深夜0時。
シンジはホラー映画をみていた。
ふと、遅帰りミサトに出会った。
そこで彼女は戦場で多くの人を殺してきた自分の過去を思い出した。
そんなミサトをシンジが慰めるお話である。


残酷な描写タグをいれてますが、普通に日常物です。
ちょっとシリアスです。



https://syosetu.org/novel/255916/
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戦場のトラウマを思い出したミサトをシンジが慰める話

第三新東京市、シンジはペンペンと膝の上に置いてテレビをみていた。

時刻は午前0時を回っていた。

ケンスケはオススメのホラー映画を貸してくれた。

その内容はあまりにも過激すぎて、失神者が続出したという伝説の内容だった。

 

 

 

「うわー怖いね、ペンペンがいなきゃみれないよ。こりゃ怖い。」

 

 

ペンペンは真剣にみていた。

シンジは思わずペンペンを自分の顔の前で覆うとグロテスクなシーンを隠していた。

 

ミサトさんは最近帰りが遅い。

仕方がない。

昇進したんだ。

今日も電話で残業で忙しくなるといっていた。

 

 

でも、ちょっと寂しいよな。

ミサトさん、ホラー映画苦手だもんな。

この前も日本のホラー映画をみてたら、真剣に抱きついてきた。

ちょっとうれしかったけど…あんなに怖いのダメな人とは思わなかったな。

 

 

そう言い聞かせると、ミサトが家に帰ってきた。

 

 

「あーらシンちゃん、柄にもなく遅くおきてるの?」

 

 

そう言うとミサトはシンジを後ろから抱きしめようと近づいた。

シンジは顔を赤くすると拒絶した。

 

 

「んもう!やめてよ!真剣に見てるんだから邪魔しないで!」

 

「なにみてるの?」

 

 

ミサトはふとテレビをみた。

そこにはチェーンソーを持った大男が女を追いかけまわす映像があった。

 

 

「シンジ君、こういう映画が好きなの?ちょーっちグロすぎないこれ。大丈夫?」

 

「いや、違うよ!でもなんかわかんないけど結末が気になるんだ。」

 

 

殺人鬼ねえ…。

…ホラー映画か。

そういえば、怖い映画はあまり得意じゃないんだった。

 

 

「どうしたの、ミサトさん。顔が怖いよ。」

 

「いいえ…。」

 

 

チェーンソーを持った大男は血にまみれていた。

血…。

思い出したくもない。

戦場の記憶。

 

死にそうになる相手を追いかけ殺した時の自分。

想像もしたくない。

相手が地べたを這いつくばり命乞いをするのを無視しながら射殺した時の自分。

きっと恐ろしいだろう。

 

最後に何もいえず無念のまま恐怖のまま死んでいった兵士たち。

そして、それを殺した自分。

どんなに残酷な顔だったんだろう。

 

私が殺してしまった兵士にも人生があった。

それを私が殺してしまった。

潰してしまった。

 

 

 

血…。

私の手も血で汚れている。

 

あの映画の殺人鬼と私は何も変わらない。

 

私が殺してきた兵士たちはきっとあんな風に私がみえたのだろう。

 

 

復讐のために言い訳をしてきた。

 

それが正義だと信じていたから。

でも、正義とは何。

そこまでしてやるのが正義なの?

じゃあ私は何なの。

 

あの映画の殺人鬼たちは楽しんで人を殺している。

正義なんて振りかざさない。

 

私はあの映画の殺人鬼にすら劣っている。

劣悪で言い訳ばかりの傲慢な殺人マシーン。

 

 

復讐のために人を殺してきた。

 

 

ミサトはふと自分の手をみた。

 

 

 

ヒトゴロシ…。

 

 

私も人殺し、偽善者だ…。

 

 

「ちょっとでかけてくるわ。」

 

 

ミサトはそういうと部屋を出た。

 

 

 

シンジはふと思い出した。

ミサトは戦場上がり。

青葉さんとみせてくれた帰還兵の映画。

拷問を受けたことを思い出して田舎で暴れてしまう男の映画。

 

