あべこべ危険(ウマ娘)   作:2Nok_969633

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 何でもする!俺の体は好きにして良い…だから、俺をこの世に転生させた時みたいに彼女達を救ってくれ!






天命士 

 

 

 

 「やっぱりあるんだ…あるの⁈」

 

 その勢いに思わず仰け反った。そんな漫画みたいな返事を返す人が居るとは思わなかった…無論、俺も同じような反応をしてしまった。少し恥ずかしい。

 

 「おぉう…変な声出しちゃったじゃん。あるに決まってるでしょ。俺を無礼るなよ?」

 

 まあ、ドヤ顔出来る部分なんてここしか無いけど…あべこべでなくても、恐らく俺はトレーナーにはなれない。しかも…そのドヤ顔出来る知識面も、俺単体の力ではない。

 

 「ねえ、もしもの話だけど…仮に男性でもトレーナーになれますよって世界だったらさ…その、どうしてた?」

 

 「う〜ん…そりゃあね?目指していたかもしれないけど」

 

 「けど?」

 

 「まず受からないかな。俺さ、トレーナー適性が無いのよ。流石に無理って感じる時期が来ると思うわ」

 

 「そうなの?そこはよくわからないけど…え?じゃあこれ、本当に趣味なの?」

 

 「そっ…趣味」

 

 「これが?」

 

 「これが」

 

 この大半が前世ありきの知識を大いに利用しているわけで、ある意味ズルをしているだけにすぎない。ウマ娘から競馬に興味を持ち始めたただのニワカが、少なからずここまで予測出来るはずもないわけで、だからこその学問とメンタルなのだが…実質、俺にはトレーナーとして欠けているものが多い。故に情報収集に全努力値を振って、それでもこのレベルだ。

 

 つまるところ、あべこべ要素が無くてもダメだねってことが丸わかりであり、所詮は土台にすら登れない素人であるということに変わりはない。

 

 とはいえ、ここまで分野を絞り粘って勉強した甲斐はあったと、こればかりは自負していいかもしれない。完璧な分析ってわけでもない代物ではあるものの、完璧かと問われれば答えは全くもって不出来である…それ故に完璧なのだ。なんてアラララライと声を上げる勢いを今この場で出せば、それこそ俺は本当に頭のおかしな人として認定されそうではあるものの、原作には登場していない子でも、全てではないもののある程度見極めることはギリギリのレベルで出来る。

 

 現に行われたデビュー戦は、前世にはなかった試合だといち早く気が付いた上で情報を処理できた。この成果を含めそれらは他試合に渡って確認済みである。危うく見逃すところではあった…均整の整った素晴らしき筋肉を見て滾っていなければ、なんて事のない試合として済ましていただろう。それを言ったら日付とかにも気を遣わなければならないのだが…もしかしたらアニメやアプリがガバだったりで決められた日時がズレていた事と、何か関係しているのか?こうなると厄介であること極まりない…色々と今世代の奴らがやらかしまくっているせいでめちゃくちゃである。

 

 どの道俺は、この世界では短命気質であろうことは仕方がない。府中には珍しい鰤のアラだと言われそうだ。自分で言うのは滑稽な為、口が裂けても言えない小言ではある。色黒では無いし、脂ぎっているわけでもないこの例えに熱心に粗探しされれば、それこそ溜まったものじゃない、アラだけに。…別の理由で肌が青白くなるし、意味も全く違う為ズレている事は置いておこう。そもそもあべこべ世界に短命なんて落語があったら、それはそれで驚愕である。

 

 「トレーナー適性がないっていうのは、どうして?」

 

 「あんまり言いたくはないんだけど…一つ目は至って単純、怖い」

 

 「あっ、あはははは…ま、まあそれは仕方がない」

 

 「んで、もう一つは…そうだな。ここと、ここ…あとこのページを見ればわかるかも」

 

 そういって各種それぞれのノートを広げる。アイネス、マックイーン、フォロロアのこの先のデータだ。これはあまり見せたくない…何せ何も知らない癖に知った気で書いた黒歴史そのもの。

 

