家族の仇は、娘でした   作:樫鳥

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 大砲、という兵器の存在は聞き及んでいた。帝国が開発した空を飛ぶ鉄馬が開発した今となれば、旧世代兵器と言えるが単純な破壊力だけを考えればその威力はやはり一線級だ。

 

 だが空を飛ぶ竜程大砲と相性が悪いものはない。機動力がある相手に、射線が限られた砲弾等当たる道理はない。

 

 海竜リヴァイアサン討伐の際は、竜狩り隊と高度に丁寧に海竜討伐をシュミレーションして訓練された帝国軍の主力艦隊集団を動かし、大きな被害をだしながら動きを制限させようやく数発命中させるのが精一杯であった。

 

 そもそも、砲というものは要塞や敵拠点、軍勢等動かないもの或いは的が大きいものに対して効果を発揮するものである。そしてなによりも、火砲の音は相手の戦意を削ぐ。こと人間と、彼等が造り上げた建造物に対しての特攻兵器と言っても良かった。

 

 ランドルフは、砲撃というものを始めてみた。だが、いくら巨大な砲弾であろうとこちらに向かって飛ぶ飛来物は直線的であり、それこそエンパスの相手にしながらでも片手間に回避なり迎撃ができる代物だ。後アブソリエル公国で、ガスパルがコソコソ製造していたもの。だがこんな玩具では援護にもなりはしない。

 

 短期決戦。既に地脈が暴れだそうとしている兆候を見せている今、一刻でも早くエンパスを叩き潰し大地の安定化を図らなければならない。

 

 「時が気になるでしょう?ランドルフ。安心してください、勝負は瞬でつけましょう」

 

 エンパスの手の内で、蒼白に輝く光剣が紡がれた。その神々しさは、まさに神具と言える宝剣かもしれないがその素材が吸われた魂の慣れ果てだ。充分、嫌悪に値する。

 

 大きく呼吸をし、口内にて大量に取り込まれた酸素が内臓から競りあがる火炎となり口腔内で爆発。大量の息を吐きだすように炎が溢れだす。極度の高温により青く染まる炎がエンパスに襲い掛かる。

 

 空中を浮遊しながらエンパスは炎から逃れる。火炎の勢いは止まらず、逃げ切れない対象が炎に呑まれ焼かれ始めた。炎の中で肉が焼け骨が焙られていく。動きが止まったところで、尻尾を大きく振るい空中で回転しながら叩きつける。直撃したものが、火孔付近に叩き落された。手応え、あり。

 

 トドメを刺しに行く前に、軽く飛翔する。アブソリエルの方面から飛来してきたものを避ける為に、何時反撃してくるか分からないエンパスから目を反らさぬように空を飛ぶ。

 

 「ガスパルは、貴方が考える程甘い相手ではありませんよ」

 

 【なに?】

 

 顔が半分焼けこげ、司祭服が全焼したエンパスが火孔の一部を吹き飛ばし姿を現す。ほぼ全身の皮膚、そして肉が炭化する程の火炎を浴びながら、それは目に見える速さで回復していっていた。この速さ、恐らくはこれにも吸収した魂を糧としている。こうなると最早治癒とはいえない、再生といっても差し支えない。

 

 エンパスに注意が向かった刹那、背後で鎖が擦れる音が響いた。振り向くと、発射された砲弾が二つに割れ、内部からそれぞれを繋ぐ悪魔の気配を感じる鎖が出現していた。胴体や翼に鎖が絡みつき、砲弾が重しとなって遠心力に従い身体中にまとわりつく。

 

 【これは】

 

 「知っていますか?彼は初めて、星を由来とする鉱石、隕鉄の加工を教えた悪魔でもあるのですよ。その彼が造り出した鎖は、生半可なものではない」

 

 人間が大きな発展をしたのは、馬を飼いならし鉄の発見によるものが大きい言われている。鉄鉱石の採掘やそれの精錬は人間が培っていた技術であるが、その芽吹きとなる最初の加工物を人に授けたのはかの悪魔であった。鉄というものの可能性を、人間に吹き込んだ。

 

