あべこべ危険(ウマ娘)   作:2Nok_969633

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 ○○→ここな→そそは→ととま→ののや→やの→矢野にしようかって考えていたんだけど、ここの展開で一悶着あると面倒になりそうだし予め聞くね。省略する?

 ちゃんこ鍋でアメリカ出身って史実通りだけどさ…天才にしか書けない設定じゃん。






努力家

   

 

 

 目を覚まし、スマホを確認した時だ。ウマッターから一通の通知が届いている。恐る恐る中身を確認してみれば、かのシンボリルドルフからだったようで…これには度肝を抜かされ、指先がプルプルと震えながら文字を打っていた。居合の達人同士がピリッとした殺気から身構え、その身を守るような緊迫感が襲ってきているようなものだ。

 

 ああ、成程…フォローしたから向こうからコメント出来るようになったのか、と導き出すことにそこまでの時間は掛からなかったが、心臓が飛び出そうな勢いで、ドクンドクンと鼓動が激しく動くものだからか、時間が他の人の倍以上に経ったような錯覚を覚えていた。

 

 『いえ、そう大したことではないのだが…。昨晩の一件のことでお話が。』

 

 そしてその返事に、サーッと血の気が引いていく。画面越しからだというのになんたる威圧感なのだろうか…いや、単純に俺がビビっているだけだろうが、流石は皇帝様だ。コメントだけでここまでとは…実に驚きである。あのプリティなルナちゃんはどこへ飛んでいったのやら…あくまで創作上の話ではあるが、やはり普段はこのレベルの威厳か。格が違う。

 

 『多大なる損害や誤解を与えたこと、誠に申し訳ありませんでした。』

 

 『いえ、第三者が勝手に盛り上がり広めてしまった跳梁跋扈のようなもの…あなたに責任は無いでしょう。』

 

 『えっと…それは何と言いますか、私の行いを許していただけるのでしょうか。』

 

 単純にラスボスと村人Aが釣り合うわけないだろうに、勘違いか…はたまた出会い方が違ったがために目をつけられてしまったような物語の中にいるような経験をしているのは、俺が男だからだろうか。

 

 『許すも何も、その事について問いただしに来たわけでは無いのだが…。』

 

 『そ、そうですか…。てっきり騒動の事で責任を取れとか言ってくるものだと。』

 

 『そんな権限をただの生徒会長が持っていたのなら、それはもう本物の皇帝だよ。』

 

 正直あなたなら本当に出来そうだ、なんて書いたものなら…俺は確実に八つ裂きの刑だろうな。

 

 『さて、本題へと移りたいのだが…。』

 

 『えっと…その、どのような御用件であらせられますでしょうか?』

 

 こう連日も…しかも今日に限っては世間は皆休みで、かつ今は朝だというのに緊張が抜けきらない。皇帝様には申し訳ないが例えあなたであろうと、二度寝とかして逃げたい時くらいはあるんだ。

 

 『まあそうだな…君も疲れている事だろうし、単刀直入にいこうか。あの騒動をきっかけに、学園側の生徒の殆どが熱心に取り組むようになったので、一言お礼を言いたくてね。』

 

 その言葉に目を疑う。それこそ謝罪の一言でも述べろ、と言ってくれた方がまだ身が楽になるというのに。

 

 『いや、その発言を生徒会長様がしていいのか…そもそもあれからまだ24時間も経っていないのでは?』

 

 『確かにその通りではあるがさっきも述べたように、君の行動に不当性はないだろう?咎める必要もないものだ。それに…あれだけ世間を騒がせたことで、多くのウマ娘があなたのことを認知した影響からか、朝早くからトレーニングに励むもの、体調管理含め真剣に取り組むようになったものが大勢いる。それがどんな理由であろうと…たったの数時間でここまで影響を与え、導いた貴重な存在はそうはいないよ。』

 

 過大評価というやつだろうか、それとも皮肉めいた言葉なのか。それはどうでもいい。ただし…男だからという理由だけで動く子達がいるとは、目先に囚われては一着は取れないようなものだ。特にレースにおいては、順位が他の競技に比べてより洗練されているというのに…大丈夫なのだろうか、この世界の女性達は。結果を残す前の過程と動機は別に何だっていいのだけれど…たったの数時間で変わるわけがなかろうに、生徒会長が言うほど必死な形相を浮かべながら練習に取り組んでいるのか?足を掬われないか…少しばかり心配だ。

 

