あなたが選ぶ競争馬の道   作:6LD

23 / 26
次走決め回。
書いては消して書いては消してでこんなに間が空いてしまいました。申し訳ない。
以下の注意を「必ず」読んでから本編をお読みください。

※注意1※
非常に長くまた会話文が多くとても読みづらいです。
読みやすくなるよう自分の思いつく範囲で調整はしましたがそれでも読みづらいと思うので、あっ無理となったら後書きまで飛ばしてください。

※注意2※
この作品に登場する人物はあくまで現実の人物を基にしたオリジナルキャラクターであり、行動・発言は全て創作です。
予めご了承ください。




日本ダービーで5着以内、達成!

「……よろしいですか?」

「あ、はい構いません。すいません食べる量多くて」

「いえいえ、現役のスポーツ選手ですからな」

 

 吉岡氏に誘われホイホイと会食についていった。まあやっぱお金持ってる人だけあって都内のいい店に連れていってもらった、店ごと貸し切りとは随分大掛かりなことだ。

 ここにいるのは自分と吉岡氏、池尾調教師、あと関ジョッキー。

 あと卓にはついていないが、SPさんが何人か。SPとか初めて見た、本当にいるんですねそういう存在。

 

「それでまあ、そろそろ本題に入ろうかと思います。初めにここでの話はこの4人のみの秘密ということで、他言無用でお願いします」

「ああやっぱり、嫌な予感はしてたんですけど結構重大な話なんですね」

「そうですね。場合によっては談合に近いとも取られかねませんから」

 

 こほん、と咳ばらいを一つつく吉岡氏。談合とはなにやら不穏な響きだが……まさか八百長とは言わないだろうが。

 

 

 

 口火を切ったのは池尾調教師だった。

 

「まず私から、一番根本的なことでこれをまず決めないと話が進まないのでお話ししますね。サイレントロードの次走……秋の大目標のことです」

「次走ですか?」

「はい。三冠という概念はご存じでしょうか?」

「それはまあ、多少は勉強しました」

 

 次走……そういえば新馬戦やクラシック開幕前みたいに上を上を目指すのとは違って、ダービーという世代の頂点に立ったから選択肢は少なくなるのか。

 皐月賞とダービーを勝って、更に菊花賞というレースを勝つと三冠馬と言われる。となれば最有力はこれか。そういえば野球の三冠王も競馬の三冠が語源なんだっけか。

 

「であるならば話は早いですね。まず大前提として、皐月賞と日本ダービーに勝利したうえで菊花賞に出走する意思を見せなかった馬は1頭もいません」

「出走しなかった馬はいるんですか?」

「91年のトウカイテイオーと97年のサニーブライアンがいますが、しかしそれは骨折の影響によりそもそも出走が叶わなかったことが理由です。そういう意味では、二冠馬が菊花賞に挑むのは義務とすら言ってもいいかもしれません。

 

 挑戦をせずに三冠を諦めて別路線へというのは、数々の批判に晒されることとなるのはほぼ間違いないと思っています。競馬というのはギャンブルではあるのですが、数々のドラマや夢を描き出してきたスポーツ興行でもありますから」

 

 ふむふむ。例えばプロ野球で言うなら、例えばシーズン終盤に負けが込んで3位くらいになって優勝の可能性少なくなっても、そこでじゃあ残りの試合は選手起用や采配など色々試すことにして優勝は来年狙って今年はBクラスでいいですとか言ったら監督は大炎上間違い無しだ。

 例としてはちょっと違うかもしれないが……まあとにかく挑戦する意思は大事ってことだな。

 

「ということで、秋の大目標となるレースは菊花賞とすることがほぼ既定路線だと思ってください。ですがそれにあたっての最大の障害が二つあります。まず1つ目が距離です」

「距離ですか」

「はい。単純な話で、短距離走とマラソンランナーは必要な筋肉が違うのと同じように馬にもそれぞれ適正な距離というものがあります。そして、例外ももちろんありますが基本的にはその距離適性というものは親のものを受け継ぎやすいということが長年の交配の結果によって明らかになっています。

 

 現在は動画サイトというものもありますが、トウカイテイオーのレースというのはご覧になったことはありますか?」

「えーと、ダービーとジャパンカップ、ラストレースの有馬記念くらいは。不勉強ですいません」

「いえいえ、それではこちらをご覧ください」

 

