気儘に生きた転生馬物語   作:イナダ大根

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いつも多くの誤字報告と感想ありがとうございます。
ちょっとしたこの世界での勝負服設定、アプリモブ娘の勝負服はこんな風になってるってだけ。
それとシマカゼタービンの勝負服モチーフのちょこっとご紹介、よほどのことがなけりゃたぶんあの子っぽくなる。
たぶんなんでもっといい案を思いついたら変わるけども。
ツインターボとモンスニーのモチーフを掛け合わせたらちょうどいい奴がいたのよ。
あとこの世界のサバゲ事情もちょいと違う、何しろ善性の上位種であるウマ娘がいるからな。まぁほとんど使わんけど!





第二十二話

 

 

 

いつも通り午前4時頃、俺は平日も休日もこの時間には起きる。契約先のホテルに朝一番の配達をするバイトは平日も休日もあるからだ。

昔は兄貴と半々でやってたが、兄貴が本格的に会社で働くようになってからは俺が全部引き継いで続けてる。

別に早起きは苦じゃないし、平日はともかく休日なら朝飯軽く食ったら昼過ぎまでダラダラ寝過ごしたって怒られない。

ま、配達が私服か学校の制服かの違いだけだな。ぶっちゃけ休日のほうがめんどくさい、あんまりだらしないとお袋の目がね。

とはいえ、今日は予定があるから学校のジャージでよし。

 

「んで、おめーは俺の武器庫漁って何やっとんじゃい」

 

「あ、いや、開いてたからつい…」

 

手っ取り早く着替えていると、ターボが着替えもせずに俺のガンロッカーを開けて中を物色してるのが目に入った。

ターボが着替えそっちのけで開いているのは武器庫、この部屋の中でも俺の趣味が詰め込まれた本物のガンロッカー。

またの名をおもちゃ箱。中身は愛用のエアガンとガスガン数丁、6ミリBB弾とペイント弾、各種カートリッジ、装填用エアポンプとガスボンベとかの周辺器具と整備用品、それとサバゲ用の戦闘用装備だ。

前前世じゃいろいろあった蓄圧式カートリッジもお上が『話にならん』という結果を出したから健在、そんなもんだから見た目はさらにごっついのよね。

まぁ俺としては実に天国ですけど、9パラ型の専用カートリッジを弾倉に詰めてるだけでもうにやにやが止まらんよ。

しかし開いてた?…昨日閉め忘れたか、うっかりしてたな。

 

「タービンが勝負服着たらやっぱこれ担ぐのかなーってさ」

 

ターボがロッカーから出したのは愛用のRPKー203。だいぶ前だが奮発して買っちゃった。

軽機関銃らしく撃ちまくるスタイルになるから前前世よりも弾代が割高なのが玉に瑕…でも一度使うとやめられない。

エアガンとはいえ軽機関銃だから重たいんだがウマ娘パワーで振り回すと軽いのなんの、ぐいぐい振り回せて気持ちいいんだよホント。

自然分解型プラスチックのBB弾、もう少し安くならんかな。アグネス社さん何とかなりませんか?

 

「勝負服?何の話だ?」

 

「URAファイナルズの本戦はGⅠと一緒だから勝負服着用だぞ?」

 

そういやそんなこと説明されてたっけ、まぁ一般参加枠は希望者のみだし金もかかるからあんま覚えてないな。

群馬トレセンの連中は模造武器込みの勝負服ばっかだしこいつがそう考えるのも頷けるか。

何しろみんな大なり小なり武器を担いでる、一見そう見えなくても仕込んでる、あるいは肉体が武器そのものだったりするとか恰好が武闘派。

そういう伝統らしい、そういや向こうのサバゲ愛好会の連中は年がら年中愛用のエアガンを携帯できるとか自慢してたっけか。

ダイオーはくノ一だし、ノルンはスナイパー、ツバキは…なんだ?近代化武士めいた格好だったな確か。

ああいう衣装を着て走るのは良いとしても小道具はレースにいらんだろ、ただのデッドウェイトじゃねーの。

俺としては意味わからん服装が不思議なんだがね、ダイオー達の後輩にいるアルト姉妹なんかそのまんまじゃねーか。

レース用にちょこちょこダウンサイズされたりオミットされてるけど武装紳士淑女諸君が居たら大歓喜な代物やぞ。

 

「勝負服なら使わねーぞ、一般参加枠は自由だし自費で用意しなきゃならん」

 

