家族の仇は、娘でした   作:樫鳥

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 懐古主義を思わせるような護衛から、ノルンの趣味を察することができそうなものだ。だがしかし、その規模は度が過ぎているとも言えるように思えた。

 

 「まるで博物館だね」

 

 なんの気なしにクーラが放った言葉。今度は散弾銃という護衛が持つには些か強力な武器で武装した衛兵を引き連れたノルンに案内されて城内を歩いている。周囲を取り囲むように四人と、ノルンの左右に直接つき守護する二人だ。しかし、ここでその散弾銃を放てばせっかくのコレクションが破損してしまうだろう。

 

 石造りの城内通路、左右には武器防具の類が、恐らくは時代ごとに整理した状態で延々と続いていた。それこそ通路の一番最初には青銅で出来た棍棒と見紛うような剣まであるくらいだ。剣のみならず弓に槍は当然といった顔で並んでおり、格闘用の鋲が打ち込まれたグローブや茨のような棘が埋め込まれた鞭。鎧にいたっては各時代の代表的なものから馬用のものまで並んでいた。

 

 肉厚の大鉈を通路の途中で見つける。ウォーリアバニーが好んで扱う得物であり、切れ味は鈍いが力任せに首を捩じ切る戦法をとってくる。過去のトラウマが嫌でも思い出されるというものだ、同時にあの夢で見たウェルのことも。

 

 「その鉈に思い出でもあるのか?それとも苦い記憶でも?」

 

 「どちらもだ」

 

 「どちらも、か。その鉈の使い手達と敵対して生き延びた経験があるなら、傭兵の間ではそれだけで自慢話になる。ほら吹き扱いされることも多いようだがな。貴様はどうなんだ?」

 

 この戦争でも、恐らくはどこかの国に雇われ戦線に勇んで躍り出ているのだろう。悪竜を継いだ今の状態だとしても、あまり敵として遭遇したくない。

 

 「戦場では出会いたくはないものだ。遭遇したことだって、ほら吹きならどれだけ良かったか」

 

 あくまで俺が出会った存在は、人妖としてのウォーリアバニーであるが広義の上では似たようなものであろう。

 

 「敵にとっては、今や悪竜こそがそのような扱いだ。帝国と連合王国が戦争する前から解放軍の戦線に加わっていた。そして、帝都事変の夜は帝国にとっては相当のトラウマのようだ。貴様が散発的に帝国各所のエンパス教を襲撃したおかげで、敵の精鋭である竜狩り隊は現在首都防衛に回されている」

 

 ノルンが赤髪を掻き分けながら振り向いた。三本線の傷が走る顔と、値踏みするような瞳と視線が交差する。

 

 「近頃は貴様を英雄扱いする者まで出ているそうじゃないか。どうだ?戦場で戦果をあげる誉れ、敵に恐れられる優越、人知を超えた力を手にした感想は」

 

 「俺はただの家具職人だ。いや、そうでありたかった」

 

 想定とは異なる返答に、ミルフは訝し気な顔をした。凡庸なリアクションなど求めるものではないのだろうが、知ったことではない。

 

 「ただの家具職人でいたかった人間に、そんなことを言われても帰ってくる言葉はお前が望むものではないだろう。ただ現実はそうでいられなかったし、今求められているのはそのようなものではないのは分かっている」

 

 ジークリンデの命を使い潰してしまってまで生き永らえたどころか、彼女の存在意義まで受け継いだ。それに家具造りから離れて長くなるし、夢での経験等カウントには入らないだろう。そもそも、師匠である工房長を振り切ってテンを殺す旅に出た時点で職人と名乗るのもおこがましいという話だ。何時かはまたと考えたことは幾度もあるが、恐らくもうそのような日々は訪れない。

 

 今はジークリンデに恥じない、悪竜としての生き方をまっとうする。それが今俺ができる戦いの手段であり、彼女に対する手向けなのだから。

 

