あべこべ危険(ウマ娘)   作:2Nok_969633

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 リトルココンってディクタスの父親含め、系統要素を混ぜたやつって思ってる派閥です。
 微調整に時間が予想以上に食われて、よもやよもやだ…穴があったら入りたい!

 普通ならありえない展開で、勝てないかもしれない。だが、競馬に絶対は…。






スプリントターボ

 

 

 

 主治医に注射を打たれたあの日は、前日にあった会長以外にも色々なことを知ることが出来た。

 

 自称【主治医】をネタで名乗る矢野医師と軽く世間話をした時に、娘さんの話で盛り上がったのだが…そこでとある写真を見せてもらった。きっかけはなんてことはない…ウマ娘好きならこれはびっくりするだろう、というだけの理由で見せられた代物だ。ただそれだけしか聞かされていなかったが為に、驚愕の発覚をすることになる。

 

 

 

 なんと…ウイニングチケットとトニビアンカが映っている写真だったのだ。これを見せられた時は、尊さのあまり気絶しそうになったのは記憶に新しい。

 

 

 

 かつての凱旋門賞バ…そしてオグリキャップらと激闘を繰り広げ、時代を作り上げた名バの一人が府中に居るなんて興奮しない奴はいない。こちらとしてはそっちで来たか、と意表を突かれたわけだが、これはこれで最高だった。

 

 もしこれがウイニングチケットでなくエアグルーヴであれば、とも思ってしまう俺の心は実に汚れているだろう。ダイナカールが一体どんな名前に変わっているのかは知らないが…我儘を言えば、その場にいて欲しかったと思ってしまう。こればっかりは転生者でしか知り得ない事柄だが…エモすぎる事間違い無しな筈だ。しかしチケットともなると…マルゼンスキーの方があの学園では会いやすいのだろうか、なんて想像に耽ってしまう為に、どちらに転んでも美味しい一枚であることに変わりはない。

 

 なんでも彼女が言うには、学園にてウイニングチケットが偶々部活の助っ人としてサッカーをしていたところ、その場で意気投合したそうだ。一方的に知っているとはいえ、ある種納得がいくところがまたチケットらしいというか…馬主エピソードだろうか?この世の法則性は実に奇妙に絡み合う。

 

 当然無関係な関係ではないが故に、個人的に興味がそそられる話であった為…是非本人と話がしたい、と迫ったもののそれとなく断られてしまったことが実に悔しい限りだ。時として常識やルールというのは実に残酷である。

 

 それにしても娘が将来ダービーを取るかもしれない存在だなんて知ったら、親はどう思うのだろうか。こちらとしてもビックリな出来事に、心が保てなかったのは未熟者としての証拠であろう。…娘がウマ娘だとは聞かされてはいたが、どうしてもこればっかりは心の準備が足りなかったようだ。

 

 医者ということもあり、限られた会話でしか盛り上がることは出来なかったが、他にも話を聞く機会があった。その日は仕事終わりに食事会があるとのこと…なんでも娘同士の繋がりでの交流なんだそうだ。間違いなく将来暴れまくるであろうBNWの御三方だろう…俺も混ざりたい、なんて言えば矢野医師の心臓に余計なダメージを与えそうで、口が裂けても言えなかった。

 

 

 

 「君の主治医としてここまでやってきたけど、バカ娘よろしく二度とごめんだわ。やれウマ娘に会いたいだの言うから、私が配属されたんだけど。」

 

 

 

 なんて笑いながら語る姿は、親バカそのもので微笑ましくはなるが…ちょっとだけ心外である。俺はあそこまで感情移入するタイプではない…と反論したところ、心底呆れたような表情を向けられた。そんな叫んだり、涙を流したり、暑苦しいようなタイプでは断じてない…俺は至ってニュートラルな存在なんだと言い聞かせていた。

 

 一度だけ…本当に人生で一回限りではあるが、

 

 

 

 病院とはいえ何も言われずに会ったウマ娘が、メテオノーブルだとは思うまい…そりゃあ仕方がないだろう?写真集と瓜二つな姿で、時代を作った張本人が間近に居て発狂しないほうがどうかしている。…という状況を作り出した本人が、それをケロッとした表情で述べても何の説得力も無い。ある意味で幸せだったが…ああいうのも本当に心臓に悪い。

 

 

 

 …ああ、そういえばそうだった。それよりも前に会っていたウマ娘が居たことを思い出す。病院といえば彼女も居たな、と。

 

 

 

 ウイニングチケットの黒鹿毛を見て思い出したが…生で見るのはこれで2度目だ。その時も同じように気絶しそうになりつつも、必死に堪えて同じ時を過ごした事があった。同じ黒鹿毛の子でもチケットとは真逆な、随分と身体の弱い子だった。あの子は今でも元気にしているんだろうか…恥ずかしい過去の話である。

 

 

 

 そしてそんな懐かしい気持ちに浸っていた俺を裏切るように、注射を迷うことなく打つ行為だけはやめて欲しい限りである。この世界の医者は皆こうしないといけない規則でもあるのだろうか?

