いつも多くの感想と誤字報告ありがとうございます。ついに凱旋門賞発送直前にまでこじつけました。
なんか歴史がおかしなことになっていますがこれくらいしときゃギャグになるやろ、なれ!
2006年10月1日、フランス共和国・パリ・ロンシャン競馬場。
夕暮れに差し掛かった競馬場は、一日のレース日程をほぼ終え大目玉となるレース直前の熱狂の渦の只中にあった。
第85回凱旋門賞がもうすぐ行われようとしているのだ、世界中から集まった競馬ファンの熱狂が収まるはずもない。
国際競馬統括連盟の年間レースレーティングに基づいたランキングでも何度もトップを飾るほどに栄誉あるレースだ。とりわけ日本においては特に。
その日本から来た二人の男性記者は、日本国内の中堅雑誌の記者ながらそれなりに良い席を陣取って記事の目玉となるレースの発想とネタ集めに余念がなかった。
中年の先輩男性とまだ20代の後輩男性記者の二人組は、それぞれ手に持ったパンフレットを見直したり双眼鏡でネタを探りながら凱旋門賞を待つ。
出走表の枠順を見る先輩記者は、何度見ても今は飽きないそれを再度舐めるように見る。
『1枠2番・ハリケーンラン
2枠1番・ディープインパクト
3枠8番・ベストネーム
4枠5番・レイルリンク
5枠4番・プライド
6枠3番・シロッコ
7枠7番・ホクリクダイオー
8枠6番・シックスティーズアイコン
9枠9番・エレクトロキューショニスト』
パンフレットを見ていた先輩記者はこの大勝負に胸が高鳴った、この凱旋門賞という舞台に日本は中央と地方から二頭もの精鋭を送り出したのだ。
それも中央は今まさに旬のサンデーサイレンス産駒の最高傑作を、地方からはかのシンボリルドルフの孫でありトウカイテイオーの娘である国内産馬の奇跡をだ。
シンボリルドルフの傑作とサンデーサイレンスの傑作、日本競馬を語る上では外せない二つの血がこのロンシャンでしのぎを削ろうというのだからこれで興奮しない競馬ファンはいないだろう。
これでもし、それこそトップを争う好走を2頭がしたらたまらないはずだ。皇帝の血は健在であるし、サンデーサイレンスの力もまた本物である。
夢が広がるばかりではない、現実的にも実りあるレースになるのだ。次の世代への期待が高まるというモノだ。
出走表にあるハリケーンラン、エレクトロキューショニストの名前にも心擽られる。
どちらの陣営もこのレースにはただならぬ様相で挑んでいるとは中堅でしかない自分たちの情報網でさえ耳に入っているくらいだ。
エレクトロキューショニストの所属するゴドルフィンなどはかなり気合が入っていると聞く。
思わず表情がにやける記者だったが、それを見た少し怪訝そうな表情をしているフランス記者の視線に気づいて自然に咳払いをする。
「周りの目が痛いですね…」
「気にすんな、俺らはやってない」
会場発表では入場者は6万人を記録しているとなっているがその中での日本人はかなり多く見られた。
詳しい発表がなければ分からないが記者の目には日本人がかなり多く見える、妙に年季の入った古いデザイン一張羅の年配の姿もちらほらとありおおよそ5分の1は日本人のようだ。
だが日本人が多い分、その中にはいささか空気が読めないか国の違いを理解していない層も居たのが現実だ。
日本の競馬場の雰囲気が抜けない者が開場と同時に走り出したのを目撃したときはこの目を疑ったものだ。
日本とフランスでは競馬場のマナーが違うというのが理解できてない、フランスでは競馬場は社交場でもあるためマナーには厳しい面があるのだ。
他にも日本では問題なくともフランスだとマナーが悪いとされる行動が散見されたせいで日本人観光客への視線はややキツイものになっている。
しかし当の日本人たちは、このフランス凱旋門賞に日本から二頭も出走するという栄誉と期待感に酔いしれていて気付いていないのが大半だ。
せめてもの救いはこのマナー違反が開場直後の開幕ダッシュなどだけで済んで落ち着いているという事だろう。
「外でも同じことやってなきゃいいんですけどねぇ…」
「怖いこと言うなよ、終わったら奮発する予定だろ。飯までこんな調子なの嫌だぜ」
「男二人で本場フランス料理フルコースですか…空気以前に寂しいっすね」
「嫌なら別にいいぞ」
「食います!本場もんなんて一生食えないですし」
「そうだろ、さてさて向こうさんはどうなってるかな?」
記者たちがこのスタンド席にいるのはレースを見るためであり、同時に馬主席を少しでも観察するためだ。
馬主に直撃取材できるほど上等な雑誌ではない自分たちは身の程をわきまえて外周から紙面作成用資料としてこの手の資料を集めておくのである。
この場所もベストなアングルではないが程よく見られる場所である。中堅どころの自分たちにはちょうどいい。