 「それ故にかの悪魔は私達でも最優先で排除するべき存在となる可能性もありました。彼が本気で動く働き者であったならば、我等の福音における最大の障害であったのはガスパルであったでしょう。ヒントのみを与え過程を見守るのを楽しむ性分でなければ今頃世界は悪魔の楽園であった可能性すらあります」

 

 鉄の鎖は瞬時に砕ける強度ではなかった。熱と対外的な力にも頑強に提供し、僅かな間でも竜の機動力を奪う。そして、戦いにおいてその僅かという時間はエンパスにとって充分なものであった。

 

 【貴様等ァアアアアアアアァアアァ!】

 

 「強き竜よ。混沌を押し留める貴方の役目は、終わりました。新たな世界を始める為にも、今こそ時代を動かすべきなのです。盤上は崩壊し、再生し、祝福が訪れる。全ての生命体が、安らぎを得られる為に今あるものには終わっていただきましょう。国も、信条も、生命も。全てを平定した先に訪れる、次代の幸福の為に」

 

 エンパスが火孔から飛び出す。蒼白の剣はまるで神話のように、竜の喉元に吸い込まれた。刃が皮膚を斬りつけ肉を裂き、呼吸器を破壊する。切断された器官から炎が噴き出し、溢れだした。神々しい凶刃は神秘の力となって、骨を砕き斬り首筋を抜ける。

 

 落ちていく火竜、ランドルフの瞳がギョロリと動く。首筋が切断されてなお、その身体はまるで意思が残るように最後の力で鎖を引きちぎり肉薄したエンパスを羽交い絞めにした。そのまま重力に従い、火孔まで叩きこみ溶岩の中に落ちる為切断される刹那まで強靭な生命力にて無理矢理身体を動かした。

 

 巨体による重量は、流石に人外と言えど個人で支え切れるものではない。だがエンパスは鼻で笑い、周囲に出現された円のみの魔法陣より射出される光の奇跡を使い腕を焼き落す。

 

 「その往生際の悪さ、理解できません。この行為が、無駄だと分からぬ程愚かでもないでしょうに」

 

 手に握られた光刃により、腕を焼き落された火竜の死骸を両断。無数の斬撃が竜の体躯と内臓をバラバラに切断する。再度昇ってきたエンパスの身体は、あらゆる不浄を弾くかのように返り血も受け付けぬ優雅な姿であった。宗教画家がこの場にいたら、如何なる犠牲を払ってでも描こうと思う程だった。

 

 【神と悪魔が手を組むとはな】

 

 「呼吸器を無くして会話ができるのですか」

 

 見下すようなエンパスと、口惜しそうに瞼を細める火竜。嘲笑の混じる口調のエンパスとは逆に、ランドルフは酷く冷静な言葉紡いでいた。

 

 「火竜ランドルフ。全盛期の貴方であれば、私等相手にならなかったでしょう。例えガスパルと組んでも、この戦果はあり得ない。過去、愚かな人間に鉄槌を与えたのは分かります。しかし、解せないのは何故この世を灼熱地獄にしなかったのですか?そうすれば、この世界の王者になることすら夢ではなかったと考えますが」

 

 【聞いてどうする】

 

 「ただの興味本位です。竜という、早晩絶滅するであろう生命体の考えを知っておくことは今後できなくなるでしょうので」

 

 【ただ、愚かだっただけだ】

 

 退廃の都市ボンペイ。その悲惨さは当時のエンパスの耳にも届いていた。

 

 遥か昔、ボンペイの都市に住まう堕落した人間が、当時の悪魔に様々な夢とその叶え方を問うたという。

 

 それは、家畜を効率のみ重視した生命の禁忌に触れるおぞましい繁殖方法。人間の精神を犯し体内を蝕む代わりに多幸感を得る禁断の薬物。石の塊から金を産み出すおぞましい錬金の法。戦争に必ず勝利する方法。口に出すのも憚られる残酷な娯楽の数々。

 

 全ての道はボンペイに通じるとも言われ、世界中から略奪された品々や奴隷達が集まり。道端で性交がおこり、酷い時には産まれたばかりの赤子までが、処女と行為をすると性病が治るという愚かな伝承により性の対象ともなり、終わり次第道端に捨てられた。

 