あれと同じか。

血をみると昔の記憶が思い出すのか。

 

 

「ダメだ…。」

 

 

シンジは急いでミサトを追いかけた。

ペンペンはシンジを無視するとテレビの画面に集中した。

 

 

「ミサトさん!」

 

 

ダメだ。

違う。

ミサトさんはあんな殺人鬼じゃない。

僕を助けるために手を血に染めただけ。

そんなんじゃない。

 

 

シンジは部屋の外にかけでると、エレベーターホールにミサトはいた。

寂しそうに星を眺めていた。

 

 

 

 

「ミサトさん…。」

 

 

その姿はいつもより、一際美しくみえた。

であると同時に少し寂しそうにみえた。

 

 

 

「シンジ君、私はね。いっぱい人を殺してきたの。あなたみたいな奇麗で優しい純粋な子と生きる価値もない汚い血塗られた人殺しなの。復讐を言い訳にして。そのくせ正義顔ぶって最低よね。偽善者っていうのよ私のことは。」

 

 

「違う!」

 

 

「いいえ、違わないの。あなたもみたでしょ。私が人を殺すところ…。嫌いでしょ?だから…あなたが私を捨てたくなったらいつでも捨てていいわよ。私みたいな血塗られた女イヤでしょ。レイだっている。アスカだっている。あの二人の手は奇麗よ。私のような殺人鬼とは違う。」

 

 

 

ミサトさんなにをいってるんだ!!

僕はアスカもレイも大好きだ。

魅力的で美しい子たちだ。

でも、大好きの意味が違う。

それは友達としてだ。

 

 

 

「違う違う違うちがう、ちがう!!!ちがうちがうちがう!!!!」

 

 

「違わない!シンジ君…私はあなたに捨てられて当然の女なの。洞木さんだっているじゃない。彼女もキレイじゃない。シンジ君はかわいいから、きっといろんな女の子に好かれるわ。こんな汚い人殺しなんて忘れたって…。」

 

 

「いい加減にしてくださいっ!!!」

 

 

 

 

シンジは叫んだ。

この人は自分で背負い込み過ぎだ。

彼の女の子のように細い声は枯れていた。

 

 

 

 

「あなたは人殺しなんかじゃありません!あんなのは映画の中だけの存在に過ぎないんだ!」

 

 

ミサトさんは僕を守るために、その手を血で染めた。

でも、違う。

違うんだ。

あんな殺人鬼じゃない。

ボクを守るために戦ってくれた。

 

 

「あなたは殺人鬼じゃないんだっ!!!」

 

 

「シンジ君。」

 

 

シンジはミサトに近づいた。

そして、気が付けばその背中を抱いていた。

 

 

「シンジ君!?」

 

 

 

「今あなたのに巻き付いてるボクの手を忘れないでください。」

 

 

 

ミサトは顔が赤くなっていった。

シンジ君、いきなり抱きついてきちゃった。

しかも、真剣に心配してくれてる。

ただ、ちょっと悪い事を思い出しただけなのに。

本気で心配になったのかこの子は。

 

 

「もしも、あなたが自分の手が血で汚れていると思うなら…ボクのこの手を思い出してくださいッ!ボクがいる限り、あなたはあなたの…手は血で汚れてない!だって、僕が触っても血で汚れてないんだからっ!汚れちゃいないんだ!!」

 

 

 

加持さんだったらもっとうまい言い方ができただろう。

キスしていただろう。

でも、ボクは加持さんと違う。

そんな芸当できはしない。

 

 

「あなたの手は奇麗だ!」

 

 

 

シンジくん。

本当にストレートな子。

このピュアな気持ちが私を溶かしてくれる。

 

 

「シンジ君・・・。」

 

 

ミサトはシンジの手をみつめた。

細い。

そこらへんの女子高生でも折れそうな手だ。

でも、温かい。

いつまでも触っていたい。

 

 

 

 

「あなたのそういう素直な優しいところが大好き。大人になっても奇麗なままでいてね。

 

