アニメだったらたぶんOPで閃光スピードが流れてそう…いやなんとなくそう思った。
いつも多くの感想と誤字報告、ありがとうございます。
ダイオーの腕が振り下ろされる。真横のシルビアS13のCA18が咆哮すると同時に、俺は思いっきりアスファルトを蹴りだして前に出た。
一瞬、俺が先行する。ウマ娘の体は出力に比べて非常に軽いから、スタートダッシュでの加速なら車よりも速い。
でもそれは一瞬だ、車体が加速してタイヤが地面をしっかりとらえた車が本気を出すと一気に逆転する。
普段ならそれで俺が後ろに張り付くことになるんだが…
「シマカゼが先行!S13が後ろだ!」
加速が緩んだS13の真横を一気に突き抜けて俺は前を取る。スタートダッシュは悪くない、しっかりアクセルを踏んでるし迷いもなかった。
だが最後まで踏み込まなかったな、どうやらフェイスは自分で後ろを取ることを選んだらしい。
悪くない、初心者がいきなり先行を握るのはなかなかできることじゃないんだが車でその判断はさすがだ。
相手がウマ娘なら余裕をかます新人はいるが、ほとんどの場合は俺の前を取りたがるもんだ。
「最初は様子見って所ね」
「相手がシマカゼだ、群馬トレセンの連中ならそうするだろ」
ギャラリーの声に内心で同意する。そりゃそうだ、そこらの走り屋小僧と比べたら群馬トレセンの連中はレベルが違う。
何しろ生身でも本物のレースを走った経験豊富な連中が、車でプロを目指して走ってるからな。
しかも俺の手の内も多分研究してきてるだろうしな、ここで相手の出方を無視して一気に先行を取るウマ娘はツインターボくらいだ。
後先考えないドッカンスタートの加速で一気に差をつけてからマウントを取ってゴリ押すのはあいつの得意分野だし。
もうすぐ最初のコーナー、まだ体が温まり切っていない。体を車線の真ん中からコーナー内よりにラインを取って追い抜きを阻害しながら普通に左へ曲がる。
後ろのS13も特に派手な音もなく曲がって来た、スムーズに曲がってタイヤもきれいに使ってるな。
ふぅん、俺のラインを模倣してまずは様子見、と。悪くないな、先輩の真似をするのは良いことだぞ。
いいね、仕上げてきてんじゃねぇか。体感時速は約70キロ、次のコーナー手前で一歩踏み込んで加速を入れつつ推力をそのままに空中で90度右ターン。
体を横に向けたまま着地、からの足首だけでわずかに支えながら飛んで浮く。推力を殺さないままサイドステップ、右足軸で高速タップ、左足をピッチで推力方向変換。
蹄鉄がアスファルトを擦っていいスキール音を鳴らしながら、前をまっすぐ見た状態で視界が真横に流れる。
姿勢を変えて重心を前に、推力を少しずつ前に向けて誘導、まだ、まだ…よし!