 そう言って取り出したタブレットを少し操作し、用意されたのは一つのレース映像。「ああ、懐かしいな」と関さんがこぼしたが、知っているレース……いや、関さんの活躍ぶりならこの時期はブイブイ言わせてた時期だっけ? なら出走馬に乗っていてもおかしくないのか。

 

「このレースは?」

「1992年のGⅠ天皇賞・春。菊花賞という長距離レースに挑めなかったトウカイテイオーが怪我から復帰し、前哨戦のGⅡ産経大阪杯を圧勝し無敗を維持。本番の3200mという超長距離レースに初めて挑むことになったレースです。ピンクの帽子の14番がそれです。

 

 対抗馬はメジロマックイーン。トウカイテイオーより1つ年上のこの馬は菊花賞と前年の天皇賞春を制し史上初の同レース連覇に挑む当時現役最強と謳われた馬で、特にこのレースの前哨戦である3000mの阪神大賞典を連覇していて長距離レースでの実績が非常に優れている馬です。5番の馬ですね。

 

 騎手も当時の現役最強クラスの陣容で、イニシャルを取ってTM対決とも呼ばれ話題となりました」

「めちゃめちゃ熱いマッチじゃないですか」

「そうですね、こういうドラマ性を求めて人々は熱狂しているわけです。レース映像を流しますね」

 

 始まったそのレースはちょっと画質が粗いが数字は確認できる。えーと中団にいるのがトウカイテイオーでその前の方にいるのがメジロマックイーン。

 先頭を走るのはメジロパーマー、これはメジロマックイーンと同じ馬主さんってことか。

 トウカイテイオーは大外スタートだったからか、サイレントロードのダービーと同じく外を回らされているようだ。確か外目だと距離ロスが大きいから内を回るのが基本だけど、大外スタートだとそれが難しいから勝ちにくいんだったっけな。

 

 コーナーを回りかけたところでメジロマックイーンが外からメジロパーマーをかわして、それに合わせるようにトウカイテイオーが2番手に上がってきた。1.5馬身くらいの差かな。

 サイレントロードとトウカイテイオーのダービーだとここから一気に加速して先頭を走るのが勝ちパターンみたいな感じだったはず。

 しかし実況の『トウカイテイオーは伸びない!』の声の通り先頭からずるずると置いていかれて遂にはカメラからフェードアウトしてしまった。

 ゴールした時の順位は……4~6位。 ってことはついていけなくて後続にも追いつかれたってことか。

 

「トウカイテイオーの3000m級レースへの出走はこの一度きりです。このレースの敗北した要因として調教師は「距離の壁」、そして騎手は「相手が強かった」と発言しています。関さん、そのあたりどう思いますか?」

「まあ距離の壁もそうですが、マックイーンはトウカイテイオーが挑む相手としては相性が悪かったとは思います。トウカイテイオーは終盤のキレで勝負する馬ですが、延々ハイペースで走り続ける馬が相手だとどうしても脚を残せません。それでも1600や2000mとかなら勝負できると思いますが、3200では……それでも5位に残ったのは実力ある証拠ですが」

「え、てことは」

「マックイーンに乗ってたの僕なんですよ」

「ははぁ」

 

 出走していたどころじゃなかった。本当にレジェンドと呼ばれてる騎手なんだなぁ。

 

「実際トウカイテイオー産駒に目を向けても1600mあたりでの活躍が多く、偏にトウカイテイオーが2400mや2500mを勝てたのは自身の能力の高さ故であり適正距離は1600や2000あたりだったとの考えが現在では主流です。

 というわけで、サイレントロード単体で見てもそもそも菊花賞に勝てるかどうかわからないため、あくまで勝って賞金を稼ぎたいのであれば他のレースを検討してもいいといったところです」

「なるほど。

 障害が2つあると言っていましたが、距離と……もう一つはオルフェーヴルですか?」

「はい。先ほどのレースで1着を取ったメジロマックイーンは、オルフェーヴルの母の父にあたります」

 

 ということは子と孫という違いはあれど、20年の時を経てTM対決がクラシックという舞台で再演されているというわけか。そりゃファンの熱狂も頷けるというものだ。

 そしてさっきの血統と距離適性の話と合わせると……なるほど話が見えてきたぞ。

 

