家族の仇は、娘でした   作:樫鳥

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 リスムに観光や仕事で来た者にとって経済特別区は、夜の島だと勘違いする人物も多いがそれは間違いである。

 

 そもそも、建前であったとしても経済特別区が制定された理由は、輸入品等の関税軽減、もしくは撤廃をした商売ができる区域を作り経済や流通を刺激し商売のしやすい環境を作るといったものだ。

 

 島の表の顔として、港町らしく各地より海路により運ばれた異国の品物や果実が露店に並んでいる。そんな商品を求め、本土から一般人も多く訪れており露店通りは沢山の人が溢れかえっていた。

 

 これはまだ噂程度の話なのだが、帝国を中心にした強力な海軍を持つ国々が連合艦隊を編成し、遥か昔から大海を支配する海竜リヴァイアサンを討伐する計画が持ち上がっているのだとか。

 

 それが本当だとしたら、鯨を狩る為の漁場も増えるし、これまでは危険度が高く通れなかった海路が開かれるだろう。そうなれば、リスムは益々景気が良くなりこの露店通りに並ぶ商品も増えるだろう。

 

 「ライムの値が急激にあがってるな」

 

 ついこの間まで露店に大量に積まれていたライムが、ほとんど消え失せていたうえに値段が倍近くまで跳ね上がっていた。

 

 「最近医療教会と医術組合が買いあさっているんだ。なんでも壊血病に効果があるとかなんとか、倍近くの値段でも飛ぶように売れるそうだよ」

 

 露店の様子を見た呟きを、隣の男性が解説しながら会話を繋げる…男性?

 

 一瞬脳が錯覚してしまったが、隣を歩き会話をするのはれっきとした女である。というか、エイラである。

 

 髪の毛を短くまとめ、切れ長の目と中性的な顔。控えめに施した化粧と男性のような私服のせいでどう見ても男にしか見えない。なんだか時折背景で光のようなものがちらつくような気がしたが、取りあえず疲れているのだろう。……ああ、疲れているんだな、主にこの状況に。

 

 娼館の従業員部屋で寝起きしている立場であり、同僚の私生活は見慣れている。相手が異性であっても、流石に部屋の中は見れないし見る気はないのだが、油断しきった姿で廊下をうろつくのはよく目撃するし、エイラに対しては稽古と称してその姿のまま殺しに来るので、油断した姿か仕事着である黒服の格好で見ることが多かった。

 

 「なあ、少し聞きたいがこの露店通りで…」

 

 露店にて売り子をしている女性に話しかけるが、無視をされた。正確には反応されかけたのだが、手元になにも持たずにただ会話をしてきた男を相手するより後から来た別の客を相手にした方が金になると判断したのだろう。商売人としては、正しい判断かもしれないがいかんせん多少傷つく。

 

 「お嬢さん、リンゴ一つ。……うん、うんそう。そうかい?僕も嬉しいよ、君みたいな可憐な娘にそんなことを言われて」

 

 隣のエイラが前に出て露店に並ぶリンゴを一つ手に取って話しかけた。笑顔の周囲から光が飛んでいるような顔、眩しい。

 

 うっとりとした顔を浮かべる露店の娘は一瞬呆然としていたが、慌てて返事をして会計をすませてしまう。そのまま情報収集に入るエイラの手練手管は、成程これはと思うようなものだった。適度に日常会話を挟みつつ、時には容姿を褒めながら上手く世間話ふうに本題にはいり情報を集めていく。

 

 一から十まで真似をしろと言われたら、容姿の時点で不可能であるがこの姿勢と技術は学に値するものだ。少なくとも、商品を一つも買わずに単刀直入に情報のみを得ようとする俺の筋は通らない。今後の参考になるだろうとは、素直に感じた。

 

 情報じたいは露店の娘は持ち合わせていなかったが、学ぶものはあった。露店からしばらく離れてから声をかける。

 

 「情報集め一つにも技術がいるんですね。俺一人だと色々面倒なことになるところだった」

 

