気儘に生きた転生馬物語   作:イナダ大根

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いつも多くの誤字報告と感想、ありがとうございます。
ここからそろそろ風呂敷畳みたいところですなぁ。競馬物で物騒な話はどこまでOKなのか気になるところですが…まぁダメって言われなきゃいいか。




第31話 ※おまけ改訂版

 

 

2006年某月某日、日本国・群馬県・某所・群馬競走馬トレーニングセンター・・・・

 

 

 

今日も今日とて群馬トレセン、最近はアグレッサー役が板についてきたシマカゼタービンです。

確かに俺はアルバイトみたいな感じで併走とかに付き合ってましたよ、何ならツバキたちを散々千切り倒してきましたよ。

ついでに言えば一応競走馬ですよ、まぁ趣味程度が許される地方でしか走りませんけども。

でも競馬の仕事で呼び出されることが多いってのもちょっと困っちゃうわけさ。

競馬は副業で本業は酒造なんだよ俺、アスリートじゃなくてマイスターなの、ついでに言えばアングラな走り屋なのよ。

だから本来かなりフリーなの、フリーハンドなの、自由な時間多いの、ずっとトレセンにいてもいいきれいな馬じゃねーのよ。

 

「ブルッ、ヴー…」

 

「うひっ…」『うわ、師匠不機嫌…』

 

不機嫌にもなろうよ、アイネスちゃん。アグレッサー役はあくまでアルバイトなのよ。それが本業を喰うようじゃあかんでしょ。

そりゃツバキたちの相手とか、ディープ相手とかならまぁしょうがない部分もありますけどもね。

あいつら本気になったら並みの馬じゃ歯が立たないし、かといってうちの一流連中は自分のことで忙しいから今は無理だしね。

けどほかの馬だったら別にできるでしょうよ、なんで俺が相手してやらにゃならんのだ。

あくまでアルバイトだから今までOKしてたのよこの仕事、あくまで俺は数合わせなわけ、本格的なのは本業の奴らにお任せなんだよ。

なのにここ最近ときたら何かあれば呼び出される、挙句俺を指定してくる調教師や騎手までいる始末だ。それも中央の知らん奴らまで。

俺は員数外のアルバイトトレーナーなわけでして、当然名簿には載ってないしトレセンに毎日いるわけじゃありません。

だから普通ならそういうのはお断りなんだが、そうもいかない大物も普通に指名してくるから…最近だとルベルっていうんだけどね。

 

「ブルル」『どうしたのです?いつもよりすごい不機嫌ですが』

 

「ブルルッ…」『レーネか。当たり前だ、そもそも今日は休日だったんだ。なのに呼び出しやがって』

 

馬に休日なんてあるのかって?うちにはあるんだよ、決まった日にちに休めるわけじゃねぇけどな。

今日は近所のフリマに行けるはずだったんだよ、ちょうど親父さん達も甘酒の屋台やるからそれについて行って遊ぶ予定だったんだ。

今回は理由が理由なんで無下にできんかったが、普通ならお断り案件だわ。いや、こんな有様なら絶対嫌だったね。

ディープたちならまだわかるよ。あの野郎、ことあるごとに俺を指名して呼び出しやがるがまああいつの相手ができるのはダイオー達以外だと俺だけだからしょうがない。まぁ、俺も面白いからよし。

ハーツクライも…まぁしょうがねえ。最近すっかり味占めてきやがって、ちょいちょい顔出してくる。

キングジョージとかいうのに挑戦するらしいから同じ距離でぼろ糞にして、ちょっと喉が調子悪そうだったからドクターに丸投げした。

鍼マッサージしてシロップ薬貰ってすぐに完全復活してたから大したことなかったんやろ。あれなら勝つね、よほどのことがなきゃ。

まぁそういう事もね、まぁ俺に仕事が回ってくるからやってる。仕事だからやるし、あいつらと一緒にバトルするのは楽しいし、暇しねぇし。

だが今俺がやってんのはなんだ?ただ休憩スペースで寝そべってグダグダしてるだけじゃねーの。

暇なんだよ、時間無駄にしてる感じ半端ねぇんだよ、ほんと何でここにいるのかわかんねぇのよ。

 

『俺は仕事しに来てんだよ、休日返上してんだよ、なのに放牧地に放り出されてほったらかしだぁ?こういうの一番嫌いなんだが?』

 

