突如として大きな地響きが起こり、ウマ王城自体が大きく揺れる。何が起こっているのか分からない現状に困惑しているハルウララ達。そんな彼女達にハイゼンベルクは落ちたサングラスを踏みにじりながら、一言だけ告げる。
「テメエらは下がってろ」
彼が人差し指で出口を指し示すと、彼女達の体は急に浮き上がって、そのまま吹っ飛ばされていく。
ただ、出口を抜けた先には留守番していたワイバーンのお友達が翼を広げて立っていた。
三人の体は、飛竜のクッションによって受け止められ、大事には至らなかった。
一方で二人きりとなったハイゼンベルクとゴールドシップ。だが、そこにロマンスもクソも無い。あるのは、暴虐無人なウマ王と怒髪衝天な鋼の魔王だけだ。
そして、交わされるのは言葉ではなく、鉄塊だった。
「うおっ!? 危ねっ! そんなスキル知らねえぞ!? ガチャのシークレットか何かか!?」
次から次に浮かび始めるランプ、剣、鎧。それだけでなく、リベット留めされた樽や木箱までもが亡霊のように空を飛び、ゴールドシップへ襲い掛かる。
ウマ娘の特権である強すぎるステータスを総動員して、飛来してくるそれを片っ端から蹴りや殴りで叩き落としていく。だが、地面に叩きつけられて残骸と化してなお、その亡霊達は止まらない。
「生憎だが、ここは幻想世界。そうだろ? だったら、訳の分かんねえ事が一つや二つ起きても不思議じゃねえよな!」
彼の手が空へ掲げられると、歓喜するかのように鉄の友人達は渦を巻き始める。
そして、ミシミシという嫌な音と共に彼女の城の一階から上が瓦礫と化した。勿論、その瓦礫も友人達の演舞に混ざり始める。
突風を巻き起こし、破壊の螺旋を描くそれは、正しく嵐のようだった。
もはや、雲ですら雷雨を伴って彼の頭上で渦を巻く。
建物も天候も何もかも平伏するその様は、魔王以外の何者でもなかった。
「あー!? アタシのHGゴルシ城がー!!」
お気に入りだったのか、膝立ちになって頭を抱えるゴールドシップ。もう、彼女の視線の先には城など無く、ただの瓦礫の山しか残っていない。
「よくもやってくれたな!! 行け! 機械仕掛けの軍勢よ! あのおっさんをボコボコにしてやれ!」
苦い表情を浮かべながら、彼女はその指をハイゼンベルクへと向ける。すると、彼女の背後からウマ王軍が現れ、その地平線を埋め尽くした。
その中には、彼が改造を加えた飛竜軍の姿もあった。遠方からその大口を開け、例の熱線を吐こうとしている。
しかし、彼らが牙を剥いた相手は製作者であるハイゼンベルクだ。残念だが、安易とそんな反逆を許すわけが無い。
「考えが甘えんだよ!」
彼の叫び声と共に、飛竜達はまるで磔にされたかのように動きが止まる。翼についたロケットエンジンや爪のドリルも同じく停止しており、それを見たウマ王軍の間に動揺が走る。
そして、哀れな飛竜達は魔王の頭上で渦を巻く鉄の嵐に凄まじい勢いで巻き込まれていった。それだけに留まらず、その嵐は発生源と共に移動を始め、残りのウマ王軍をゴミの様に吸い込みだした。
そして、その嵐は文字通り地面から全てを消し去った。
「アタシのウマ王軍がー!? なら、エル達に食らわす予定だったコイツを食らえ!」
ウマ王も負けてはいない。彼女も何かの魔法を唱えると、次々と空から隕石が降り注ぐ。
「バカかテメエ! 隕石の主成分は殆どが……!? クソッ! 隕石もどきじゃねえか!」
「フッハッハッハ! バカめ! これは漬物石だ! 浅漬けの様に地面に沈めてやる!」
降ってくる大質量物体に、彼は嵐を飛散させる。そして、同じく大質量の瓦礫に対象を絞ると、それらを飛ばして次々にそのメテオを相殺し始めた。
相殺されずに地に落ちた物達が大きなクレーターを作っていく。草木すら消え、荒れ果てた地面にできる大穴。もはや、この場所は幻想世界と呼べるほど生易しい物では無くなった。
