家族の仇は、娘でした   作:樫鳥

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北部戦線同盟


 帝国軍事中央参謀局では、日々各地から来る戦線の情報が集約されている。

 

 巻きたばこが山と重なる灰皿と、まるで小規模な火事騒ぎでもおきたかのように煙が立ち込めていた。長方形のテーブルに上に大量の書類が並べられ、それに目を通しながら参謀局所属の役員達が各々の考えや意見を述べていた。

 

 扉の入口を警備する帝国近衛隊は、可能な限り漏れ聞こえる状況には耳を塞ぐように努めていた。仕事に専念するという意味もあるが、上役の話し合い等兵隊が聞いても厄介の種にしかならないからだ。だがそれでも、聴覚は参謀局員達の話を処理し脳内に留めてしまっていた。

 

 「大陸西方、グルト王国とキシミ連邦国の攻勢は完全に防ぐことができた。塹壕も三重に掘ったからしばらく突破はされないと考えて良いだろう」

 

 「前線指揮官からは攻勢許可と増援を打診されていますが」

 

 「馬鹿を言え。指揮官達の戦果稼ぎで大事な将兵を磨り潰してたまるか。問題は北部と主戦場である東部だ」

 

 書類をめくる音が室内に響く。前線の参謀局からはいかに敵が脆弱でありそのうえ帝国の将兵達の士気が高いのかを威勢の良い言葉で綴られている。だが中央参謀局の子飼である内偵からの報告では、グルト王国もキシミ連邦国も決して士気が低い訳ではなく、連合王国から派遣された軍事顧問や観戦武官から王国内で練られた対帝国用の布陣が敷かれているとのことであった。

 

 さらには、独断で行使できる権限を表から裏から駆使して攻勢をかけ返り討ちにあっているという話もある。前線の兵士達は護りにはまだ使えるが重なる失敗に攻勢に対しては士気が落ちているということだ。

 

 「西部戦線は防衛線を維持してくれれば充分だ。これ以上の要請が来るようであれば西部参謀局長とそのイエスマン達の面子を入れ替えることも検討しなければならないな」

 

 「然り。だが問題は北部と東部だ」

 

 東部、未だリスムに居座る連合王国側は平原での戦闘にて一時退却をしたものの、その退却は秩序だったものであり追撃戦にて大した戦果はあげられなかった。

 

 リスムを実効支配する作戦案が出ていたが、とある勢力によりその計画は頓挫してしまう。そして連合王国はただ退却した訳ではなかった。リスム北東部に広がる湿地地帯に兵士を伏せており、宿場街を拠点にして目の上のたん瘤のように居座っていた。

 

 北東部の湿地地帯は野生のリザードマンが多く生息しており、環境の問題で拠点を作ることもままならない有様だと考えられていたが、どうやら連合王国側はそこに例の生物兵器を中心に詰めていたようだ。

 

 更に北ではモスコーに存在する帝国とリスムを繋ぐトンネルが崩落事故をおこし、進軍経路を潰した後復興最中にあるモスコーの街を実効支配していた。トンネルの崩落事故というのは、連合王国の公式発表だ。火薬でトンネルを潰し通行を禁止したのは明白である。

 

 「現状の港湾都市リスムは?」

 

 「エンパス教の教団兵がリスムを固めています。連合王国も街には手を出す様子はないようです」

 

 「宗教勢力とはいえ、外部勢力をリスム市民が受け入れたのは以外だな。連合王国でさえ、自治州の感情を考慮して実効支配まではしなかったのだが」

 

 「下地があるということだ。ノックから突如出現した巨人事件、それを解決したのはエンパス教の僧兵軍団とレント=キリュウイン。一部の住民を除き、もろ手を挙げての歓迎を受けているらしい」

 

 エンパス教の僧兵衆は、帝国に義勇軍として参加していた。外部勢力がリスムを支配に近い状態で抑えているのは面白くはない事態ではあるが、なりふり構わず連合王国があの南部最大の港湾都市を抑えるよりはマシだ。

 

 そして一部の住民というのは、主には外洋に存在する島にいる裏の三竦みである組織と、掲げる大盾を始めとした一部の住民達である。そして噂では、掲げる大盾の帝都支部を務めていたグロー=カザルタフは辞表を出し姿を暗ましたという噂があった。