「着ないのか!?」

 

「高ぇじゃんか、そんな金ねーよ。」

 

ダイオー達の付き合いで知ったけど、勝負服って全部オーダーメイドだからどれだけ安くても諭吉さんが10枚は簡単に飛ぶんだよ。

そりゃあんな奇抜だったり綺麗だったりするのに走るのに適した設計をしてるんだから技術も素材も選りすぐりだ、高いに決まってる。

下手したらその勝負服を着たウマ娘が海外にそのまんま飛び出すんだから勝負服の職人だってみんな超が付くエリート、そりゃ人件費だけでたけぇよ。

国家資格を持った専門職とはいえ同じウマ娘相手の商売だから面識あるんだけどストレスがマジでやばいらしい、敷居は高いし才能が必須だしでとにかく狭い門を抜けて待ってるのが地獄の釜というありさまだそうな。

さっきのとおり担当したウマ娘が強くて海外挑戦したときに着た勝負服となればネームバリューが半端ではない、下手すりゃ大好きなウマ娘と服に潰されるそうだ。

お袋の知り合いはそれで自殺しちまったっていうしな、シビアな話だぜ。

 

「じゃあレンタルで出るのか?タービンには似合わないと思うぞ?」

 

「高いよ、あれだってかなり上等じゃねぇか」

 

だからレース場には勝負服のレンタルが必ずある、GⅠに出られても勝負服まで手が回らなかったらみんなそこを使う。

あれもレンタル料は1レースで諭吉さんが最低でも2枚飛ぶ、上下で種類が分かれてて別料金なんだよな。

前の一般参加レースで高崎競馬場…もといレース場に行った時に特別に着てもいいって言われたが高いのなんのったら…迷ったけど結局ジャージで走ったよ。

いやはや、あんときはみんな小綺麗な勝負服を着てる中でジャージだから浮いたのなんのだ。ま、全員ぶっちぎったけどな。賞金美味しかったです。

そもそもターボ、みんなあまり言わないけどオーダーメイドの勝負服を着てるってのは、相当すごい事なんだぞ?

中央と地方の違いはあれどいきなりクソ高いオーダーメイド勝負服を初戦からお披露目してくるとか、学園のバックアップがあってもなかなかできるもんじゃない。

モンスニー姉貴だって昔の勝負服だけは後生大事に記念品にして持ってるくらいなんだからな。

そもそも本戦まで行く気もない、あれ年末の大イベントじゃないか。進学の準備で忙しいんだぞこちとら。

 

「あれ?レースの賞金一杯貰ってるんじゃなかったっけ?」

 

「お前らのと一緒にすんな。趣味と研究費に使っちまったよ」

 

もちろん貯金と家に入れた残りだけどな。取り分は3分の1くらいか。

 

「ほら、遊んでないで着替えろ。俺は車持ってくるからいつもの倉庫でな」

 

「いつもの倉庫前だな!わかった!」

 

「親父が居るから手伝ってやってくれ。んじゃ、お先」

 

車のカギを持って部屋を出る。その足でまっすぐ車庫、中に入っていつも通り愛車のWRX―STIを車庫から出していつもの倉庫前に車を走らせる。

そういえばあいつと一緒に配達に行くなんて久しぶりだな、今日は休日だしツバキも帰ってきてるだろうからメールしてやろ。

トレセン住まいは早起きだっていうけど休日は惰眠貪りたいだろうし、今夜はほぼ徹夜になるだろうしな。

 

「あ、そうだ、一応確認しとくか」

 

いつものルーチンで元馬房前のルートに向けたWRXのハンドルを回して別の道に入る、こっちは前世で第一馬房があったほうの道だ。

当然ここには馬房はないんだがその代わりに併設されてた運動場が超拡大されてる、レース場を模した一周1600メートルのカプセル型コースだ。

見た目は学校の校庭みたいなもん、芝も無けりゃダートもない。走りやすく整地してあるだけの土道だ。

ここはうちに勤めてるウマ娘達が仕込み前の準備運動や仕込みそのものでよく使ってる。だから休日になると誰もいない。

今日はここでツインターボとナイスネイチャの自主練に付き合う予定だ。

車に乗ったまま運動場を見てコンディションを確認する、まぁ普通だな、雨が降ったわけでもないし当然なんだが。

これなら問題ないだろ、あいつらが芝とかダートじゃないと練習できないってなら話は別だがそういうのは聞いたことないしな。

 