 

 こちらとしても思い出に浸かっている中、いきなりブスっと打ち血を抜くなんて医者がやっていい行動じゃない。トウカイテイオーの気持ちが今になってよくわかる…そんな1日を送った。

 

 因みにあの騒ぎについては、彼女も忙しくあまり認知していなかったようで特に何も聞かれずに終わった。少しばかりホッとしたのは内緒である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、時は少しだけ過ぎた8月の下旬に差し掛かった時だ。

 

 20th…万博バンザイ万博バンザイ、そして名馬とウマ娘。あのCMには震えたのが懐かしいと思いつつも、気分は高揚を維持している俺に…ある知らせが入ってきた。

 

 

 

 『伏兵のお弟子さん、物凄い勢いでしたね。』

 

 『あれは凄かったですね。』

 

 

 

 そうだよ…僕が、その弟子だよ。

 

 

 

 なんて言ったところで何かあるわけでもないので、他人事のように華麗に対応しながら1人目の子と何気ない会話を続けている。仮面も持っていないのにそんなセリフを言ってもいまいちインパクトがないからか、実に虚しいものだ。

 

 その弟子として振る舞っているのは現時点でシンボリルドルフただ1人のみ…といっても世間話くらいしかする事もないのだが、本人にしてみたらそちらの方がこちらも肩が抜けて良いとのことである。生徒会長といえど少しは休める場所が欲しいのかもしれない。

 

 

 

 『次のサマードリーム、君は誰が勝つと予想しているのかな?』

 

 『それ、私の口からシンボリルドルフが勝ちます!って言わせようとしてません?こちらとしては冷静に見た上で判断したいんですけど。折角なのであなた以外の名前を挙げても良いですか?』

 

 『その発言、皇帝としての異名を持っているこの私が肯定しよう。』

 

 『今の空気で是非とも日本勢、特にシービーに勝って欲しいと思った自分に驚いたんだよね。…真面目に行くと、グレートスピリットかマリートランか。URA優勝時に豪脚を見せたリトルココンを挙げます。』

 

 『ほう…大体私と似たような思考か。ならば、本当に手は抜けないな。画面でしか見れないだろうが、見ていてくれ。全員纏めてねじ伏せて来る。』

 

 『怖いっす。というか態々聞きに来る必要はないと思うんですけど。』

 

 『皆を率いるに相応しい素質のある者には、お手本を見せるのが先輩としての役目だからね。』

 

 『やだ…かっこいい。そんな事言われたら皇帝陛下にキュンキュンしちゃいますって。好きだと申す気はございませんって言っちゃいますって。』

 

 『初恋キャロットケーキか。君が見ているとは正直、驚いたな。』

 

 『それは私も同じですよ。会長だとてっきりウマ娘の夜明けかな、と思っていたのでその返しは少し…いや、かなり意外でした。』

 

 『そうして素で返してくれると、こちらとしても有難いんだ。君との会話は普通で良い。虚心坦懐だな。』

 

 『そりゃ庶民Aですから。しかし庶民が皇帝陛下に対してそのような発言はするべきではありませんね。…訂正します?』

 

 『それは本当に辞めてくれ。私だって普通の10代だよ。』

 

 『まあ私達が普段見ている姿というのは、敢為邁往に近いですから。そうですね…レース前なんで折角ですしそれっぽいことを発言してみてもいいですか?』

 

 『珍しいね…君はレース前に何て言ってくれるのかな?』

 

 『では…はっきり言って日本にあなたの敵はいません。海外勢含め強者共を丸ごと全員、ぼっこぼこのけちょんけちょんのフルボッコにしてサマードリームトロフィーの優勝をもぎ取ってきてください。但し、怪我はしないように。』

 

 『彼女達にその発言を今すぐにでも見せてやりたいくらいだよ。まあ、お蔭でだいぶ肩の力は抜けた、ありがとう。また連絡する。』

 

 

 

 と、まあ数時間前にやりとりをしていた。この世界でもゲーム同様のトレーナーに会えたのだろうか?

 

 それはそれとして今回はなんと、彼女からまたもや吉報が届いたのである。相談が届くこと自体は良いのだが、本来ならば相談事が無ければ無いほど状況としては好ましいという微妙な気持ちである。学園側にとってはそれに尽きるだろう。非公認とはいえ、俺にも思うところがあるわけで…少しだけモヤモヤしてしまう。

 

 とはいえ、だ。こうして相談者が来るということは、事実である。つまりは対処しなければ、俺の存在価値は無と等しい。

 

 なんでも彼女が変わった事で、彼女自身に相談をしに来た子が居るらしい。こんな事もあるものなのか、なんて思いながらも…実のところ3人目が来るかもしれないとなると…それはそれで嬉しいものだ。

 

 ただ彼女なりに答えるのも問題は無かったのだが、折角だからあなたにも…とわざわざ時間を作ってくれる気遣いに感謝してここに居る。ただ、画面越しとはいえ、待ち合わせにはまだ時間があるとのこと…相談室ではあるものの、閑古鳥が鳴いているよりはマシな為こうして会話を広げては居るのだが、初手からまさかのその話である。