くそ、前世で無理矢理本社の関係各社交流パーティーに放り込まれた時を思い出すぜ。あの時も休日返上で引っ張り出された挙句、何のやる事もなく放置プレイ食らった。

いや、あん時より悪いか。あの時は飯が豪華だったからな、それとなくお替りしまくってさも食うのが好きな下っ端で凌げた。

飯はうまかったしな、高級ワインに高級料理、まさに上流階級のお食事会って感じでいいお味であった。

でも今回はそんな暇つぶしのもんすらねぇ!変に遊んだら今日は迷惑掛かっちまうから静かにしてるしかないので暇なんだよ。

 

『今日は人間のとっても偉い人が来られてるわけですし、なら群馬トレセンのボス馬がいないと締まらないってわけじゃ?』

 

『俺はボスじゃねーし、ボス馬がどうとかなんてこれにはかんけーねーな。お偉いさんなら桜葉理事長が相手すりゃいいだけだ』

 

『なら師匠が一番強いから!走るのも速いけど喧嘩も強いんだし護衛に最適じゃん!』

 

『それなら雅孝さんたちと自前の護衛で何とかならぁ』

 

俺が休日返上で呼び出し食らった理由、それは海外のとある王族がわざわざ群馬トレーニングセンターに見学に来るからってのが理由だ。

放牧地の外、見学用のテラスで仕立てのいいスーツ姿で大手マスコミの取材を受けてる外人のいい男がそうだよ。

しかもご丁寧に群馬競馬のツバキたちの騎手も全員と一緒で合同インタビューときた、何でも地方競馬から出てきた稀代の名騎手達というお題目だ。

全員が騎手姿で気合入っているように見えてるけど違うなありゃ、主に緊張で変な顔になりそうなの必死でこらえて真面目な顔してるだけだ。

濃緑に稲妻マークの桂井さんが一番自然かな?いや単純に隠してるだけか、ツバキを認めてくれるのは分かるけどもっていこうとしたから内心嫌ってんだろあれ。

カーキ色で背中と正面に丸に縦矢印の騎手服を着た田島さんも、まぁ天皇賞で西さんと一緒に御上の人たちと会談したらしいから多少慣れてるっぽい。

でもどっちかっていうとめんどくせぇって思ってそう、そりゃそうだ、生きてる世界違いすぎると面と向かうだけでこっちに迷惑降り注ぐんだよこういうの。

分かるよ、俺も経験あるから。しかもそういうのに限っていくら他意はないって言っても全然信じてくれんのだ。

例えば前世、美味しいクラッカー見つけてついつい多めに食ってたら偶然良いところのお嬢さんとそれで話が合って数分盛り上がったことがあった、それだけでそのお嬢様に気があったらしいお偉いさんに目を付けられて難癖付いたかんな。

まぁそのあとすぐにイラク行きが決まって、死にかけたが帰国したときにはうやむやだったから気分クソ悪かった以外に害はなかったが。

ダイオーの騎手の新坂さんは特に酷い、ライトグレーの下地に左肩から青い二本線を襷掛け勝負服が煤けて見える。

あれは何も考えてないな、考える余裕ないんだ。とにかく話に合わせるだけで精いっぱいって感じ。

新坂さんもこれから大変だってのに今からプレッシャーかけるんじゃないよ、ダイオーのドイツ戦がかかってんだぞ。

 

『ありゃりゃ、頼信さんが固まってる』

 

『社長が大喜びしてそうなのです』

 

『ありえるね、いい経験だとか言って笑ってそう。ニヤニヤしながらひょっこり顔出して来たりして』

 

『外人さんが好きそうな格好だし、いいんじゃね?』

 

三郎社長、お仕事以外だと基本的に由緒正しき和装が基本で見た目はジャパニーズヤクザなんよね。本人は全く意識してないけど。

ついでに言えば新坂頼信騎手も若手ヤクザっぽい私服、中身は普通の人なんだけどセンスが親譲りなんだよなぁ。

新坂一家はみんなそうなんだよ、というか会社も含めて丸ごとそう。やってることは普通なのに格好と雰囲気がヤクザ。

しかもそれ、嫌がるどころか面白がってる節あるからなぁ。

 

『それにしてもわざわざアラブから殿下が直々にとはね』

 