「うげぇ!?マジでか!!」
「こんな序盤でドリフトか、なんか仕掛ける気だな。運がいいな、葦毛のねーちゃん」
コーナーを曲がり切ると同時に体のクラッチを切る、一瞬の減速と同時にシフトを2速に、そして繋ぎ合わせて再加速。
そろそろいい感じに体が温まってきた、先に行かせてくれるならどんどん行かせてもらおうか。
悪いがこいつはバトルだ、勝ちにいかせてもらうぜ。
短い直線、時速75、左コーナーはインベタグリップ、次はインベタドリフト、加速しながらどんどん抜ける。
スピードは落とさない、コーナーはウマ娘特有の小回りの良さで勝負だ。いちいち速度調節してたらどうやっても車に追い付かれちまう。
時速80、S13との距離が開く。うまく踏み込めていないのかS13のエンジンが不機嫌な音を立ててる、俺の加速についてこれなくてラインを見失ったか。
「初っ端から飛ばしてやがる、このまま逃げ切る気か?」
「シマカゼに先を譲ったのが仇になったな。だがそれじゃ終わらねぇだろ、加速してるぞ」
よく見てやがる。ウマ娘の聴覚だからフェイスがS13のシフトを2速に入れた音が聞こえた、加速して追いついてくる気だな。
次の左コーナーをインベタドリフトで一気に曲がり切って一度距離を稼ぐ、そのまま加速して速度を取る。
あっちもそろそろ最初の勝負を仕掛ける気に違いない。時速86、次のコーナーを抜ければ次はゆるい左曲がりの直線高速セクション、自動車の独壇場だ。
この世界でもここの車間は広くてウマ娘の体じゃどこを走っても脇を抜けられちまう、加速勝負じゃ全く話にならんからな。
だからここで一度仕掛ける、俺とチキンレースをしてもらおうか。
「二人ともさらに加速!」
「次の直線で張り合うつもりだ!」
コーナーで計測を務めていた群馬トレセン学園生が叫ぶ。まったくもってその通り、最初の仕掛け所にさせてもらうよ。
直線前の左コーナーに入る、インベタではなくアウトラインをとって遠心力も推力に変えて一気に加速。
時速87、目の前にオールクリアの直線、一気に踏み込んで加速、坂道を一気に駆け下りながらぐんぐんと速度を稼いでいく。
後ろでS13のエンジンが吠えた、あっちもアクセルを一気に踏んだ。良い踏み込みだ、迷いなくエンジンが吠えてるのがわかる。
時速90、あっちはもう俺を超えた、じりじりと詰め寄ってくる。時速93、もう真後ろ、そして横に並んでくる。
さすがトレセン生徒だ、ナイターレースで坂道は履修済みなだけはある。もう慣れてきやがったな、この暗さに。
「今日の奴は根性あるな、あのシマカゼ相手に張り合うのかよ」
「さすが群馬トレセン生、根性が違う」
直線中盤、もう少しで初見殺しのブラインド右折コーナー。ここの事はフェイスももう知ってるから事故るなんてことはないだろう。
でも問題はどうやってここを曲がり切るか、だ。手加減はしない、そっちが舐めてこなかったようにこっちも舐めたりなんかしない。
俺も今見せられる最高の走りで曲がり切ってみせるさ。体感速度時速96、限界が近い、110以上はスタミナを多く食われて下まで持たない。
S13がゆっくりと前に出る、もう少しでコーナー、勝負所まであとわずか。
「フェイス先行!!」
完全に前に出られた、斜め前を先行するS13の後姿を見ながら俺は思い切り踏み込むがまだ離される。
時速100、まだ車間が開くのが止まらない。やはり加速では勝てない、フェイスじゃなけりゃここで千切られてる。
峠初挑戦のフェイスはまだアクセルを踏み切れてない、あくまで初心者にしてはよくできてるがまだまだ甘い。
ケンタでも繊細に深く踏み込んでもっと速度を上げてくる、高橋兄弟や中里ならとっくに千切られてる。
ここら辺が勝負どころか、そう思った瞬間、S13の運転席に耳慣れた速度超過のアラーム音が鳴ったと同時にS13が減速した。
ただの減速じゃない、あくまで曲がる為、次のコーナーはブレーキングドリフトで対応するつもりだな。タイミングは悪くはない。
「踏み込み過ぎだな」
フェイスに教えるつもりで呟きながら真っ赤に光るS13のテールライトが残す残像を追い越して抜き返す。
