悪くねえ 大したもんだ ハルウララ   作:黒チョコボ

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機械仕掛けの逆鱗

 

モンスターマシンとのレースを終えた、ハルウララとゴールドシップ。二人はテンションの上がった体を落ち着かせるかのように、その後ものんびりとこのお化けの友人について話し合っていた。

 

だが、そんな中でハルウララが放った一言が彼女の熱を復活させる。

 

「あのね、シューちゃんは速いけど曲がれないんだ!」

 

「……てことは、もし曲がれるようになったら、コイツとんでもねえ速さになるぞ! 体力も速度の文字通りお化けなコイツなら、得意距離関係なく相手を片っ端から追い回せるじゃねえか! よし、コイツをなんとか曲がれるようにしてやろうぜ! おー!」

 

「シューちゃんやったね! これでもっと速くなれるよ! おー!」

 

こうして、完全に邪な思考がダダ漏れのゴールドシップ、より彼が速くなる事に喜ぶハルウララ、何も分かっていないシュツルムの三人による、"シューちゃんを曲げようプロジェクト"が開始された。

 

しかし、早速会議を始めようとした時、インターホンの音がその思考を遮る。来客を告げるその音に、二人は走って入り口の門へと向かうが、そこには意外な姿が見受けられた。

 

「あ、みんなだ! 今開けるねー!」

 

キングヘイロー、セイウンスカイ、エルコンドルパサー、グラスワンダーの四人の姿に彼女はその門の鍵を開け、文字通り入口を開け放った。

 

「よお、四天王!」

 

「ご、ゴルシ先輩!? なんでここにいるのよ!」

 

「そりゃ、宇宙戦艦の錨が降ろされる場所がココだかんな! アタシはもう普通の船のブツじゃ満足出来ねえんだ……!」

 

「どういう事かよく分からないデース!」

 

意味不明すぎる受け答えに、思わず彼女は頭を抱える。

 

「私からすると、どうしてウララちゃんがここに居るのか不思議なんですが……」

 

「ここはね、わたしのトレーナーのこーじょーなんだ!」

 

「なるほど、あの人の工場なんですね」

 

「うーん、工場というよりヤバいもんの溜まり場だとセイちゃんは思うのですが……」

 

「やばいもの……?」

 

セイウンスカイの漏らした言葉に疑問を覚えた彼女は、少しその事について詳しく聞こうとするが、肝心の彼女はすっとぼけるばかりで、結局何も分からずじまいであった。

 

「そういや、なんでオマエら来たんだ? 分かった! 全員宇宙の騎士になりに来たんだな! だが、騎士の道は険しいぞ……! その覚悟はあるのか……?」

 

「違うわよ! 私達はちょっと面倒な記者から逃げて来たってだけよ!」

 

彼女は黄金船から飛来するぶっ飛んだ言葉を躱すと、その理由について語り始める。

 

「もう知ってるかもしれないけど、この場所は記者から結構恐れられてる所なのよ。ウララさんのトレーナーのお陰でね」

 

「ここに入っただけで、記者達が逃げていったのはエルもビックリしました。一体、何をしたらこんな風になるんデスか?」

 

「分からないわ。ただ、以前避難させてもらった時に本人にその事を聞いたけど、何にもしてないって言ってたわ」

 

「凄えなオッサン。実は超能力でも使ってんじゃねえか?」

 

普段から勘の鋭い彼女だが、今回ばかりは外れたようだ。彼が恐れられているのは、単純に本人が放つオーラが怖いからである。

 

まあ、もう一つの理由として、何故か彼の周りではカメラの故障率が非常に高くなるらしいのだが、その真相は定かではない。

 

「お、そうだ! オマエらもアレに参加してもらうぞ!」

 

いきなりそう言われた彼女達の頭にはクエスチョンマークが浮かんでいる事だろう。

 

「アレ……とはなんでしょう?」

 

「簡単に言えば、アタシの秘密兵器の改良を手伝って貰う! このプロジェクトは沢山人手があった方が良いからな」

 

「なるほど、三人寄れば文殊の知恵と良く言いますからね」

 

「秘密兵器! なんか面白そうな響きデース! エルもそのプロジェクトに参加しまーす!」

 

