悪くねえ 大したもんだ ハルウララ   作:黒チョコボ

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今回はかなり短めです


お正月

 

「わーいっ! 神社だー!」

 

「なんで俺まで……」

 

時は元旦。吐く息は白く染まり、寒さが周囲を包むこの季節。ハイゼンベルクとハルウララは近くにある神社へお参りにやって来ていた。

 

見ての通り彼は乗り気では無いのだが、彼女との賭けに負けたせいで有無を言わさず連れて来られてしまったようだ。

 

ちなみに、賭けの内容は小テストで満点を取る事が出来れば、ハルウララのお出かけに付き合ってやるというものだった。

そのため、彼女はキングヘイローやグラスワンダーなどに協力して貰い、なんと文字通りの花丸をもぎ取ってきた。その時の彼女と彼の様子は筆舌に尽くし難いものだった。

 

そんな事もあり、彼は別段用も無い神社にて、一人微妙な表情を浮かべているのであった。

 

「トレーナー! お参りした後、おみくじ引こうよ!」

 

「分かった。だが、お参りだけはテメエ一人で行ってこい」

 

「ええっ!? 何で?」

 

「悪いが、俺は神なんぞ信じてねえ。だから、信じてる奴だけ勝手にやれば良い」

 

彼はそう言うと、お参りをせずにそこら辺の屋台へと足を運ぶ。そして、二つの紙コップを受け取ると、参拝の列に並ぶ彼女の元へと戻ってくる。

 

「ほらよ、くれてやる」

 

「あ、甘酒だ! ありがとー! これ甘くて大好きなんだ! トレーナーも同じの買ったの?」

 

「俺のは酒だ。テメエにはやらねえよ」

 

彼はニヒルな笑みを浮かべると、紙コップの中に入った透明な液体を飲み干した。その様子を見て真似しようとしたのか、彼女も甘酒に口をつけるが、温度が高いせいで一気飲みは叶わず、ちびちびと少しづつ啜るだけに収まった。

 

「ほう、悪くねえな」

 

「ふーっふーっ! ちょっと熱いけど美味しい! これににんじんジュース入れたらもっと美味しくなるかな?」

 

「……反射で吐き出すぐらいには美味くなるんじゃねえか?」

 

彼女のぶっ飛んだ足し算に、彼は思わず鼻で笑うと皮肉たっぷりの一言を返す。そんなふざけたやり取りをしていると、いつの間にか列は前へ進み彼女達の番が回ってきていた。

 

「そんじゃ、さっさと済ませるんだな。俺は適当に待ってる」

 

彼は何もせず賽銭箱の前から立ち去るが、その行動に何か思う事があったのか、一人のウマ娘が声を掛けた。

 

「あ、そこのアナタ! せっかく並んだのに参拝しないんですか!?」

 

「あ? 誰だテメエ?」

 

何やら色々とご縁がありそうな物をジャラジャラと身につけたウマ娘は、目を輝かせながら彼に自己紹介をした。

 

「あ、申し遅れました! 私はマチカネフクキタルです! 本日、神社のちょっとしたお手伝いをしてます!」

 

「そうか、じゃあな」

 

「ちょ、ちょっと待って下さい! 今のはどう考えても会話の終わりどころじゃ無いですよ!?」

 

そんな中、参拝を終えたハルウララが戻る。彼女はトレーナーに詰め寄るその影を見ると、笑顔を浮かべて手を振った。

 

「あっ! フクちゃんだ! あけましておめでとう! トレーナーと何してるの?」

 

「ウララさん! あけましておめでとうございます! って今この方の事、トレーナーって言いました……?」

 

「そうだよー! わたしのトレーナーなんだ!」

 

黄色の髪とピンクの髪が彼の目の前でそれぞれ揺れる。しかし、彼は二人へ背を向けて再び屋台へと逃げるように向かって行った。

 

そしてもう一度、日本酒を一杯買った彼が目を向けた時には二人の姿はいつの間にかそこには無かった。

 

代わりに謎の悪寒を背中に感じ、視線を後ろに向けると、何故かいつの間にか彼女達はそこに立っており、こちらにキラキラした目を向けていた。

 

ちょっとしたホラーである。

 

「テメエ、まだいたのか。悪いが、俺は神なんぞ信じちゃいねえ。宗教勧誘なら他当たれ」

 

「ええっ!? な、な、なんでそんな現実主義なんですか!?」

 

「神は何も救わねえって事を身を持って知った……ただそれだけだ」

 

彼はコップの中身をあおると、大きく息を吐いた。そうして出来た目の前の白い煙を、彼は何とも言えない表情で見つめていた。

 

そんな様子をちょっと気まずい表情で見る彼女に、ハルウララはいつも通りの様子で話しかける。

 

「そうだ、フクちゃん! 私とトレーナーの事、占ってよー! 良いかな?」

 

「勿論です! 今年の運勢で良いですか?」

 

彼女はどこからともなく大きな水晶玉を取り出すと、怪しく両手を動かしながらその透明な中身を覗き込む。どこか不思議なその様子に、ハイゼンベルクも興味深そうにその視線を向けていた。

 

「出ました! ウララさんの今年の運勢は吉ですね! 十分良い事があると思います!」

 

「わーいっ! じゃあ、今から商店街の福袋でも買って来ようかな? きっと良い物当たるよね!」

 

ぴょんぴょんと跳ねて喜ぶハルウララを見て、彼女は得意げな笑みを浮かべると、今度はハイゼンベルクの方へその水晶を向けた。

 

