味ないのでこれです。聞いたことはあるけど覚えてないタイプ。
作者自身も競馬は調べながらふんわり知識なので拠点はあえてオマージュ、言わなくてもわかりますね?
当然ながら競馬場とかも架空です、調べては書くけどダメなら妄想で補うのです。
深く考えたら負けなので軽く考えるだけでお願いします。
あとこの世界はいろいろと優しい成分でできています、イニシャル〇みたいな感じで。
なので普通じゃない光景にも慣れ切った変な奴らが芦名山界隈では有名なので平気です。
『シマカゼタービン』
栗毛の牡馬、鬣を短くライアンカットにしている以外は外見にはたいして特徴がない馬。基本何でも喰う。
瀬名酒造厩舎所属の個人馬主競走馬兼輓馬、地方競馬に登録済み。
しかし本業との兼ね合いと所属が所属なのでレース出場経験は少なく、会社も馬主も本馬でさえも積極的に行く気がなかったため完全な趣味と化している。
中身は普通な一般成人男性、2021年を生きていた趣味人で独身チェリーボーイ。
熟成日本酒『馬練り』作りの達馬で、自分の走りで酒を仕込むことを理解しており味も理解している。やるときはきっちりやるタイプ。
日夜峠をひた走り、酒造りに向き合う傍らで峠をかける走り屋の走りを見続けた彼は、馬の身にて峠の走り屋になっていた。
この世界に来てから瀬名敏則の親父のドラテクに魅せられライトな車好きに目覚めてしまいかっこいい車に少し詳しくなった。
一番好きな車はインプレッサシリーズ。
血統表
母・ツインロック
父・ウミノフブキ(架空馬)
祖母・ホッカイヨシミ