「メテオだか何だか知らねえが、そんなもんで終わりか? もう少し足掻いてくれよ?」
「なんだとー!? そっちこそ、丸まったダンゴムシみてーに防戦一方だったくせによ!」
お互いに悪い顔を浮かべ、醜く言い争っている。そんな、二人の姿を呆然と見ていた格闘家は頭を抱えて叫んだ。
「これじゃどっちが悪者か分からないデース!」
「エル、よく見て下さい。ウララちゃんのトレーナーはこちらに来る隕石まで迎撃していた様です」
「要するに、ウララのトレーナーは味方デスか。でもアレじゃあ……」
エルコンドルパサーは微妙な表情を浮かべながら、爆音が絶え間無く響く戦場へ視線を向ける。そこには、自身の周囲にゴルシ城から剥ぎ取った砲台を展開させ、ただひたすらに撃ちまくるハイゼンベルクの姿があった。
「ハッハッハッハ!! テメエの体はちゃんとどこかのパーツに使ってやるよ! だから安心してくたばっちまいな!!」
砲弾が迷いなく彼女へと襲いかかる。ウマ娘の速度で動いているお陰でギリギリ当たってはいない。だが、自身の後方で常に爆発が起きているという事実は彼女を大きく焦らせる。
「うぎゃあっ!? ヤバい! このままじゃ、可愛い可愛いゴルシちゃんが改造されてT-564として過去に送り込まれちまう! アタシは溶鉱炉なんかに沈みたくねー! そっちが沈みやがれ!」
彼女は彼の立つ地面を魔法でマグマ溜まりへと変える。しかし、彼がそう簡単に落ちるはずもなく、浮いている鉄屑を足場にして余裕の表情を浮かべていた。
そんな、ヤバい発言や殺意MAXの行動を見て、エルコンドルパサーはまるで"あれは味方と言えるのか?"と言うかの様な表情をグラスワンダーへ向けていた。
「あんなのが勇者の仲間って言いたくないデース!」
「エル? 我儘を言ってる場合じゃ無いですよ」
「ひえっ!? 魔王がもう一人……い、いえ! 何でもないデス! 今すぐ私達も戦いに行きましょう!」
「彼をウマ王と間違えて殴っちゃダメですよ?」
「そんな事しないデース!!」
冗談混じりな会話を交わす二人。過去最高に気が立っている彼に誤射しようものなら洒落では済まされないだろう。
とりあえず、爆発が止んだ瞬間に彼女達はウマ王の元へと躍り出る。そして、先制攻撃と言わんばかりに、格闘家の彼女は蹴りを繰り出した。
「食らえ! コンドル流星脚!!」
「しゃらくせえ! そんなもん反射だ反射!」
見事な飛び蹴りだったが、ウマ王の魔法によってその軌道を変えられてしまう。その行き先は、彼女が今恐れている者だった。
そう、ハイゼンベルクの顔面にその飛び蹴りは綺麗に決まった。周りの浮いていた物体は糸が切れたかの様に落ちていく。逆に彼は面白いぐらいに吹っ飛んでいった。
「あ……」
「確かに殴るなとは言いましたが……蹴るなとは言ってませんでしたね」
瓦礫の中から蹴られて所を痛そうに押さえながら起き上がる彼の姿に、彼女は思わず顔を青ざめさせた。
足が謎の力に引っ張られて彼女は有無を言わさず宙吊りにされる。そんな、180度回ったその顔に向かって、彼はあからさまに怒気を孕んだ声で言った。
「クソッ! 今のは効いた、嘘じゃねえ。よくもやりやがったなテメエ……そんなに粗挽きにされてえなら、お望み通りしてやろうか……!」
彼女の真下には、鋼の剣の四枚刃がミキサーのブレードの如く回転している。まだ、問答無用でそれに落とされないだけ、マシなのかもしれない。
「ご、ご、ご、ごめんなさいデース!! だから、ハンバーグだけはご勘弁をー!」
全力での謝りを見込んでくれたのか、彼女は一応無事に解放された。いつもの友人とはまた違ったベクトルの恐怖に、助かったというのに顔面蒼白な彼女であった。