どこにでもある双眼鏡で馬主席を見れば、馬主席には最近よく見る紋付き袴のヤクザめいた初老の老人が厳つい秘書と女性記者を引き連れて入って来るところだった。
今が旬の群馬地方競馬から日本中央競馬を荒らしまわった3頭の競走馬の1頭であるホクリクダイオーの馬主、新坂三郎である。
競馬界隈ではホクリクダイオーの馬主という事で有名になり始めたばかりだが、軍事界隈からは『レイテの怪鳥』などとも呼ばれて知名度は以前からあったようだ。
軍事関連は専門外のため触り程度にしか知らないが昔の海戦で大暴れをして乗っていた空母を守り切り終戦まで生き残った事からそう呼ばれているようだ。
その後ろに控えるのは秘書の武村という男で、女性記者は某大手競馬雑誌の稲波だ。
ルベルとハーツクライの群馬訪問からすっかり群馬関連の仕事を任されるようになった業界記者期待の新星である。
「ヤクザだな…」
「ヤクザですね、あの変態がインテリヤクザに見えますよ」
真っ当な会社の全うな社長で完璧な堅気のはずなのだが絵面はどう見ても古き良きジャパニーズヤクザそのもの。
妙な恰好なんてしていないレディスーツの稲波でさえ、その雰囲気を背後にしたらやり手の女性秘書に見えてしまう。
映画から出てきたようなヤクザの登場に馬主席に座っていたフランス人やイギリス人などがやや目を見開いているが、そこは凱旋門賞に馬を出すような馬主の貫禄で見事に耐えていた。
「さすがフランス。ヤクザの登場程度じゃ顔色一つ変えませんね」
「本物じゃないけどな。あんな雰囲気どうやって出せるのか聞いてみたいぜ」
「それ面白そうですね、帰ったら編集長に提案してみません?」
「うーん…ま、やってみっか」
うまくいけば群馬地方競馬に伝手ができる、話題の群馬地方競馬に伝手を作れるのは中堅どころとはいえ所詮は木っ端雑誌な本誌には大きい。
「おい見ろ、隣にいるの」
「ついに競馬にまで手を伸ばしたか」
「新坂の社長の隣にいるのは噂のTERAグループの連中か」
新坂頼信が案内されて座ったすぐ横には、この場にそぐわない初々しさがある馬主が目を白黒させて新坂を見ては周囲に目をやっている。
初老に差し掛かったその男性馬主は周囲に助けを求めているようだが、周囲は困った表情を浮かべて反応しない。
嫌われているような雰囲気ではないので単純に手出しし辛いのだろう、運が悪かったのだ。
「すげーよな、馬主になってそう長くないのに末席とはいえもう凱旋門賞とか。俺もあやかりたいねぇ」
「どうでしょう…急成長には裏があるとも聞きますよ?あの会社」
「会社の話だろ?馬とは違う」
「でもあそこの馬、会社の専属医師がついてるって話じゃないっすか?そいつ評判悪いらしいっすよ?確から、ら…ラザニアベルーガ?」
「評判云々なら日本も負けてねーだろ。あのヤベー黒いの、群馬に根を張ってやがったし」
「…まぁあの人は違法なことはしませんから、違法なことは」
「目を見て喋れ、な?」
日本が誇る最高の獣医の成れの果てであるドクター、競馬の世界でもそのとんでもない扱いにくさという悪名と腕前は無駄に良いという偉業は轟いているのだ。
中央競馬界ではその扱いにくさゆえに敬遠されていたし獣医の世界でも腫物扱いされていたのに、気付けば群馬内で獣医としてすっかり定着していたのだから世の中は解らないものである。
「そ、それよりすごいですね今回も、みんな世界の新進気鋭や精鋭ばかりっすよ!こりゃ外野を取材してるだけでもいい記事になりますねぇ!」
「まったく…まぁ俺らみたいな雑誌にゃそれくらいがちょうどいいのも確かか。せいぜいおこぼれ貰おうや」
「そうですね、そろそろパドックが終わるでしょうから…あれ?」
自分達が担当していないパドックが終わり、凱旋門賞を走る馬たちが厩務員たちに引かれて次々と入って来る。
その中の目当ての馬の一頭、二人の年老いた日本人男性に綱を引かれて大人しく入って来るホクリクダイオーの姿に会場の日本勢、とりわけ年季の入ったベテランたちが大きくどよめく。
それはその馬がかの帝王の生き写しであり、長きにわたって夢に見て実現しえなかった奇跡を目の当たりにしているからだろう。
だがしかし、記者の目はそれ以外の者を見つけてしまい目が離せなかった。冗談だと思いたかった、だがしかし、この場所であえてそれをしたという事なのだから、そうなのだろう。
「…冗談キツイぜ。群馬ってやつはどこまで俺たちの予想を超えてきやがるってんだ」
心の底ではどこか甘く見ていた、これはどう記事にすりゃいいんだ。
◆◆◆◆◆◆
ガチャリ、静かな厩舎の中で音が響く。音のしたほうに彼が目を向けると、壁際の出っ張りにおいていたプラスチックケースが落ちて、中に収められていた蹄鉄用の釘が散らばっているのが見えた。