 

 

 

 だからこうして時間が許す限り、雑談を繰り広げているのだが…それらはいつの間にかさらに深掘りしていくこととなった。

 

 

 

 『前にこの掲示板を紹介した子ですが、私のトレーナーさんが暫く面倒を見ることになったみたいです。まだ危なっかしいみたいなので落ち着くまでの間のようですが。』

 

 『それは良かったです…って、それはそれでまた凄いですね。一年も経たないうちに担当を2人持つとは。』

 

 

 

 知らない間に進んでいた展開に、少しばかり驚きを隠さないでいたり…。

 

 

 

 『ついこの間シービー先輩から8月のドリームトロフィーが終わり次第、写真集も出すような事をボヤッと呟いていましたね。』

 

 『ちょっと待って…それ、告知もされていない極秘事項じゃないですか!予約サイトの開設が待ち遠しいですねぇ…ワクワクしてきました。』

 

 

 

 ネットの民度など等に知れているが…それでも男性の間で時折語られる機会があるのではないか、と噂されている人気者ミスターシービーの話題の他にも…。

 

 

 

 『そういえばドリームトロフィーが終わった後に交流会があるそうです。』

 

 『恒例行事ではありますが…今年だと凱旋門賞からの出場者も多そうですね。今年の交流会はそれ以外にあったりします?』

 

 『ジャパンカップが終わってから、アメリカのトレセン学園の人達が数名ここに見学しに来る予定はあるみたいですね。』

 

 『それはまた貴重な機会が得られそうですね。数も質もあちらが上ですし、何より戦い方や得意な走りも様々…日本で得られる事とはまた違うものが見られると思うので、こちらとしても楽しみが増えます。』

 

 

 

 もしかしたら本当にあのジャパンカップが再来するのだろうか?あのクソローテとも呼べるバンブーメモリーやオグリキャップが走るのは…前世の考えが根強い俺からしたら流石にやめてほしいとも思う。ゲームではなくリアルならば尚更だ。仮に再戦するのであればオベイユアマスターの来日があるのではないか、なんて思いつつも…それを伏せながら交流会が楽しみで仕方ない、という話を広げていたら…いつの間にか20分を過ぎていた。これには流石に違和感を覚え、慌てる気持ちを抑えようと冷静に判断して我へと帰る。

 

 

 

 

 

 

 物凄い勢いでお互いに語っているが、いくら何でも喋りすぎではないかと。

 

 

 

 

 

 

 こうして楽しそうに話す彼女は仮令ネットといえど微笑ましく思う。だがしかし…今日の主役はこの子では無い。俺としてもこの子との会話は充実していることもあってか、悲しいのも事実。心を鬼にして話を切り返す事にした。

 

 

 

 『それでその依頼人は…今どちらに?』

 

 固まるコメント欄、暫しの沈黙。

 

 『すみません、すぐ呼んできます。』

 

 

 

 一言、コメントが残される。どうやらお互いに夢中になりすぎて、忘れてしまうという失態を犯してしまった。こういう状況を作り出してしまった俺にも責任はある。どうか何も起きていませんように、と願うばかりだ。いざこざが生まれなければ越したことはないが…と心配をしてしまう。よく扱われる私と画面のどちらが大切なのよ!なんてベタな展開が繰り広げられれば、折角の俺の楽しみが無くなってしまうではないか…という気持ちは何処へぶつけたら良いのだろう。この葛藤は誰に言えばいいのだろう…といつになくソワソワと、小刻みにカタカタと軽く歯がぶつかる音を聞きながら待っていた。

 

 一分にも満たない時間とはいえ、一番長いと感じてしまうこの待機時間…ゲート入りしたセイウンスカイの気分と、どちらが苦しいのか勝負したいところである。

 

 そんな事を思いながら、ルームが開設され3に増えてコメントが打たれ始めた。あれから2ヶ月で3人目…素人にしては上手くいっている方だろう。所詮はこんなものだろうが…それでもこの時間はやはり楽しいものだ。

 

 

 

 『初めまして。』

 

 『初めまして。』

 

 『今日はよろしくお願いします。』

 

 『こちらこそよろしくお願いします。』

 

 

 

 初手挨拶は基本中の基本…ここまで精神が病んでいない子達ばかりが来ている事から、こちらとしても気持ちが楽である。

 

 

 

 『では始めに、どのような事をお聞きになりたいのか等を焦らずでいいので書き込んでみてください。隣に彼女がいるなら相談しながらでも、意見を聞きながらでも、箇条書きで書かれても構いません。』

 

 『わかりました。』

 

 

 

 かれこれ時間にして10分、こちらは一口お茶を飲み、座りながらクルクルと身体を伸ばしつつ待つ。悩みが軽ければ越した事はないし、重ければそれはそれでやり甲斐があるというものだ。

 