 『それこそ偶々ですよ。歪な認識が勘違いとなって発生しただけで…あそこまで大きくなるなんて、恐怖の対象でしかありませんから。それに大抵不純な動機というものは、三日坊主で終わるのが常では?』

 

 『我々が危惧しているのはそこだ。話が早くて助かるよ。唐突ですまないが、是非君の力を借りたいと思ってね。勿論無理にとは言わないが。』

 

 利用されるんですね、わかります…なんて感じでないことは確かだろう。本音としては利用されても良いが、流石は現代の王様…そう思わせないカリスマ性を間近で目にするとは思わなかった。見えていないなんて細かいことはさておき、こればっかりは聞くしかないだろう。無理難題を押し付けてくるような人ではない…それは履修済みだ、恐れることはない。

 

 『私に出来ることがあれば何なりとお申し付けください。』

 

 『ふむ…モチベーションの低さ、と書けばわかるだろうか。』

 

 単純に気持ちの問題で、解決できる問題であれば態々コンタクトを取ろうとするのか…?いや、それは無い。となると、優先すべきものは現実的な目線。そこから見る必要がある。今のウマ娘の覇王争いは指5本以上…重賞は彼女達が取り放題。モチベーションと上げている事から推測してみた結果、答えはこれしか浮かばなかった。

 

 『二極化でしょうか?勝とうとしても、勝つ気持ちが強くても…負け続けたことによる自信のなさや目的の欠如によって、戦う気力すら無くなってしまうところだった。そこに割り込んできた理由付けの一つが、昨夜の出来事。…悪く言うとああした刺激をきっかけとして、体力も気力も回復したと?』

 

 はっきりいってそれは悪手ではないか。もし仮にそうなら、それはもはや悍ましい執念だ。叶わない夢の成れの果てを、ただただ柵に必死に絡みついて死を待つだけになりかねない。

 

 『短期的なのか長期的なものになるかはまだ不透明ではあるが、結果としては見ての通りだ。だが、それはあくまでウマ娘側の話でしかない。トレーナーが幾らやる気を出そうと…。』

 

 『元々問題視されていたトレーナーの人数不足ですか。』

 

 『その通りだ。かといって障害等級を持つものをトレーナーとして認定するかは上が決定権を持っており、ライセンスの取得をしているかどうかは公平に扱わなくてはいけない規則もある。それは彼女達が一番よくわかっていることだ。だからこそ、あの投稿で再び火を付けた人達もいる。彼女達は誰1人として、君が男だから…といった浅はかな考えで動いたわけではないとは思うよ。

 

 君の投稿は何であれ、彼女達を刺激してくれた。その事に私は…君に感謝している。』

 

 その発言に俺は少したじろぐ。皆の知っているルナちゃんではなく、歴とした皇帝…本物の王のような佇まいとでも表すに相応しいのではないか?恐ろしいほどの知見と観察眼の鋭さを、10代半ばで発揮するか?普通もう少しはそれなりに子供だろうに…一体どこで身につけたのだろう。確かに思考を幅広く豊かに取ろうとする姿勢やその活用方法などは、訓練をした結果既に癖のようなになったと本人が言っていた。だからといってこの理想の追求の仕方は…あまりにも王になりすぎている。怖さマシマシたっぷり濃厚だ。

 

 そこを抜きにしても彼女達トレセン側の人間が、男だからという理由で張り切っていない根拠を示していない。いや…仮に男が理由でも何でもいい。大切なのはその後だ。彼女達を突き動かした心理の根幹は何だ?

 

 『男かもしれないという理由以外で、彼女達が動いた理由はなんです?』

 

 そのコメントを送った時、暫くの沈黙と文字を打つマークが画面に現れる。彼女がどんな気持ちで、どんな表情で打っているのかはわからない。けれど…願わくば本物とこうして話がしたかった。何処か難しそうに顔を顰めているのか、それとも笑みを浮かべているのか、はたまた真顔か。どんなものでもいいから、俺の目で実際に見てみたかった。

 

 『単純に負けず嫌いが発動しただけだよ。より正確に言えば「男なんかに、障害等級に負けていられるか!」って気持ちから徐々に「よくよく考えてみたらトレセン学園に入るのは女性だけ…URAが緩和措置を許した場合、素人であそこまで熱中した人が知識も経験も会得すれば…私のトレーナー生活が奪われる!」という恐怖に変わった感情と、それに混ざって滲み出ている本物の勝負師としての…ある種トレーナー病だ。

 