 トレーナーは諦めないで献身的に尽くす存在であるべきだと、個人的に考えている。無論選手1人1人に真剣に向き合い、そうして成果を上げて金を稼ぐのが仕事だからだ。GⅠに勝つ、記録を更新する、当人が納得出来る勝利などなど…各々が思う最終的な目標であったり、願望であったり、夢といった曖昧なものまでも実現させる試みが当たるだろう。

 

 そうした事を叶えさせる事も踏まえた上で、怪我をさせないことであったり、本人の力量の差をじっくりと時間をかけて信頼性を高めて初めて、当人と調整をしつつ測っていくものだ。勿論、そうした事を事前に言って回避させる手段はあるけれど、あくまで最終手段であり大半は段階を踏むか許容値を超えない限りは声をかけない。ナリタタイシンやミホノブルボンのストーリーがこれに該当すると考えている。

 

 何が言いたいかと言えば、トレーナーは決して最後までその子のファンでなければならない…それこそが彼らの真骨頂であり、役割だ。

 

 それに対して俺は諦めが早い…いや、見切りが早い。外野に居ることが多いからこそ、いつからかそんな風に判断を下すようになった。

 

 

 

 今季1年のGⅠ勝率予測。

 

 アイネスフウジン  芝1600m以上から

 朝日FS89.3% 阪神JF61.6% ホープ83.4% 皐月80.8% 桜花35.5% Nマ38.4% 女王49.2% 東優89.7% 安田0.16% 宝塚1.47% 秋華67.7% 菊花62.8% 天秋2.41% エ女41.4% JC2.27% 京マ1.08% 有馬70.9%

 

 メジロマックイーン 芝2000m以上から(マイル省略)

 

 ホープ48.5% 皐月43.1% 東優47.4% 女王38.3% 宝塚0.97% 秋華61.1% 菊花71.3% 天秋2.59% エ女56.6% JC3.13% 有馬59.6%

 

 フォロロア 芝2000m以上から(マイル省略)

 

 ホープ34.1% 皐月14.2% 東優9.74% 女王19.2% 宝塚20.3% 秋華41.9% 菊花0.71% 天秋22.5% エ女15.9% JC6.44% 有馬7.36%

 

 

 

 「何にも知らない状態でこんな事を、平然と平気で書く人間がトレーナーになったとして、選手が納得出来るような形で終われると思う?献身的に接するような人に見える?あくまでもこれは主観で決めかかった推測で、特別な力で未来を見れるなんて…そんな漫画みたいな展開とか無い。けど、もし俺がトレーナーになったら平気でこう促してしまうかもしれないんだよね。『このレースでは間違いなくこの子が勝つだろうから、こっちのレースに行ったほうが良いんじゃないかな?』って…それもかなり早い時期に」

 

 「でもそれって大事なことじゃない?勝負の世界なんだし確実と呼べるものは無いけど、勝てる勝負には勝ちに行くって姿勢も時には必要だと思うの。それを見極めるのもトレーナーの仕事だし、全員が全員そうまでして勝ちたいって思う子がどれだけ居るのか、なんてわからないじゃん?逆に勝ちたくない…ってのは変だろうけど、丁度いい戦績でそのまま卒業したいですって人も居るだろうし」

 

 「それはそうなんだけど… 君は強いね、じゃあ大丈夫だわ。あー君は…うん、こうすれば勝てるかもしれないけどその先は厳しいな…なんて思った時点で俺が負けてるも同然じゃない?やってみないとわからない勝負の世界で、殴り合いをしているのは紛れもない、今目の前で走っている子達なんだ。なのに…どうしてだか、走りたくない子や言っちゃ悪いけど弱い子でも磨き上げればこの子はちゃんと強いんだ、って証明したくなるのよねこれが…それこそ喉から手が出るほどに勝利を求めてしまうんだと。

 

 ってこれ…今までの殆どの内容自体は、あくまで聞いた話で構成されているんだけどさ…俺も同じようになると思う。あんまし天才っていう言葉は好きじゃないけど…天才トレーナーでも通る道なんじゃないかな?」

 