「さあさあ、ウララさんのトレーナーも占ってあげます!」

 

「ヘッ、好きにしろ」

 

彼女は先ほどと同様に水晶玉を見入る。三度の瞬きと共に、彼女の表情が驚愕のそれへと変わった。

 

「むむむ……こ、これは!? だ、だ、だ、大凶ですとおおお! アナタは前世からの業でも引き継いでいるんですか!?」

 

「前世ねえ、なんかしたのかもな」

 

恐らく、彼の想像する前世とマチカネフクキタルの想像する前世では色々と差異があるだろう。いや、差異しか無いだろう。

 

「ここは幸運の使者である私が一肌脱ぎましょう! シラオキ様のお告げがきっと助けてくれる筈です!」

 

「シラタキ様? なんかお鍋に入ってそうな名前だね!」

 

「シラタキ様じゃありません! シラオキ様です!」

 

正月ならではの美味しい食べ物を頭に思い浮かべているのだろう。だらしない表情で涎を垂らすハルウララ。そんな彼女の発言をマチカネフクキタルは必死の形相で訂正した。

 

そして、彼女しか知らない謎の神であるシラタ……シラオキ様に水晶玉を使って交信を試みる。しかし、帰ってきたお告げは何も無く、諦めろと言わんばかりの結果に彼女は思わず頭を抱えた。

 

「そんな……! シラオキ様の反応が無い!?」

 

「運気上昇なんて必要無え」

 

彼はそう言うとすぐ近くのおみくじが入った箱に、二回分の代金を入れて紙片を二つ掴み取った。そして、片方を隣のピンク色に手渡すと自身の紙片を開いて幸運大好きな彼女へと見せつけた。

 

当然のように書かれた運勢は大凶だ。

 

ある意味運が良いとも言える。

 

「二連続で大凶!? も、もしかして呪われてたりしませんか……? 今すぐお祓いにでも行ったほうが……」

 

「ああ、ある意味呪われてるかもな。おい、テメエのはどうだった?」

 

「えっとね、小吉だったよ!」

 

彼はニヒルな笑みを浮かべると、大凶の"大"の字だけちぎり取る。そして、その字を彼女の持つ紙の"小"の字を隠すように押し付けた。

 

「ヘッ、これで俺は大凶から凶に運勢が上がったな? アイツは小吉から大吉だ。運勢なんぞ、力で何とかするだけだ」

 

「へ……? そ、そんな方法アリなんですか!? 罰当たりな感じが凄いするんですけど!」

 

「当てたいなら勝手に当てやがれ」

 

神に喧嘩を売るどころか、ぶっ殺しに行きかねないこの男は、紙コップをゴミ箱にぶち込むと、神社から出て行くべく階段へとその足を向けた。

 

その様子に気付いたハルウララはマチカネフクキタルに両手をブンブンと振って別れを告げると、その後ろを追いかける。

 

彼の何者にも左右されない生き方に、少しばかり畏敬の念を抱いた彼女は、その後ろ姿を見送りながら、なんとなく再びハルウララを占った。

 

「え……? ええっ!? なんで!?」

 

彼女のキラキラとした瞳に映ったその結果は大吉であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トレーナー! 見て見て、福引やってるよ!」

 

神社からの帰り道、いつもの商店街では正月限定の福引を行っていた。そんな面白そうな物を彼女がやらないはずもなく、彼は半ば強引にそこまで引っ張られて行った。

 

「お! ウララちゃんにハイゼンさんじゃないか! 神社帰りかい?」

 

「まあ、そんなところだ」

 

「ねえねえおじさん! わたし福引やってみたい!」

 

「二人にはいつも世話になってるからな! 一回だけならサービスするぜ?」

 

「やったーっ! ありがとー!」

 

尻尾を振って喜ぶハルウララは抽選器であるそれをガラガラと回す。そして、出てきたのはオレンジ色の小さな玉。

 

今更になって景品がどうなっているかを確認した彼女の視線は、二等のそれへと釘付けとなった。

 

「あっ! やったやった、二等だよトレーナー! にんじん山盛りだって!」

 

カランカランと鳴らされるベルと共に、段ボール箱に人参が文字通り山となるまで積まれていく。

 

そんな様子を冷や汗を垂らしながら見る彼は、恐る恐る彼女へ尋ねた。

 

「……テメエが持って帰るんだよな?」

 

「わたしの部屋には入らないよ? キングちゃんも一緒にいるし……」

 

「おい、まさか……」

 

「だからトレーナーのとこに持って行くね!」

 

「……マジかよ」

 

どうやら、彼女は大吉になったが、彼は大凶のままのようだ。

 

過去に同じ事があったような気がしてならない彼は、動揺を隠せないまま福引を担当している店主と話をする。

 

その後ろでは、ハルウララがにんじんで重くなった段ボールを嬉しそうに持ち上げていた。

 

 

 

案の定、工場に着くと彼女はこの山盛りの人参を使った何かを食べたいと彼に要求した。なんと彼は、面倒そうな表情を浮かべながらも人参を使ったスープを作ってくれたのだ。

 

彼は曰く、八百屋の店主から貰ったレシピ通りに作っただけらしく、嫌味を込めて熱々に作ったらしい。

 

だが、そんな気持ちが込められていたにも関わらず、そのスープはとても暖かい味だったそうだ。

 

もしかすると、込める気持ちを間違えたのかもしれない。

 




ミホノブルボンのヒミツ
実は、どこぞの鋼の軍団の約七割を触れただけで倒せる。
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