ブレーキが強すぎて速度が落ちすぎている、おそらく80前後、うまく曲がれはするだろうがフェイスの腕では立ち上がりで俺の走りについてこれない。
現にブレーキを踏んだS13とほぼ減速無しで走る俺との差がこの一瞬で10メートルは開いている。
トレセンのS13ならうまい奴が使えば一瞬の減速から4輪ドリフトに入って対応できるはずだ。
ここは俺の勝ちだ、俺の走りをよく見ておけ、S13でもできるはずだ。
前に出た俺は限界ぎりぎりまで加速してラインを選ぶ、行くのは右折カーブの最短距離、インベタのラインに乗ってドリフト走行。
速度そのまま、コーナーに入る少し前に踏み込んでブレーキング、次でわずかに体を浮かせ尻を外に流してカウンターを取りつつ、荷重移動でバランスを取りながらそのまま突っ込む。
壁に5センチくらいまで顔面も含めて幅寄せしながら一気に体を滑らせながら曲がる。一歩間違えば顔面を削られて二度と人前に出られない顔の完成だ。運が良ければだが。
そんなミスはそうそうしないがな、体が前に進み始めると同時にカーブが終わる。さらに加速、最短コースを立ち上がりながらさらに距離を稼ぐ。
時速103あたり、次のコーナーにもこのまま突っ込む。このまま逃げ切っちまうか、一瞬そう思いながら後ろを少し振り返ったらその考えは消えた。
S13がドリフトから立ち上がって一気にスピードを上げているのが見えた、まだ勝負は終わっちゃいないってわけだ。
◆◆◆◆◆◆
ウマ娘として生まれたからには、どんなウマ娘にも一度はやってみたことがある。目指してみたことがある。
それは一番身近な強くて速い自動車に挑むこと、そして己の足で追い越してみせること。
ビワハヤヒデ自身もそれに覚えがある、子供の頃は飽きもせず妹のナリタブライアンと走り回っては無茶な勝負をしたものだ。
子供のやることだ、無邪気で無謀な子供の夢だ。そして年を重ねれば無謀だと気付いて辞めるのだ。
ウマ娘の足は自動車に勝てない、ただ街中を走行する車を追い抜くことはできるだろう。
本格的にレースを走るウマ娘であれば張り合うことも僅かならばできる、全身全霊の全力疾走で後先考えない走りで車と張り合うことも可能といえば可能だ。
ただしそれはほとんどの場合、自らの足を痛めつけるだけで足の寿命をただむやみに削るだけの愚かな行為でしかない。
人間のような体で時速60キロを超える速さで走るウマ娘の足にかかる負担はあまりにも大きい、それこそ走るだけで足に大きな負担になるくらいだ。
走りすぎただけで足の骨にひびが入る、筋肉が炎症を起こす、悪化して屈腱炎や筋靱帯炎を発症するなど、ウマ娘を取り巻く怪我は実に多い。
ウマ娘の体はいまだに謎が多く、強靭であるが実に繊細にできているその体は時にはレースの中で限界を超えて自壊する例すらある。
(だから普通はやらない、子供の時の他愛もない思い出話のはずなんだ)
その最たる例がビワハヤヒデの知り合いにいる。彼女はあるレース中に左足を負傷した。
今でこそ復帰した彼女は元気で走り回っているが、あの現場に居合わせた人々の肝は冷えただろう。
彼女の左足は原因不明の粉砕骨折、それがレース真っ最中で先頭を逃げる彼女に襲い掛かったのだ。
全力で走る彼女が負傷でバランスを崩し転倒しなかったのは、運と現場で即座に判断したトレーナーとチームメイトたちのファインプレーがあったからだと言われている。
レースを勝つために体を整え、最高のレースをするために万全を期したレース場を用いて行っていてもそれがある。
時にはそれで選手生命を終えて引退することも当たり前だ。治ってもケガの前の走りができず成績を落とし、それをリカバリーできないウマ娘は多い。
或いは治ったはずの怪我が再発する、という例もある。筋靱帯炎や屈腱炎などといった症例に多く見られるが、骨折なども同様だ。
(だから普通はあり得ない、あってはいけないはずなんだ、足が壊れてしまうだけのはずだ)
だから公道で車に真っ向勝負を挑むなんてことをするウマ娘なんて無邪気な子供だけだ、子供の遊びでしかないはずなのだ。
「シマカゼ先行!フェイスがしくじった!!」
「何キロで走ってた!?」
誰にでもある子供の頃の楽しい思い出、そうあるべきだ、そのはずなのだ、だが目の前のコレはなんだ?
