家族の仇は、娘でした   作:樫鳥

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盤面の崩壊


 居残り組。

 

 今回の遠征で、レントが連れていった者達以外は単純にそう呼ばれていた。対連合王国を相手にする為の要として信用する戦力を置いていくと彼は言っていたが残された者達は肩を落としている。

 

 全体的に士気が落ちているような状況であるが、カナリアにとってはどうでも良かった。これから行うことを考えれば、その手の気配り等意味はない。

 

 カナリア=エルは考える。加護持ちとは、個人でならともかく戦争に持ち込む手駒としては些か以上に心許ない。これはリスムの巨人事件、連合王国との一戦等を通してみても浮き彫りになっている欠点だ。

 

 噂によればどこかの娼館をまとめる主は、レントの直属を宣伝部隊と言っていたそうだ。そう皮肉られても仕方ない面もあるしそういう効果が出たのは確かだ。

 

 だが純粋に軍属ではなく、荒事慣れしている者も少なくない為能力を過信した結果既に複数人の使者が出ている。意図的に間引いたリスム巨人事件は抜きにしても、連合王国との一戦では想定以上の死者が出た。

 

 それなのに、能力が一芸特化の者が多く軍隊として重要な互換性がない。プライドが高い者が多く協調性もない。レントの号令が無ければ地味な仕事や汚い仕事もしたがらない。私から見たら、過去最低最悪の集団だ。嫌悪すら覚える程に。

 

 無論使える者もいた。玉石混交とはよく言ったもの。例えばクーラ=ネレイス。自分の立ち位置を理解し暗く地味で、汚い仕事も平然とやってのける優秀な人材だった。レントの管理不足でアレを手放してしまったのはその後の裏における仕事に響いたものだ。

 

 だがもはやそれもどうでも良い。集められた顔の良い間抜け面を見ながらも、何時ものウンザリとした感情も浮かばない。

 

 「それで、全員集めた上でのレント様からの伝言ってなんなんですかぁ?」

 

 戦時中だというのに、ぬるま湯のような気の抜けた問いかけ。最近は連合王国との最前線も膠着状態になって早い。厭戦気分という訳でもないが、敵も攻めてこないうえにやる気の源が不在という事実は確実に響いているようだった。

 

 「これで全員ですか?」

 

 エンパス教の祭殿施設は、神殿と呼称されている。ここリスムには、巨人事件の傷跡である跡地に神殿が建てられ、かの事件の被害者と英霊を祀る為にその規模は他よりも大きいものであった。広い説教台の幕裏から白い装束を着こんだエンパス様が姿を現す。

 

 「レントが連れだした者以外は」

 

 「よろしいでしょう。さあ、始めましょうか」

 

 並んだ顔が怪訝そうな表情を浮かべている。一応は自分達が所属する組織の現人神のようなものとして認知はしているのだが、特に信仰も薄い連中にはそれ以上の関心もないだろう。加護の力はレントの能力、彼女もその類で与えられた役職だと思う者もいたようだ。

 

 エンパス様が鈴のついた錫杖の石突きが床に叩きつけられる。その瞬間、神殿の天井に神々しい光が出現した。巨大な光は天上に彫刻された想像上の天上世界を塗りつぶし、不安になるような白色に覆われている。

 

 動揺の声が聞こえるが、ほう。それでも勘の良い者はいるようで得体のしれない事態から逃げ出す為に出口に向かう者もいた。異変に際して硬直せずにすぐに動けるのは有能の証だ。それがどういうものであれ、リスクを計算できるのだから。

 

 「私が」

 

 突撃槍を投げる。普段からこのオルレアン鋼の重装と槍を装着しているので、武装していても違和感をもたれなかった。巨大な大槍は、扉の手前に突き刺さり内開きの扉が開かないように固定した。奴等の膂力では、オルレアン鋼の突撃槍は引き抜けない。

 

 「なんのつもり!?レントはこのことを知っているの!?」

 

 「必要ない」

 

 「はぁ!?」

 

 「レント=キリュウインはただの一使途にすぎない。神託ならば、直接このお方から聞けば良い。エンパス様がお言葉を放たれるのならば、わざわざレントの許可を得る必要があるか?」

 

 扉から出ようとした者が、嘲笑するような顔を浮かべた。未だ困惑する者が多いというのに、切り替えの速さから玉石混交の中では玉に近い人間だろうか。

 

 「悪いけど、アタシは別に神様に従っている訳じゃないんだよね。レント君の指示なら従うけど、訳の分からないことに従う義理なんて」

 

 「愚かな」

 

 ここから抜ける為に加護を発動しようとした瞬間、天井からの祝福が光柱となりその者に満ちた。悲鳴のような声が聞こえるが、恐らくは神の意志に触れて矮小な人間の思考容量が追い付かずに軋んでいるのだろう。

