ちなみに、色々と魔改造してます。許して下さい。
トレセン学園の体育館で、何やら異様な巨大な装置が稼働していた。その正体はVRウマレーター。理事長が以前から計画していたウマ娘の為のVR装置だ。
今まで、通信設備が十分では無かったので実現出来ずにいたのだが、どこかの誰かさんの活躍により倉庫を建て替えて、その中に様々な通信機器を入れる事により、遂にその問題点は解決した。
なお、この装置の開発には工場長は関わっていないらしい。そのため、彼女は何事も起こらずに動作テストは終わると思っていた。
「驚愕ッ!?」
警告灯と耳障りなエラー音と共に機械音声が問題を報告する。その内容は要約すれば、深刻なエラーによって全ソフトリセットをされてしまう事。そして、それを防ぎたくば他のVR装置を使い問題を解決する必要があるとの事だった。
そこで、理事長はたまたま居合わせたウマ娘達にとある提案をした。
「依頼ッ! この中で他のVR装置を使い、この問題を解決してくれる者はいないか!」
何が起こるか分からない。しかし、そんな提案に怖気つく事なく手を挙げたウマ娘がいた。
「ハーイ! エルが行きます! 世界最強の私にかかれば、こんな些細な問題なんて一瞬で解決デース!」
「感謝ッ! 心強い宣言、誠に感謝する! だが、たった一人で挑むのは困難極まるだろう! 都合よく、空いているVR装置は二つ! もう一人参加者を募りたい!」
エルコンドルパサーの勇気を讃えつつ、彼女は空きのあるVR装置を扇子で指し示す。
皆、危険が孕むという事実にその手が上がらない。そんな中、勇敢な彼女のルームメイトであるグラスワンダーがゆっくりとその手を挙げた。
「確かにエル一人では不安ですね。私も一緒に行きましょう」
「ブエノ! グラス、ありがとデース!」
「この二人なら心配無用! では、よろしく頼む!」
理事長が納得した表情で彼女達をVR装置へ案内しようとすると、ピョンピョン跳ねる一つの手が現れた。
「わたしも行きたーい!」
ウマ混みを掻き分けて前に出てきたハルウララ。何をするのか分かっているのか怪しい彼女は、キラキラと輝く目をVR装置へ注いでいた。
「ウララさん、VR装置は二つまでしか無いわ。諦めなさい」
「えーっ! 面白そうなのにー!」
どこかホッとした様子でキングヘイローが彼女を止める。不満そうな表情を浮かべた彼女は、がっくりと俯いた。
確かに、彼女が行ったところで見た事もない光景に右往左往して、問題解決には至らないのは明白だ。キングヘイローに止められていなくとも、理事長からやんわりと断られていた事だろう。
結局、エルコンドルパサーとグラスワンダーが問題解決に出向く事は決定し、ハルウララ達が見守る中、VR装置へと入って行ったのだった。
「いいなー! わたしもやってみたいな! あっ! そうだっ! トレーナーなら作れそうだよね! 頼んでみようっと!」
「あ、ちょっと! ウララさん!?」
名案を思い付いたのか、彼女はウマ混みを掻き分けてどこかへ行ってしまう。残念ながら、彼女の背が低い故にその姿は一瞬で見えなくなってしまった。
「まあまあ、大丈夫だって。ウララのトレーナーだよ? きっと、めんどくさがって作らないよ」
どうやら、彼の思考に共感する部分があるのか、セイウンスカイは少し呆れた様子でそう言った。
「確かにそうね……でも、妙な胸騒ぎがするのよね。どうしてかしら?」
その後、ずっとそわそわと落ち着かない様子だった彼女はしばらくカフェテリアで紅茶を飲んで精神を落ち着けていたのだった。
とある目的を遂行するため、彼女はハイゼンベルクの工場へとやって来た。いつも通り大量のスクラップが山を成している。そんな山々の間を駆け抜けて、彼の元までやってきた彼女は第一声を投げ掛ける。
「ねえねえ、トレーナー! わたし作って欲しいものがあるんだ!」
「あ? 作って欲しいだって? 残念だが、人参ジュースは自分で作るこった」