一つ一つ釘を手にとって箱に収めようとして、ふと掌にある釘が群馬から持ってきたものだと気づいた。
どこにでもある蹄鉄用の釘だ、中央競馬のGⅠ馬が使うような高級品などではない。
一束いくらで売られている程度の代物、それなのに場違いにもこのロンシャン競馬場の厩舎にある。
「随分と遠い所に来ちまったな、こいつらも」
「何ボケたこと抜かしてやがる、じじくせぇな」
騎手服姿で愛馬のチェックに来ていた新坂頼信がどこか呆れたような口ぶりなのを、彼は釘を入れた箱を元の場所に戻して小さく笑って受け入れた。
「俺は立派な爺だよ、なぁ?テメェら」
「そだそだ、だからこのしわくちゃ爺をいたわってくれんかい?」
「坊主、そういうならもうちょい加減しろや。この年で海外遠征はつらいぜ?」
「あーたたた、こしがー」
「ひひーん、ふひひーん」
「こらこらマネしちゃいけません」
ホクリクダイオーを世話し、フランス凱旋門賞に挑むために帯同してきた年配の厩務員や調教師たちが次々とおどけて笑う。
全員がしわだらけの老人だ、よぼよぼとした弱々しさはないまでも行動の節々には老いを隠せない。
しかしそれでも彼らの目には一端の光が、その奥に燃え盛る命の輝きがある、何かを成さんとする意志がある。
その燃える炎は彼自身も自覚していた、去年まで忘れていた昔の自分が心の中で燃やして夢に向けて中津競馬場で邁進していたころと同じだった。
(俺はまだ終われねぇんだ、まだ俺達は…)
いつからか忘れていた思いだった。まだ中津の競馬は終わっていない、まだ6月1日を迎えていない。
あの日、あの時、あの時代、中津競馬場の最後を迎えたあの時から、自分の時間はずっと止まったままだ。
満足のいく形でせめて最後のあだ花を咲かせることすらできないまま唐突にすべてを取り上げられて、荒むことすら考えられないままあの時の自分たちは四方に散り、自分は群馬に流れた。
感じた怒りも憎しみも長い時の中で燻り風化して、じりじりと自分をあぶり続けるナニカも次第に慣れて考えることも無くなってしまった。
そこでただ生きるために馬の世話をして、機械的に生きて、そして自分は新坂三郎に拾われた。
どうしようもなく腐ることもできないときの止まった自分に何かを彼が見出していたのか、それともただ見ていられなかっただけなのか、真意はわからない。
それからは新坂三郎が所有する馬の世話を引き受け続けて、勝って負けてを繰り返しながら惰性で生きて、でも何かが着実に変わっていった。
そんな折、彼の息子でどうしようもないチンピラだった頼信をも任された。仕事でうまくいかずぶらぶらし始めたチンピラ、こいつを地方騎手にして腰を据わらせてくれと。
無理だろうと思いながらも馬主の三郎に逆らえず仕方なく付き合ううちにその不甲斐ないにしても、挑戦心とガッツだけはあった頼信の姿にやっと心が動いたのだ。
昔の新坂頼信は確かにチンピラだった、それも仕事で失敗して色々不貞腐れたチンピラだった。そんな彼だが止まることはしなかった。
失敗して失敗して失敗して、泣いて喚いて言い訳ばかり、同期に負けて悔しがって突っかかって、それでも止まることはなかった、前に進もうと足掻いていた。そんな次を望む姿が自分はたまらなかった。
時間が止まってしまった自分たちにはない光がそこにはあった、自分達が望んで仕方なかった『次』への僅かな道が見えていた。
だから手を貸した、力を貸した、手助けして世話を焼いて悪い事したら頭をひっぱたいて、気付けば自分たちの時もまた動き出していた。
「なら勝ってくるぜ、それだけのことだろ」
それがどうだ、今や群馬を代表する一端のG1騎手だ。かつての地方競馬では考えられなかった、望んでも望んでも手に入れることが叶わなかったあの頂に上り詰めた存在となった。
昔は自分たちが手を引いてやっていた若造が、道楽で買われた落ち目の姫が、今では自分たちの手を引いてここまで連れてきてくれたのだ。
まったくもって情けない、まったくもって不甲斐ない、おかしいじゃないか、こんな若造に手を引かれる老人が、こんな昔の叶いもしない我儘を未だに引き摺っているのが。
そんな馬鹿な自分のために将来を切り開きつつある若造が手を差し伸べてくれているなんておかしいじゃないか、その手はお前が未来を掴むために使うための物だろうに、こんな老害の手を引っ張るためのものではないだろうに。
「はッ、まだまだ若いな。バカヤロー、そうじゃねー」
「じゃぁなんだってんだよ?」
「口に出すようなことじゃねぇのさ、なぁ?中津の」
ホクリクダイオーの蹄鉄を叩いて確認していたがからからと笑う。かつて上山競馬で多くの馬を世話していた蹄鉄職人である彼は手慣れた手つきで蹄鉄を微調整しながらにかりと笑った。