 「当たり前だ馬鹿。道一つ聞くのも、ただ尋ねるだけでは相手にとって邪魔者でしかないんだぞ。まずは相手の商売に足しがあるよう行動し、そのうえで手を煩わせてもらうんだ。そうじゃなければ、迷惑極まりないだろうが」

 

 リンゴを齧りながら歩き、呆れ顔で言われた。まともに就職してからは、職人としての仕事についていたり時折商人の手伝いをする時も、設営やちょっとした手仕事ばかりだったため、分からなかった。

 

 一時的な話とはいえ今は、些か特殊ではあるが接客として業務にあたっている身だ。なにも格闘術や戦闘術ばかりではない、対人スキルというか、こういうところも学びとっていくべきなのだろう。

 

 「しかし見るからに、平和そのものだな。昼間ってのもあるが、パッと見では妙な話どころか活気がある露店街にしか見えないですね」

 

 「この露店街は島最大組織であるレガリアの縄張りだ。ここで悪さをする阿呆はいないし、いたとしても、カタギの人間が多いここで問題がおきれば本土の治安組織や掲げる大盾が介入してくるだろう。この島に多少なりとも関りがある者ならば、ここが非戦闘地帯としてある程度知れていることだ」

 

 「逆に言えば、他の場所はその限りではないと」

 

 この島には大小様々な裏稼業の組織があるが、最大と言われているレガリアは露店街を中心にした商業エリアやリゾートにホテル等を牛耳っている。本土に近い島の北半分は彼等の島といっても良く、治安は比較的良い方だ。

 

 一方島の南半分は、大まかには二つの組織が縄張りを広げている。リスム地下に広がる地下迷宮。その入口の一つを非合法に占拠し、迷宮を利用し表沙汰にはできない商売をしている武闘派組織デラウェア。闘技場での収入を要に、非合法の奴隷売買やこの経済特別区でも禁制品であるヤバい品物を捌いているハーウェン。

 

 娼婦街はレガリアとハーウェンの境目にあり、中立を保ってはいるがどちらかと言えば商売の関係上エレミヤはレガリア側と交流を深めている。一方、別の娼館はハーウェンの奴隷市場から人間を仕入れている為ある意味ではバランスはとれていた。

 

 「レガリア側で問題をおこして、エレミヤ様の顔にドロを塗ることは許されない。一見平和に見えても、バランスとりが重要なのだ。なにかあったらいっきに面倒なことになるからな」

 

 確かに、娼館関連の売り上げなどどこの組織も稼ぎとしては上等といえるので、機会があればのっとろうと虎視眈々と狙っているだろう。

 

 エレミヤ、いやその先代か。先代の娼館主は初老の男性だったそうだが、どうやってあの区域の独立を保てたのか興味がでてくる。まあ、それを調べる余裕はないのだが。

 

 それからしばらく、聞き込みや調査を進めていたがなかなか成果がでない。ここに来る前に娼館通りでも聞き込みを続けており、空振りだったため時間を無駄にしているという徒労感だけが肩にのしかかってきた。

 

 「時折島に伝わる都市伝説っぽく、赤い服の女がでることがあってもそれを起点にした騒ぎは無しか」

 

 薄く引き伸ばした小麦に厚切り肉や季節の野菜を挟み閉じ込め甘辛いソースで味付けしたあと油で揚げた、異国の料理を齧りながら呟く。時刻は既に正午となっており、食事処はどこも混みあっていた為こうして屋台で買ったものを立ち食いしていた。

 

 「一度休息と報告で館に戻った方が良いかもしれませんね、エイラ副主…」

 

 凄まじい目つきで、睨まれていた。

 

 「露店でなにやら話し込んでいたと思ったら、よくもまあそんなどうどうと、あたしの前で食べられるなランザァ」

 

 いかん、一人称が僕じゃない。麗人のキャラ造りが何時も間になくなっている。

 

 「……情報収集のついでに。副主任の分もありますよ」

 