 まあ、精神汚染とかは勘弁してもらいたいけど…馬にも精神病があるかもしれない、と前世では語られていたこともあったが結局は不明。ウマ娘ではどうなのだろう…立ったまま寝るわけでも、睡眠時間が人間に比べて短いわけでもない。

 

 実際のところよくわかっていないという設定として貫き通していたわけだから、ゲーム会社もそこのところは考えていないのかもしれないが…そんな事をふと思いながら、通知音につられて書き終わった内容を見る。

 

 

 

 『私は現在、マイルと中距離戦をメインに調整を行なっているのですが、長距離にも手を出そうと考えています。しかし脚質が逃げに加えて、体力不足からか長距離の最後までベストタイムを出すことが難しいです。周りの先輩方に聞いても、長距離の逃げはそう簡単に出来るものではないとのことで、参考に出来るような資料も古いです。何か良い方法があれば、と思いまして。

 

 なるべく模擬戦までに出来る限り対策をしたいと考えているのですが、どうしたらいいでしょうか?』

 

 いやぁきついっす。HAHAHA…苦笑するほどに、こればっかりはきついっす。至難の業という言葉を辞書で調べてきてもらいたい。

 

 『長距離で逃げを制したっていうと…例として菊花賞でいえばクラマハクがいましたが、もう現役を引退している身ですし。大方、有力な人たちも中距離が中心で早々にいない。確かにこればかりは苦しいですね。』

 

 三冠が確実とされていた名バが悉く散っていった菊花賞…ステイヤーとされていた子達でさえ長距離で逃げを打って出る子はいない。それほどまでに長距離で逃げというのは非常に難しいものだ。ゲームではゴリ押しによるゴリ押しによって可能ではあったものの、適正距離以前に戦法がそもそも合っていない事の方が多い時だってあるかもしれない。

 

 もうこの時点で大体誰なのか絞れてはいるが…これは流石にお手上げだ。

 

 そもそも俺自身、三冠に重きを置いたことは一度も無い。

 

 ゲームみたいにそう易々と出来るものではないことは勿論の事、ゲームだったから、適正距離がそれぞれC.B.A.Bと表されていただけのヌルゲーそのものだからこそ出来る芸当だ。…育成ゲームが始まった時点で、彼女は既に完成されているのだ。対してこちらは未知数…あまりにも不安定すぎる。

 

  『失礼を承知で書きますが、脚質を先行にして足を溜めて勝つというのは…。』

 

 『自分の信条は曲げたくありませんし、結果的に先行ポジについてしまうとかかってしまう事があったりするので逃げの方が安定します。』

 

 この世界にもあの調教師のような人がウマ娘に居るのか。頑固者かそれとも執念か。…まさか、ね。

 

 『因みに体力を保たせて自身が最大パフォーマンス出来る距離は最大でいくつですか?』

 

 『2200が良いところですね。』

 

 『oh…ん?あれ、でもマイルも走れるんですよね?どちらか、で言えばマイルの方が走りやすいですか?』

 

 『いえ、差はないです。』

 

 

 

 ブルボンとそっくりさんですか?と反応してしまいそうで、少しだけ背中がピリピリと電流が流れたような感覚に陥る。思わず手が止まり、冷や汗が頬をツーッと流れる。他に逃げ馬で居ただろうか?ウマ娘でも居ただろうか?

 

 第一に…マイルと中距離両方をこなしている中等部の時点で、この子はどこか頭がおかしいのでは無いかとさえ思ってしまう。流石中央…精鋭揃いである。

 

 ブルボンと同じようなウマ娘が早々居たら溜まったものじゃないが…マイルを走れるということは、それだけスタミナがあるということではないだろうか?最高速を維持しながらタイムを競わなければいけないレースがマイルだ。個人的に1番キツい競技であると思っている立場にいるわけで…ということはポテンシャルはそもそも満たしている可能性が高い。…益々ミホノブルボンの可能性が高まってきた事に動揺を隠せないでいる。とはいえ問題はそのかかり癖と、同期にどれだけステイヤーがいるか…その度合いを確かめなければならない。ブルボンなら間違いなくライスシャワーやメジロマックイーン、マチカネタンホイザ等々が彼女とぶつかるだろう。

 

 しかし、だ。ブルボンは元々強い上に、厳しい調教…トレーニングを重ねた上であれだけの強さを手に入れた、謂わば努力と才能とセンスが絶妙に配合された僕が考えた最強の牡馬みたいなものだ。チートではないが当時の環境下で、坂路で鍛えてあそこまで強くなるかと問えば疑問にさえ思う。筋肉を休めながらとはいえ、調整が全て上手くいくなんてそんなケースは殆どない。スプリンターの要素が強ければ強いほどそれは難しくなる。

 

 

 

 その魂を引き継いだ彼女もまた天才…いや、天賦の才を持っていると言っても過言では無いことは確かだ。壊れない、筋肉の回復量も速度も桁違い。運も強い。それを人間の姿形に変えてもそのまま引き継がれていると推定した場合でも、果たしてこう言えるだろうか?