「そうだな…だがまぁ、馬鹿なお前さんにゃぁまだ口でいわんやわからんか?」
「んだと?」
「カカカッ!!そんな風に目くじら立てるから若造なんだよ頼信坊ちゃん」
「年寄りの話はなげぇんだ、少し付き合えや」
「全く最近の若いもんは気が短くていかんねぇ?」
「腰が浮いとる、一流ならどっしり構えろ」
益田競馬場から流れてきたお調子者が、足利競馬場から流れてきた皮肉屋が、仙台競馬場の寡黙な仕事人が、いろいろな経歴を持った各々胸に何かを抱えた者達ばかりがここに集まっていた。
そういう人間たちを放っておけない三郎がそうしてしまった、情けない大人の集まりだ。だからこんな時くらいは若者にいいかっこをしたいのだ。
「爺様、あんたら全く…」
「頼信、お前が思ってるようなのはな、俺達のわがままだ。俺達が勝手に背負って勝手に背負わせてる勝手な呪いだ」
「よく世間様は祈りだなんだと綺麗事にしたがるがよ。所詮はただのわがまま、死にぞこないの戯言にすぎねぇな」
「そんなもんにお前さんらが悩む理由なんざないね、考える必要も見る必要もない。そもそもなんだ、親の因縁を子供に押し付けるなんざ恥でしかねぇだろ」
「こいつは俺達だけの問題だ、俺達で終わらせるべきもんだ、お前は運悪く居合わせちまっただけのことよ。気にする必要はねぇ、見て見ぬふりして知らぬ存ぜぬでいいのさ」
「俺達だけで背負いこんで、後生大事に墓場まで抱きかかえて、地獄の底まで持っていく、だから気にする必要なんかない」
「だからよ、お前らは楽しんで来い。馬鹿みてーに突っ走って、馬鹿らしくやりたいことやって、目一杯楽しんで馬鹿笑いしてこい。
いつも高崎でやってたじゃねぇか?いっつも4頭、勝って負けてで馬鹿笑い。お前ら4人はいっつもそうだろ?」
「どうせこいつは道楽だ、金持ちがやってるただの賭け事よ。真面目にやるのもいいがそれだけじゃつまらんわい」
「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損損ってな」
勝てるならそれでいい、だがしかし、だがしかしだ。自分たちに必要なのはそうじゃない、これは競馬で仕事だが、根本的には道楽だ。
新坂三郎という老人が自分の金で遊ぶただの道楽、ただ楽しみたいから自分たちはここまで来た、それを自分たちが楽しんで何が悪い。
勝っても負けても自分たちはただ楽しめばいい、すべてを出し切ってやり切ったと胸を張ってやればそれでいい。
言葉はいらなかった、頼信はただ頷き、踵を返してホクリクダイオーの元に駆け寄っていく。その背中は一端の騎手の風格がありながら、いつも通りのチンピラな頼信でもあった。
彼はどうしようもないチンピラだった、今もチンピラである、だが彼は新坂頼信という一本筋の通った男でもあった。
「そうだ、それでいい。お前らは俺たちのようになるな、俺達みたいな年寄りになってくれるな」
俺達の道はここで終わるが、その先にお前たちの世界はずっと広く開けているのだから。
彼はホクリクダイオーと一緒にレース場へ向かう彼の背中を見送り、かつての職場だった中津競馬場のキャップを被り直した。
仲間たちを見れば全員が一張羅のスーツ姿で思い思いの思い出の品を引っ提げていた。
それは手拭いであったり、ジャケットであったり、あるいは古びた騎手用の帽子などで、そのすべてに今は亡き競馬場の名前が記されている。
函館、仙台、上山、足利、上諏訪、春樹、益田、どれも手入れこそされているがボロボロの物ばかり。
捨てられなかった形見のようなものだ、どんな困難があってもこれだけは捨てられなくて肌身離さず持ち続けていた最後の縁だ。
それを一張羅の正装の上から被り、羽織り、身に着ける。
「ダイオーは任せるぞ、俺らは先に行くぜ」
「おうよ」
ホクリクダイオーの引き綱を担当する自分ともう一人を残して、他の関係者はみんな関係者席に向かう。自分たちが一番注目させるのだ。
「最後の確認だ。行くのか?」
厩舎から出ていく直前、厩務員の一人が声を掛けてきた、群馬地方競馬で知り合い気心しれた友人だ。その言葉は敵意一つない穏やかなモノ、これは最後の選択だ。
これは忠誠であり、仕返しであり、恩返しであり、裏切りだ。自分たちを拾ってくれた群馬地方競馬への裏切りであり、かつての職場への恩返しである。
もしここから先に行ってしまえば自分たちは後戻りすることはできない、行くところまで行くしかなくなる。その先には破滅しかまっていないとしても。
群馬地方競馬は暖かい場所であった、寄る辺を失った自分たちを迎えてくれたし自分たちの思いを否定せずに尊重してくれた場所であった。