 

 掲げる大盾のグローは、元々帝都本部にいた際に助けを求めた下院議員も存在しており、一定の噂となっているようだ。だが一個人の動向等、現状大した問題ではない。

 

 「一進一退といったところか」

 

 「状況はリスムを友軍が押させている我等が有利だ。だが機動力を生かした、制圧ではなく嫌がらせに近い攻勢を受けており思うように事態は進んでいません。そして、近く大規模な攻勢を企んでいるという情報もある」

 

 「ここのところ欺瞞情報も多い。それに、あの怪物共やガスのせいで過去に培われた戦訓が大部分役に立たなくなるとはな。戦況が読み辛い」

 

 「左様。連合王国との戦がそれ単体が相手でも容易ではない。後は大陸北東の後アブソリエル公国とアレト共和国であるが…」

 

 一団の話を中断するように扉が開かれる。白を基調とした軍服のような聖職着を身に着けた男。時代錯誤な大剣を背負いながら奇跡をおこす巨人事件の英雄が扉を開け放っていた。

 

 「その二か国、私達が赴きましょうか」

 

 「いかに英雄とはいえ、義勇兵の長如きが来るべき場所ではないぞ。レント=キリュウイン殿」

 

 場違いな若者が現れた、というのが参謀達の共通認識であった。

 

 竜狩りの長であるガルシア=ニコライでさえ政治力を駆使することはあっても、参謀局に訪れる際はあくまでオブザーバーレベルでの参加に限られ、現場に近い意見を時折求められるに留まっていた。

 

 皇帝にも信頼が厚く、現場との摩擦がおきやすい参謀局という立場からみてもガルシアと竜狩り隊は信頼における間柄にあり、可能なことならば中央参謀局の直属部隊として自由に動かせる大駒になってもらいたかった。

 

 だが今のガルシアは重傷を負っている。悪竜ジークリンデの討伐を果たしたが、その代償に片腕を失っていた。消耗も激しくしばらく戦線に出るのも困難であり、竜狩り隊は現状すぐに各地へ派遣できる遊撃隊として中央に置いているがそれは名目上のものだ。現状竜狩り隊の戦地派遣を皇帝が許さない。

 

 帝都事変の元凶、悪竜ジークリンデは討伐できたがその心身を引き継いだ新たなる悪竜が帝国各地に襲来してきていたからだ。まるで挑発行為を繰り返すようにエンパス教の神殿を崩しては引き上げていき、宗教施設以外の被害は軽微ではあるが決してそれは無視できるものではない。

 

 敵は、戦線を飛び越えて銃後の市民達への攻撃手段を確保しているということ。やろうと思えば、第二の帝都事変を引き起こせるということだ。首都の防衛に皇帝直属の親衛隊以外に、竜狩り隊をおかなければならないというのは致し方ないかもしれない。

 

 だがしかし、その代わりにリスムにおける巨人事件の英雄がここぞとばかりに下院議員や我々軍務局にも顔をだすようになっていた。先の戦いで、連合王国の守備を僅かな手勢で荒らし厄介な拠点からの退却を促したことを功績としているうえに、与党大物議員であるバザード=イコライの強い支援を受けている。

 

 取り入ったものだ。モスコーで事件に巻き込まれたカリナ=イコライが強いエンパス教信者だったようだがそこから漬け込まれたのかもしれない。

 

 『元々、黒い噂もある人だったからな』

 

 三十代半ば、この中ではまだ若手である参謀が内心呟いた。そこを漬け込まれたか、それとも溺愛する娘を亡くした悲しみかららしくもなく隙をつかれたか。あるいは、その両方か。

 

 「ええ、差し出がましいことと場違いなことは理解しています。ですが、戦いが長引けば市民にとって不安な日々は続くでしょう。まず帝国で最優先にすべき問題は、敵との戦線を減らしていくことと愚考するしだいです」

 

 「そんなことは馬鹿でも分かっている。貴公がいけば、その前線を減らせると」

 

 「はい。帝国を包囲するような各戦線は大きく分けて三つ。東部連合王国方面。西部グルト王国とキシミ連邦軍が共同戦線を張る西部戦線。後アブソリエル公国とアレト共和国、オルレント自治州に半獣達を中心にした反乱部隊の北部地帯です」