アラブのでかい…なんだっけ?ゴドルフィンだかゴンゴルドンだかレオパルドンだか知らねぇが、まぁそういう競馬界のでかい組織の重鎮である殿下がご苦労なこった。

見ろよ、群馬トレセンの調教師も厩務員も、居合わせて見物してる馬主の人たちだって顔は笑ってるが内心では超厄介そうに思ってるのがバレバレだぜ。

まぁあのボンボンがいるせいで今日の調教はいろいろ邪魔が入ってるかんな、主に殿下の護衛のせいで。

一緒に来てる雅孝さん率いる群馬県警特別選抜警官隊の人たちなら全然気にもしないこといちいちごねてきやがって、おかげでスケジュール台無しらしいじゃん。

制服のおまわりさんの目も糞剣呑だぞ、こいつら邪魔って意味で。まぁ向こうもおんなじ感じで、互いに雰囲気悪いんだよなぁ。

え?目上の人だから敬愛とかないのかって?ねぇわ、余りに上過ぎて迷惑でしかねーわ。

 

『あいつら邪魔しにでも来たんか?ツバキの馬主に散々アプローチして袖にされて頭でも来たにしちゃせこいねぇ』

 

『え、ツバキ先輩いなくなるの?』

 

『ならねぇよ、断ったって言ったじゃん』

 

ツバキ曰く、アラブのとんでもない大金持ちな馬主からオファーがあったらしいけど、馬主さんまったく興味なしで袖にしたそうだ。

それこそ金銭面も、営業面も、あの手この手で誘惑してきたらしいけど全部お断りしたらしい。

親父さんのダチだからそういうところ凄い人なんだよな、こうと心に決めたらテコでも動かないし下手に攻めたら道連れ上等で反撃してくるタイプ。

おかげで今日の調教はほぼほぼ軽いのしかできてねぇ、アイネス達だって安田記念だとかいうのに挑戦するから追い込みの時期だってのにこの有様よ。

練習コースは芝でハルウララが足慣らししながらブニーキャップ達の先導してるだけだし、ダートの方はバターナッツが群馬競馬の連中にソリ引き練習のお手本見せてるだけ。

ジムカーナとかオートストップ訓練とかも周りでやっちゃいるがこれも軽く流す程度、まぁ追い込み時期じゃねー奴がやってるってのもあるけど。

いつもやってる本格的なヤツは軒並み中止だよ、殿下はともかく周りがうるさくて仕方なくね。

午前中の裏山コースも完全封鎖、午後の予定で安全に使うために護衛の方々が丸ごと山狩りしてるだろーよ。

もしくはいい機会だから敵情視察か…まぁ、あのポン付けにご苦労なことだ。やろうと思えばどこでもできる施工だから無駄骨だと思うがね。

 

『見ろよ、ダイオー達も暇そうにしてるぜ』

 

見学用テラス近くで出番を待ってるダイオー達、あいつらも滅茶苦茶暇そう。

ダイオーとツバキは〇×ゲームして遊んでるし、ノルンは…なんだ、T―72のプラモか?器用に前足を使って、ピンセットを咥えながら作ってる。

随分愉快な改造してんな。オプションキットの爆裂装甲版くっ付けてドレスアップとは羨ましい、どこにあったそのオプション。

あいつも器用になったもんだ、教えた甲斐があるってもんだ。まぁ正直形ができてるだけだけでいろいろ歪んでるけど…まぁそんなもんだろ。

俺もしたかったなそういうの、今日そういうのできる日だったんだよ本当は!!

 

『師匠、そんな切ない顔しないでよ』

 

『今日は部屋の掃除して、近所の公園でやってるフリマに連れてってもらうはずだったんだ。

こんな暇な時間じゃなくてもっとにぎやかで穏やかな日常を送ってるはずだったんだ。

もしかしたら古いモデルガンとか買えるかもしれないし楽しみにしてたのにこれだぜ、めったにない機会だったのによぉ』

 

『相変わらず師匠は変わったものが好きですね、町で暮らしているとそうなるんでしょうか?』

 

『好きな奴は好きだぞ、ノルンとか見たまんまじゃん』

 

『ノルン先輩の戦車キチガイは特別だと思うよ僕は』

 

『同じだよ同じ』

 