 「英雄なんて呼ばれたくはない。そんな大層なものではない。ただ、目的の為に手段を行使するだけだ。そのような探りを入れなくても、お前は俺を利用すれば良いし俺はお前を利用する、その関係で満足はできないのか?」

 

 「元人間という噂を聞いていたが、力に溺れ増長した阿呆ではないと分かっただけ探りに収穫はあったというものだよ。さて、それでは本格的に今後のことを話そうか」

 

 護衛二人が観音開きの扉を開けると、無骨な城内と変わらない前線基地のような必要なものしかないこざっぱりした指令室のような部屋に通される。室内の中央には大量に書き込みがされた北部周辺地図が広げられており、議論の痕跡がうかがえる。

 

 壁には後アブソリエル公国の国旗である、兜を被った女騎士の横顔が描かれた布がかけられていた。反乱騒ぎの折、かつての鍬と金槌が描かれた赤色の国旗は全て燃やされ、古い伝説である英雄を導く戦乙女をあやかったものに変えられたという。

 

 「蒸留酒の一つでもあると思ったか?」

 

 お堅い指揮所でも、嗜好品として酒の瓶くらい多少は置いてあることが多いと聞く。だが、暗殺騒ぎがつい最近まであったこの女王の近くにその手の、殺す為の工作がし易いものは今でもおけないのであろう。

 

 「簒奪者は大変だね、怨みが多そうで」

 

 「無能が玉座に座り続けることこそ罪だ。北方の国々は常に飢えと寒さ、不便さに不毛な土地と戦い続けることが義務付けられている。凍らぬ港、肥沃な土、そして従属ではなく対等な関係。私は国民が生きていくうえで幸福を得る為に武器をとった。帝国に媚を売り私欲で国営をする父とその側近を皆殺しにしてな。それを簒奪者と言われるならば、私はそれを肯定しよう。例え後世にて罪人としての汚名で語られようがな」

 

 彼女が武器を手に取る理由か。確かに北方諸国は全体的に土地が痩せている。豊かな地盤を持つ帝国領土はやはり魅惑的なのだろう。冒険者時代に領土開拓の為エルフ領を潰したことを思い出す。エレミヤは、今もまだあの土地の小麦を取り寄せパンを焼かせているのだろうか。

 

 「本題に入ろう」

 

 「待て。軍事にそこまで詳しい訳ではないのだが、参謀とかそういう立場の人間はいないのか?」

 

 「こちらにはこちらの事情があるということだ。まずは黙って聞くのだな」

 

 地図をざっと確認する。後アブソリエル公国は現在地、首都トラウゼルをグルリと回るように土地が開拓されている。北方には港があるようだが、現在は氷に閉ざされており輸送や貿易はできないが逆に言えば帝国軍の海軍力も介入ができない。

 

 トラウゼルより南方には、痩せた土地でも強い農作物を育て、短い草を食ませる為羊を放牧させる農村が点在している。当然ながらそんな農村部に防衛能力は存在しない、敷いて言うなれば井戸に毒でも投げ込めばある程度の効果は出るだろうが流石に自国でそんなことはできないだろう。

 

 そしてその南方、トラウゼル程巨大ではないがちょっとした山脈を利用した砦となっている。砦と帝国領の間には巨大な大河が流れており、便宜上ここが国境となっているらしい。

 

 現在砦には、公国に入国拒否したエルバンネと護衛のエルフ達やついてきた半獣達が詰めている。ここが唯一の前線基地だ。しかし、知ってはいたが改めて地図を見ると帝国領と比べれば猫の額だ。これならば、肥沃な土地を求めて南下したがるのも無理はないあろう。

 

 「東の山脈、この地帯はなんなの?」

 

 クーラが公国の東方に指を差す。幾つかの黒点が存在しており、そこに疑問を覚えたようだ。

 

 「そこは我が国の鉱山採掘施設だ。我が国も地下資源は比較的豊富でな、現在も急ピッチで掘り進めている」

 