 そして生徒達の意識も「この人がもし入ってきて、担当に付いたならば…私も活躍出来るのではないか。」「私も頑張れば、少しは前に進めるのかもしれない。」といった具合だろう…こちらは期待が大きいかな?今年はもしかしたら豊作なのではないか、という予想もあるからこそ…あのブログから影響を受けたまだ見ぬ卵が、将来トレセン学園に就いてくれるのではないかと持ちきりでね。』

 

 『現実も見据えつつ、あわよくばの期待も忘れないと。』

 

 『そんなところだ。まあ君が素人で、あそこまで集めるにしては度が過ぎているし、他にも…例えば写真に対するこだわりの強さやデータの保存方法、書き方の統一性から見て、極度の精神疾患なのではないかと予想も立てられていた程だ。そうなれば障害等級というのも頷ける。

 

 あとはそうしたSNSの使い方から見て、年齢的にも比較的若いのでは?という推察に食いついた子達も多数居るが…。君に対してそこまで危惧するものではない、とURAは判断した。現状一晩で起きた事に対し、1人のために改善を行うなんて不可能だからね。

 

 とは言いつつ、彼女らも少しは食いついただろうが…私の場合も恥ずかしながらトレンドに載った際、もしかしたら地方に居るかもしれない…とトレセン学園に所属しているトレーナー全員、全てのデータを照合して確認するくらいには取り乱したよ。あなたのような人ともなると数が少なかったので簡単ではあったが、その中には当然…障害特級を持つものは居なかった。正に軽挙妄動、私もまだまだだと実感したからね。』

 

 触れたく無い内容はさておき…正確ではないデータでそこまでやる気が上がるのもどうかと思うが、それで奮起してくれるのであれば喜んで力になれるだろう。

 

 しかしだ…やけに障害特級の見方にやたらと詳しいと疑問に感じる事もある。これではこちらがボロを出せば、均等なやり取りを持ちかけることすら出来ない。ブラフが正しく作動したのかは定かではないが、何はともあれ…この程度で収まったのはある意味奇跡と言っても良いと判断して良いだろう。

 

 やはり人間が一番怖いという一面は知れて良かった。彼女との会話も然り、世間の反応も同じように… ただの男という可能性があるだけでこの有様だ。

 

 男でない証拠を出そうにもプライバシーの都合上、こうしたアスリートの公式垢からでは聞き出そうにも聞き出せない筈…だというのに隙がない。そしてもし仮にこのタイミングで男だとバレれば、世間は悪い意味で食いついてくる姿が予想される。

 

 仮にレース場に一度でも男が立ち寄ったとしよう…まあ、そんな未来は無いだろうがやはり見るならば一番前か、現実的に見て指定席…そのどちらでも構わない。

 

 そうなった時、場にいる者が9割以上の確率で主役である彼女達を差し置いて目を付けられ、挙げ句の果てに中身まですら見られず、やれ映えだのなんだのと理由を付け、個人情報すらぞんざいに扱われる未来しか浮かび上がらない。

 

 俺も彼女達もこれでは認められる訳がない。それだけは避けなければ…だが、流石はURA上層部。線引きもしっかりしているからこその判断に、感服する他あるまい。

 

 『いえ、妥当な判断だなと思いますし、仕方がないでしょう。何より公平性に欠けるので、URAが決めた基準は守らねばなりません。そしてビビりましたよ…概ね合っています。私自身素人である事もそうですが、まさかそこまで当ててくるとは思いませんでした。

 

 簡潔に言うと重度の自閉症を発症しておりまして…それも複数合併しているのか複雑なようです。詳しいことは専門的な知識等もないのでわかりませんが…私も上手く伝えられることが出来ないのが残念です。

 

 とはいえ治療に専念し、なんとかネット上にて1対1で会話をするくらいの行動は出来るよう訓練を受け、ようやくといった時に偶然とはいえこうしてシンボリルドルフさんと画面越しではあるものの、会話をする事が出来てもう…身に余る光栄、恐悦至極の思いです。』

 

 こう言っておけばいいだろう感満載の、過去の経験から学んだ理由作り…本音の部分はどうであれ重要なのは反応だ。さて、どう来る?