 

 レントが指を鳴らすと、それに呼応したように室内の照明が暗くなった。ざわめきがおこるがすぐに壁一面に張り出されるように大陸地図が映し出され映像として流れるように敵味方問わず各勢力を模した駒が配置されていく。

 

 魔具を使い似たようなことができないかと研究が進められていたが、それをいとも簡単にこなしてしまう未知の能力に誰もが驚愕の表情を浮かべていた。レントはひっそりと『プロジェクションもどきをやることになるとはね』と呟いたが、誰の耳にもそれは届かなかった。

 

 「東部連合王国の切り崩しにくさは語るまでもないでしょう。彼らは精強である以上に強かだ、国力=戦力ではないことを皆様もよくご存じの筈だ。そして西部のグルト王国とキシミ連邦国。彼等は帝国への怨みが根強い。今まで様々な貿易摩擦や政治的の不和を国力で封殺してきたツケといったところでしょうか。連合王国の呼びかけにいち早く反応したのがこの二国であるがゆえ、戦争の準備前からもずっと整えていたと考えて良いでしょう。容易に勝利は掴めない筈。叩き潰すのは、まずは北です」

 

 「ここは若造が口をだして良い場ではない!静粛に…」

 

 「まあ、待て」

 

 声を荒げた者をいさめたのは、帝国参謀局中央参謀部局長であるイルドア=ウエル准将であった。口調こそ穏やかかつその顔は、細身の壮年とあって威圧感はなかった。だがしかし、蛇のように目を細めレントを値踏みしているのが誰もが気づいていた。そしてそれを、取り繕うことはしても隠そうともしていない。

 

 それを厄介かと思ったか、それとも望むところだと考えたかは分からない。だがしかし、レントはその視線を正面から受け止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この圧力、多分一流企業の圧迫面接でもここまで胃が痛くはならないだろうな。

 

 比べるのもおこがましい話だが、学生時代のアルバイトの面接とは比較にもならない空気感だ。戦闘能力がない中年男性の視線が、チート能力でブイブイ言わせていた俺にとってここまでの気持ちの悪さと緊張をもたらすのか。

 

 なんでも思い通りにいくと考えていたが、唯一稼げていなくチート能力でもどうしようもないものが一つあった。こんな状況にも対応できる社会経験とそのストレス耐性という奴だ。こればかりは、若造の身ではブラック企業でボコボコにされた限界サラリーマンが、異世界転生しなければ標準搭載されていないだろう上位スキルである。

 

 洗脳という手段も考えてはみたが、洗脳は生憎そこまで万能なものではない。ウェンディ=アルザスはあらかじめなにかしらの対策をしいていたのか効果がなかった。クーラは、強い衝撃でも受けたのか着せた恩義に重ねての効果であるのに打ち破られた。カナリア=エルにいたっては鋼の精神力を前に効果すら見受けられない。

 

 洗脳は便利ではあるが、信頼できる代物ではないと今は確信している。ここの者達がカナリアほどの精神力を有しているとは思えないが、それでも魑魅魍魎がはい回る政界とはまた違う、海千山千の者達が集う軍務局の中枢部なのだ。リスクも考えてそれに頼るのは最後の手段だ。

 

 本当に、この世界でここまで胃が痛くなるのは初めてだ。

 

 「北部の二国を先に叩きたい理由は、寒冷地故に一度叩き潰せさえすればその建て直しは容易ではない筈です。西方は豊かな土壌があり、東方は地続きの輸送路と独自の海路を持つが故国力の回復も図れますが、元々地力が弱い上に冬になれば港が凍結して使えないリスクがある北の二か国は継戦能力が弱い。建て直しが厳しければこちらが有利な条件で和平が成り立つでしょう」

 

 そう、調べた限りでは後アブソリエル公国とアレト共和国は寒冷地にあるだけあって年中使える港が存在しない。不凍港がないというのは、経済においても軍事においても大きく足枷となるものだ。加えて今は北方では長く厳しい冬季のまっただなかである。

 

 年中使える港がいかに魅力的であるか。それが分かりやすい例はロシアだ。

 