自分達のしたいことをすべてと言わずともやらせてくれたし、それ以上に大きな夢や現実を教えてくれる場所でもあった。
誇りも希望も何もかも失い、職も金も失って家族も失いかけた自分にすべてを繋ぎ止めさせてくれた恩人たちがいる場所なのだ。
この場にいる人間たちの半分はそんな人間ばかりだ、職場を失っていく場所もない所を拾われた者達ばかりだ。
それを自ら捨てる、本当は間違ったことなのだ、本当ならば心の底に押し込めて封印してしまうべき衝動であったはずなのだ。
「俺たちはずっと待ち望んできたんだ、ずっと、ずっと、この時を。あいつらと一緒にここにたどり着きたかったんだ」
「儂らは本当なら互いに顔つき合わせて戦うはずだった、ここを目指して戦うはずだった。だがそうはならんかった、そこまでなれなかったのさ」
「私たちの知る時代は、世界は、もうどこにもありゃしない。もうとうの昔の過去のもんだ」
「俺たちに残されたのはこいつらだけさ、不思議なこともあったもんだ」
それでも自分たちはここまで来た、来られてしまった、それがどれだけ奇跡的な事か、どれだけ待ち望んでいたことか。
だからやるのだ、戦うのだ、消えていった地方競馬の力を、残された自分たちの技術を、力を合わせてこの戦いに挑むのだ。
「そうかい。行ってこい、馬鹿野郎ども。後悔は残すなよ」
「解ってるとも」
全員で見せつけてやるつもりだった、今回だけは恩知らずと言われてもやめるつもりはない。今は亡き故郷に最後の恩返しをするつもりだった。
やるならド派手にかまして散ってやろう、堂々と世界に見せつけてやろう、世界の歴史に刻んでやろう。
このために自分たちは最後のすべてを賭けてきた、何もかも注ぎ込んでやってきた。
ここしかないと思ったからだ、あの怪物の意見も受け入れて普通ならあり得ない練習も全部試して、行ける所まで突っ走るために。
(やるだけやった、やり残しはもうないよな?なぁ、あったら教えてくれよ)
心の中だけで問いかける、かつての恩師、かつての先輩、そして率いてきたかつての部下や後輩に教え子たち。
もうここには自分達しかいなかった、隣にはみんな誰も居なかった、同期も先輩も後輩も誰一人いなかった、自分一人だけがここまでやってきてしまった。
空しかった、悲しかった、寂しかった、こんな場所に辿り着きたくはなかった。
憧れた場所に、気心知れた仲間たちと一緒に辿り着きたかった、もっと若い時に生形と一緒に来たかったのに、なぜこんな風になってしまったのか。
中央と地方、それだけでこうも変わってしまったのか。自分たちには実力がなかったからか、時代が悪かったのか、思い当たる節はそれこそ無数にある。
自分達には力がなかった、チャンスがなかった、立場がなかった、出会いがなかった、どこまで手を伸ばして背伸びしても届かなかったのだ。
「行こうか、ダイオー。長話に付き合わせて悪かったな」
きっと自分たちが何をやっているかも理解できていないに違いない、ただただ待たせてしまったホクリクダイオーの頭を撫でて謝り、彼は手綱を握り締めた。
手綱が重い、彼はふと手に握ったホクリクダイオーを引く手綱を見た。
何本も、何本も、自分の手から伸びる手綱が見えた気がした。自分の手に絡みついて離れない、自分の手を雁字搦めにした無数の手綱、それを彼はすべて覚えていた。
本当なら連れてきたかった、一緒にここまで走ってきたかった、走らせてあげられなかった、かつて手塩にかけた名馬たちに繋がる手綱だ。
忘れるわけがない、一本一本がどこの誰に繋がっているのか今でも鮮明に覚えているのだ。
自分に絡みつくその手綱に、自分を引き込まんとばかりに感じる重さに、彼はひどく安心した。
(あぁ…ずっと一緒にいてくれたのか…)
ずっと不甲斐ない姿を見せてしまったな、ずっと心配をかけてしまったな、
すでに手綱の先には皆にはいない、けれどもずっと共にある。魂だけでも連れてこられたのだ、そう思えた。
「どうした?」
声を掛けられて向かい側を見ると、上山のジャケットを被った蹄鉄職人がこちらを見て怪訝そうにしていた。
手元を見る、一本の手綱しかない。その手綱を握り直して、彼は何でもないと首を横に振った。
「行こうか、パドックの時間だ」
自分たちはたどり着いた、フランスに、フランス凱旋門賞に、このロンシャン競馬場に実力を示しに来た。
時代も、世代も、何もかも自分たちが待ち望んだ世界はそこにはなかった。迎えてくれたのは変わらぬ空気と大地だけ。
それでも自分たちはここに立った、凱旋門賞の舞台に立ったのだ。
◆◆◆◆◆◆
「はっはっは!野郎ども、まったく面白いことしやがるぜ」
ロンシャン競馬場、パドックを一望できる馬主席。その一つに腰かけていたホクリクダイオーの馬主、新坂三郎は愉快気に笑い声をあげる。