「君子危うきに近寄らず、ですね」
「近づきたくて近づいてるわけじゃないデース……」
そんな二人の耳に聞き覚えのある轟音が響く、凄まじいドップラー効果を伴いながら聞こえるその音は、確かにジェットエンジンの物だ。
「ねえねえ! 見て見て! この子すっごく速いんだよ! こんな感じでえええぇぇぇ!」
その声に空を見上げると、もはや戦士ではなく竜騎士と化した彼女の姿があった。ワイバーンの背に乗って、ジェットのふざけた加速力を身をもって体感している。
どうやら、飛竜の方はしっかりと何をするべきか理解している様で、ハルウララを背に乗せたままウマ王へと攻撃を始める。
「バカめ、ブレス系の技は魔法攻撃だ! 全部アイツらに跳ね返してやる! 玉ねぎ切った時みたいに泣き喚け!」
飛竜の予備動作から何をするか見抜いたウマ王は眼前に透明な壁の様なものを張り、悪役らしく高らかに笑っていた。
「頑張れー! トカゲさん!」
ハルウララの応援と共に放たれた熱線は、まるで当然の様に壁を貫通した。
理由は簡単。これは魔法ではない、ガチガチの科学だ。
「ビームだー! カッコいいな! どうやったらわたしも出せるようになるかな?」
「ぎゃあああああああ!? あっつあっつ!? アタシはたこ焼きじゃねー!!」
やっと念願の焼肉に成功し、レアからミディアムぐらいまで火を通す事ができた。火だるまになった彼女は地面を転がりまくった末、魔法による大量の水で消火する事となった。
「だー! ちくしょー! こういう時に役立つ秘密道具的な何かは……お、あるじゃん!」
彼女がそう言って手を伸ばした先には、ポーションが入った半壊した木箱。あまり飲もうとは思わない、赤っぽい色のそれを彼女は躊躇なく全て飲み干した。
その様子を見ていた者は目を疑っただろう。ミシミシという音を立てながらゴールドシップの体がどんどん大きくなっていくのだから。
「あのクソデカいババアの城の倍、いやそれ以上か?」
「ええっ!? すっごい大きくなっちゃった! これも魔法?」
彼女の巨大化が止まった時、その背の差は文字通り天と地ほどの差があった。その光景に見覚えのある二人は焦り始める。
「まずいデス! 巨大化したウマ娘のパワーなんてどうやっても手に負えないデース!」
「でも、ゴルシ先輩がポーションを全部飲み切ってしまいました……私達も巨大化して何とかする方法は出来そうにないですね」
「おい、テメエら。俺にとっておきの秘策がある!」
お手上げの彼女達に声を掛けたのはハイゼンベルク。この時を待っていたと言わんばかりの最高の笑みをその顔に浮かべている。
「ここの空に、バカみてえな大きさをした戦艦がある! そいつの主砲であの野郎をぶち抜いて……いや、消し飛ばしてやるのさ!」
「戦艦がいくら大きいと言っても……あの大きさですよ? 倒せるんでしょうか?」
「舐めてもらっちゃ困るぜ? あそこに立ってるデクの棒が可愛く見える程のデカさだぜ!」
文字通り、雲に手が届きそうな程に大きいゴールドシップが可愛く見える程と言われても、いまいち想像がつかない。良くある話として、太陽の大きさの五倍だとか言われても同じように感じるだろう。
「で、でも! どうやって行けば良いんデスか!? エル達は空なんて飛べませんよ!」
「そこに一匹いるだろ? あの能天気が洗脳やら何やらしたヤツが」
そう言って彼は当の本人に声を掛けた。竜騎士ごっこを楽しんでいた彼女は、声掛けに応じて飛竜と共に目の前に降り立った。
「よお、もっとデッカい花火が見れるって言ったらどうする?」
「花火!? お祭りの時のやつでしょ! 見たい見たーい!」
「なら、テメエの"お友達"にコイツら全員乗っけて、空の花火会場まで連れて行ってやれ」