「論より証拠というわけでは無いですがオルフェーヴルと両親が同じであるドリームジャーニーが天皇賞・春を3着や菊花賞5着など一定の活躍を残していることと、メジロマックイーンや父ステイゴールドがそうであったようにそもそも成長が晩成的な傾向にある血統です。

 私の目から見てもオルフェーヴルの馬体を見るとまだまだ成長が見られそうで、菊花賞ではダービーよりも更に強くなっている公算が大きいと言わざるを得ません。

 

 もちろんサイレントロード自身の強さは疑うべくも無いですし自分も三冠に対する欲目もありますから調教や管理などより一層力を入れることをお約束しますが、総評するなら菊花賞でオルフェーヴルとの直接対決は分が悪いと見ていいでしょう。

 ここまでで何か聞きたいことはありますか?」

 

 なるほどなるほど。

 とりあえず言いたいことは理解した。ここに吉岡氏がいることも合わせるとなんとなく話の察しが付いてきたが、きちんと言葉にしてもらわないといけないだろう。

 

「質問があります」

「なんでしょうか」

「菊花賞に出ても勝利が厳しいことは理解できましたが、この話だけでは吉岡氏らがいる理由がありません。今までのように通話で済ませればいいだけですから。

 ということはまだ何かあるんですよね?」

「そうですね。吉岡さん、お願いします」

 

「はい、ここからが本題ですから。

 サイレントロードが菊花賞に出走することをこの場で確約していただけるのであれば、オルフェーヴルを菊花賞に出走させないことをお約束します」

 

 ……なんとなく予想は出来てたけど、言い切ったな。うーん。

 

「理由を聞いても?」

「はい。勝率の高いとされる菊花賞に出走させるよりも、オルフェーヴルがはたして世代内で強いだけなのかそれとも古馬を蹴散らしこれからの活躍次第で歴史に名を残す名馬となり得るのか、それを試したいのです。

 確かに3000mの距離は十分勝てるとは思います、ですがそれを確かめるのは来年の阪神大賞典や天皇賞でいいと考えています。それよりも後々の種牡馬入りした時のことを考えると早めに2000mと2400mでの勝ち鞍が欲しいので」

「種牡馬需要ですか」

「はい。詳しく説明すると長くなるので省きますが、日本だけでなく世界全体において3歳における2000mと2400mの実績というものが重要視される傾向にありますから」

 

 ふむ。種牡馬。

 茶台グループというのは日本で間違いなく一番大きな馬産地であり非常に大きなグループ企業だ。ビジネスというものもあるだろうし、そちらを優先するのはまあおかしくないのか。

 

「それともう一つ。好感を持たれないかもしれませんが……」

「お聞きします」

「はい。まずはこちらのレースをご覧ください」

 

 タブレットを操作し映し出されたのは……画質的に、さっきのレースと同じくらいの年代だろうか?

 

「このレースは?」

「1992年、菊花賞。前年怪我で出走が叶わなかった無敗の二冠馬トウカイテイオーの翌年。

 またしてもここまで無敗のまま二冠を達成し前哨戦も圧勝したミホノブルボンが無敗の三冠に挑むレースです」

「2年連続で無敗の二冠ですか。ドラマがありますね……ん?」

 

 えーっと無敗の三冠馬ってサイレントロードの祖父シンボリルドルフと、あと数年前のディープインパクトしかいないんだよな? ってことはこのレースでミホノブルボンは……。

 

「察しが付いたと思いますが、とりあえずレースを流しますね。特に最終盤の実況と、あとはスタンドの様子に注目をください」

 

 始まったレースは終始12番の馬が先頭に立ち、それをミホノブルボンが追いかける形。

 そして終盤にミホノブルボンが先頭に立つが、後ろから一気に差を詰めてきた2頭の馬。

 

『ああライスシャワーがかわした!ミホノブルボン三冠ならず!ライスシャワーです!ライスシャワーが一着!