 肥え太る者達の間では、酒池肉林とも言える豪勢な料理が並んでいる。いや、食べられるならばまだ良い方であり、時にはショーとして人間もそれ以外も無駄に命が散らされた。品の無い生活と下品な笑い声の元、あらゆる生命が凌辱され散らされる。

 

 だがそんな増長した人間達は、遂に竜をも娯楽の対象と見定めるようになった。地の豊穣を司る、当時の最年少であり、老いた先代から代替わりにより誕生したばかりの地竜アルギル。言葉巧みにアルギルを騙し、悪魔の力により人の殻へと封じ込められた地竜は長きに渡りその尊厳を奪われることになる。

 

 竜という存在は、戦いではない死。つまり途方もない長い年月を過ごし、寿命を迎えるとその躯から新たな自分を産み出す。途方もない年齢を生きる竜であるが、アルギルは人類史の始まりよりも遥か昔から生きて来た当時の最古参であった。

 

 生まれ変わりの法。太古不死鳥を思い出すが竜のそれは、不死鳥よりも劣るものであった。アルギルは生まれ変わりの際に先代の記憶を引き継げない。無垢な子供のまま別の竜と出会う前に人間達に拉致されてしまい、人間が作り出した殻に閉じ込められた。

 

 火竜ランドルフは、アルギルの生まれ変わりを寿ぐ為に地上に姿を現した。だが彼が目撃したのは、悪魔の知恵により悪辣な知識を身に着けた人間達による欲望の限りを尽くす行いであった。その身を汚し、その魂をいたぶり、その力を利用した。

 

 いかに人を凌駕する竜であろうと、力を抑制されまだ産まれたばかりであればどうすることもできない。そして最悪であったのは、アルギルは美しい竜であったことだ。人間達が作った木偶は、その魂と呼応して輝くような美貌を持つ姿へと姿を変えていた。それがどういう結果を呼ぶかな等、想像がつくものであろう。

 

 怒り狂える火竜は、大地不覚に眠る大地の力を無理矢理呼び起こした。訳も分からぬまま嬲り殺しにされたアルギルの、残った力を喰らうことによって引き継いだ。それは、ランザ=ランテが悪竜ジークリンデの力を喰らうことにより引き継いだことと同じだった。

 

 「地の力と炎の力。それは大地を揺れ動かし複数の火山を怒り狂わせる程でした。貴方は怒りのまま、ボンペイにいた全ての生命体を瞬時に滅ぼした。だけど解せないのです。そのまま大地を混沌とさせたままでいれば良いものの、貴方はその力を、自身の身を削り封じこめた。それは、何故ですか?」

 

 火竜ランドルフは、瞼を閉じる。暗闇の中で浮かび上がるのは、かつての大地とそこに生きる者達の苦しみだ。

 

 火孔から噴き出た炎は広範囲の森や平原を焼き尽くし、空を覆う火山灰は太陽を覆い大地から光を長い間奪った。ランザ=ランテが人妖化した際元になった存在、ハティのように人間の凶行とは無関係な数多の生命達が飢えと苦しみにより息絶えていった。

 

 ランドルフの脳内には、かつて噂を聞きつけ物見遊山程度の気持ちで現れた悪竜ジークリンデが放った言葉が蘇る。

 

 【ランドルフよ。今やお前は俺達の中でも頭一つ抜けた存在になっちまったな。ほれ見ろよ、焼けただれた森で痩せこけた動物が横たわってやがる。いやあ、お前が力の為こんなに後先考えない奴だとは思わなかったよ。流石流石】

 

 見て見ぬふりをしたい現実を、悪竜は笑いながら突き付けて来る。広範囲の噴火と土石流は無関係な土地を焼き尽くした。そして未だ続く噴火に、降り続ける火山灰のせいで新たな生命達が栄える様子すら見せない。大地は割れ、炎は噴出し、そこは文字通り死の大地となっていた。

 

 【もっと炎は広がる。もっと大地の荒廃は広がる。こいつはもう、アルギルが完全に死んじまった今多少の小細工じゃ止まらねえ。悪魔も天使ももうどうにもできねえかもなぁ。おめでたいねぇ。この死の大地の覇者は、これで我等竜のものとなった訳だ。全ての生命体を踏みにじり、最強の存在になった気分はどうだ?】