何か興味を唆る要素があったようで、エルコンドルパサーは高らかに参加を表明する。それに続くようにして、グラスワンダーも参加しても良いと言い出した。

 

しかし、何やら嫌な予感がするのか、キングヘイローとセイウンスカイの表情はあまり優れなかった。

 

そして、その予感は見事に的中する事となるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

工場の敷地にて、彼女達は例の相手とご対面していた。会うのが二度目の者は多少なりとも落ち着いてはいるが、とある一人の者だけは目の前の存在を上手く理解出来ていないようだ。

 

「こ、こ、これは一体何なんデスか……?」

 

「お化けのシューちゃんだよ!」

 

「あら、お化けですか。私はてっきりロボットかと思ってました」

 

「どうしてグラスは平気デスか!?」

 

「先程、お辞儀をしたらちゃんと返してくれたので」

 

幻想世界でも見ることはないであろうこの存在に、エルコンドルパサーは顔面蒼白になっている。それに対して、グラスワンダーは柔らかい笑顔を浮かべたままで、動揺など一切していない。

 

お辞儀には恐怖を無効化する力など無い筈だが……

 

「キング、セイちゃんはもうダメみたい……もうアレを見ても何とも思わなくなってきちゃったよ……」

 

「ちょっと、スカイさん!? 貴方はそっちに行ってはダメよ! 気をしっかり持ちなさい!」

 

残念ながら、キングヘイローがどれだけ彼女を揺さぶろうとも、一度ついてしまった耐性は取れることはない。そんな、まともな者を惜しむかのような激しい揺さぶりに、彼女は気の抜けた声を出し続けるのであった。

 

「わーいっ! 友達がいっぱい出来たね、シューちゃん!」

 

友人関係を築く際に、このような恐怖の試練が課せられる事は無い筈だ。しかし、ハルウララにとっては無いに等しいのかもしれない。

 

そんな事も露知らず、彼女は両手を広げてシュツルムの友達?が増えた事に喜んだ。

 

「み、みんな平気な顔してるデース……!? うぬぬ、エルだけ負けてはいられません! 恐怖など一瞬で克服するのが真の最強というもの! ふっふっふ、もうこんなプロペラなんか怖くないデース!」

 

顔は依然として青ざめてはいるが、その態度は真逆だ。恐怖に立ち向かうその様子は、一部の者から尊敬の視線を集めた。

 

「いや〜、凄いねえ。キングは気絶してたっていうのに」

 

「ちょっと! スカイさんだって逃げ出してたじゃないの!」

 

「無理無理、アレは初見殺し。耐えられるわけがないのだよ」

 

彼女の言う通り、あの見た目のインパクトは強すぎる。初見で驚かない方が珍しいのだ。

 

ちなみに、どこぞの世界にはこの初見殺しを"ああ、クソッ!"や"マジかよ!"などで済ませてしまう人種がいるのだが、彼女達が知る由もないだろう。

 

威圧感のある空気が充満する中、ゴールドシップは何故か眼鏡を掛けて、外へと引っ張り出してきたホワイトボードの前に立つとこの場をリーダーのように仕切り始める。ちなみに、同じく前に立つハルウララは書記を担当するようだ。

 

「じゃあ、ミーティング始めっぞ! 話し合うのはコイツが曲がれる方法だ!」

 

「ちょっとストップでーす! 曲がれる方法って一体どういうことデスか!?」

 

「あのね、シューちゃんは走るのがすっごく速いんだけど、カーブで曲がれないんだ!」

 

「あら、なんだか可愛らしいですね」

 

その現象を証明するべく、ハルウララの指示を受けてシュツルムは走り始める。そして普段通りのイかれたスピードを出して、カーブで曲がれない事を彼女達に示すと、壁にぶつかって停止した。

 

「何と言いますか……まるで車ですね」

 

「飛行機の間違いデース……!」

 

「な? コイツにカーブを習得させたら面白そうだろ? 多分、授業サボって逃げるスカイを後ろから余裕で追えるぜ!」

 

「あら、それは良いわね」

 

「……あれ? 私、何か悪い事でもした?」

 