目の前のパドックで今まさに自分の馬が回っている、その周りにいる信頼してきた厩務員たちがかつての職場のジャケットを着て手綱を引いている。
それだけではない、関係者席で取材をしているカメラマンからも報告があり、そこにも廃止や閉鎖した地方競馬場の帽子や手拭いを持った老齢の調教師たちが現れているというのだ。
それを見て目を見開く日本中央競馬の関係者、その反応に面白がったフランス競馬関係者に問いかけられては拙いフランス語で答えて愕然とさせているらしい。
当然目に入ると思っていたのに馬主はまさかの大笑い、その声にまさにあっけにとられた稲波は信じられないといった口ぶりで新坂に問いかけた。
「止めなくていいんですか?新坂さん」
「うん?なんで止めるんだ?そんな必要ねぇな。あいつらは自分のすべきことをした、ただそれだけのことよ。
それがどうした?この程度が群馬への、俺への裏切りか?」
挑戦的に、挑発的に、そして思い切り悪どく顔をしわくちゃに歪めて『ヤクザ者』の顔をした新坂三郎は高笑いしてみせた。
「バカぁいうんじゃねーや、これくらい何の問題もありゃしねぇ。マナーなんたら言ったって、ただジャンパー着てるだけじゃねーか」
どこがですか、稲波は普段らしからぬムスッとした気持だった。
ここで群馬地方競馬の何かしらを宣伝するというならまだわかる、だが今は無い地方競馬のそれを身に着けてくるというのは違うのではないか。
特にブーイングなどはなく好意的に周囲は見ていたとはいえ、もしまかり間違って悪感情を持たれていたらどうするというのか。
これが裏切りじゃなかったら何だというのだ、そう問いかけようとして稲波は新坂のほうを見て息を呑んだ。
「俺はな、見てきたんだよ。ずっとずっと、ああいう馬鹿野郎どもを、あんなふうにならなくてよかった連中の後姿をさ」
第2次大戦では真珠湾から終戦まで、ずっと最前線を見てきた生き残りの顔に稲波の背筋は思わず凍った。
これまで多くの馬主の顔を見てきた、多くの金持ちの顔を見てきた、だがその中でもひときわ際立つ『戦場帰り』の貌。
あの西竹一ですらしなかった『人殺し』であり『軍人』であり『死に損ないの残党』と言うにふさわしい凄惨な言葉にできない表情がそこにはあった。
「ミッドウェーじゃ空母がボカボカやられてこりゃダメだって思ったもんさ、事実そうなっちまったしな。
赤城も蒼龍も俺の加賀も、最後は飛龍も沈んじまって、その後はグダグダと戦争が長引いてよ。ただのパイロットだってこりゃあかんと肌で感じたもんさ。
しかもズルズルと惰性の戦争なんかしやがってレイテで瑞鶴を囮にまでしやがった、あいつら自分がどんな戦争してたか忘れてんのかって話だ。
しかも作戦の要の大和が日和りかけてたとかほんと何考えてんだ、俺らが囮してる理由忘れてんじゃねーって話だぜ。
挙句の果てには特攻だ。特別攻撃隊ってのは糞みてぇな高難度任務をやる変態共って意味だったのに、いつしか自爆突撃の代名詞よ。
真珠湾で雷撃やったあの変態共が浮かばれん、あんな狭くて浅い湾内で航空雷撃なんざやれっていう上も上だったがな」
思えばそんな無茶ぶりをやらかす思考回路だったからこそあんな滅茶苦茶な論理も狂気が極まってやってしまったのかもしれないが、と茶化すように彼は笑う。
しかし稲波は全く笑う気なんて起きなかった、三郎の笑みは文字通り目が笑っていなかった。顔だけが笑い、目つきはどこまでも冷え切っていて乖離が酷すぎて言葉にならない。
「鍛えりゃそれなりに出来そうな若い連中が爆弾抱えて片道で突っ込むなんざ軍の作戦じゃねぇよ。
そんな奴らに飛ばせたところで落ちるだけだってのに、考えてみりゃ意味がねぇってのにどいつもこいつも決定事項だの一点張りよ。
鍛え上げたベテランだってボカボカ落ちる弾幕に若造共が死ぬ気で突っ込めば突破できるなんて奇跡でしかねぇってのにな。
それが理解できたと思ったら今度は一トン爆弾仕込んだロケット機に人乗せて突っ込ませますときたもんだ。
俺は今でも理解できんよ、どういう思考回路すりゃああなるんだ、むしろワザとか?対艦ミサイル作るために人間を部品にしちまいやがった」
心底呪ったよ、こんな戦争をおっぱじめやがった馬鹿どもも、それで気が狂っても気づかないバカ共も、全部全部呪ったよ。
そういう三郎は、それでも戦うしかなかった。生き残るには戦うしかなくて、彼にだって故郷で待っている家族がいて、死ぬわけにはいかなかった。
「戦果なんて俺が見た限り一回だけ、最後の攻撃くらいだ。ロケット技師を目指してた若い兄ちゃんが桜花に乗って突っ込むのを見届けたとき、それだけさ。
あれも酷い戦だった、真珠湾からは考えられない参加者全員に死ねって言ってきたような作戦だ。