「ありゃ?」

 

そのまま運動場横を通過していつもの倉庫前に車を走らせていくと、倉庫前に見慣れた青髪と見慣れない茶髪が見えた。

なんでナイスネイチャがこんな朝っぱらから起きてるんだ?しかもトレセンのジャージ姿で目を白黒させて…なんかうちで見ると違和感凄いな。

 

「ほらネイチャ!タービンの車凄いでしょ!!」

 

「おっ、スバルの新型じゃん。マジでスポーツカーで配達してんですか?」

 

「お得意先には、うちは昔からこんな感じだよ。ターボから聞いてなかったのかい?」

 

「いやぁ…聞いてはいましたけど話半分だったというか」

 

「なんと!?」

 

「ま、ターボだかんなぁ」

 

「えぇ!?おじさんまで!!」

 

「ま、お前らしいよターボ。酒、準備してくるわ、タービンには話付けとけよ」

 

なんだなんだ?親父と一緒に仲良く話してるのを見る限り問題があったようには見えないがなんかあったんか?

親父が酒を取りに入った倉庫の前に車を停めて、いつも通りトランクを開けてから運転席に座ったまま顔を出す。

 

「ナイスネイチャさん? どうしたんだこんな朝っぱらから…何かあったか?」

 

「ネイチャでいいよ、堅苦しいし。ターボに起こされちゃってねぇ、配達に行くから起きろー!ってさ」

 

ターボ…なんか想像しなかった俺が悪いって感じるくらいありありと思い浮かぶわその光景。こいつなら絶対やるわ。

横でニコニコしてるのを見ると悪いことしたとは毛ほども思ってねぇんだろうな。

何やってんだよターボ、これからやるのはただの配達なんだから面白いもんでも何でもねぇぞ。

 

「悪いな、朝早くに。ダメなら無理しなくていいぞ?どうせ行って帰って来るだけだし」

 

「ううん、むしろお願いしたいくらいだよ。朝の峠道も見ておきたいしさ、乗っていい?」

 

「ならいいんだが…どっちが助手席だ?」

 

「ターボは後ろ!」

 

「んじゃネイチャが助手席な。バケットだからちょっと違和感あるが我慢してくれ」

 

ドアのロックを運転席からリモートで開けると二人が車に乗り込んでくる。

後部座席に乗り込んだツインターボは堂々と中央に腰を落ち着かせたが、助手席に乗り込んだナイスネイチャは案の定少し座り心地悪そうに顔をすくめた。

 

「なんか変な感じ、目線が低い感じが…」

 

「バケットシートは視線が低くなるからな、まぁそのうち慣れるよ。シートベルトはシートについてるヤツ使ってくれ。」

 

助手席に座ったナイスネイチャがもぞもぞとバケットシートの中で尻の位置を調節しようとしている。

初めて座ると尻のおさまりが気にかかるのはよくわかるわ。俺もシートベルトだけはいつも気にかかる、うん。

 

「ホントにスポーツカーで配達してるんだね」

 

「東京じゃしないのか?」

 

「しないしない、普通はトラックだよ。じゃぁ豆腐をスポーツカーで配達してる店もあるってのもほんと?」

 

「藤原豆腐店な、あるある。ハチロクで毎朝ぶっ飛ばしてるぜ」

 

「ほら見ろ!」

 

ターボ、ネイチャの顔色から見るにお前の説明不足だろ。冗談だと思われてたぞ、らしいっちゃらしいが。

 

「毎日プリンセスホテルに卸してる酒は限定品の発泡日本酒が主だからな。配達にも気を使ってんのさ」

 

プリンセスホテルに届ける酒はうちで生産するウマ練り全種類とその他だが、毎日する必要があるのはその中でも繊細で賞味期限が短い限定品を扱ってるからだ。

一日に出せるのは多くても二ケースのみ、原材料、仕込み、熟成期間、そして配送、この全てを徹底管理して一番うまい時期に出荷する『限定生産品』だ。

ホテルに卸しているその名はウマ練りスパークリング改!前世で作り上げたモノを第一世代とするならば、こいつはさらに磨きをかけて味と飲み口をさらに成熟させた立派な第二世代だ!!

特にこいつの炭酸は第一世代よりも炭酸発泡の持続性をより長く保てるように強化した、これには気を使ったぞ。

例えるならば長いコース料理で、食前酒として一口飲んだ後うっかり忘れてずっと放置したとしても炭酸がしっかりしているって具合になぁ!!