 「ふざけるな。よそ行きのあたし、つまり『僕』の時はランチも常に気を使っているんだ。こんな人込みの隅で壁に寄りかかりながら食事を貪っていたらキャラが崩れるだろう。夜勤明けで腹も減ったというのによくもそんなもさもさと…」

 

 「それは…はあ。すいません」

 

 だったらキャラ作り等やめれば良いのにと言いたいが、彼女にも譲れないものがあるのだろう。まあ確かに立ち食いはマナー的な意味でも良くはないが、今は黒服姿でもなくお互い私服だ。そこまで気にするものでもないと思っていたが、想像外のところでアウトだったらしい。

 

 確かに俺は、妻との初デートは散々だったが、あの時からまったく成長していないのではないかとため息が出る。

 

 大きな街の方へ赴くが、人混みがすごくてはぐれそうになったり、思わず仕事道具に目を奪われデートとしては些か華のない場所に寄ってしまったり、テンの話ばかりを…

 

 「いっちょまえにため息か、まだ新人とはいえ仕事でもその尻ぬぐいをしているあたしの方がそのため息をつきたいと何度…おい?」

 

 エイラに肩をゆすられ、ハッとした。手の中にある包み揚げが破れ中身のソースと具材が漏れ出し、地面に落ちていた。

 

 テンの顔を頭にうかべた瞬間、嫌な記憶がフラッシュバックしてしまう。忙しい日々に忙殺され、最近は思い浮かぶことも多少なりとも減っていたがなにかをきっかけにまた出てしまうのか分からない。

 

 テンが、斧を持って、笑顔でこっちに……振り向いた顔が。

 

 「……うっ」

 

 急激に吐き気が催してきた。胃袋の中身が乱れ、胃液が揺れる。喉を通った筈の食料が逆流してくるようで、口を押える。

 

 「なに青い顔して…おい!」

 

 すぐに露店通りから少し外れたところまで離れ、激しくむせた。ギリギリ吐きはしなかったものも、喉まで逆流しかけたせいで胃液で焼けた喉元が痛い。

 

 「呆れた奴だな。体調不良か?自己管理すらろくにできないなんて…」

 

 「少し黙っていてくれ!」

 

 後ろから追いかけてきてまで小言を言う相手に怒鳴り、何度か深呼吸をする。落ち着け、落ち着け、落ち着ける筈だ。

 

 少しだけ気持ちに余裕がもてたところで、軽く背中を叩かれる。

 

 「ようやく落ち着いたか?」

 

 「……多少」

 

 「認めたくないがランザ、お前は従業員で部下だ。体調不良ならちゃんと報告しろ、報連相という言葉、社会に出たなら聞いたことくらいはあるだろうが」

 

 肩を掴まれ、立たされる。まだ少し心がざわつくが、なんとか記憶からの興奮を心の奥に追いやることができた。

 

 「さっさと館に戻るぞ。エレミヤ様に途中経過を報告して、あたしもなにか腹に詰めたいところだからな。積極的に関わりたくはないが、ハーウェンの縄張りにいる連中や、金はかかるが情報屋に当たってみるべきかもしれないな」

 

 「ハーウェン、闘技場方面ですね。分かりました、一度エレミヤに…」

 

 俺の言葉を遮るように、市場通りの方から悲鳴が響いた。二人で顔を見合わせ、急行する。

 

 露店の前に人だかりができ、その中央には露店を背にしてナイフを手にした男が一人。いや、男は小さな男の子を腕で抱え首筋に刃物を向けていた。

 

 「ち、近づくなぁ!近くに来るなぁ!」

 

 唾を飛ばしながら若い男が叫ぶ。馬鹿な、レガリアの縄張りで騒ぎをおこしたらなにがおこるか分からない筈がない。もしくは、この島の勢力図や情勢すらろくに分かっていない余所者か。男は露店で売っているような異国の仮面で顔を隠していたが興奮しているのがよく分かる。

 

 「さっさと掲げる大盾の連中を呼べェ!さっさとしないと、こ…この子供がどうなっても知らねえぞ!」

 

 男の叫ぶ声に、エイラが頭上に疑問符を浮かべる。

 