そんなこんなで、それぞれが彼を曲げるための案を出し合って、プロジェクトは順調に進んでいった。

 

 

 

「飛行機と似てるのなら、尾翼か何かを付ければ良いじゃないでしょうか?」

 

手作りの尾翼を付けたが、技術力不足によりシュツルムの走行に耐えられず大破。

 

失敗に終わった。

 

 

 

「簡単デース! カーブをじっと見ながら走れば良いんデース! そうすれば勝手に曲がれます!」

 

顔の向きをカーブへと向けるよう指示を出した所、僅かに曲がる事に成功。しかし、そのせいで壁に衝突せずに、工場裏の山へと突っ込んで行ってしまった。

 

失敗したが、進展あり。

 

 

 

「体をカーブの内側に傾けるのはどうかしら? 要は重心移動ね」

 

カーブに入る際、無理矢理頭をカーブの内側に傾けるよう指示。カーブの三分の一を走る事に成功。しかし、速すぎるせいで遠心力に負けて外側へと吹き飛んだ。

 

失敗したが、進展あり。

 

 

 

「じゃあ、アタシが外から押せば完璧だな!」

 

カーブの際、外側にゴールドシップを待機させ、カーブ時の遠心力を押さえつける試み。しかし、その質量が大きすぎるあまり、押さえきれずに彼女ごと吹き飛ばされた。

 

失敗に終わった。

 

 

 

「うーん……えーとね……たくさん頑張る!」

 

頑張った。

 

失敗に終わった。

 

 

 

「えー……だってこれ成功しちゃったら私が追われるんでしょ? だから、セイちゃんはゆっくり昼寝でもさせて貰いまーす!」

 

ゴールドシップがシュツルムにセイウンスカイを追い回すよう指示。彼はゆっくり歩いて彼女をしばらく追い続け、彼女へ多大なるプレッシャーを与えて睡眠へと至らせない事に成功。

 

失敗に終わった?

 

 

 

「そういえば、この子は歩きなら曲がれるんですね」

 

未だにゆっくりとした鬼ごっこを続ける二人を見て、グラスワンダーがそう呟いた。

 

「つまり、減速すれば曲がれるって事かしら?」

 

「なるほど! エルは完璧な案を思い付きました! プロペラを回して加速するなら、逆に回せば良いんデス!」

 

「そんな事出来るわけが……」

 

自慢げな様子で案を出す彼女に、キングヘイローはどこか呆れた様子で返事をする。しかし、そんな一流お嬢様の言葉に異議を唱えたのは、誰でもないハルウララであった。

 

「シューちゃんは出来るよ! ほらっ!」

 

彼女の指の先には、鬼ごっこを終えたシュツルムとどこか疲れた様子のサボり魔の姿。追い回したお詫びなのか、彼はこの冬にはありがたい温かな風を彼女へ浴びせていた。

 

意外と心地が良いのか、彼女は風を受けながらだらけた声を出し続けている。

 

ハルウララもその様子を見て我慢出来なくなったのか、その暖房付き扇風機の前に立つと彼女と同じくゆるゆるな空気感を辺りに振りまいた。

 

「ポンコツなのか高性能なのか分からなくなるわね……」

 

「ふふっ、まるで機械ではなく人みたいですね」

 

どうやら、グラスワンダーは精巧に作られたロボットだと思っているようだ。確かに、彼の技術力であれば不可能では無いだろう。

 

まあ、勘違いで済ませるのが彼女にとっても幸運なのは確かだ。世の中には知らなくて良い事の一つや二つ、あって当然なのだから。

 

 

 

そんなこんなで、プロペラ逆回転案はゴルシ議会にて可決され、実行へと移される。

 

「あのねあのね、カーブの前でプロペラのグルグルを反対にすれば止まれるんだって! そしたら、カーブを曲がれるんだってさ!」

 

シュツルム語検定1級の彼女が彼へやる事の指示を出す。理解はちゃんとしたようで、彼はその大きな頭を縦に振って了承した。

 

そして、彼はスタート地点に立つとその回転機構を稼働させる。ニトロ燃料によって改善されたバカげた加速を見せつけて、舞台はカーブへと差し掛かる。

 