「はーいっ!」
例のお友達に目を向けると、ゆっくりと頷いた。どうやら、どこに行くべきかは分かってるようだ。
飛竜に全員が乗り込むと、翼のジェットが轟音と共に起動する。そして、まるでロケットの如く空へと飛び立った。
本来めちゃくちゃなGが掛かる筈だが、ここは幻想世界なのでノーカウントだ。まあ、例えあったとしてもウマ娘なら余裕を持って耐えられそうだが。
しかし、轟音と熱を伴って飛行するそれは厄介な者に目を付けられてしまう。
「お、さっきのトカゲじゃねーか! 仕返しにデコピンしてやろ! この大きさから放たれる最強の一発だ! 食らって吹っ飛びな!」
「これは……非常に不味い事になりましたね」
まるで蠅でも叩き落とすかのように、弾かれた中指が勢いよく迫る。しかし、その攻撃は特大の鋼鉄に阻まれた。その張本人は浮いている鉄屑を階段の様に上がりながら不敵に笑う。
「アイツらの邪魔をするって事は、俺の邪魔をする事になるぜ? 分かってんのか?」
彼の立つ鉄屑を始点にして、再び嵐が巻き起こる。金属同士が歪に合体を繰り返していき、いつしかそれは巨大な人型を象った。
目の前の彼女と同等かそれ以上の大きさを持つ巨人。そんな物の肩に立つ彼は、葉巻を片手に巨大化した彼女を懐かしむかの様に見ていた。
「知ってるか? こういうモンは先にデカくなった方が負けるんだよ! 俺は身をもって知ってるからな! デカくなるにしても、本体はそのままって寸法が一番小回り効くんだよ!」
「やべえ!? 確かにそうだ! くっそー! 図りやがったなおっさん! だが、そっちも死亡フラグがビンビンに立ってるんだぜ!」
「ほう、面白え! 言ってみろよ?」
「おっさんみてえに強さを解説する奴は間違い無く死ぬ! オラオラ、これでどうよ!」
「悪くねえ、大した言い分だ、ウマ王さんよ。だが、致命的なミスがあるぜ? 俺が死ぬには、テメエが俺をぶっ殺さなきゃいけねえだろ?」
彼は葉巻に火を付ける。そして、その香りが高い煙をニヒルな笑みと共に吐き出すと、声高らかに言い放った。
「殺れるもんなら、やってみな!」
その鉄巨人は動き出す。昔に抱いた憤りを理不尽にもウマ王にぶつけるため、その拳を振り上げる。
突然の攻撃に反応できず、重戦車が衝突したかの様な一撃を顔面に食らう彼女。その様子を見て、彼はスッキリしたかの様にほくそ笑むのだった。
ウマ王の魔の手から逃れた三人と一匹は分厚い雲へ突入する。視界が霧に覆われて悪い中、ただひたすらに上へ上へと突き進んでいく。
雲から抜けた時、彼女達の目の前には彼の言う通りの頭のおかしい大きさの戦艦が堂々たる姿を見せつけていた。船首と一体化している主砲と思わしき物の大きさは、確かにあの巨人となったウマ王を巻き込むには十分であった。
三人は操縦席に直接乗り込んだ。中にウマ王軍などは一人もおらず、完全なもぬけの殻だ。
「わーいっ! ふかふかな椅子だ!」
一番座り心地の良さそうな椅子にハルウララが座ると、機械音声と共に謎の照準が現れる。どうやら、手元の操作板で狙いを定める様だ。
「これは主砲の……! これをゴルシ先輩に当てれば!」
「粉砕! 融解! 大爆発! エル達の勝利デース!」
「あれ? これってどうやって操作するの? こうかな!」
『エネルギーをオーバーロードします』
何か良くわからないレバーを勝手に引いた彼女。同時に機械音声が鳴り響くが、何を言ってるかさっぱりだったので、放置する事にした。
「これだ! えいっ!」
『発射モードを超過負荷モードに変更』
このままでは、自爆スイッチか何かを押してしまうんじゃないかと危惧の念を抱いた二人は、彼女の横から操作板を弄り、照準をしっかりと倒すべき対象へ合わせた。
「ウララ! あとはこのレバーを前に倒すだけデース!」