こいつは瀬名酒造が生産している酒類の中でも一番うまい酒の一つと言って過言じゃないが、一般販売に向かない致命的な欠点がある。

単純に賞味期限が短い、それと手間暇かかりすぎなんで生産数が少ないってこと。

賞味期限が短いといっても飲めなくなるわけじゃなくて、瓶詰めして冷蔵保存しても熟成が進むのが速くて一番うまいピークがすぐに過ぎちまうってのがミソな。

でもだからってそのまま売りに出して酒をダメにしちまったら元も子もない、だからお得意先にしか出さない限定品なんだ。

それを簡単に説明すると、ナイスネイチャは感心したような表情になった。

 

「ほぅほぅ、なるほどそれでか。確かにお酒の中には結構デリケートなもんもありますなー」

 

「お、話が分かるな」

 

「いやー実は実家がお酒を扱うお店でして、うちでも私には絶対触らせてくれない高いお酒があったよ。

昔は何でかわかんなかったけど、要は保管が難しくて下手に触るとまずいからだったんだよねぇ。温度に敏感なワインだったよ」

 

「なるほどね。そのワインとはまた別だが、俺が運ぶのはそのデリケートなのがあるからなんだ。

こいつに一番いいのは瓶詰めして出荷したらその日に飲んじまう事、最長でも一週間が限度だ。ピークが過ぎて味が変わっちまう。

それに加えて一度出来上がると結構デリケート、冷蔵庫で保管しなきゃならんし大きく揺さぶろうもんなら瓶詰めで絶妙なバランスだった気圧が狂って栓が飛んじまう。

飛び切りうまいが気性難なじゃじゃウマ娘っぷりなんだ、俺の酒は」

 

とはいえ、ただの配達だから面白いもんでもないんだがねぇ…そもそもターボが来たがるのだって要は峠の運転を見たいだけなんだろうしさ。

ターボは面白いからいいだろうけど、ネイチャには退屈なんじゃねぇかな。

 

「積み込んだぞ、今日は猿酒と濁酒も追加で頼む」

 

「あいよ」

 

「ほれ、ケツ重いから気を付けな」

 

トランクに酒を積み終えた親父が運転席側に戻ってきて水を入れたコップを差し出してくる。いつも通りに受け取って…おい、なんか多くねぇか?

 

「親父、いつもより多くねぇか?」

 

「二人乗っけてんだ、これくらい気ぃ張って走れ」

 

「安全運転で、とかじゃねぇの?」

 

「走るウマ娘に念仏だろ、つまんねー走りして退屈させんじゃねーぞ」

 

「へいへい、行ってくる」

 

「おう、朝飯の準備しとくからな」

 

親父が車から一歩離れると同時にサイドレバーを下ろしてゆっくり発進、ホルダーに置いたコップに多めに注がれた水がこぼれないように丁寧に加速させる。

いつもより二人も多く乗ってるから加速が鈍い、こりゃ荷重移動も気を使わんと速攻でミスるな。

会社の敷地を出て公道に出たらゆっくり加速、時速40キロ前後の安全運転へ。

 

「おぉ、すごいスムーズ、本当に運転がうまいんだね」

 

「走り屋やってればこれくらい普通だよ」

 

「走り屋って所が普通じゃないんだけどねぇ。ところでターボ、おじさんの言ってたのってどういう意味?」

 

「タービンは配達の時、登りはいつもコップに水を入れて零さないように運転するんだ。すごいぞ!」

 

「えぇ?」

 

ターボ、それだとネイチャに難しさ伝わんない。まぁこれに関しては車をよく知ってる奴じゃないと口で言っても分からんか。

それに俺も成功させてるわけじゃねぇしなぁ…零さないようにするなら楽勝だけど、それじゃダメなんだよな。

 

「ターボ、伝わってねぇよ。ま、見てりゃ分かるさ。峠に入ったらできればあんま身動きしないでくれ」

 

「お安い御用だけどなんで?」

 

「コップの水、バランスが崩れるとミスってこぼれる。朝からびしょ濡れは御免だろ?」

 

「なるほど、これをこぼさないように峠道を登ると…さすがに冗談だよね?」

 

「何を言うか、これくらい親父は鼻歌交じりでもできるぞ。あふれると盛大にぶちまけっから、掃除が面倒なんだよ」

 

「あはは、まさか…そうだ、動画とって良い?マチタンとイクノにも見せたいし」

 