 

 『私は君が男でも構わないけどね。能力があるなら尚更無駄にはしたく無いが…そうなると学園全体が資格を持っていないと入学できない事になる。理想を叶えるというのも一筋縄ではいかないな。』

 

 『さらっとそういうこと書きますかね…それに私はペーペーですから。私も同じような気持ちですよ。』

 

 『性別に関して否定はしないんだね。』

 

 『男の子はミステリアスな方がいいって決まり文句ですよ。まあ…本音を言うと否定する方が面倒なので疲れちゃいました。もう懲り懲りです。』

 

 やっぱカイチョー怖い。

 

 『さて…笑えない冗談はさておき、君の誠意や真剣さは伝わってきた。その能力にまだ納得がいかないなら、是が非でも納得がいくまで探求し続けるといい。そしてこれからも、熱意を込めて活動に励んで欲しい…私のお願いはこれだけだよ。何か手伝えることがあれば遠慮なく言ってくれて構わない。』

 

 皇帝から我儘をお願いしていい権利を貰うとは、相当切羽詰まっているのか?確かに史実も今もオグリ世代は強者の祭りだ。だからといってトレーナーが悔やむことは無いだろう…こればっかりは選手にとって、時代が悪いとも言えてしまうのが常だ。

 

 だからこそ…この我儘が偽善であろうと、聞き入れてもらわなければならない。プレゼンなんて前世ぶりだが…やるしかない。

 

 『ありがとうございます。全てのウマ娘には可能な限り幸せになってもらいたいですから。因みにどんな事でも書いて大丈夫でしょうか?』

 

 『内容によるが…基本的に問題が無いようであれば、好きなように書いてくれて構わないよ。私としても気になるのでね。』

 

 言質は取った。あとは俺がどれだけやれるかだ。

 

 『では、これは内密にお願いしたいのですが…実は今こういうアプリを作っていまして…。』

 

 そこからは根気と体力の勝負であった。どちらかといえばアピールをするというより、どれだけの精密さが求められるかといった話に変わっていったが…このアプリの狙いから、学生が置かれている立場を少しでも軽減させたい想いは語れたと思う。呆気なく結論だけ述べられたが、自分にとって良い体験ができた。

 

 『要するにデータが少ないから、事前に呼びかけをし、生徒に協力して貰いたい…という事か。』

 

 『はい。映像越しで構わないのでより多く…そして細かいデータがあれば、アプリも無理なく提供がしやすくなります。』

 

 『生徒のデータを他者に提供するためには上層部に提言してからでなければ難しいが、やってみる価値はありそうだ。結末がどう迎えるのか見通しが不明だが、後日必ず知らせよう。』

 

 『検討していただきありがとうございます。では、失礼します。』

 

 『貴重な体験をさせてもらった、ほんの小さなお礼だよ。こちらこそ今日はありがとう。』

 

 緊張が解け机に前屈みに倒れたまま、汗が止まらず呼吸が苦しい状態が続いていた。

 

 …これがデバフスキル特化の力なのか?

 

 マエストロが欲しい…そんな心境を壊すように、時計の針はまだ10時になったばかりで示している。今日一日何も出来なさそうなくらいに体力を使い果たした。

 

 そしてそれに畳み掛けるようにスマホが揺れ、俺は苛つくように声を上げたい気持ちを堪えて電話へと出る。その際にふと視界に映った見覚えのある番号なんて知らないし、何も見ていない。

 

 「もしもし?」

 

 「東京都立府中総合医療センターです。定期検診の更新が為されていなかったのでご連絡させていただきました。」

 

 「あ…すみません、忘れてました。」

 

 「いつも通りですね…はい。では明日の朝10時に、担当の者が向かいます。検査はそちらのマンションで行います。それと検査前日の21時以降に固形物による食物を摂ることは出来ない規則ですので…厳守の程お願いします。」

 

 「本当に申し訳ございません。よろしくお願いします。」

 

 勘弁してくれ、俺を殺す気か…と言わんばかりのタイミングで頭の中からすっぽり抜けていた定期検診という言葉が、俺を現実へと戻す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 転生後であっても、お注射はやはり慣れないものなのである。

 

 

 

 




 


 たどころ→tadokoro→たかだ みお
 た ら→あさは→、かな

 高田美緒or佳奈
 偶々だけど一致してこれはキタ!と意気込んでいた4月27、29日15:40。作中にて違う職業であると判明し、涙で枕を濡らす1977年。

 (感想欄について。

 ごもっともな意見で占めていて、言いたいことが沢山あるのは文才が無いから等の原因に加え、自身の未熟さによって生まれたことだからそれらは勿論受け止めるし、改善出来るよう地道に努力するので暫しお待ちを…。



 おまけ

 あんましこういうことは書きたく無いんだけど、圧縮出来て綺麗に仕上がるならいいが…私にそんな技量は無い。

 これ以上日本でご都合展開も流石に…。

 それに実際…1話2話の伏線を回収するか全部書き直すかで、そもそも迷っていたのよ。結論は無理だった。)



 
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