 「なんだ?金をよこせとか逃がせとかならともかく、掲げる大盾だと?あの男錯乱しているのか、いったいなんでまた…っておい!」

 

 エイラの声が後ろから聞こえるが、前進をする。子供を人質にするということは、なにか問題や間違えがおこってその子供が死んでも問題ないと考えているのだろう。

 

 だからこそ、普通だったら犯人を刺激できないし要求は極力呑んだ方が良いだろう。だけど、今は我慢できるほど気持ちに余裕がなかった。

 

 「おい、落ち着け」

 

 「なんだぁお前!こ、こ、こいつが目に入らねえのか!」

 

 男が叫びながらこちらに振り替える。しっかりと首筋にナイフをつきたて、少し切れたのか血が滲んでいた。

 

 「だから落ち着け。俺は掲げる大盾の職員、ルーベルだ。現在休暇中だが、偶然居合わせた。なにか訳あって俺達を呼ぶんだろう」

 

 ハッタリだ。多少ではあるが、掲げる大盾に繋がりがある。その知識を動員し、なんとかこの事態を優位に動かさなくてはならない。

 

 「嘘をつけ!偶々この場に居合わせたなんてそんな偶然が…」

 

 「百パーセントないと、言い切れるか?お前は掲げる大盾がこのリスムにあることを知っている、ならばここで問題をおこすということがどういうことになるか分からんでもないだろう。こうして押し問答をしている時間も惜しいんじゃないか?」

 

 男が慌てたように周囲を気にする。男は完全に余所者という訳でもなさそうだ。ここはこの島で最大勢力を誇るレガリアの膝元だ。三大組織の中では以外にも一番の穏健派でもあるが、騒ぎをおこしたものが裏社会に連行されたらその後とうなるかなど分かったものではないだろう。

 

 「時間がないぞ、掲げる大盾の支部は本土にあるし、情報が渡って橋を渡って来る前にレガリアの組織の方が近い。治安維持局も常駐しているが、ここの連中のやる気の無さはよくわかるんじゃないか?連行されても、行き先は牢獄ではなくレガリアの事務所の一つだ。例え一時預かりでも、掲げる大盾の拘留されたいならば素早く決断しなければならないんじゃないか?」

 

 「ま、待て!お前が本当に掲げる大盾ならなにかそれを証明できるものは!」

 

 「休暇中にそんなもん持ち歩くとでも?どうするんだ。言っておくが、それ以上子供を傷つけたりしたら、グロー支部長には内緒で俺は問答無用でお前をレガリアに引き渡す。連中の事務所で可愛がってもらうんだな」

 

 男が怯み、ナイフを下げた。その瞬間に走り出しナイフを持つ手を蹴り上げる、宙にナイフが舞った。

 

 「んなっ!」

 

 それを手に取ろうと空に手を伸ばす男。それを遮るように陰ができる。

 

 俺の背中を蹴ってエイラが跳躍、身体を一回転した踵落としを頭部に叩き込んだ。男は昏倒して倒れ割れた仮面の破片が周囲に繋がる。男の体重を支え切れず共に倒れた子供は、慌てて離れていった。

 

 目に入らなかったが、家族が逃げた方向にいた。子供の母親が泣きながら男の子を抱きしめている。

 

 なんだか少しほっとした気分になったが、すぐに首筋を掴まれ引き寄せられる。鬼の形相のエイラが、こちらを睨んでいた。

 

 「レガリアの縄張りで勝手な真似をするなといった筈だ。上手くいったから良かったが、なにかあったらどう責任をとるつもりだったんだ」

 

 露店通りでの、家族連れの男の子が殺される。風評としてはよろしくはない。

 

 「……すいません。あの光景、我慢ができなくて」

 

 「我慢ができないだと?この男がなにか間違えをおこしても、それを解決するのは治安維持の連中かレガリアだ。万が一になったとき、お前がごとき下っ派がどう責任とるんだ!エレミヤ様の足を引っぱるいだけの話じゃない、娼館街全体にも…!」