 ソ連以前の帝政ロシア時代から、あの国は不凍港という存在を求め続けてきた。あの広大な大陸を持つがそのほとんどは海面が北側に面しており使える港が少ない。軍事的な意味と安定した貿易路を求め、地中海の港を抑える為周辺諸国と戦いを続けてきた。

 

 だが帝政ロシアに過剰な力を与えない為、イギリスを始め欧州からの妨害を受けてきた程だ。だが、それ故に魅力的であった。例として、こんな話がある。

 

 第一次世界大戦中、帝政ロシアが革命で倒れ、まだボルシェビキ(過激派の赤って連中、レーニンとかスターリンとかとかとか)にとって代わられる前の臨時政府は国民からの戦争停止と同盟国からの戦争継続要請に板挟みの立場であった。

 

 現状は厳しい。国際社会の信頼を失おうがドイツとの単独講和をしようとした矢先、臨時政府の代表ケレンスキーにイギリスからある取引がもちかけられた。

 

 戦争を継続してくれるならばロシアに面する黒海の出口、トルコとブルガリアの間に存在するダーダネルス海峡を保有できる権利を認めるというのだ。それは、ロシアにとって喉から手が出る程ほしかった欧州側への出口であり悲願そのものだった。

 

 因みに、トルコとブルガリアは第一次世界大戦ではイギリスとロシアの敵側である。他人の土地を交渉材料にするのは、流石は二枚舌のイギリスというか世界大戦名物ではある。ドイツもブルガリア相手に似たようなことやってたし。

 

 そして、取引は臨時政府の判断を狂わせた。続く戦いの大敗、そして血で血を洗う内乱によりロシアは二つの意味で赤に染まっていく…のはまた別の話というやつだ。

 

 この世界、その二国はそこそこの国力はあるようであるが、畑から兵士がとれると言われた当時のロシアと比べれば人的資源も国土の広大さも劣っている。打ち負かせば、立ち直ることはない。

 

 「我々聖剣騎士団にお任せくだされば、かの国を討ち払うだけではありません。帝国が有利になるように和平交渉の役にも立つと考えております」

 

 「レント君。君の意見は至極当然、真っ当なものではあるが腑に落ちないことがある。確かに君達は義勇軍ながら精兵であることは認めよう。だが、何故かの地にこだわるのかね。打倒できれば戦果は大きいが、先陣となれば被害もでかいだろう。義勇兵がそこまで前にでる必要性があるのかね?」

 

 知るか。エンパスが北の二国をパクパクしたいって言っているんだからそうするだけだ。俺が独自裁量で軍を率いて良いのなら、あの反乱組織にいるランザを倒しに行くところから始める。

 

 最近ようやく、テンが多少は落ち着き始めてきた。地下で工夫を凝らして、日本風の畑や田んぼの再現をしたらそれに精を出し始め、身体を動かすことで心もまた落ち着いてきているようだ。もっとも、ありがたいことにその目と精神はまだ幼心のものであるようだが。

 

 幼児の世話と称して、泥人形に粥を呑ませる様はホラーそのものであるがそれで暴走しないならそれで良い。離れていても良い時間が増えたとあらば、すぐさまにでもランザを狩り立てにいくところだがエンパスが待ったをかけた。

 

 俺の力は大多数借り物だ。チート能力は便利だが、目には見えない外付けのハードディスクみたいなものだ。エンパスにしてみりゃ、USBを引っこぬくくらいの気軽さで取り上げるものかもしれない為まだ迂闊には逆らえない。

 

 「神の啓示により、です。我々は死を恐れません。主命が下されたならば、我等は喜んで殉死をいたしましょう。それが世の安寧と平和に繋がるならば」

 

 「オカルトかよ」

 

 誰かが言った。正直俺もそう思う。どう考えてもオカルトです、本当にありがとうございます、だ。だがしかし、カルトはカルトでも、目の前に存在するオカルトなのだからしょうがない。

 

 「よろしい。義勇軍、エンパス教の僧兵達にかの二国を任せるとしようか」

 

 「よろしいので?」

 

 止めるような一声がかかったが、手を軽く振りいなす。大言を吐いたからにはやらせ、ミスをしても帝国軍に被害はない。たかが外部勢力、状況によってはリスム支配の為に後々叩き潰す可能性すら出て来る。敵国との戦いで、その戦力が削れれば上等。情報も集めることもできる。そんな、腹積もりだろう。