 

 ジークリンデの嘲笑は、頭の中をこだました。こんなことは、望んではいなかった。怒りに任せて行動したことにより、後先考えなかった為に罰するべき者達のみならずそれ以外の生命体全てが苦難と怨嗟の声をあげていた。

 

 これを抑えるには、いったいどれくらいの年月が必要となるであろうか。それに、こうしている間にも地は揺れヒビが割れ、炎が噴き出し広がっていく。

 

 私は、未だ噴火をしていない。だが、地脈に一番近い北の山脈に身を鎮めることとした。これ以上酷くならないように、大地に力を流し鎮める為に。これからは、地竜アルギルの代わりも勤めなければならない。

 

 こうしてそれから千年近くの時が経ったであろうか。大地に息吹が戻り、自然が返り、そこに新たな人間達や動物達が住むようになったという。それから幾百年か過ぎ、かつてボンペイがあった場所は帝国と呼ばれるようになった。

 

 かつての退廃都市の出現を危惧したものだが、それは杞憂となっていた。悪魔も一枚岩ではない、ボンペイを堕落に導いた者は、方向性の違いとやらでガスパルに誅されたと、気紛れに霊山まで回遊してきた空竜オリシスより伝え聞いた。

 

 悪魔も迷惑をした話だったのだろう。この悲惨な現象を巻き起こった原因は、人間が悪魔の知恵を借りた為だという言い伝えがすっかりと広まっていた。そしてそれは、遠因ではあるが間違った話でもない。既に廃れていた神の連中と同様、悪魔も衰退し追い込まれていくことになる。

 

 目を見開くと、勝ち誇ったエンパスの顔が見えた。

 

 【私は愚か者であった。こうして無様を晒しているのは、因果応報と言えるだろう。よくもここまで、命運尽きず生きてきたものだとな。だがエンパスよ、ガスパルにも伝えておけ、勝ち誇るのはまだ早い】

 

 「なにが言いたいのですか?」

 

 悪竜ジークリンデ。人を弄び、人で楽しみ、そしてどの竜よりも人間と長くいた存在。我等竜達の中で、誰よりも人間を愛し理解した邪竜。

 

 そんな彼女が見出し、そして全てを託した人間。あの悪竜に好かれた人物が、ただ神の盲目たるヒツジとなることを良しとする存在な訳がない。人であり、竜である者が、神の誘惑如きに屈することはないであろう。

 

 【お前の企みは頓挫するであろう。もはや人間は、我等に操作されたり畏怖をする存在ではない。無論、ガスパルの思惑にもな。そして竜はまだ存在する。我等が同胞が、貴様の頭蓋を噛み砕く。悪たる力をもってしてな】

 

 「天竜一頭でなにができると」

 

 【悪竜がまだ、この地にいるぞ】

 

 勝ち誇りの笑みを浮かべるエンパスの表情が不快そうに歪む。むこうからしたら、三竦みの一角が滅び長年追いやられていた自分達の時代が来るというのに、目の前の死に体が放つ言葉と余裕が気に入らないのだろう。

 

 【エンパス。取り残された憐れで愚かな者よ。死後があるというのなら、そこから見させてもらおうか。貴様の計画が、崩壊していく様を……な】

 

 ランドルフのかすれ行く最後の視覚がとらえたものは、エンパスから放たれる光の束。極太のレーザーとなったそれは、最後に残った火竜の身体を焼き尽くし消滅させる。

 

 「負け惜しみにしては、滑稽な捨て台詞ですね」

 

 エンパスは考える。今や脅威となるのは、ガスパルくらいのものだ。そしてそれも、時間の問題で片が付くものである。弱体化し、一時は人間の軍勢に追い込まれる程弱った悪竜が見初めたたかが人間等、なんの障害になろうものか。

 

 思考を終えた次の刹那。大陸中が大きく揺れ動く。抑え込まれていたものが、解き放たれようとしていた。

 

 「さあ審判の時が訪れます。古き時代の大洪水のように、世界が一度終わりを迎えるでしょう。そして寿ぎましょう、新たな時代の到来を」

 