 

 エイラが気を失った男を蹴り飛ばす。うつぶせに倒れた男が仰向けになり、そこでエイラの言葉が止まった。

 

 仰向けになり初めて気づいたが、男の腕には無数の粒々が浮き出ていたのだ。

 

 「注射痕?こんなに」

 

 エイラがしゃがみ込み、仮面を外し瞼を持ち上げる。まっ赤な瞳が、そこには隠れていた。

 

 「ランザ。こいつ目が充血している、とてつもない寝不足か、そうれでなければ…」

 

 「副主任、ぶっ倒れた連中の共通点に、注射痕とかはありませんでしたか?」

 

 「確認をしなければ断言できないが、あたしが見たのはあった。これは…もしかしたら」

 

 瞼から指を離し、エイラは腕を組み合わせた。

 

 「なあ、こいつは、掲げる大盾を呼んでいた。それはつまり、掲げる大盾に連行されることでこの島を出ようとしていたということじゃないか?」

 

 「島から、逃げようとしていた。なにかに追われていた、しかし見張りかなにかが出口にいて島から出られなかった…ということですか?」

 

 「かもしれない。こいつはもしかしたら大きな収穫なのかも…」

 

 エイラは目をつむりながら考え、大きくため息をついた。

 

 「ランザ、お前はこいつを連れて舘に戻ってこい。あたしはエレミヤ様に経緯を報告し、この男を舘に監禁する許可をもらう。しばらくすれば息を吹き返すから、この男を尋問できる」

 

 「レガリアに引き渡すのが筋かもしれませんが、良いのですか?」

 

 「良くはない。多少なりとも懇意にしているとはいえ、エレミヤ様には時間稼ぎを頼むだけでも迷惑がかかる。だがしかし、ようやくつかんだ手がかりでもある。エレミヤ様に報告をし、リスクを天秤にかけ了解をもらいさえすれば、多分この事件は大きく進展する」

 

 頷いて、男を抱える。この男と共に舘に戻るならそれなりに時間がかかる。それまで事情を話して、レガリアに対して打つべき手を打っておくということだろう。

 

 「レガリアの下っ派が来るまでにさっさと戻ってこい。お前が戻る前には、エレミヤ様の判断がでるだろう」

 

 エレミヤが走り出した。男の肩と足を掴み、肩に全身をかけるように持ち上げる。

 

 「ありがとうございました!」「本当に、ありがとうございました!」

 

 振り向くと、男の子とその家族が頭を下げていた。昼間の露店通りで事件に巻き込まれるとは思ってはいなかったのだろう。だが、今回のように完全になにかがない訳じゃない。

 

 「こういうところに家族を連れて来るなら、子供がもう少し大きくなってからにするんだな」

 

 それだけ伝え歩きだす。男を抱えながら歩くには、娼館街までそれなりに距離があるが、歩いて幾分には距離が分かるだけ探索者時代より気は楽だ。

 

 「我が主より、後にお邪魔したいと、エレミヤ様にお伝えください」

 

 人混みを歩き中、誰かにささやかれた。慌てて振り向くがもう誰がささやいたかは分からない。レガリアの連中、到着が遅れた訳ではなかったようだ。

 

 どうやら、この場では見逃すつもりらしい、後に舘でエレミヤになんらかの交渉を吹き込むつもりだろうか。

 

 「分かっちゃいたが」

 

 曲者だな、間違いなく。

 

 エレミヤがどういう判断を下すのかは分からないが、少なくともレガリア側はなんらかの話を持ち掛けてくるだろう。

 

 俺は、間違ったことをしたのだろうか。子供を救ったのは、ただの自己満足だったか。

 

 あのフラッシュバックの直後でなければ、冷静でいられただろうか。手がかりという成果はつかめたものの、そうでなければただ厄介事に首を突っ込みエレミヤやエイラに迷惑をかけただけだっだろうか。

 

 思わずため息が漏れてしまう。まだしばらく、いや恐らくは一生、あのトラウマからは逃れられそうにないだだろう。

 

 

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