 「そういえば今のGⅠの盛り上がり様は7冠達成以来の凄まじい豊作って聞くけど、同時にトレーナー暗黒時代でもあるって聞いた覚えが…なんでもベテランか有力な人以外は成績を残せないから、とかどうとかで去っていく人達が居るってさ。どうしても満足出来なくて自分が見ているものと他者が見ている自分とのギャップの違いが、より大きく感じてしまうっていう人達、中には学園から抜け出してしまう生徒も時折居るって言うけど…」

 

 「そうなのよね。で、トレーナーもトレーナーで中央に所属したからには、勝たせてあげたいって欲が勝ってしまうのよ。しかも一回きりしかないノーコンティニューな世界だから余計にね…怪我したら終わりなんて事もあるからさらに視野が狭くなる。けれどもそこに強気で挑んで支えなければいけない。それを全く経験していない俺が…トレーナーですら無い俺が弱気になるイメージを持つようじゃあ…長くは続かないでしょ。って何素人がこんなこと言っているんだか…恥ずいわ」

 

 退職したトレーナーの本音とやらを聞いた時を思い出してしまう。逸材は取られる…例え才能があった子を担当してもレースで勝てなければ実力がないと見られ悪評は溜まる一方。その循環から抜け出そうと躍起になればそれだけ沼にハマっていく終わらないジレンマ。

 

 「なんかトレーナーやそれを目指す人が挫折する魂胆というか…闇を見たような気がする。本当にトレセン学園から辞めようとする寸前の人が醸し出す雰囲気ってこうなんだろうなっていうのがひしひしと伝わって来るんだけど…ってちょっと?ダメージ受けすぎだよ!その死んだ目で遠くを見るのだけは辞めてほしいの!」

 

 何が競バじゃ、アホくさ…やっぱあいつらイカれとるわ。本当に…ウチは無力や、なんて展開を毎年味わうかもしれないなんて苦行そのものだ。それでも興奮出来るのなら苦痛でも喜んでしまうのが辞められない人達であり、強者へと成り上がるのかもしれない。

 

 あるジョッキーはこう言った。

 『レースに行く時に恐怖心が勝つようなら、それはもう辞め時だ。リスクが多い仕事だからこその対価がある。そこの段階かもしくは手前で、気持ちで負けてしまったら…もう終わりと決めかかった方が身の為だ。』

 

 また別のジョッキーはこう述べた。

 『強い馬を乗れる環境を作っているからこそ、乗れる機会は自然と増えていくものだ。どんな小さなレースでも結果を残せば自ずと見てくれている人が何処かには居る…だからこそ、どんな騎手でもこの馬だから駄目なんだ、この馬に乗っていれば俺でも勝てるなんて言葉は口に出してはいけないし、僕はそれを言った時点でその人に騎手愛は無い。』

 

 そして個人的に評価し、着目をしていたジョッキー曰く、

 『距離適性から癖まで色々と知った中で、騎手が携わっている時間はたった僅かな時間でしか無い。だから僕たちはより一層勝つように仕掛けだったり、誘いだったり、道具への拘りであったりと、考えうること全てを『競馬』という競技に繋がるように意識しているし、現にそれを発揮出来るよう目を養っている。』…その緊張感は恐らく途轍もないだろう。あの優駿を制したジョッキーですらそうなのだから。

 

 その勝利の為に日々、厩務員は一生懸命手入れをし調教師によって磨き上げられる。トレーナーという職業はそれらを全て鍋にぶち込んだような存在だ。舐めてかかれば最も容易く魔物に飲み込まれる。

 

 かといって強い馬が強いという根本は抗えようも無い事実であり、ウマ娘でもそれは同じだ。はてさて…トレセン学園の未来は果たしてどうなるのだろうか。

 

 「うーん…でも勿体ないなぁ。これを1人で全部記録して、先を見てってやってるんでしょ?これを活かせれば相当…もしかしたら未来とか変わるかも、なんて」

 

 「そんな大袈裟な…こんなもので変わるんだったらトレーナーはそれこそ苦労しないし、そもそもそんな半端な気持ちで志したらターフの上で戦う彼女らに失礼すぎて申し訳ない気持ちで一杯になっちゃうよ。ってかその気持ち自体が既に傲慢の域に達しているし、こんな事を語っている時点でなれるはずもない」