 自治州から採掘資源を買い集めているが、自国にも達派な鉱山地帯があるようだ。鉱山の先にはアレト共和国が存在しているようであり、それを見て少しだけクーラが眉をひそめたような気がした。だがそれ以上はなにも言わずに、短く礼を伝えた。

 

 砦が陥落しない限り、大軍がトラウゼルに到着することはない。

 

 「帝国軍の様子は?砦から見る限りでは陣営を敷いている様子もなかったが」

 

 「二度、帝国軍を撃退した。現在は反抗作戦計画を進行中だ」

 

 「帝国軍が近づいていると聞いたのだが。第三派が来るんじゃないのか?」

 

 「砦周囲の山々には物見やぐらも存在しているし、帝国領内にも商人に紛れた草の者がいるが新たな情報もない。どうやら、誤報であった可能性が高い」

 

 二度撃退したくらいで帝国軍が引き下がることがあるのか?それとも北部戦線は重要視されていない?ハボックにいた時は他戦線の情報が入り辛かったから詳細が分からないが、他でもこんな感じなのだろうか。

 

 「戦術を変えた?」

 

 クーラが独り言のように呟いた。オルレント自治州にも、与し易い勢力と考え攻勢を強めていたようだが最近は少なくなっている。だからこそ、戦線を離れてこうして公国の増援に来た訳であるが。

 

 「帝国がいかに大国であろうと動かせる兵力にも限りがある。なにせ三方向を敵に囲まれ、海戦の警戒までしているとなれば人手はいくらあっても足りないということであろう」

 

 「内部防衛ドクトリンに切り替えたと?」

 

 「聡い子だな。ドクトリンなんて言葉を知っているのか」

 

 「どうも。これでも一応勉強しているんで」

 

 違和感がある。だが一度は目撃されていたという敵の軍勢がいなくなったのは奇妙だ。誤報と言われればそれまで、戦場の霧なんて言葉があるくらい、戦争は謝った情報が多いのは分かるが。

 

 「アレト共和国の方は?」

 

 「あの国は連合王国の犬だ。だがそれと同時に、北東部に王国と繋がる道もあり何時でも援軍が送り込まれる状態にある。下手に刺激し北部の戦力を厚めにしないように帝国も攻めあぐねている可能性もあるが…私なら攻めるがな」

 

 アレト共和国が陥落すれば、北方の同盟諸侯は最大勢力の連合王国との連絡線が、少なくとも冬季の間は完全に途絶えることになる。仮に攻めあぐねたとしても、圧力をかけていれば同盟側最大勢力の連合王国から兵士を引き抜けると考えれば悪い選択肢ではないように思えるが。

 

 どこかきな臭さを感じる。だがもう一度地図を見ても、帝国とアレト共和国が接する国境は非常に小さい。そちら側に兵を差し向けるとすれば否が応でも気づくという訳だ。

 

 「不気味だな」

 

 「ほう、悪竜殿はこの戦況にそのような感想を言うか」

 

 やや皮肉が入った口調に顔をあげるが、ノルンの表情が楽観している様子はない。キナ臭さを彼女も感じてはいるが、現状北部戦線が安定している以上攻勢に出るという選択肢は悪くないと考えているようだ。敵の企みがあろうと、先手をとって潰せることができれば大戦果とも言える。

 

 攻撃は最大の防御とは言うし、砦を落とされれば首都に攻撃が直撃する可能性がある現状前線基地はある程度はほしい。仮に砦が陥落しても首都の防衛は下手な要塞よりも頑強に思えるが、同時に国土が蹂躙されているということを忘れてはならない。

 

 政治的なことを言えば、西部の二国や連合王国から攻勢をせっつかれている可能性もある。後アブソリエル公国だって国土は貧しいほうだ。大なり小なり共和国経由で支援がはいっているようであり、それを故に強く要請を跳ねのけることができないだろう。

 

 「同感だ。だが、今動かず何時動くかとも言える。目標は帝都北部の街ルーウェス。広い街道の接合点でもあり、ここを制することができれば我が国とアレト共和国に対して大きく攻勢に出ることができないだろう。当然戦力もそれなりに入っているだろうが、得る物が多い」