前世でミリオタであった俺にとってエアガン類は部屋のインテリア、あるいはサバゲの相棒。

今は馬だからショップに行くわけにもいかんしそもそも体が入らんしで、新しくお迎えできることは滅多にない。

だからこういう野外フリーマーケットは超貴重な機会なんだよ、もしかしたら古いヤツを売りに出してる人がいるかもしれないから。

この前も古いモデルガン売りに出してる人がいたから、何とか買い取ったんだぜ?ボロボロのM1911。

古いヤツで長年放置されてたから埃だらけで錆まみれだったがあれは良い物だ、整備し直すのに苦労したがそれもまた楽しみよ。

さすがフリーマーケット、運が良けりゃホントに良い物が安く買える。前世で俺をサバゲにのめり込ませた銃もフリマで買ったんだ。

前世のCA870みたいにエアガンがあればなおよかったが、そん時はそのモデルガン以外良い物がなかったんだよなぁ…そもそもエアガン自体なかったし。

しかしまぁ、あいつらもすっかり時の人。いや馬か、住む世界が違う感じになってんな。立派になっちまって、まったく。

 

「にゃぁ?にゃぁぁ」『なんだよ、まだ拗ねてんのか?』

 

「ヒヒン!」『あ、ブチさん』

 

『見回りしてきたぜ、みんな大人しくしてら。しっかしなんだよその顔、まったく情けねー』

 

『だってよー、また見つけたかったんだもんよー、長物もほしいんだよー』

 

『あるかどうかも分からんだろうに…お前はほんと変わったやっちゃな。人間のおもちゃなんかバラして何が面白いってんだ?』

 

『全部!』

 

車の整備と同じでガチャガチャやってんのが楽しいんだよああいうのは!どういう風に仕上げるかとか、気になった個所にどう手を加えるかとか、そもそもどこまで磨き上げようかとかそういうのな。

 

『ばらすって師匠何やってんの?』

 

『別に特別なことしちゃいねーよ?古いガバちゃんを使えるようにしただけ』

 

大変だったぜ、完全に錆びついてたかんな。バラシて、ゴミ拭って、錆取って、バリもとってグリスアップして…むへへ。

細かいバネなんかはダメになってたからガレージの車用予備部品から探して改造してとっ変えて、ついでにスライドもリフィニッシュよ。

グリップも木製だったからダメになってたんで、バラした廃棄酒樽から端材を貰ってフルスクラッチ、亜麻仁油も塗ってがっちりと仕上げたぜ。

組み上げたら当たりを取って、部品のかみ合わせを確認してから気になったらまたバラして仕上げ直す。

満足な仕上がりになるまで何度も組んでバラして直してまた組んで、いやぁじつに有意義な時間でしたなぁ。

 

『よく言うぜ、騙されんなよアイネス。錆だらけゴミだらけの油くっさいヤツだぞ。

しかも細かい部品だらけで訳の分かんねぇやつ。よくもまぁあんだけばらばらにして組み立て直せるもんだぜ。

どれがどの部品かなんて俺じゃ覚えてられんわ、というか分解からできんわ』

 

『慣れりゃ楽だよ、組むのは苦労したけど』

 

人間の手足みたいにはいかんからね、前足と口とトングとピンセットフル稼働で何とかよ。まぁその不便さもまた面白いんだが。

まぁ興味ない人間もおんなじこと言ってたからねぇ、バラして組み立てるくらいパズルと同じようなもんなんだけど素人にゃわからんもんなのよ。

それにあの程度、この前仕事用の軽トラがトラブった時よりずっと楽だったかんな。

あれは半日ずっと車の下に潜り込んでクラッチ弄って漸くだよ、一つ直したらまた別ん所が悪くなる典型、もう買い替えなきゃだめだ。

こういう時に限って親父さんも敏則も別件でいないってんだからなぁ…

 

『慣れってお前な、舌で水飲めねぇくせにどうしてそういうところは器用なんだか』

 

『そういえば師匠って子供でもできることできなかったりするよね、夜も明かりないとだめだっけ』

 

『見えないからな』

 

別に困らんけど、人間と同じだから違和感なくて助かってるし。

 

『そういやお前、耳もあんま動かないよな』

 

『そういえば機嫌が全然わからないのです』

 

『動かせっつっても動かせないから仕方ない、そもそも感覚が分からん』

 

だって人間の時から耳をくりくりさせるなんてやったことねーもん。馬になっても動かし方分からん、ぴくぴくできるくらい。

別に人の時より良く聞こえるんだからいーじゃん、俺の耳はフィクスドイヤーってことで。

 