「違うよ! あのね! アレを作って欲しいんだ! えっとね……ぶいあーる?なんちゃらってやつ!」
盛大な勘違いをしている彼にうろ覚えの正解を教えるが、全く伝わっていないようだ。困った彼女は、彼を無理矢理外へ連れ出した。
「確かね、ダイコンみたいな形だったんだ! こんなやつだよ!」
彼女はそこら辺に落ちていた金属の棒で、地面に優しいタッチの絵を描いた。そこには、確かに棺の様な何かが描かれていた。
「あー……VRだか何だかのマシンか?」
「そうだ! VRウマレーターだった! あのね、グラスちゃんとエルちゃんがね、今それで遊んでるんだ。わたしも一緒に遊びたいんだけど、機械が足りないからダメだってなっちゃったんだ!」
「それで作れってか? 材料なんて何一つ……いや、今日来たブツの中に似たようなのがあったな」
彼はとあるスクラップの山から円柱状の何かを取り出した。それは正しく、彼女の言っていたVRウマレーターそのものだった。
「あっ! それだよトレーナー! すぐ見つけちゃうなんて、すごいね!」
「ああ、今日の朝学園から送られてきたモンだ。聞いた話じゃ、電源が付かねえらしいがな」
それを平然と担ぎ上げて工場内へと運んでくると、彼は躊躇いなく電源近くのパネルをこじ開けた。
「ええっ!? 壊れちゃうよ!」
明らかに鳴らしてはいけない類の音が響くなか、何かのケーブルやら基板やらを手繰り寄せながらこう言った。
「この程度で壊れる訳がねえ。それよりもコイツ、直せば使えるぞ? 電源の安定化装置が死んでるだけだ」
「あんていかそうち?ってのを直せば出来るって事だよね?」
「直さなくてもちょいと弄れば使える」
「ええっ!! ほんと! トレーナーってスクラップがあればなんでも出来るんだね!」
彼は得意げに"まあな"と返すと、すぐそこの棚から赤く光る何かを取り出した。そして、それを彼女の分からない方法で繋げると、そのまま電源を押し込んだ。
「わあっ!! 何か画面が光ってるよ!」
「あとはいつも通り使えんだろ。好きに使っとけ。俺は別の作業があるんでな」
「分かったっ!!」
ニコニコとした笑顔を浮かべながら、彼女はそのVR装置へと足を踏み入れたのだった。
中にある被り物を被り、スタートを押した瞬間。彼女の意識は一瞬で闇の中へ消えた。そして、目覚めた時にはそこは知らない世界だった。
空飛ぶ不思議な生物、緑が美しい広大な草原、風情のある村、現実世界ではどれも見る事の叶わないであろう幻想的な風景がそこには広がっていた。
「すっごーいっ! 面白い動物さん達がいっぱいだ!」
全てに目を奪われた彼女の目の前には、角の生えたウサギのような生き物が駆け回っている。興味のままに追いかけようとしたが、背中に変な重みがあったせいで、盛大に転けた。
「いてて……これ何だろう? あっ! おっきなハンマーだ! トレーナーがよく使ってるやつだよね!」
背中にある物を取り出すと、そこにはファンタジックな世界感に合うようにデザインされたハンマーがあった。鋼の銀色を基調とするそれは、彼女のトレーナーの持つ物とは全く違うと言えるだろう。
「あれれっ!? 服も変わってる!? カッコいいー!」
彼女が着ていたのは桜色のライトアーマー。どこぞの解体用ロボットほどガチガチに固められている訳ではなく、所々動き易いように隙間が空いている物だった。
「あっ! すごい大きな鳥さんだ! 待て待てー!」
自身の身体に向いていた興味の矢は、次は見た事もない鳥へと刺さったようだ。そのまま前を見ず追いかけて行った彼女だが、意外な者にその行く手を阻まれる。
「うわっ!? 大きな豚さんだ!?」
彼女の目の前には、二本の足で立つ黄色い豚のような生物が、自身よりも小さいハルウララをまるで餌を見るような目で見下ろしていた。
残念ながら彼女の辞書に警戒心という言葉はない。それ故に、彼女は敵意のある相手に対しておかしな言葉を掛けてしまう。
「ねえねえ! 豚さん! わたしとお友達になろうよ!」