桜花を乗せた一式陸攻に護衛戦闘機、桜花のせいでまともに逃げられん陸攻に最後まで付いて来れる零戦が足りなくて半分が紫電ときた。
敵空母艦隊目前にゃ護衛が自然と半分になってる計算さ、紫電は零戦より航続距離が短くて最後まで付いてくると帰れなくなっちまうからな。
まぁ、紫電の連中は帰れなくなるのを知ってて最後まで一緒に来てくれたがね。
字面じゃ作戦は成功だ、珍しく空母も沈めて大戦果さ。だがみんな死んだ、どっちも死んだ、広島のあの日だったなぁ確か。
生き残ったのは俺含めて護衛の零戦3機だけ、帰れたのなんか2機だ。俺も鳳翔が近場に居なきゃ海の藻屑だったろうよ。
みーんな死んじまった。狂ってたのさ、敵も味方もみんなみんな、あの時代は狂ってやがった」
それは第二次世界大戦末期の8月6日、日本海軍最後の戦果でありアメリカでは『TF58の悪夢』と語り継がれるエンタープライズ撃沈のことだろう。
日本軍の徹底した持久戦で長引く沖縄を巡る戦いを援護するために佐世保港空襲を企てたTF58の完敗である。
構成艦船のほとんどは日本側の攻撃によって撃沈され、僅かな生存艦と救助された負傷兵は佐世保港に収容された。
その主力であり要のヨークタウン級航空母艦『エンタープライズ』は新坂が守った特攻部隊から放たれた桜花によって撃沈されたのだ。
公式記録では一発の直撃で大破し炎上、得意のダメージコントロールもままならないまま佐世保空襲のために過積載されており格納庫にも散乱していた陸用爆弾に引火し轟沈している。
確かに目的は果たしていたかもしれない、だがその結果があの様だった。そういう時代だったのだ、そうだとしても、余りにも悲惨な記憶が積み重なっていた。
「解るかい、稲波さん。俺は見てきたんだよ、ずっと、ずっと、見てきたんだよ、ずっと見送ってきたんだよ、何度も何度も、いつも死ぬ準備はできていたのにな。
ずっと生き残っちまってよ、持て余しちまってよ、だから気に食わねぇアメリカで一旗揚げてやろうと思ったら大成功しちまったのさ」
何度死にたいと思ったのだろう、何度終わらせたいと願ってきたのだろう。だが彼は生き残ってしまった、だからここまで生きて生きて生きながらえてきた。
「あいつ等だって同じだ、ずっとずっと捨てられない何かを抱えて今まで生きながらえてきたんだよ。解るんだ、辛ぇんだ、ああいうのはな、重てぇんだ」
「ですが…」
「稲波さんよ、あいつらは確かにバカ共さ。昔に固執した老害で年喰った年寄り連中、昔のようにはいかねぇしなんもかんも時代遅れで古臭いもんばっか引き摺っちまってる」
でも、それでも彼らはそれを捨てなかった。捨てられなかった。それがどれだけ重く自分を傷つける毒物であっても大切にずっと抱えてきた。
大切だから、捨てたくないから、間違いではないのだから。友のために、先輩のために、後輩のために、理由はいくらでもあって、それが全て一緒くたになっても彼らは背負い続けた。
「連中は強いんだ、連中はみんな背負わされて、ずっとずっと今の今まで引っ張ってきちまったんだ。
自分達と一緒に勇敢に立ち向かって敗れていった仲間の全てを背負って、破滅にも恐れず立ち向かって倒れていった勇敢な連中の無念を背負って生き地獄をずっと見てきたんだよ。
叶いっこない夢抱えて、残酷な現実に何度も何度も足掬われて足蹴にされて、何度も地べたに這いつくばってそれでも立ち上がってきてんだよ」
きっと見てきたのだろう、ずっと見てきたのだろう、ずっと見上げてきたのだろう。
地方競馬の停滞と衰退を、中央競馬の躍進と栄光を、そしてその時代を駆け抜けてきた名馬達や名騎手達の活躍を。
その長く苦しい時間を、厳しすぎる残酷な時間を、彼らは耐えて忍んだ。そして彼らは奇跡を掴んだ。
彼らはついに運命に出会い、現実に振り回され、それでも持ちうる全てを投げうち死に物狂いでやっとここまで辿り着いたのだ。
想像などできなかった、ただ感じることしかできなかった、稲波には三郎の言っていることが何一つ理解できなかった。
ただそこにある凄惨な現実がそれを語り、その事実を成功の道を辿ってきた若輩の自分にまざまざと見せつけていたのだ。
「稲波さん、あんたが言うバカな行為はな。あいつらの夢だ、手の届かなかった憧れの姿なんだ。
今やっとその憧れに手がかすったんだ、やっとだ、止める理由は俺にはねぇな。武村ッ」
「はっ」
いつも従えている精悍な中年男性秘書が、いつものようにきびきびとした仕草で三郎に向きなおる。
だがその顔色は普段の彼とは違った、それは覚悟した男の顔で、それでいて三郎のことを憂う目で見つめていた。
「連中に伝えろ、存分にやれとな!!ケツは全部俺がもってやる、存分に楽しめ、やりたいことぜーんぶやっちまってかまわん!