 エンパスが両手を広げる。それと同時に、北の霊山から溶岩流が溢れ、空高くへ飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「これで、一つの時代が終わったかねぇ」

 

 ガスパルは、瞼に手を当てながらため息を吐いた。

 

 この世界に根を降ろした時、既に火竜ランドルフは存在していた。言わば大先輩だが、背中を見ていた連中が次々といなくなっていく。目的の為仕方ないこととはいえ、勝手な感傷のようなものを抱かずにはいられなかった。

 

 「ま、あの時は俺は俺で忙しかった。節操無い阿呆の掃除は大変だったしな。でもまあ、やはりあれはやり過ぎだ。そのツケ、支払う時がきちまったってところか」

 

 俺達は人間の個人主義を大事にするが、それは自分達にも言えたことだ。知識を極端に出し惜しみする奴もいれば、ボンペイを堕落に導いた阿呆のように節操がない奴もいた。各々好き勝手していたがそのせいで、俺達の存在まで没落するきっかけになっちまったが。

 

 「おっとこうしちゃいられ」

 

 影。袖を振るいそこから召喚した鎖が、ナイフとぶつかり火花をあげる。

 

 二刀を構えたクーラが、文字通り猫のような素早さでここまで駆けのぼってきた。金色の瞳と目が合う。

 

 「クーラちゃ~ん。俺は敵じゃないよ~。あ、てかそのナイフまだ使ってくれてるんだ。どう?使い心地良いだろう」

 

 「敵じゃないかもしれないけど、味方って訳じゃあ断じてないでしょう。それに、元から胡散臭かったアンタだけど、今となってはそんな言葉で抑えられない程不吉に感じるよ。ガスパル、ここでアンタを逃がしちゃきっと良くないことがおこるでしょう。その首一つ置いていけ」

 

 「おー。元々レントの飼い猫だった存在が、随分立派な戦士になったもんだ。良いねぇ、ジークリンデにも好かれたのはその瞳を見れば分かる。いやあ、やっぱお前等はやっぱ成長してこそだよな。俺も遊んでやりたいが…残念。時間がないんだ」

 

 地面が突然大きく揺れ始めた。狭い足場だが、クーラも四つん這いになって耐えるしかない程の揺れだ。当然だ、大地と火山、地脈がようやくあの日の続きを始めることができると打ち震えていたるのだから。後アブソリエル公国の首都が建設されたここは休火山ではあるがあちらと連動して大きく脈動をしている。

 

 「巻き込まれる前に、お仕事しておかないとな」

 

 巨大砲に繋がれた鎖が巻きあがる。空中から出現させた新たな太い鎖と連結させ、固定を無理矢理破壊し宙へと浮かび上がらせた。こいつはキツイ。重労働は俺の仕事じゃねーややっぱり。オジサン今の時点でちょっと泣いちゃいそうである。

 

 「おんもぉぉお…」

 

 「ガスパル!」

 

 「あーノルン様よ。これ、持ってかないともったいないからもらっていくな。大丈夫、アンタの国で開発されたこいつは、人類史の発展に繋がるよ。つまり、アンタとこの国は人間達の功労者だ。あと一つ伝えておく、ここはもう危険地帯だからな」

 

 浮かび上がらせた大砲の上に飛び乗る。それと同時に、山頂が火を噴き出した。噴火と共に飛び散る巨大な岩石が、街に向かい無数に降り注ぐ。

 

 「速く逃げときな。死にたくないならな」

 

 忠告はしてやった。十を越える砲台の上には、打ち合わせ通り三人組も乗っており、噴火する山を眺めていた。この北で始まった大地の大変動は、かつてボンペイが存在した帝国中心部まで連鎖的に広がっていくだろう。それを想像しているかのように、各々それぞれの表情を浮かべている。

 

 「ランザにも言っておけ。生きていたら、また会おうってな。そんで、エンパス討伐の際には是非とも力を貸してくれや。連合王国で、待っているからよ」

 

 ここから先、生き延びれるかどうかは奴次第だ。そして、その可能性は低いだろう。だがその顛末は未届けられない。鎖と砲と共に、俺達は移動の方陣によりこの場を後にする。

 

 生き延びていてほしいのは本心だ。その方が、最終局面では盛り上がるだろう。

 

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