満面の笑みで彼女はその怪物にそう言った。
ニタリと笑った怪物が返したのは、勢いよく振られた棍棒による横薙ぎの握手だった。
バキッという音が響き、その怪物が見たものは、悲惨な末路を辿った彼女の姿では無く、中程から折れた棍棒の哀れな姿だった。
「あれ? どうしたの?」
対して、彼女には傷一つ付いていない。逆に何をされたか分かっていないかの様なキョトンとした表情を浮かべていた。
圧倒的な力の差を身を持って味わった哀れな豚は、黄色い顔を真っ青にして彼女から逃げ出した。
そんな事も露知らず、彼女は突然逃げ出した友人候補に驚いて、思わず口を開けていたのだった。
「何で逃げちゃったんだろ? あっ! グラスちゃん達だ! おーい! グラスちゃん!」
彼女の本当の友人がその視界の奥に映る。彼女は元気よく手を振りながら、彼女達へと走って行った。
「ウララ!? どうしてここに居るんデスか?」
「えーっとね! トレーナーが壊れて捨てられてたやつを直してくれたんだ! これで一緒に遊べるね!」
「あら、そうだったんですね」
「ブエノ! ウララのトレーナーは凄いデース!」
「そうだよっ! トレーナーは何でも作れるんだ!」
思いがけない増援に二人は大いに喜んだ。ハルウララ自身も合流できて嬉しいようで、口癖をうらうらと言いながら尻尾を揺らしていた。
「それで……ウララちゃんのジョブは何でしょう?」
「じょぶ? 何それ! なんか面白そう!」
「ジョブというのは自分の役割の事デース! エルは見ての通り格闘家デスので、相手を鉄拳で倒すのがエルの仕事デース!」
「私は治癒士なので、皆さんを回復させるのが主な役割ですね」
二人の説明とカッコいい身振りに目を輝かせる。しかし、彼女はこめかみに指を当て、クエスチョンマークを浮かべた。
「じょぶ?ってどうやって分かるの?」
「簡単デース! 見たい情報を頭の中で念じれば、それっぽい情報が出てくるのデス!」
「へえ、そうなんだ! やってみるね! うーん……! じょぶ、じょぶ、じょぶ……!」
彼女が頑張って念じると、すぐ目の前にステータス画面が映し出された。職業の欄には戦士と書かれている。
「ふむふむ、せんし?だってさ!」
「なるほど、戦士でしたか。戦士は高い攻撃力と防御力を兼ね備えたジョブですね」
「つまりウララは相手の攻撃を受けて、お返しにビッグな一撃を放つのが役割デース!」
「エルは格闘家ですから、防御力に関してはあまり高いとは言えませんからね。ウララちゃんの力は役に立つでしょう」
「ほんと!? やったやったー!」
「では、ウララちゃんもパーティーに入れてレベル上げ、行きましょうか」
「はーいっ!!」
「オッケーデース!」
三人は息の合った連携で、モンスターを次々と倒し、レベルをどんどん上げていくのだった。
なお、パーティーを組んで分かった事が一つあり、ハルウララの攻撃頻度がとんでもなく低い事だった。一応、敵の前に立ってお喋りしようとしている時点で壁の役目は果たしているので問題ないだろう。
しかし、彼女は気付いていない。現実世界で一人の男が悪態を吐いている事を。
色々とあって痺れを切らした彼が、この幻想世界"ウマネスト"に鉄槌片手に殴り込もうとしている事を……
名前:ハルウララ
種族:ウマ娘
職業:戦士
武器:ハンマー
不思議な事に戦士でこの幻想世界ウマネストにログインする。恐らく、彼女のトレーナーのハンマーを使ってみたいという願望が表に出たためだろう。だが、肝心のハンマーは色以外全く似ていない。
最強の種族であるウマ娘のため、ステータスはかなり高い。戦士の職業ボーナスで攻撃と防御に関してはトップクラスである。素早さが低いが、それはウマ娘同士で競う場合以外、問題にはならない値だろう。
戦士にも関わらず、攻撃系のスキルが少ない。その代わり、普通は少ない筈の防御系、補助系のスキルが多かったりする。
彼女の優しさがスキルに反映されたのだろうか?