 

 

 

 調教師と同じように「ハードトレーニングをしてください。」と俺が答えても良いのか?あなたは壊れにくいので大丈夫です。と言えるか?答えはNOだ。もしゲーム水準であるならば練習上手がついていない状態かもしれない。そんな時にトレーニングをして失敗でもすれば大事だ。

 

 それにネットで精神論を語ったところで、その後どれだけ影響に響くかは未知数な上、身体も出来上がってない状態でやれ…というのも酷である。

 

 コンティニューなんてものはこの世界に無い。ここで無理に発言するのはこちらが不利になるだろう…よって、俺が決めた答えはこれしかなかった。

 

 

 

 『すみません、こればかりはご期待には添えないかもしれません。長距離かつ先行で走れる子を探して併走を行う、またはその子からコツを盗む。もしくは不良場で相手の体力を使わして、駆け引きをさせない作戦に賭けるとか…それぐらいしか思いつきませんね。』

 

 『そうですか…。』

 

 『ご期待に応えることが出来ず申し訳ございません。』

 

 『いえ、大丈夫です。もう既に前任トレーナーからも言われていた事ですから。』

 

 

 

 俺が取った選択肢は諦めるという最悪なものだった。

 

 トレーナーがいたということ…それこそ素質は間違い無くあったという事が確定した時点で、ミホノブルボンという前提で取り掛かってみたいが、一度冷静になると頭が余計に混乱してしまう。

 

 ミホノブルボンがそもそもこんなところに来るだろうか?こちらが想定しているのは未勝利戦を勝てない子なのだが…レベル1戦法を使ってどうにかクライアントの依頼を達成するのが当初の目的であり前提だ。それがどうだ…1人目といい、2人目といい、明らかに上位の位置に居そうな予感がしてならない。

 

 とりあえず今は、クライアントの精神状態を緩和させる方向でいこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 前世には無かったドリームトロフィー。あの後、お開きとなるかと思ったが、意外にもそうはならずにチャット欄は何気無い会話で続いている。

 

 『折角ドリームトロフィーがあるなら、それを見た感想などを互いに意見交換したいんですけど…勿論、お時間があればの話ですが。』

 

 『では、是非。』

 

 1人目ではなく3人目の人からそう言われた時、俺は試されているのでは無いか…と感じていた。時刻は15時30分を過ぎようとしている。意外と時間が経っているもので、世間知らずな俺でも話が合うものだと不思議に思っていた。

 

 『いよいよですね。』

 

 『学生も抽選でしか行けませんからね。外れたのが実に悔しいです。』

 

 『私も生で見てみたいです。それにしてもメンツがこれまた…凄く濃いですね。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『〜この放送はURA日本中央競バ界の主催でお送りします〜

 

 さあ、今年もこの時期がやってまいりました。8月26日、ここ府中に世界最大の恒例行事がやって来ました。誰もが夢を見るサマードリームトロフィーが、いよいよ始まろうとしています。数多のライバル達の上に立ったウマ娘達が、フルゲート18人…幸運にも何事もなく揃いました。午前中の雨も嘘のようです。レース前に上がって心底良かったと思います。

 

 東京競バ場のパドックにウマ娘がそれぞれ日本、海外共に9名ずつです。それぞれご紹介していきましょう。

 

 1番ビターグラッセ、体重増減はプラス1kgです。

 

 2番アンカースリップ、マイナス500gです。

 

 3番マルゼンスキー、プラス300gです。

 

 4番グアテマナフェール、プラス460gです。

 

 5番メインリファレンス、マイナス100gです。

 

 6番シンボリルドルフ、増減はありません。

 

 7番リトルココン、プラス200gです。

 

 8番オールドヴェルズ、プラス600gです。

 

 9番ホウジョウサクラ、プラス100gです。

 

 10番シリウスシンボリ、プラス100gです。

 

 11番マリートラン、プラス250gです。

 

 12番ミホギサルメ、プラス800gです。

 

 13番ミスターシービー、マイナス1kgです。

 

 14番グレートスピリット、増減はありません。

 

 15番アレックベリー、プラス500gです。

 

 16番スターローゼ、マイナス200gです。

 

 17番トリプティコス、マイナス100gです。

 

 18番トニビアンカ、増減はありません。

 

 以上の18名で出走致します。

 

 東京競バ場、雨は上がりましたが曇り空が続いております。バ場状態は重となりました第18回サマードリームトロフィーの各ウマ娘、入場です。』

 

 

 

 世界の理想が詰め込まれた、もしかしたらあったかもしれない夢のレースがいよいよ始まろうとしている。

 

 映像越しから聞こえてくる女の人の声は、アナウンサーといえど夢のような高揚感を隠しきれないでいる。僅かたったの2分と少しの時間で終わりを告げる幻は、24時間という基準が曖昧にぼやけてしまうほどに深い衝撃で満たされる。その夢の舞台が今、幕を挙げた。

 

 

 