 

 「主は汝らを試すであろう」

 

 エンパス様が語り始める。ようやくこの異様な光景に危機感を覚えたのか、動き始める者が現れる。

 

 混乱する者、立ち尽くす者、状況を分析しようとする者、問いかける者、逃げ出す者、そして武器を握りこちらに走る者。

 

 今の惨状を見ても気が付かない愚か者は加護を発動した瞬間、光柱に呑まれて祝福を受けた。まだ賢明な者は剣、槍、棒をこちらに向けて振り下ろす。加護は使えないが、こちらの武器が無ければ、無力化できると思ったか。

 

 槍を払い、剣を手甲で受け止める。オルレアン鋼で鍛えられたこの装備はただの剣等火花を散らしながら弾く。棒を掴んで引き寄せ、顎に一撃を与え脳を揺さぶる。奪いとった得物を振るい襲い掛かってきた者達を壇上から叩き落す。

 

 「こう見えて、亡国の騎士団長を張っていた身分でな」

 

 加護を放とうとした者、襲い掛かってきたが無力化された者が光柱に呑まれる。その光景を皆が恐怖に染まった顔で見ていた。最早気が付いた筈だ、加護という選ばれし者に与えられたという力は所詮借り物であると。そして、それが無ければ自分等等ただの容姿の良い小娘共にすぎないと。

 

 先に光を浴びていた者達が、光柱から出てくる。

 

 「ああ、主よ」「我が神よ」「ご慈悲を」「不敬をお許しください」「愚かな人間をお導きください」

 

 真理に気が付いた者達が、恍惚とした表情を浮かべていた。心から漂白された、神の意志に全てをゆだねる為のヒツジ達がここに並んでいる。だがまだそれを理解できていたない者達が大勢いる。理解不能な嫌悪感と恐怖を、哀れさをその顔に浮かばせて。

 

 「カナリア!どういうことなの!?なにが目的でこんなことを!」

 

 「目的か」

 

 私の目的は、最初から決まっている。だが、ここで話しても意味はない。皆が信仰に目覚めれば、そのようなことに興味を無くすだろう。

 

 天井が更に強く輝く。落ちる光柱が増え、教会内は真の祝福と加護に包まれた。

 

 「カナリア」

 

 「はっ」

 

 「世界のありようは悪魔や竜達によりかのように醜く歪んでしまいました。その間違いを正す時が来た、そう考えて良いでしょう。歪みの被害者である貴公であれば、真の平和と楽園がどのようなものか理解できると考えております。世界は、真なる神の到来と導きを望んでいます」

 

 「承知しております」

 

 跪くこちらの頬をさすりながら、エンパス様は自愛に満ちた表情を浮かべた。

 

 「人を正しき方向に導くのです。貴公であれば、その新たな役目を無事果たすことができるでしょう。全ての人間にパンを。全ての人間に祈りを。全ての人間に祝福を。この混沌とした世界を正す為、いかなる犠牲を払ってでも神の尖兵として働いてくれますね?」

 

 「この身、滅びても」

 

 「よろしい。未だ私の力は不完全であり、貴公には働いてもらうことになるでしょう。やるべきことは、分かっていますね?」

 

 神殿を覆う祝福が晴れる。加護とは、元を辿ればエンパス様がレントにお与えになった力。それを内包する者達が、世界の倫理に触れ正しき姿になるのは早かった。皆が世界の正しき姿に気が付き、平伏し、己が矮小さに恥じて神に首を垂れていた。

 

 「誰か、旅立つ支度のある者はいませんか?」

 

 「私がお役に立てるならば」

 

 「いえ、貴女には新たな使途としての役目があります。彼女達に神託としてお願いしましょう」

 

 エンパス様が壇上から下を見ると。正しき信仰に目覚めた者達が一斉に立ち上がる。

 

 「私が」「あたしこそが」「主の為ならば」「あるべき姿の為に」「罪深きこの身を捧げます」「選んでいただければ幸いです」「見てください」「ボクを見て」「世界を正す助けになります」

 

 「では、最初に声をあげたお二人にお願いしましょう。その魂、英霊として神の一部となり永遠の安息を得られるでしょう」

 

 声をかけられた野戦服と修道女が、これ以上のない喜びの返事をあげた。それぞれが、背中に背負うライフル銃と太腿もに隠していた短剣を取り出す。

 

 「兄弟たちよ。姉妹たち、神の憐れみによってあなたがたに勧めます。自分の体を神に喜ばれる聖なる生けるいけにえとして献げなさい。これこそ、あなたがたのなすべき礼拝です」

 

 笑みを浮かべながら短剣が首筋に添えられ、銃口が口内に添えられた。

 

 「あなたがたはこの世に倣ってはなりません。むしろ、心を新たにして自分を変えていただき、何が神の御心であるか、何が善いことで、神に喜ばれ、また完全なことであるかをわきまえるようになりなさい」