『そういえば鬣ハムハムさせてくれないのです』

 

『鬣噛むのマジやめろ、それだけはマジ勘弁。櫛で梳いてやっからそれで許して、嫌ってるわけじゃねぇんよ』

 

『そういやお前そういうのもてんでダメか。馬としてどうなんだそれは』

 

どうなんだといわれても困るわ。そもそも馬の習性とは何ぞや?模倣しようとしても知らないもんは知らんねん。

教えてもらおうにも、さすがに説明し辛いって先輩にも爺さんにも言われたし。まぁそりゃ無意識な仕草を説明しろっていう俺も変な質問してるんだが。

野生の本能?んなもん生まれてこの方感じたこともない。そもそも野生として生きたことないし生まれはともかく育ちは芦名の瀬名酒造だ。

つまり根っからの群馬っ子で峠っ子、放牧地より街角の駐車場のほうが気が休まるくらいには人慣れしてらぁ…というか中身元人やねん。

正直、他の馬とずっと一緒にいるほうが俺としてはストレスかもしれん。馴染めるんだけど…ねぇ?

鬣噛むやつも親愛の印としてやってるらしいんだけど俺には無理っす、やりたくないしやってほしくない、だってやられるとよだれでびちゃびちゃなんだもん。

思えば親父さんに引き取られなかったら、仮に競走馬になれても多分ストレスで大変だったかもなぁ。

だって今の高崎競馬場の厩舎はトイレ別になってるし、こいつらもちゃんと毎日綺麗にしてっからいいけどさ。

昔は普通に垂れ流しだったじゃん、それで綺麗判定でしょ?今も中央の連中ってそうじゃん?臭いんだよ、ひどい奴はマジで。

馬房も糞尿垂れ流して、掃除はしてくれるけどしてくれるまでは放置でしょ?下手すりゃそれで寝るんでしょ?いやー無理っす。

ディープ達はそうでもないけど、ちょこちょこ高崎競馬場で見かける見慣れない連中とか独特な臭いしててねぇ。

しょうがないっつっても気になるもんは気になるからしょうがないじゃん、そんなところで暮らす自信ねーわ。

知り合いのPMCの人たちとか陸自のダチとか海兵隊の連中とかならまだしも、俺は一般ピープルサバゲーマーですもの。

それもあくまでエンジョイ勢で、24時間とかやるガチな連中とか無理っすよ。

 

『ご飯も野菜とか人間の食べ物が好きなんですよね?』

 

『喰えないってわけじゃねぇんだがな、やっぱホクホクの白いご飯最強ですわ』

 

『あ、カリカリはダメだって言ってたね』

 

『コーンフレーク知ってるとなぁ…』

 

うん、飯もそうね。普通の飼い葉とかも食えるけど、やっぱ草。食えなくはないんだけどもやっぱり草、特別うまいとは思えん。

やっぱり炊いたご飯が一番、付け合わせにお肉か魚があれば最強。みそ汁付きならなお良し、一般家庭料理なら全部良し!

あとアイネスが言ってた馬用のフレーク餌とかはまず無理、不味い。昔間違えて喰った鹿せんべい思い出したわ、あれに薬臭さミックスした感じで喰えたもんじゃない。

会社だとそれ分かってくれるから大体社員食堂の残り物とかサラダを付けてくれるんだよね、飼い葉はご飯替わりだ。

だから高崎競馬場とか行くとたまに飼い葉だけドカッと出されてちょっと気持ち沈む、厩務員さんが慣れてないとそうなる。

そういえば最近競馬場に可愛い新人さん入ってたよなぁ、年の割にちっこいのに胸だけドカンとでかくて…むへへ。

 

『あ、なんかいやらしいこと考えてるのです』

 

『どうせ人間の雌のこと思い出したんだろ、確か高崎の新人が人間基準で美人だったはずだぜ』

 

『うーん、よくわかんない』

 

『俺も人間見て判断できるだけだしなぁ』

 

そりゃ猫と馬にはわかるまい。人間の色気というのは人間にしかわからんのだ、ほら俺は元人間で中身そのまんまだから。

 

『タービンよ、お前がどんだけ器用で賢くても馬なんだぜ?人間にはなれやしねーぞ』

 

『何当たり前の事言ってやがる』

 