それから動かせるコネ全部使って手回ししろ、カメラと記者に情報を流しまくれ!あのバカがやりやがったってな!!」
「社長…本当によろしいのですね?」
「おぅよ、男に二言はねぇ。悪いな、武村。俺も覚悟が出来ちまった、付き合う必要はねぇぞ」
「ご冗談を。この粗忽者でよろしければ最後までお供させていただきたく」
「そうかい。茂三に連絡しろ、上山の連中がやらかしたってな。あそこん所の連中を引っ張り込んだのはあいつなんだ、少しは骨折ってもらうぜ。
騒がせたら詫び酒にあいつんとこの酒を関係者に配る、最高の酒を在庫全部買い占めてうちのプライベートジェットで持ってこい」
「銘柄はどうします?」
「決まってんだろ!あいつが仕込んだ馬練りだ、新酒のシャンパンみてぇな奴も全部だ。
金に糸目なんぞ付けんじゃねぇぞ!言い値で買い取れ、蔵を空にしてやれ!!」
「かしこまりました」
こんな老骨が欲しければくれてやる、散々待たせてくれた死神がやっと自分の元に来てくれたのだ。
その三郎の笑みに稲波は寒気を覚えるしかなかった。満面の笑み、死に場所を見つけて喜ぶ武人の笑み。
彼は西竹一とはまるで違った、彼が時代を生き延びた生存者ならば、彼は時代から取り残された死に場所を求める亡霊だ。
故に彼が望むのは一時の狂宴、この身全てを賭けた大博打、あとで何があろうと知ったことではない。
「やっちまえお前ら。意地を見せてやれ、お前らの本当の強さってやつを見せてやれ。
恐ろしさを思い知らせてやれ、幸運を思い知らせてやれ、あの時代にお前らがいなかったことの奇跡を噛み締めさせてやれッ」
望んでいるのは最高の勝負、一世一代の大勝負、全てを賭けて挑むことただそれのみ。
ここで倒れ朽ち果てるのもまた本望、生きて帰る事なんて、最初から考えてなんかいないのだ。
あとがき
普通の物語なら盛り上がるところなんで盛り上げまくろうとしたけど…悲報、ホクリクダイオー陣営全員死人(語弊在り)
まぁ原作ではガチでいないはずの馬がいるんで今さらですね、負けたまんまじゃ終われないのでしょう。
というわけで出走直前、群馬地方競馬の中でもヤベー覚悟ガンギマリ集団の登場です。あの皇帝の孫担当だ、群馬なんだ、まともなわけがねぇ。
四方八方から馬をかき集めて収支をやりくりしている競馬ですので当然騎手も職員もいろいろ拾ってきてたってわけですな。
この時代、廃止や休止になった地方競馬からも流入は当然あるというか逃さないはずもなく、群馬地方競馬はそれを取れるだけ取って活かし続けてきました。
まぁこれは戦後から続く伝統みたいなもんなんで群馬地方競馬じゃ当たり前なのです、バロン西というビッグネームすら許容してみせたド田舎やぞ。
戦争ネタは結局音速雷撃隊になっちまいましたがねぇ…この爺のネタで二転三転して結局元鞘になっちまった。
…とはいえ、この生き残り共は例えるならジ●ン残党軍、袖付きとかじゃなくて地球に取り残されたりした一年戦争が終わってないガンギマリなタイプ。
戦い方次第なら最新鋭機や現行機も旧型機でボコボコにできるヤベー連中、そこにチート野郎が一つまみのバイドを効かせたのがこいつら。
ここが彼らのトリントン、夏の夕暮れに誘われて中央と世界に一泡吹かすために命も未来も勝手に掛けて死にに来た。
終わりの美学を引っ提げて、勝敗度外視で死にに来た。たぶん見る人が見たらダイオーと頼信以外の背後には無数のガイコツが愉快そうに笑ってるとおもう。
唐突な覚悟ガンギマリ勢の出現にフランスの人々にはとばっちり、でも競馬ってそんなもんだよね、仕方ないね。
ちなみにTF58の悪夢は長くなったので別口で執筆中、この世界の米軍は最後でガバって地獄を見てる。
戦闘の勝敗は変わっても歴史は変わってないので問題はありません、結局レイテは負けるし沖縄も降伏するし核だって落ちます。
ただ日付が少し前後して両者が地獄に放り込まれてるだけです、せいぜい日本側が生存者増える程度ですかね。
おまけ・簡易プロフィール『新坂三郎』
群馬にてトップの国際企業『新坂重工業』の創始者にして会長を務める群馬経済の重鎮。
見た目は迫力のある厳つい爺であり、年の割に背格好が衰えていないので年齢の割には若く見られる。中身はお茶目な気のいいおじさん。
どこからどう見ても堅気には見えないためわざとヤクザスタイルでかっこつけていたらそれが普通になってしまった。
ホクリクダイオーの馬主で馬好き、ホクリクダイオーのことは大変気に入っており自ら世話をすることに何も躊躇がない。
しかし実はトウカイテイオーのファンでも何でもない、気に入った馬がトウカイテイオー産駒であっただけである。ファンは妻であった。
元戦闘機パイロットであり旧日本海軍所属で幾多の戦場を渡り歩き激戦を生き残ってきた古強者。栄枯盛衰を見つめてきた死にぞこない。
第2次世界大戦には第一航空戦隊・空母『加賀』に所属して真珠湾攻撃に参戦し、その後ミッドウェー海戦にて母艦を失うまで乗艦。
その後は各地を転戦、ソロモン諸島攻防戦、マリアナ沖海戦、レイテ沖海戦などの激戦区を転戦しながら生き延びた。
悲惨な現実や特別攻撃隊や各種特攻機、戦争で狂う両軍の凶行などの産物や作戦も目にしている
終戦を佐世保にて大破着底した空母『瑞鶴』の甲板で迎え、生き残った者達と夏の夕暮れを見つめた。
戦後は故郷の群馬に戻ってきたがアメリカに負けたのが気に食わず仕返ししたくて一念発起しあるもの全部引っ提げて経済界に飛び込み大成功を納めた。
群馬にて金属加工業を始め、様々な苦難を乗り越えて群馬有数の国際企業『新坂重工業』を設立、現在は世界各地に支店を置いた上にアメリカ経済に乗り込み見事に一部を牛耳っている。
なお某零戦乗りと名前が似ているせいであったこともない彼によく間違われたため彼のことが嫌い。顔を見るのも嫌いである。
彼は生き延びた、彼は成し遂げた、しかしそれでも彼の心は満たされなかった。
なぜなら彼が求めていたものは生涯ではなく、富ではなく、仕返しではなく、死に場所だったのだから。