「ほんと!? じゃあみんなでやろー!」
「そうですね。では、お手を合わせて」
全員で一番大きなレバーを握る。
そして、一番元気な掛け声に合わせて前に倒し切った。
発射された超高密度なエネルギーは真っ白に光り輝き、まるで雷の様であった。
「"雲上より下界を見下ろし、生来の雷にて……"まさかこれが? でもそうなると生来とはどういう……?」
その頃、地上ではウマ娘の身体能力を生かした必殺拳が鋼の巨人に突き刺さっていた。どうやら彼女は我流武術の使い手である様で、重い拳が次々と鉄巨人の胸板へ打ち込まれていく。
反撃を許さない、完全なワンサイドゲーム。そんな状況にも関わらず、揺れる巨人の肩の上でハイゼンベルクは紫煙を吐いていた。
「マジで!? まだ倒れねえのかよ! ゴルシ神拳をここまで耐えたのはスーパークリーク以来だぜ……!」
それもそのはず、鉄巨人は怯みはするがその膝を地へつける事は決して無かった。
その事もあり、未だ余裕の表情を浮かべた彼は空を見上げると、何かを見てニヒルな笑みを浮かべた。
「おい! テメエ、シャワーは好きか?」
「シャワー……? ライスの事か! まあまあ好きだぞ! 意外と根性あるんだよなアイツ」
「ヘッ! そうかい、じゃあたんと浴びるこったな!」
彼の言葉を皮切りに鋼鉄の巨人はウマ王をその両手で捕まえる。その速さは、先ほどまで見せていた鈍重さとは裏腹に、凄まじい物だった。
彼女の直感がこのままでは不味いと告げるが、固く閉ざされたその腕と手が拘束から抜け出す事を許さない。それに対し、彼は動けない彼女を横目に浮いた瓦礫上を歩いてそっと離脱する。
縛り付けられたウマ王、自由な魔王。面白い事に、始めとは真逆の位置関係だ。
そして、空からは白い天使の光が雲を割き、ウマ王へとシャワーの様に降り注ぐ。
「ちくしょー! 離せよこのポンコツ! あ、やべ……!?」
「ダッハッハッハッハ!! 回転機構も良いが、大口径も悪かねえな! 最高の発想ありがとよ!」
光に飲み込まれたゴールドシップはもはや叫ぶ暇すら与えられずこの世界から姿を消した。彼女の光り輝く墓標に対し、彼は高らかに下賤な笑いを響かせる。
その天からの稲妻は、確かにウマ王に滅びを、魔王に快楽を与えたのだった。
あの騒動が終わった次の日、あの時共に戦った戦友はカフェテリアにて談笑していた。
シンボリルドルフに成り代わってゴールドシップがVR装置の中に入っていた事。解決した後、エアグルーヴにこっ酷く説教を食らっていた事。そんな笑い話を共有していた。
「そうそう、ゲームを終わりにした後すっごい事が起こったんだ!」
「凄い事ですか?」
「うんっ! わたしのトレーナーが持ってたヘルメットみたいなやつがどかーん!って爆発したんだ!」
「ええっ!? ウララは無事ですか! 怪我は!」
「あのね! シューちゃんが守ってくれたんだ! だから、わたしは元気だよ! でもね、トレーナーの工場の屋根が無くなっちゃったんだ」
「それって……ウララちゃんのトレーナーは無事なの?」
「うんっ! 顔が真っ黒になってたけど大丈夫だったよ! "二度とやらない"って言ってた!」
彼女の身振り手振りを交えた話に、ホッと息を撫で下ろす二人。肝心の彼は今頃、吹き飛んだ色んな物の修理を悪態をつきながらやっている事だろう。
このVRウマレーターが本格的に採用されるのはまだまだ先になりそうだ。
ハイゼンベルクのサングラス
なんだかんだ言って付けていたサングラス。
彼と他人の間に黒い壁を作るそれは、彼の心の現れなのかもしれない。
それがある限り、彼の壁は崩れる事はなく、真実など語る事もないだろう。
裏を返せば、それを外した時に彼は心を曝け出す。ただし、出てくるものが善だとは限らない。