 

 「そこさえ片付いてしまえば、残るは反乱軍と北部の小さな自治州。ランザ=ランテを追い詰める為の良い一手にもなるであろう。レント君、君が言う平和と安寧の為の覚悟がどこまで本物であるか見極めるとしようか」

 

 「恐縮です。その代わり、我等は傭兵でもない外部勢力。食料や物資の融通はお頼み申し上げます。後は占領後や基地防衛の手は流石に足りません。矢面に立つのは我等ではありますが、帝国の援兵がいないと流石に厳しさもあります」

 

 「兵站管理こそ軍部の基本にして得意分野だ。兵の配分も、考慮しよう。君達が十全に働けるよう支援をしようじゃないか」

 

 「それを聞けて安心しました。主より仰せつかった言葉を、伝えることができなによりです。この世から、早く悲惨な戦争行為が無くなるように粉骨砕身、身を捧げます」

 

 一礼をしてから、その場を後にする。細かい打ち合わせは信者で得意なものが当たる為、こちらで考えるべきは人選か。

 

 最初から犠牲にするつもりの者達はリスムの巨人事件で、失っても構わないバリエーションは対連合王国相手に威力偵察としての捨て駒として使用した。ここからは、ちょっとは惜しみたい。なんせ人手はあるにこしたことはないからな。

 

 せっかく集めたハーレムでもあるし……

 

 「そういえば」

 

 ふと、気づいて足を止める。そういえば、ここ最近は誰かを抱いた覚えがなかった。そりゃ前と比べて多少は忙しいが、ただの性欲発散で女を使用していない。

 

 「だよな、やっぱり」

 

 冷静に思い返してみると、テンを抱こうとしたらあのざまですっかり萎えてしまったあとだ。あれ以降、ムラムラきても誰かを抱こうなんて気分もおきずに自己処理ですませていた。

 

 テン以外を抱きたいと最近は考えたことがない。だがそのテンに、勘違いから父子の情を向けられてしまえば萎えてしまい行為に及ぶことができない。完全にデッドロックの状態だ。

 

 「まさか、今更な」

 

 情でも沸いたとでも、それとも惚れたなんて言い出すつもりか?どうせ人間は獣だ、愛情だの恋愛だのに振り回されるお遊戯は、楽しいものであるかもしれないが俺は二度とごめんである。

 

 むせ返るような気分の悪さに襲われたが、こういう時に思い出すのはあの時の顔だ。ほしかったものに包まれているのにも関わらず、絶望して豚のように喚き散らすあの女。思い出すだけで胸がすくような思いである。どうせ人間は獣、そう確信できるからそれだけでもやって良かったと心が落ち着く。

 

 「異世界でもできる精神安定法。復讐とその結末を思い浮かべることは、なによりも心が落ち着きますよってか」

 

 だからこそ、テンとランザの繋がりがいけ好かない。男女の関係はそんなものだが、父子の関係は?違うと俺は思いたい。戦国乱世じゃあるまいし、いくら養子とはいえ父と子であんなにグダグダになる関係性があってたまるか。

 

 とは言っても、親ガチャなんて言葉もあるくらいだ。かつてとある映画のキャッチコピーのせいでSNSが炎上騒ぎになったことだってある。現実には虐待を代表しすれ違いはおこりえることだと分かるが、それでも男女の関係より、少なくともマシであると言えると俺は信じたい。それを踏みにじる奴は取り合えず死んでも良い。テンのこともあるからランザ、お前はなおさらな。

 

 「これも、お前を追い詰める確実な一手だと信じておくか」

 

 エンパス教の神殿なんていくらでもぶっ壊しておけ。いずれ相手してやるから、せいぜい竜の力とやらで粋がっていれば良い。待っていろ、必ず追い詰めて殺しておくから。




 waifulabsという画像精製AIを試してみました。
 予想はしていましたがやはりというか、なかなかイメージに近いものは難しいですね。
 取り合えず、獣耳も無ければオッドアイでもないですが、イメージに一番近かったクーラを貼ってみます。
 あくまで挿絵代わりということで、お一つどうぞ。


【挿絵表示】

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