モンスニー爺さんもそうだが、たまに変なこと質問してくるよな。馬が人間になれるわけねぇじゃん。

どーせ、この生涯でも生涯童貞のチェリーボーイですよーだ。前世で捨てたくても捨てらんなかったからそこまでショックでもねぇわ。

どうせ馬の風俗があったところで前世と同じで碌なことにならん。だって前世じゃ散々悲惨な結果になったもの。

予約しても大体土壇場でハプニングだし、飛び込みで入っても順番来る前にハプニングあるし、アパートに呼んでも事故ってたし。

呪われてんのかっていうくらい運がなかったからなそっち方面、金は戻ってきたし業者さんが全部悪いわけじゃないからなおさらどーしよーもねぇもん。

相手が階段でずっこけたり、待ってたら電気トラブルで急遽閉店だったり、デリヘルは事故に巻き込まれて病院に行き先変更だもん。

 

『…分かってんだからお前は質が悪いよ』

 

『ん?そりゃどういう意味だ?』

 

『何の意味もありゃしねーよ、この悪ガキが。うちに来た時から何も変わりゃしねーじゃねーか』

 

『そりゃそうそう変わらんわい、これが俺だ』

 

『飼い葉喰わないで俺の昼飯強請ってきた悪ガキがえらそうな口言ってんじゃねぇよ、馬なら草だろ草』

 

『いやぁあの時はお世話になりました先輩、猫まんま大変美味しゅうございました、お詫びに草差し上げます』

 

『低姿勢になればいいってもんじゃねぇんだよ、このこの!』

 

『あうちあうち』

 

『あの時茂三の奴にどんな顔して頼めばいいか本気で悩んだんだぜ?まったくよー』

 

『うへへへ、ゴチになりやした先輩』

 

『敬意が足りん』

 

『あうち』

 

ブチにむかって土下座っぽい土下寝で恭しく頭を下げると額にポカポカ肉球が当たる感触がする。

瀬名酒造に落ち着くまでほんと苦労したかんなぁ、主に飼い葉で。ミルクも動物用で変な味だったし。

だから瀬名酒造で見たブチの猫まんまがもう美味しそうで美味しそうで…我慢が限界でした、マジで。

ブチはキャットフードよりそういうのが好きだったんでもうね、あの鰹節と醤油を混ぜた白飯がもう輝いて見えちゃってもう溜まらなかったのよ。

あ、思い出したら喰いたくなってきた猫まんま、猫まんま…ごはん、白いご飯・・・・・

 

『飯…白いご飯と唐揚げ…唐揚げ喰いたかった、焼き鳥、お好み焼き、かき氷、ケバブ、タコス、たこ焼き、出来立てホカホカ美味しい屋台飯』

 

『あ、やべ』

 

『フリマ行きたかったな、行きたかったなぁ!出店で美味しいもの食べるチャンスだったのにぃ!』

 

特に肉、魚!俺は喰うんだよ、喰えるんだよ!だから堂々と喰いたかったのにぃ!!顔見知りだから買えるのにぃ!!

王族だとか競馬の重鎮だとかそんなもん興味ないわい、仕事じゃなけりゃ!仕事じゃなけりゃよぉ!!

 

『あーあ、また機嫌悪くなっちゃった』

 

『まぁ仕事にはなってんだしいいだろ、もうこれで』

 

『師匠が機嫌悪いからみんな大人しくしてますしね』

 

畜生!休日出勤なんてクソだ!!仕事ってやつは結局馬も人も変わらんという事か!!世の中ホントにままならんなもぅ!!

 

 

 

 






あとがき
というわけで殿下襲来、ちょっとして騒動の前置きみたいな感じです。
原状、群馬トレセンには殿下の護衛と群馬県警の警官隊がわんさかいていろいろ業務やスケジュールが滞ってる感じ。
ついでに言えば馬に慣れてる群馬県警に比べて殿下の護衛がいろいろ刺激してるので若干空気が悪い。
まぁ殿下の護衛もいろいろ危機感が足りない雰囲気の群馬県警が気に入らない感じでもありますが。
とはいえ、そんなのすったもんだなんてこのUMAには関係ないので、予定潰されてイライラしてるだけの話でした。





おまけ・シマカゼタービンの耳
可動範囲と挙動は極端に薄いが開け閉めはできるので、厳密にはリトラクタブルイヤーである。
ラーニング相手はハチロクのライト。なのでやけに機械的、駆動音が聞こえるくらいにそっくりに前に倒れる。



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