 

 ナイフが皮膚と血管を捌き、銃弾が口腔を通り抜け首筋を抜ける。その瞬間、可視化された魂のようななにかが浮き上がり、エンパス様に献上された。

 

 「瑞々しい信仰。ああ、早く無知蒙昧な竜や邪悪な好奇心を持つ悪魔達に追いやられた皆様にも味わっていただきたいものです。その為には、まず火竜を亡き者とします。呉越同舟となりますが、かの災厄の化身を浄化させることこそ理想郷への道を開けるでしょう」

 

 ごえつどうしゅう…がどういう意味かは分からない。異界か神の知識であろうか。だが、それを望まれるのであればそれを為す。私の使命であり生きる目的だ。

 

 「子羊達を導きなさい。災厄の竜を巣穴から炙り出しなさい。正しき世界到来の為に」

 

 「「「「「正しき世界到来の為に!」」」」」

 

 再び、淡い光が神殿を包み込む。視界が輝く世界に覆われ、再度色彩を取り戻した瞬間世界は白銀と岩肌が目に映った。

 

 目の前には、開拓者の街を改築した即席の砦が建造されている。見張り台の上にいた者が、驚くように声をあげ警戒の為に吊るされた金盥のようなものを叩き始めた。そしてすぐに、エルフや半獣達がライフル銃や弓矢を手に持ち砦の上に展開を始める。

 

 「成程、あそこはハボックか。火竜の巣に身を潜めることを良しとする、異端達の巣窟。まずはそこの掃除から始めよと」

 

 手元には投擲をした突撃槍が戻っていた。背後に続くのは、真なる信仰に目覚めた加護を持つ者達。

 

 「竜に触れた不浄の魂は、もはや癒せまい。死者の国で、苦難と苦痛の中、罪が許され何時の日か神の救いを受ける日が訪れるのを願おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 巨大な光柱と、そこから現れた白を基調とした統一性の無い装備で固めた者達。

 

 ハボックの居残り組は、敵の襲撃に関しては警戒を強めていた。遠距離まで見渡せるエルフの弓手が見張り台に立ち、砦付近は感覚と警戒力がある半獣のチームで哨戒をしすぐに敵が来ても分かるように動いていた。

 

 だがしかし、超常的ともいえる現象から急に出現した一団に対する対応までは想定外だった。

 

 出来合いの素材で作られた壁と門はすぐに破られ、少数ながら異常な強さの一団が侵入を開始する。弓矢は弾かれ、弾丸は回避される。近接攻撃を仕掛けた半獣が両断されて転がり、非戦闘員をなんとか逃がそうとしていた者と避難しようとした戦えない者達は顔中に青い水泡のようなものを浮かべ苦難の表情のまま息絶えていた。

 

 冬をこす為に後アブソリエル公国が寄越してくれた物資と糧食が入った食糧庫が燃えている。訓練場には死体が積みあがっていた。集められた遺体に火がつけられる。

 

 その顔には忌避感も残虐性もない。ただ自分がなすべきことを為しただけとでも言いたげな、使命感と恍惚とした表情がまるでハンコのように並んでいる。それぞれが美形であるが故、それ故に不気味な風景だった。

 

 ギリギリ後アブソリエル公国に向けて鳥は飛ばせたものの、ものの半刻でハボックは壊滅した。あれだけ苦労してとった拠点が、今まで戦ってきた者達がさらりと散ってしまった。

 

 「ああ、やめろ」

 

 冬を越す為の食料品を少しでも確保しなければならないと、みんなで作った畑が踏み荒らされている。寒冷地に強い植物だからと渡された種子が、耕された土に埋まっていた。

 

 ガランさんが提案し、エルバンネさんが種を選別し、ミルフさんが土を耕すのを手伝ってくれた。ランザさんが時折様子を見に来たこともある。庭に小さな畑を作った昔を思い出すと鍬を手に取ろうとしたことがあったが、大将ならばもっとやるべきことがあるとみんなに止められた。その代わりクーラさんがこっそり夜中に雪をかき土の上に積もり過ぎないように文句を言いながら手入れをしていた。

 

 あの畑は、なんというか、これまでまとまりのなかった皆で協力して初めてできたものだった。それが容赦なく踏み荒らされていくことに、我慢ができない。

 

 「やめろ!畑を踏むな!」

 

 戦えないのだから隠れていろと言われた。でも、このまま黙っていることはできない。ここで黙っていたら、自分の中でなにかが終わってしまうと感じたからだ。

 

 「半獣の子供か」

 

 大仰な鎧姿の騎士が集団から出て来た。その声は、穏やかなものであったが厳粛さも合わせもっているように聞こえる。そして、憐れみも。

 