 『さあ、東京競バ場ファンファーレが鳴り響いて大歓声が湧き上がりました。日本が、そして世界が注目している今回のサマードリームトロフィーですが、やはり一同が目を惹くのは凱旋門賞で大外から全員をまとめて撫で切ったグレートスピリット、そのグレートスピリットの記録を塗り替えたマリートラン、それに挑む皇帝シンボリルドルフの直接対決を見に来た人が大半かと思われます。

 

 しかし、この2人に気を取られてはいけません。

 

 英ダービーウマ娘、独ダービーウマ娘、仏ダービーウマ娘、スーパーカー、三冠バ、鉄の女、URA優勝バなど…今回もまた実に豪華なメンバーです。会場に集まった人以上に、緊張に勝る集中力が問われます。距離にして2400m、各バゲート入りが何事もなく順調に行われています。静かにマリートランがゲートに収まろうかというところ…流石はドリームトロフィーともなると、ゲート入りもスムーズです。スターローゼ、トリプティコス、そして大外トニビアンカがそれぞれゲート入りを行っています。ゲートに…今、収まりました。態勢完了…第18回、サマードリームトロフィー!』

 

 

 

 ゲート特有の音と共に一斉にスタートした時に聞こえる地鳴りのような音。

 

 

 

 『ゲートが開いてスタートしました。綺麗なスタート、流石勝ち残った歴戦のウマ娘、優駿です。夢の対決、サマードリームトロフィー…あなたの夢は何でしょうか。私の夢を叶え、新たな夢を作ってくれたメテオノーブルの走る姿を、この季節が訪れる度に今でも頭に過ぎります。今年もあなたの夢を描き叶え、胸を熱くさせるような…そんなウマ娘に出会えるのか。いやぁ…今年もドキドキしますね、本当にドキドキしています。

 

 あなたの夢を載せてターフを走るウマ娘に、今一度大きな歓声が浴びせられていますここ府中競馬場ですが、ここから溢れ出る熱気を最後まで保たせるべく落ち着いた気持ちで見守らなければ、我々のスタミナが保ちません。そんな私達を構う暇もなく、各ウマ娘は向こう正面へと向かっていきます。現在の並びを確認していきましょう。

 

 先頭、先頭はメインリファレンス。ハナを主張していったメインリファレンスを追う2番手にアンカースリップ、3番手はオールドヴェルズ。今回はメインリファレンスに前を譲りました。メインリファレンスが引っ張っていくその後ろ、4番手にご注目ください。今日は思い切って先行策マルゼンスキー。その先頭を追っているホウジョウサクラとグアテマナフェールが、前をジリジリと狙える位置にいます。その後ろで良い位置にミホギサルメが目を光らせている様子です。流れが安定してまいりました。

 

 先行勢が各バを突き放せるか気になるところですが、それを追いかけるは最強の一角を狙うトニビアンカ、トニビアンカ。内を突いてリトルココン、トリプティコスが続いて、その後ろでありますが…凱旋門賞のリベンジを狙うシリウスシンボリ、さらにアレックベリー、ビターグラッセらとそれを阻む勢いで外目を通って皇帝、シンボリルドルフ。今日はいつもより後衛の位置です。

 

 中団より後ろ、1バ身後ろにもう1人の三冠バミスターシービー、ミスターシービーです。少し空けた位置にスターローゼが続いています。この辺りからポジションを徐々に上げていこうというところか…そしてマリートランとグレートスピリットはその後ろに居るが…これはかつてないほどにファンサービスに溢れているぞ!踊り狂うのか、この夢の舞台で!まさか凱旋門賞で見せたあの末脚を今一度繰り出そうという魂胆にも見える見える見えてしまうぞこの走り!大人しい性格とは裏腹に、これは強者の余裕かそれとも意図してなのか?正に大胆不敵!強さの質もレベルも自由度も桁違いだ!これには思わず会場からはどよめきが徐々に徐々に変わっていき、未だかつて無いほどの歓声で盛り上がっています!

 

 先行勢がじわじわと下がってきてバ群が縮まってきました。それに合わせて横並びになってきているか。ややハイペースとなっているが、果たしてここから先マリートラン、グレートスピリットに勝るウマ娘は居るのか?ルドルフが前をジリジリと狙っている!

 

 均衡が崩れるのはどのタイミングか、大欅を超え各バ第4コーナーへと駆けていきます!じわじわと…ねっとりとした不気味なプレッシャーが実況席にも伝わり、正に手に汗握る展開です!いくつもの夢が、伝説が、最後の直線へと駆けていきます!』

 

 

 

 非常識な才能も絶対には勝てないのだと悟れる試合だが、やはり地の利もあるのだろうか。他の国ではまた違った結果になったのかもしれないが、たらればなんてものは関係ない。

 

 競バは勝ったものが強い、ということを否が応でも知っている。

 

 

 