 

 もしも未来を変える事が出来たなら、なんてたられば…存在しようものなら是が非でも教えて欲しい。あべこべだろうと身を呈して行動を起こす自信がある。…自信だけだが。それでも彼女らは彼らと同じように勝手に夢を抱かせ、勝手に期待させ、勝手に突き進んで、その子にとって幸せだったのかは知らないが死んでいくのだろう。俺1人が関わったところで、データを集めたところで…置いてけぼりを喰らうのはどの道外野の俺だ。

 

 「こういうのは自己満足で満たすぐらいが丁度良い」

 

 彼女達の舞台は俺とは別にある。ならば…せめてその舞台から、なるべく早いうちには降りないでほしい。そうした思いはやはり傲慢だが、その考えに対して同時に酔いしれている自分がいる事に、より心を締め付けられる。これではどちらが病んでいるのだろうか…笑えない。そんな俺に命を、勝利を背負える資格もそれを支えようとする気質も無い。

 

 だがしかし…もしもが禁句とされている世界で、世の中を変えるような化け物を生み出せるきっかけさえ作れば…夢は必然と増えていくだろう、と考えている。あくまで俺が出来るのは対症療法であって原因療法ではない…それでも俺は、彼女達が活躍する姿を見たいだけだ。その一心でやってきた…良きサマリア人の法というやつだ。

 

 「色々と難しく考えすぎなだけじゃないかなぁ…けど最近トレーナーも減ってきているって聞くし、ありえなくもないかも。でも男性トレーナーだと別の意味で危なくなりそうだね」

 

 「ウチは今から種ウマになりゅ…うまぴょいされるなんてのは、もっぱらごめんだしなぁ…」

 

 嘘ですそれに関しては本当は即座にコンセントレーション先駆けうまだっちすると思います。お一人様なんて生優しいと感じるほどに恐怖に駆られた時獲物が、必死に逃げようとする興奮作用から生命力も高まると言うので、余計にずぎゅんどぎゅんするしされると思います。

 

 勘違いしないでほしいが、どちらにも嘘はついていない。

 

 「ちょっ本当にそれは笑えないから。それこそ上に報告してもおかしく無い発言だから、男の子がそういうこと言ったら駄目だからね」

 

 「どうもすみませんでしたそれは本当に勘弁してください」

 

 些細な認識の違いの亀裂は、時として刃物となって襲いかかる。言葉は刃物であるという表現の仕方は、そうであるに違いないのだろうが…悪ノリで下ネタを言おうものなら即お陀仏だ。

 

 「…話は変わるけどさ、この割合の基準って因みに何?」

 

 うぐっと喉を詰まらせてしまうほどに、俺とって触れてほしくない核心部分…その予測を可能とするこの世界に来て初めて得た唯一のアドバンテージであり鍛え上げてきた能力。それこそ、

 

 「勘」

 

 「…は?」

 

 その言葉を放った瞬間、瞬時に部屋の空気が一度くらい下がった。

 

 

 

 




 


 厩務員の仕事内容に当たる馬の体調を瞬時に見破れるほどの観察眼、及びその馬が神経質だった場合に起きやすい事故によって怪我では済まされない程のあらゆる損傷に対するリスク管理の調整、人を乗せても平気にさせる訓練を何時間もかけて行う精神力。
 騎手が行うであろう明朝からの訓練、体重管理を徹底されているストイックさに加えて、落馬した時にどう受身を取るかなどの身体能力の維持に必要な忍耐力。

 それらがウマ娘に凝縮し、変換された場合に起こることとして、知性の発達面に加え…例えば、海を数秒割る、車やベンチプレス500kgを持ち上げる他電子レンジやリンゴをいとも簡単に壊す腕力、5トンもの巨大なタイヤを引っ張れるだけの脚力、そして成人男性との腕相撲に指一本で耐えられるポテンシャルの高さに、平常心で付き添い尚且つ彼女達の行動一つ一つに耐え切れる身体と、献身的に接する事が出来るメンタルが無ければ…そもそもトレセン学園の土俵、スタートラインにすら上がれない。



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