 ああーという悲鳴に変わりましたゴール前!昨年と同じく、ダービー2着が菊を取りました!』

 

 ゴールに近づくにつれ歓声は悲鳴に、そしてゴール後にはそれはざわめきと溜息に変化していった。なんか異様な雰囲気だな。

 サイレントロードのダービーとか皐月賞はもっと歓声が大きかったような気がするけど。

 

「例えば、ボクシング世界王者がタイトル防衛をかけたマッチでKO負けしたら。

 例えば、マジック1を灯したチームが9回2アウトでサヨナラホームランを決められ敗戦したら。

 スポーツにはそういう、「こっちが勝つべき」という大衆心理が存在します。競馬もそれは然りです。

 

 競走馬は夢を乗せて走っている、なんて言い方をされることがあります。ですがその夢を破ったものに対しての風当たりは強いのが実情です。

 怪我であれば嘆き悲しむだけで済みます。ですがそれが敗戦であったなら……まあ、こういう言い方はよくありませんが、ファンというものは身勝手ですからね」

 

「なるほど……オルフェーヴルがそういうなんと言いますか、非難の目に晒されるのは避けたいわけですか」

「そういうわけではありません」

「あれ?」

 

 

 

「今年は東日本大震災という、未曾有の災害が起きた年。そんな日本にはね、明るいニュースが求められてるわけです。

 3/26にはドバイで、ヴィクトワールピサが日本馬初優勝を決めたことで日本に明るいニュースを届けた、なんてスポーツ新聞の1面に載っていましたね。

 ……わかりますか? 恐らくJRAからも、「絶対に菊花賞に出てくれ」という話をどこかのタイミングでされることでしょう」

 

 

 

 明るいニュース、ねぇ。

 ようするに、「勝つべき馬がいる、ただしあくまで真剣勝負をした上で。そしてそれに参加するかどうかは別問題」、ってところか。

 まあ、実質的に競馬界のほとんどを支配……っていうのは言い方がおかしいが、そういう立場にいる人ってのは何でもかんでも勝てばいいってものではなく、色々考えを巡らせないといけないってことだろう。

 

 

 

「幻滅されましたかな?」

「そこまでは行きませんが、まあちょっと意外ではありました。こんなにはっきりと言うもんかと」

「まあこちらにも色々事情があるということです。仮にオルフェーヴルがいなかったとしても先程池尾さんが仰ったように距離の壁というものもありますから、オルフェーヴルがいないなら絶対勝てるというわけではありませんからな」

 

 

 

「話を次走に戻しますね。

 秋の大目標を菊花賞と仮定した場合、ここから約5ヶ月空くので事前に1つ、調子を上げるためにレースに出すのが基本のローテーションです。

 中山2200mで行われるセントライト記念と阪神2400mで行われる神戸新聞杯の2つのトライアルレースのどちらかを使うのが基本で、輸送の負担を避けるためにセントライト記念は美浦の、神戸新聞杯は栗東の馬が使う事が多いです。有力馬を避け確実に菊花賞の出走権を得るために栗東の馬がセントライト記念に、あるいは美浦の馬が神戸新聞杯に来ることもありますが。

 トライアルレースを使わないという選択肢もあります。しかし5ヶ月もの期間が空く以上やはり調子の管理は難しく、過去10年を見ても馬券内に絡む馬もいないので出来れば避けたいところです。

 3歳では3000m級の長丁場を未経験であることから、前走をスピードを重要視しスタミナを軽視する2001m未満のコースにすることはおすすめしません。

 菊花賞に行く前提であれば選択肢は多くありません。ですので、菊花賞に出るか出ないかをまず決めましょう。出ないのであればまたいくつか選択肢がありますので」

 

 秋の大目標、か。

 この選択はサイレントロードにとって非常に重要な選択になるだろう。

 慎重に決めなければ……。




本編を3行で
1.池尾「秋の大目標は菊花賞がほぼ既定路線やで、他にするならめっちゃ批判されるで」
2.吉岡「サイレントロードが菊に出るならオルフェーヴルは菊に出ないで」
3.池尾「秋の目標を菊にするならその前に1レース挟みたいで」


というわけでちょっと変則的な次走決め回です。期限は11/08の12時までとします。
秋の大目標を菊花賞に「する」「しない」を選びます。
「する」が選ばれたなら菊花賞の前走を、しないが選ばれたなら秋の大目標を選定することになります。

それから、今回からアンケートの!表記を消します。ぶっちゃけいらんかったねこれ。

秋の大目標を菊花賞にしますか?

  • する
  • しない
  • 来いよオルフェーヴル!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。