 「なん……なんだんだよお前等!み、みんな…みんな殺して!女も子供も!なんなんだよお前等!そんな薄笑いで、なにが面白いんだよ!」

 

 「これは祝福だからだ」

 

 手に持つ突撃槍がこちらに向けられる。向けられる圧で、足ががくがく震えはじめた。勝てるとは思わないが、知性だけでもなく本能でもそれだけで分からされた。殺される、僕は殺されてしまう。

 

 「災厄をまき散らす竜の庇護を受けた時点で、貴公等は穢れてしまっている。だが救いは万人にも訪れるべきだと私は考える。汚染された魂はこの世界では浄化はできない。しかし、死後苦難を背負うことで魂は浄化されより高次の世界へ導かれるだろう。貴公等に手向けることができる、私からの祈りであり救済だ。食料の心配も、冬越えも、差別も偏見も最早気にしなくてもよい。救われるのだ、この欲と苦悩に満ちた世界から」

 

 「誰が、そんなこと望んだんだよ!僕らは望んでいない!」

 

 「神が救済を望まれている。真の救済があらんことを」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ランドルフ様!大変です!」

 

 火竜の祭壇に、コボルトが大慌てで駆けこんできた。その慌てようから、遂に恐れていたことがおきてしまったかと眉をひそめてしまう。

 

 「ハボックに突然現れた一団が急襲をかけました!凄まじい戦闘力で砦を壊滅させてしまい、こちらに向けて進軍してきます!」

 

 「そうですか、遂に来てしまいましたか。ランザさんも、間に合わないでしょうね」

 

 ロウザにハボックの援護をお願いしたが、準備を整えている間に落とされた。いえ、仮に間に合っていたとしてもエンパスの力で人間をブーストしているならば無駄であったかもしれない。

 

 「ロウザはどうしていますか?」

 

 「我等が使命はこの霊山の死守。防衛をする為に前線で準備をしています。例え奴等の足を掴んででも、ここには通しません」

 

 それが無理だと言うことは、ハボックの早急な壊滅と異様な雰囲気から察して無理であろうということは理解しているだろう。だがしかし、伝令に来たコボルトは胸を張りそう宣言した。彼らはそうしてしまうだろう。例え、私から逃げろと命じたとしても。

 

 「申し訳ありません。貴方方には、苦労をおかけしてばかりです」

 

 「我等の祖先、追立られた者達を匿ってくれたのは貴方様です。今こそ、御恩返しをする時だと存じます」

 

 「奴等の狙いは、私の首でしょう。ですが、私はここから離れることはできません。そしてすぐに戦うこともできない。だからこそ、皆様に命令をします」

 

 過去の過ちは、何時まで経っても消えない。そのせいで、私はコボルト達にこういうしかない。

 

 「時間稼ぎを頼みます。私は、この世界を終わらせる訳にはいかない」

 

 「承知しています。ご期待ください」

 

 伝令のコボルトは走り去っていった。彼等は使命を真っ当するだろう、命をかけてでも。

 

 「私の半生は過ちに満ちたものだった。だからこそ言える、この世界は誰かの私利私欲の為に利用して良いものではないと」

 

 祭壇の奥に向かい、赤い脈のような痣が入った石碑に人の手を置く。それだけで、真下を蠢く溶岩が荒れ狂い祭壇全体に大きな地震がおこった。溶岩流から溢れたエネルギーが、元は自分の力だった者が流出する。神殿の柱を伝い、力が石碑に集まり身体に戻ってくる。

 

 眠っていた地脈が活発化する。押さえつけられていた力が、反動で跳ね上がるように地の底で大地がうねりながら荒れ始めた。どこまでなら耐えられる。どこまでなら、エンパスを倒せる。

 

 私はまだ、今を生きる全ての生物の為に世界を終わらせる訳にはいかない。エンパスの傲慢にも、ガスパルの好奇心にも、世界を終わらせる訳にはいかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「坑道を全て爆破しろ!埋め立てろ!後のことなど考えなくて良い!少しでも時間を稼ぐことだけを考えろ!」

 

 先祖達から受け継がれてきた新たな故郷。だがしかし、ランドルフ様が時間稼ぎを望まれるならばそれも放棄せざるえないのだろう。あのお方が倒れてしまえば、もはや住処等気にしている場合ではない。

 

 「初めて、あの人が我等に期待をしてくれましたね」

 

 指示を伝えに来てくれた伝令が言った。ランドルフ様は我々を受け入れ庇護をしてくれたが、明確に命令を下したことはなかった。

 

 ランザ=ランテの保護や奴に向けた伝令は、願いという形をとられていた。だが初めて命令という言葉が使われた。今までの恩を返す為に、出し惜しみはない。

 

 「奴等、洞窟に踏み込んできました!」

 

 「迎撃するぞ!我等の住処に踏み込んだことを後悔させてやれ!」

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