 

 「それで、その作戦でどうランザを利用するつもりなの?」

 

 「歯に衣を着せない言い方、嫌いではない。だが口の利き方には気を付けた方が良いだろう」

 

 護衛の一人が散弾銃をわざと音を立てて掴んだ。ガランに身体を張った文句を言われた手前、流石にここで暴れるようなことはしない。

 

 「使う覚悟があるならうまく使え。だが、俺ならともかく仲間達を使い潰すような扱いは許さんし、彼等には彼等独自の行動権利がある。そちらの指揮下には入らない」

 

 「その言い方では、貴様なら使い潰しても構わないと聞こえるが?」

 

 「こんな身体だ。多少は、人より矢面に立つと言うだけだ。それで勝てるならば、そうする」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クーラと呼ばれた不躾な少女が、そっとランザの服の裾を掴んだ。この人は、捕まえていないと本当に何処かに行ってしまいたいとでも言いたげな、不安そうな色が一瞬瞳に浮かんでいた。

 

 さて、こうしてかの悪竜ジークリンデを継いだ男というものを見てみたが、評価と扱いに困る男というものが第一印象だ。

 

 先程のように後先考えずに何時でも暴発し、唯我独尊を貫くような態度を見せたかと思うが今は逆に仲間のことを気にしたり、利用しても構わないと言わんばかりのある種矛盾した言動をとっている。

 

 先程仲間の一人が自害しようとした際も、表情には現れないものの目には後悔の色が浮かんでいた。こうして付き人の半獣に不安そうな表情を向けられている様は、とても歴史上悪事を愉快犯で繰り返したという悪竜の後継とはとても思えない。

 

 この男は仮面を被っている。だがそれを演じきれる程の器用さは持ち合わせていない。あの悪竜の後継、凡夫がなれるとは思えないがどこか、どこにでもいそうな男の顔がこの短い間で見え隠れをしていた。

 

 野望に溢れる男ならば扱いようがある。力に溺れる愚者ならば使い潰しにできる。だがしかし、分不相応な立場を演じている、戦闘能力が高い男となればさて、コントロールには一苦労いりそうだ。演じている自分と、素の自分。どこでどちらが顔を覗くかは、もうしばらく観察をし把握に時間をかけなければならない。

このような男、使い潰せるものならどれだけ楽であろうか。行動の根底にはエンパス教が絡んでいるとガスパルが話していた。

 

 「攻勢作戦は二日後明朝に行う。貴様と解放軍の面々は遊撃隊として攻勢部隊に参加をしてもらおうか」

 

 オルレント自治州での戦闘記録から、黙っていてもこの男は前線に進んでいく。ならば下手に手綱を握らずに野放しておけばある程度の成果はあがるだろう。利用方法は、死ななければ情報を集め今後に備えていけば良い。

 

 「解放軍の指揮権はそちらに任せる。統一指令部を造りたいと言い出す輩もいるが、貴様は人が手綱を握れるようなものではないであろう?悪竜殿」

 

 「異論はない。だが攻勢に参加する前に一つ確認しておくことがある」

 

 「聞こうか」

 

 「ガスパルとこの国の関係だ。他国の使者がいる場に居合わせるとなれば、それなりの立場で扱っているのだろう?」

 

 ガスパル、奴との付き合いか。こちらとしては、この男とガスパルの関係が気になるところである。あの神出鬼没な男と悪竜の後継がどのような関係をしているのか。

 

 「国家の機密にあたる。だが敢えて言うなれば、現状打破に必要だということで重宝しているということだ」

 

 「現状打破か」

 

 ランザは何事か考えているようであった。敵対しているとまでは言わないが、油断できないと認識している間柄か。

 

 ガスパルについては胡散臭いのも百も承知。だがしかし、リスクを背負わない捨て札を切るだけで危機を乗り越えることができるならば戦争等はなからおこらないだろう。そういう意味では、この男も奴と似たようなものなのだが。