 『さあ、ラストスパート!最後の意地です!先行勢はどうだ?メインリファレンス、マルゼンスキーはなんとか粘っているが厳しいか。ホウジョウサクラ、ミホギサルメは伸びが苦しい。アンカースリップ、ラストスパート!ミスターシービー、三冠バの意地を見せるかミスターシービー!後続勢の末脚が炸裂する。ジワジワと差を縮めている!トニビアンカ、リトルココン、シンボリルドルフがバ群を割って突き抜けてきた。おおっと外から来た来た、大外から飛んできたグレートスピリット。グレートスピリットが踊り足りないと迫る迫る、それに合わせてマリートランもピッタリと合わせて上がってきた!一同にとって怖い2人が上がって来るぞ!先頭は皇帝へと変わっているが、果たして彼女達は追いつけるのか?凄い脚!やはり世界最強の座はそう簡単には渡せないか!しかし!ルドルフ先頭、ルドルフ先頭であります!グレートスピリット追い上げる!凄い脚で駆け上がる!やっぱり最後は王の競り合いか!2人のせめぎ合い、粘る皇帝を世界が差し切るか?ルドルフか、スピリットか!ルドルフ、ルドルフのままか!前とのリードは半バ身もない!僅かに内のまま変わらない!僅かに内!変わらない!変わらないまま内だ!僅かに内だ!ルドルフだ!ルドルフだ!2番手にスピリットが挙がった!三着争いはマリートランが制しましたが、しかし!審議、これは審議です!僅かに内に見えますが、写真判定が入ります!』

 

 

 

 あっという間に終わりを迎えた実質最強マッチレース…勝利を収めたのは、やはり皇帝であった。

 

 

 

 『判定出ました。掲示板に6番のシンボリルドルフが一着と出ました。二着に14番のグレートスピリット、三着に11番のマリートランです。四着、リトルココン。五着は…えー、表示されていませんが同着でトニビアンカとミスターシービーです。更に詳しい結果はURAネットにて見られます。』

 

 

 

 ウマッターでの反応もそれぞれ見ていくと、多種多様ではあるもののやはり皆が目を通していたようだ。トレンドは紛れもなく一位を示している。

 

 『日本の芝に絞れば、やはり皇帝には誰一人として敵わないのか?それはそれとして、今日も推し活お疲れ様でした!』

 

 『あーすっごい…キラキラしてんねぇ。流石はカイチョーさんですなぁ。』

 

 『開催されるのが中距離だけというのが実に惜しいレースではあるが、最高のパフォーマンスであることに変わりはないだろうね。にしても…今日の彼女はいつにも増して集中していた様子にも見れたが、何かあったのだろうか。』

 

 『シービーが怪物共を倒してくれる日がいつか来るだろうって信じているんだけど、流石に集中力が最後まで途切れなかった時点でルドルフには誰にも勝てんわ。』

 

 『日本での適性もあるんだろうけど、やっぱり皇帝は強かった。おめでとう。』

 

 『グレートスピリットの魅せる走りには感動したけど流石に拘りすぎたのかな、とか考えた私がバカだった。今日のルドルフには誰も勝てん、上手すぎる。もしかして全盛期よりラスボスしているんじゃ…今まで見せた事がなかった本気なのかも?』

 

 『いや、あれはまだ上があるんじゃないかな?レース展開に合わせて走る事ができるルドルフだからこそ…あくまで全力だけど本気じゃないと思う。それでもギリギリだったけど。』

 

 『皇帝強すぎるわ…いい加減、ダジャレ要素を越える隙くらい見せて欲しい。アイドルにハマってるとか、生徒会では我儘な子供になるとかそうした噂も一切無い。これじゃあ完璧超人じゃん。』

 

 

 

 だが、俺は今それどころではなかった。数分前の出来事によって思い出した事があった為だ。

 

 

 

 アンカースリップは三代ダービー繋がりのスリップアンカーだと、戦績から見て判断出来ている。…その大元であるのは確実にミルリーフだという事を、何故今の今まで思い出せなかったのか。

 

 ミホノブルボンにも血が流れていた…そして交流会があるということ。

 

 ダービーは最も運が必要なレースだと言う人もいる。トレーニングによっての損傷も無いほどに運が強い…この子がミホノブルボンでは無かったのだとしたら、出会う要素はほぼほぼない。しかし、ミホノブルボンであれば縁が無かろうと、その実力で引き寄せてくれるに違いない。

 

 だが、明らかな気性難と酸素ボンベを使用していた馬の元ネタを引き継いでいるのか、普段からガスマスクをつけているような子だ。その子に対してさりげなく、自然な形で合わせるようにするには工夫がいる。サイボーグの異名が将来付くとはいえ、相性も未知数である。

 

 いや、もはや血統だけの問題では無い。彼女が何故走れるようになったのか、その経験は彼女だけじゃない…他のウマ娘にとっても役に立てる可能性もある。

 

 彼女らは先程の試合の興奮が収まらないのか、会話を続けているようでチャット欄は忙しなく動いている。だが、こちらはこちらでやる事が出来た。名残惜しいが仕方ない。

 

 

 

 『すみません、2人とも。急用が入ったので応答が不可能になります。また何かあればこちらに書き込んでください。』

 

 『了解です。』

 