 

「うん。」

 

 

 

 

シンジはミサトを離すとその目をみた。

彼の目は涙で溢れていた。

 

 

シンジ君、私もあなたの手を血で染めてきた…。

本当はエヴァに乗りたくもなかったのに押し付けちゃった。

あなたに言う謝罪の言葉なら100万回考えちゃうぐらい。

 

 

本当ならあなたに殺されてもおかしくないのよね、私は。

 

 

でも今は…。

このままでいい。

 

 

 

「本当に泣き虫なんだから、シンジくんったら。」

 

 

「ミサトさんだって泣いてるじゃないか。」

 

 

 

ミサトの目からも涙がでていた。

二人は抱き合うと、マンションの外灯が優しく照らした。

抱擁は長く続いた。

 

 

「私、あなたにキスしたい。」

 

 

ミサトはそういうと、シンジの顎をつかんだ。

シンジは目を伏せながら照れて小さく言った。

 

 

 

「・・・いいよ。」

 

 

ミサトを優しく受け止めた。

二人の唇は重なり合った。

 

 

シンジの目から涙は止まった。

代わりに顔が紅潮していくのがみえた。

シンジくんったらかわいい。

もっとキスしたい・・・ところだけど最近人が増えてきたのよねここ。

ヤバイ誰かに見つかると・・・。

 

 

 

やがて、ミサトは切り出した。

 

 

「さあ、帰りましょう。」

 

 

「うんっ!」

 

 

二人は家に帰った。

すると、ペンペンが横たわりいびきをかきながら寝ていた。

テレビ画面はエンドクレジットになっていた。

 

 

シンジは頭を抱えるとつぶやいた。

 

 

「ああー!!終わってる。巻き戻そう。」

 

 

「シンちゃん…怖いなら一緒にみてあげよっか…。」

 

 

シンジはふと考えた。

怖い。

ペンペンがいるからみれたけど、これを一人で夜観るのは…ちょっとね。

 

 

「うん。」

 

 

「えへへへ、抱きついてもいいよ。だってシンちゃんはかわいいから。」

 

 

 

シンジは『かわいいから』の響きだけで顔が思わず赤くなった。

そして、目をつぶりながら小さく言った。

 

 

「ミサトさんの方こそ、怖ければいつでも抱きついてきてくださいね。」

 

 

「私こういうスプラッター映画は得意なの。」

 

 

「ふーん…。」

 

 

「何それ、ふーんっての。」

 

 

「いーえ、なんでもありませんよ。」

 

 

 

二人はDVDを再生させた。

テレビの前に肩を寄せ合いながらみつめていた。

ミサトは古い映画となめていたが、凄まじいシーンの連続で少し顔面がひきつりはじめてきた。

シンジはミサトに先に抱きつけばバカにされると思って目をつぶり我慢していた。

ミサトはそんなシンジに気が付くと愛おしさで胸が締め付けられそうになった。

 

 

やがて、エンドクレジット前、殺人鬼から逃げていた女が発狂し笑い狂うシーンがうつった。

思わずゾッとした二人は気が付けばお互いに抱き合っていた。

 

 

 

「どっちが先に抱きついた!?」

 

 

「ミサトさんの方でしょ。」

 

 

「いいえ、シンちゃんの方が先。」

 

 

「いーや、ミサトさんだ。」

 

 

「なーにいってるの!?」

 

 

 

 

そんな二人のやり取りを呆れた目で見たペンペンは冷蔵庫に戻っていった。

二人は深夜にもかかわらず、どっちが先に抱きついたか否かで口論になっていた。

 

 

ここは第三新東京市、二人の夜はまだ終わらなさそうである。

 




観ている映画は「悪魔のいけにえ」です。
これはトリビアですが、実はジェイソンはチェーンソーを使ったことがないんです。
青葉と見た映画は「ランボー」です。
実際にミサトもPTSDで悩んでいるかもしれないから、ビール飲んでいるのかなと思うとちょっと切なくなってしまいます。


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