「どうぞ」

 

こりゃふがいない走りはできんな。本気でやるか。

 

「そういえばこの車カーナビとかついてないんだね」

 

「ナビの代わりにドラレコ積んでんだ、走り屋してるとこういう証拠がないといざって時に困るからな」

 

真昼間に普通に運転してても向こうから突っ込んでくるような事故は普通にあるし、その時どんなに相手が悪くても走り屋ってしられるとさすがに警察の目が変わるかんな。

こっちがミスってないって証拠残しとくのは重要よ、証拠があれば警察もにっこり笑ってくれる。

ま、峠で走るときは電源切ってるけどな。今だって電源は入れてないし。

あとナビは壊れると修理費が高い、走り屋の車はとにかく振り回すからカーナビって結構壊れやすいのよ。新米の走り屋がそれで泣くのはお約束だ。

そういえば置いてなかったな。ポケットからスマホを出して運転席の充電兼接続ホルダーに装着、これで電話がかかってきてもハンズフリーで会話ができる。

ケータイも便利になったもんだぜ、この年代を繰り返してるとすごい良くわかる。進化の仕方が異常だ、バージョンアップ速すぎるっての。

 

「今はこれの地図アプリで十分だし、必要なら別ので代用できるしな。そっちのダッシュボードを開けてみな」

 

「どれどれ…あ、なるほどね」

 

ダッシュボードから取り出したのは小さめのPAD端末、必要になったらホルダーで固定してカーナビ代わりに使ってる。

頑丈なハードケースで保護してるから荒っぽい使い方しても安心、前にミスって派手に落としたけど壊れなかった。

 

「うわ、だれもいない」

 

「芦名は田舎だぜ?当然だろ」

 

朝霧の若干煙る人通りも車通りもほとんどない市街地を安全運転で抜けていると、周囲を見渡したネイチャが呟いた。

そりゃ昼も夜も関係ないような大都会の東京と比べてもらっちゃ困るよ、24時間営業してる店はファミレスかコンビニくらいだって。

でもこういう静かなのも悪くないだろ、俺はこういうところのほうが好きだ。少なくとも東京よりもずっと住みやすい。

あそこは昼も夜もごちゃごちゃで境目がないから俺としてはきつかった。前前世の時から東京は仕事する場所で、人間が住む場所じゃないって思ってたからな。

 

「さてと…」

 

町を抜けると峠道が見えてくる、いつも通り、いつもの道、でも今日は同乗者がいる。

一息入れる、せっかくターボの友達がいるんだしいい所見せるってのは確かに悪くない。かっこいい従姉の姿見せてやるよ。

とりあえずできる限り全速力で、水は零さない、できる限り零さないようにいく。息を吸う、4つ数える、息を吐く。

頭の中が冷えて思考が明晰に回り始める、体の中を流れる血流と鼓動が良く感じられる気がする。

 

「目つきが変わった?」

 

「お、本気モード!」

 

うるさいよ。集中してんだからだまらっしゃい。

 

「行くぞ」

 

「ゴー!」

 

「うぉ!?」

 

一速から二速にシフトを操作しつつアクセルを踏み加速、峠道に入る直前でクラッチ。衝撃を荷重移動で逃がしつつ上り坂へ。

コップは問題なし、加速も問題なし、ハンドルよし、タイヤもきっちり噛み付いた。

最初の左カーブ、インベタにきっちり寄せつつコップを見る。水が右に寄ってギリギリのところで持ちこたえている、予測通りだ。

このままハンドルを切ってるとこぼれるから、荷重移動で水を縁に沿ってくるりと回して…表面張力ギリギリのところを保って対処。

カーブが終わったらそのまま同じように衝撃を逃がしつつ、ラインを修正。車体が重いな、わずかに外にズレた。

だがこの程度なら十分対処できる、俺は内心で大きな手ごたえを感じながら次のコーナーに向かってアクセルを踏み込んだ。

 

 

 

 







あとがき
結局ただただ駄弁るだけになってしまった、ウマ娘の時間も進めたいところだけど詰め込みたいところが多すぎる。
話に出てきたペイント弾はとある婦警さんがぶっ放すヤツと同系統なのでたぶん安全。(この時代にわかる人いるか?)




おまけ
群馬地方トレセン学園の伝統・所属ウマ娘の勝負服にはどんなデザインであろうが武装を施すのが一般的、時代や形式は問わない。


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