機材にかじりついてS13から送られてくるデータを読み上げる記録係の悲鳴のような言葉に周囲がどよめく。
直線からコーナーに入る前、グッドフェイスの乗るS13は確かにブレーキを踏んで減速した。
これは曲がるために必要なことだ、その証拠にS13はすぐにドリフト走行に移りコーナーに突入して見事に曲がり切っている。
その次のコーナーも勢いに乗ったままのドリフトで抜けた、見事なドライビングテクニックというしかない。
だがシマカゼタービンがやったことはなんだ?ビワハヤヒデは幻覚でも見ていたと本気で信じたがっている自分に愕然としながらもなんとか正気を保とうと大きく息を吐いた。
シマカゼタービンのやったことは単純だ、車が減速するその横をそのままの速度で追い抜いて、速度を殺さないままコーナーに突っ込んだのだ。
それはただの自殺行為でしかない、そうとしか見えないのにシマカゼタービンは苦も無くコーナーをクリアしてS13を置き去りにしていった。
そして今も苦も無く峠道を走り続けている、計測されている平均速度は時速90キロほど、だが現在の速度はそれを超えている。
レース場のようなバックアップもなく、コンディションも全く整えられておらず、夜間で視界も悪い上に街灯すらも少ない峠の下りを臆することなくスポーツカーと張り合ってレースを続けている。
「ありえん、ばかな、なんだこれは…」
ウマ娘はそんな速度で走れないはずだ、そんな速度で走れば足が悲鳴を上げてしまうはずだ、なのにシマカゼタービンは走っている。
楽しそうに、全く苦でもないとでもいうように本当にレースを楽しみながら走っている姿が画面には映っている。
時速90キロで走るだけでも彼女の足には大きな負担がかかっているはずなのに、インベタグリップ走行やドリフト走行といった信じられない奇特な走りが掛ける負担なんて半端なモノではないだろうに。
言葉にならない光景だった、あまりにも現実離れした光景だった、何より周囲の空気があまりにもおかしかった。
「S13、コーナー突入時は時速80!!」
「前!」
「104!」
「いきなり3桁なのぉ!?」
「飛ばしてるね!こりゃ面白くなってきた!!」
その異様なレースの光景を見て、群馬トレセン学園の生徒たちは驚くことはあれど受け入れてレースを楽しんでいた。
S13を運転するグッドフェイスに声援を送る者、またはシマカゼタービンに応援を送る者、どちらもレース場ではよく見る観客のそれだ。
そしてコーナーのたびに聞こえるどよめき、そこで見せた走りに対する考察もまた同じ。だが、目の前で行われているレースが異常すぎる。
それがまるで日常で、それが普通だと言わんばかりの光景で、ビワハヤヒデはクラリと頭がふらつくように感じた。
「どう?タービンのバトルは。楽しんでる?」
「ホクリクダイオー…これは一体何なんだ?」
「峠バトルの亜種かな?ここじゃ普通だよ、少なくとも芦名じゃ普通かな。僕もたまにやるし」
単身じゃ全戦全敗で勝ったことないけどね、体力持たないし。と苦笑いしながら頭をかくホクリクダイオーにビワハヤヒデの脳みそはすでに現実逃避寸前だった。
自分の中にある正常な何かがガリガリ削られていく感覚に意識を手放しそうになりながら、ビワハヤヒデは何とか質問を口にした。
「恐ろしくはないのか?」
「怖いっちゃ怖いけど、それ含めて楽しいよ?」
「なんて奴らだ…いったい、いま彼女は何をした。まるで理解できなかった…」
「単純だよ、フェイスはブレーキングドリフトでタービンはノンブレーキインベタドリフト、あのコーナーではタービンのほうが早かったんだよ」
「ノンブレーキ?まさか減速しないまま曲がり切ったとでもいうのか?いや、でも、たしかに…」
「正確には減速してるらしいよ?タービン曰く。こればかりは僕たちも全く理解できないけど」
一体どこで減速をしたというのか、ビワハヤヒデは自身の目と感性を以ってしても理解できない彼女の走りに頭を振るしかなかった。
シマカゼタービンとグッドフェイスの速度は直線での競り合いで乗りに乗っていた。
そもそも下り坂とはいえ本気でエンジンを吹かすスポーツカーと競り合いをする?そこから追い抜きをかけて成功させる?