 『わ、わかりました。』

 

 『諦めろ、とは言いません。トレーナーでもないですし、私が単に三冠を重視していないだけというのもあります。ですが…色々と対策はあるはずです。私も模索し続けますが、難しいという事だけ頭に入れておいてくれると助かります。』

 

 『はい。色々とありがとうございます。』

 

 

 

 雑にだが場を切り上げ、急いでブログを開き制作にかかる。存命人物の記述については、慎重かつより正確な情報の詳細が求められるので、より一層気を配る必要があった。

 

 それに…これは唯の賭けで、我儘な押し付けである。

 

 たかが3人を集めたサイトよりも、万をも超えたブログの発言の方が見る人が多くなるのは結果として見えている。付け加えるなら炎上したとしても、意識を埋め込むか埋め込まないかの違いだけで、目的意識と達成するためのプランを作るくらいは出来ると思いたい。

 

 前世と同じ競馬をやっている感覚に近いかもしれない。ウマ娘の未来のために、彼らが受け継いできた血と魂を信じてみよう。そうとなれば、トップを動かさなければ話にならない。URAの腰は前世ほどでは無いにしても、重いものは重い。加えて前世と同じように法治国家だからこその、ギリギリのラインを攻める以外に方法が無いのも事実である。

 

 もう一つ気がかりなのは伏兵さんが多忙の身となっている影響で、力を借りられない事だが…そこはもう1人の化け物に当たってみるとしよう。そうと決まれば、あとはやるだけだ。

 

 転生者としての特権を活かせるのかはわからない。だが、この回収率は是が非でも取りに行かせてもらう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 徹夜は無し。目覚めは良好…朝日は見えないが、休日。時間としては丁度いい頃合いだろう。

 

 こうした一時のテンションに任せて、無我夢中に手を動かしたものは危険物となる時が多い。だからこそ…念には念を置いて会長に確認してもらうべく、文字を打つ。試合が終わって休日だというのに、礼儀も無く行動に移す辺り感覚も認識も麻痺しているのだろうが、俺は今…無敵の人となっている。

 

 そもそも無敵の人状態にならなければ、話せる精神状態では無いのも事実である。

 

 

 

 『おはようございます、ルドルフ会長。まずはこの度の優勝…おめでとうございます。』

 

 『どうした急に。』

 

 『次のブログの内容なのですが、生憎と確認してもらえる人が今居ないので…お時間を頂きたく存じます。』

 

 『成程…なら、等価交換といこう。』

 

 『お手柔らかに頼みます。』

 

 

 

 頼んでおいて言える立場では無いが、適任者を間違えたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 燃え上がるような熱気を静めるようにひんやりとした空気だ。8月27日…朝からどんよりとした雲に覆われて、1日中しとしとと…夏にしては珍しく弱い雨が府中で降っている。

 

 さらさらとした髪の毛の先に水滴がいくつも出来上がって、それらが重力に引っ張られる。足元に出来上がっていた水溜りにいくつも落ちて、その波紋に彼女の姿形は歪み、表情を正確に読み取ることが出来ない。

 

 「このまま引退は…嫌だなぁ。」

 

 ぽつぽつと降る雨の音を遮るようにボソッと呟かれたその言葉を発した彼女は、この日ばかりは雲が吹き飛んでいれば良いのに、とこの日ばかりは邪魔に感じていた。ドリームトロフィーに勝っていれば、アタシを育て上げ導いてくれたトレーナーと今の担当の子に対し、胸を張って去る事が出来たというのにそう簡単に物事は思い通りに進まない。

 

 芦毛のウマ娘は走らない…そのジンクスをオグリキャップと共に常識を塗り替え、初めてダービー制覇を成し遂げたあの子に…地元愛が強かった可愛い後輩に夢を見せようとして挑み続けてこの有り様とは、先輩として情けない姿を見せ続けている。三冠バという偉業が霞んで見える程に、一度も彼女らに追いつけないまま、引退というのも格好がつかない。

 

 あたしはあたしであり続けなければならない。皆が常識を破ることを常識としてしまった中で、あたしだけが常識を破れないでいるなんて…タブーを犯した証に傷が付く。

 

 「贅沢に勝ちまくった最後が呆気ないってのもなぁ…。参ったな、あたしも案外普通だったか。」

 

 タハハっと思わず声が出た。

 乾いたような生気のない笑い声に釣られて、雨に混じった涙が零れ落ちていた。

 

 

 




 


 鷹の名前どうしよう…単純にアルタイルにさせたらカネヒキリの子だしチームにもあるという詰み。そしてステラヴェローチェへ…この場を借りておめでとう。

 色々と現代の馬にも血が受け継がれているのって凄い。

 府中の同着表示知らんから見逃してくれ。

 ウマ娘化した事で誘拐犯全員ボッコボコにした後ハーバード大学で勉強して、何の因果かMI…に行くとか色々と作れそう。

 (10点(仮)、TT+G…うちのばっちゃの口からスピードシンボリとアカネテンリュウが出たのガチ芝。)



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