 

 奴が地下で製造している兵器。そしてその使い道を聞いた時は頭がおかしいのかとも感じたものだが、元より北方三国の力を合わせても帝国の北面軍に比べれば劣勢も良いところだ。帝国一強の時代を終えるには、連合王国を含め周辺諸国の戦力を揃えても勝機は五分に満たないだろう。

 

 鬼札が必要なのだ。それもただの切り札ではない、とっておきが。

 

 「奴と貴様は敵対してはいない。だが、油断ならぬ関係ではあるようだな」

 

 「そちらの国に明かせない事情があると同時に、こちらにも明かせない事情というものがある。互いに踏み込まない方が良い。だがしかし、敢えて忠告をさせてもらう奴をあまり重宝しすぎない方が無難だな」

 

 「忠告はありがたく受け取っておこう。そして、こちらからも一つ質問をさせてもらう。エンパス教、あれはただの武装宗教組織ではないとは聞いている。だが、たかが宗教組織に何故悪竜がそこまで牙を剥く?」

 

 連合王国の怪しげな機関もエンパス教を嗅ぎまわっているという。帝国の裏側で暗躍する怪しげな組織とでも形容できるかもしれないが、生憎この国は宗教と名の付く者の流入は厳しく制限していた。

 

 神に祈りを捧げること。それにかかる時間とコストを、娯楽や産業、生産に技術にあてた方が合理的だ。奴等の謳い文句に地獄や煉獄というものがあるが、北方の民は今この瞬間こそが、北国の厳しい暮らしこそが大きな問題だ。

 

 死後の問題よりも、目の前に横たわる衣食住の保証こそ重要。余計なことに気を回す必要は、余裕や余力がもててからの問題である。あまつさえ、行動原理を神とやらの指針に委ねてしまうなど、それは人間性の放棄に他ならないのではないだろうか。

 

 無論宗教という存在のメリットも認めるところはある。国がカバーしきれない人民に対する福祉や、思想の統一についてその効果は無視できない。過去の歴史で宗教弾圧が行われた連合王国も、現在はある補助制度がなく政治にも関わることができないという前提で細々とした活動くらいなら許可をしているくらいだ。

 

 政治的にはメリットとデメリットが存在する宗教というものであるが、一個人がここまでエンパス教に牙を剥く理由が気になるというものだ。それも、聞いた話では悪竜となる前からかの組織を敵としてとらえていたようである。

 

 「個人的な事情だ」

 

 「釣れない物言いではないか。情報がそれだけなら、いかようにも想像ができてしまうが?見たところ貴様は、教会の宗教を信仰しているようでもない。エンパス教を睨み、神殿を潰す貴様の行動、その原動力はどこから出ているのだろうな」

 

 「そうだな、敢えて言うならばアンタと同じ問題だ」

 

 「ほう?それはますます気になるところだ。共通の問題点があると?」

 

 ランザが踵を返す。扉に手をかけて、でていく直前にこちらを振り向いた。複雑そうな半笑いを顔に浮かべたが、ここに来て初めて人間味のようなものが見えるような表情だ。

 

 「家族の問題」

 

 それだけ伝えて、奴は出ていった。こちらを一瞥した後、クーラも後に続いていく。

 

 しかし、家族の問題か。

 

 前王と跡継ぎであるその息子、私にとっては父と長男を処刑台に送りにした。平穏とは言い難い、血生臭い解決であった。父とその信奉者に、兄派に属していた者も思想犯、或いは反逆罪として投獄、処断していっている。帝国の属国を抜け出す為に、北方の民が安楽に暮らせる土地を確保する為に意味のある死を与えた。

 

 それ故に、私と家族の問題はまだ終わってはいない。父の政策が誤りであり、それを継ごうとした兄が間違っていることを証明する為に、この国を強く豊かにしなければならない。それができて初めて、この問題は終結するだろう。

 

 「家族の問題か」

 

 思うところがある故か、私の口角は自然と上がっていた。

 

 「それならば、致し方ないな」

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