しかも体を擦り下ろされても不思議ではないほどにコーナーの際の際に迫りながら、走りながら滑っているとしか言えないドリフト走行で抜けていった。
そもそもスポーツカーと生身のウマ娘が併走し張り合うなんてどんな状況だ、どんなレースだ、やるほうもやられるほうも頭がいかれているとしか思えない。
言葉にならない、言葉にできない、ビワハヤヒデは自分の経験則や方程式というものが無残に崩れ落ちるような感覚を覚えて身震いした。
(…あぁ、ブライアンはこれを感じてしまったのか)
それは武者震いだった、胸の中で懐かしい熱さが蘇ってくる、年月を経て理論や経験に裏打ちされて埋もれていた初々しい感情だ。
自分の中にある勝利への方程式、理詰めの理論、あらゆるものを使っても理解しえないそのウマ娘。
それはフィクションではなく目の前にいる、今そこで走っている。常識外れの限界を塗り替えたウマ娘がそこにいる。
ウマ娘の本能か、己の矜持と競争ウマ娘としてのプライドか。それともどちらも刺激されてしまったのか。
(今の私は彼女に勝てるか?)
そう自分に問いかける。答えは簡単だ、解らない。シマカゼタービンの実力は芝のコースであっても健在であると妹自身が証明している。
馬鹿げた話だ、実に不可解な話だ、自分は誰だ?自分はビワハヤヒデだ。
日本ウマ娘トレーニングセンターに在学し、日本中のウマ娘たちの中から篩に掛けられて、ライバルたちと競い合い切磋琢磨しながら上り詰めてここまでやってきた。
最高の教育と訓練を受け、トゥインクルシリーズという実戦に出走して国内最高峰のGⅠレースで戦い抜いてきた。
自画自賛は趣味ではない、しかし実力は確かなモノだと胸を張って言える。それがどうしたことだ、地方トレセン学園にすら通っていないウマ娘に『解らない』と断言できてしまうのだ。
堂々と勝てると言える、そう言えて当然の相手であるべきなのに、あの走りを見せつけられてしまってはそんな風に考えられない。
今の実力では、この状態では、たとえ自分の得意なフィールドに持ち込んでも押し切られてしまうような気がする。
妹が彼女を欲する気持ちが理解できた。見ているだけなのに胸に湧き上がる疼きが止まらない、今にも走り出したくて仕方がない。
シマカゼタービンの走りを見て自分が感じたのは恐怖や絶望ではない、彼女と競い合いたい、勝ちたいという闘争心に他ならなかった。
(妹が目を付けるわけだな、実際に走って片鱗を見せつけられたならあいつの性格ではああもなるか)
ようやく思考回路に火が戻ってきたビワハヤヒデは小さく一息つく。妹の勝負への渇望を知る身として理解できた、シマカゼタービンの異次元の走りは妹にはまさに格好の相手に見えただろう。
だからと言っていろいろ暴走してしまったのは頂けないが、かくいう自分も焚き付けられてしまっているのだから笑えた話ではない。
予想もしないところからとんでもない逸材がポンと出てきたものだ。
(まいったな、こんな走りの事を知ったらブライアンはどうなるか…あ、ほんとどうしよう)
自分が群馬にいるのはシマカゼタービンへの接触も目的だが、単純にレースや練習で酷使した体を労う二泊三日の温泉旅行でもある。
休養中の自分の予定は親友たちも知っている、当然だが妹のナリタブライアンも知っている。
そもそも休養のための相談をして、群馬のウマ娘ご用達と言われている秋名温泉をおすすめしてきたのはツインターボから情報を仕入れてきたナリタブライアンなのだ。
姉が妹の事を知っているように、妹も姉のことをよく知っている。きっとこういうことをするのは予想しているだろう。
妹に今日の事を聞かれたらどうしよう、ふと素朴な疑問に突き当たって一番厄介な難題だとわかったビワハヤヒデは苦笑するしかなかった。
あとがき
というわけで第14話。実はビワハヤヒデが休養に来たのは秋名温泉だったという話、といっても向こうでの絡みはまずない。
ご安心ください、この姉はSAN値が削れましたがまだ正気です。
火がついちゃったけどウマ娘だから仕方ない、なによりあのブライアンの姉だもの。
冷静に『面白れぇ』ってなってるだけだから、新しい世界(イカレ馬走り屋)を知って興奮しちゃってるだけだから。