外野の一人がライトセイバーをサイリウム代わりに振るって応援する中、彼はそのプロペラを強引に止め、反対方向へ回し始める。

 

機械的な面で化け物レベルの負荷が掛かるはずだ。しかし、より化け物だったのは彼の耐久力の方だったようで、異音を響かせながらエンジンの回転数は異様な程に上がっていく。

 

 

 

その結果、地面に二本の線を残しながら、彼はカーブの入り口をちょっと過ぎた所で無事に停止したのだった。

 

そして、今まで踏み入る事が出来なかったカーブをまるでウイニングランのようにテクテクとゆっくり歩いて行った。その軌道は問題を生じる事なく円弧を描く。

 

カーブの終わり際、まるで喜びを表すかのように彼のプロペラはけたたましい音を立てて再始動する。そして、スクラップの山をまた一つ半壊させると、彼は無事に停止したのだった。

 

「やったー! 初めて曲がれたよ!」

 

「でも、ちょっとゆっくり過ぎないかしら?」

 

「まあ良いんじゃない? 一歩前進って事でさ」

 

何かと問題点は残るが、とりあえず第一目的は達成したのだ。プロジェクトとしては一応成功である。

 

まあまあの結果にハルウララが大喜びしている中、入り口から何人かの話し声が響く。明らかに工場の主人ではないその声に、キングヘイローは咄嗟にスクラップの山の影にシュツルムを押し込んだ。

 

「貴方はここでじっとしてなさい! 出てきたらきっと面倒事になるわ」

 

一人以外全員一致の提案に、彼はお行儀良くじっとしている事にした。勿論、バレないように己の放つエンジン音も最低まで音量を下げている。

 

そんな、問題のあるブツを隠蔽し終えた彼女達の元にやって来たのは三人の記者だった。

 

「お、いたぞ! アイツらだ!」

 

見た感じ若そうな彼らはカメラを構えると、挨拶代わりにフラッシュを焚く。礼儀知らずの彼らに、とりあえずキングヘイローは丁寧に頼み込む。

 

「ちょっと良いかしら? 撮影も取材も今は少しご遠慮したいのだけれど?」

 

「いやいや、ちゃんと許可は取ったから!」

 

「そういう事ではなくて、少し取り込み中なので、後にして欲しいんです」

 

お嬢様だけではなくグラスワンダーも説得に参加するが、許可を取ったから問題無いと言い張って彼らは聞く耳を持たない。

 

それどころか、こんな変な工場に才色兼備な彼女達がいる事が良いネタなのか、お構い無しに周囲や彼女達を撮りまくっていた。

 

「だ、ダメだよ! キングちゃんもグラスちゃんも嫌がってるよ!」

 

心優しいハルウララは、記者達の前に立って全身で良心へと訴えかけた。

 

カメラの中に彼女が映るのが目障りなようで、彼らは嫌な表情を浮かべている。

 

「誰だコイツ?」

 

「知らないのか? ハルウララだよ、大体のレースがビリで有名な」

 

「少し前のレースでは珍しく二着でしたけどね」

 

口の悪い記者はどうやら彼女の事を知らないようで、他の二人の記者からその活躍を知らされると、彼女を見て鼻で笑った。

 

「なんだよ、ただの雑魚じゃねえか」

 

その一言で辺りの空気は険悪なものへと変貌を遂げる。もはや、彼らに丁寧に頼む者など、一人として居ないだろう。

 

彼女の友人達は、怒りを含んだ視線をその無礼な記者へと向ける。

 

そんな中、ゴールドシップは我慢の限界に到達し、クソみたいな性格をした彼の胸ぐらを掴み上げた。

 

「おい、テメエ。ウララに謝れよ!」

 

「離せ!」

 

「痛っ!?」

 

怒りを露わにする彼女に対し、返答代わりに返ってきたのはスタンガンの電撃であった。まるで、こうなる事を予測済みであるかのような装備に賢い彼女達は気付く。

 

この男は普段からこの調子なのだ。そうでもなければこんな物を持っている筈がない。

 

「おっと、面白そうなネタが撮れそうだ。見出しにはあの"ウマ娘が暴力を!?"とかが良いかもな」

 

「貴方達は記者としての誇りはないんですか!」

 

「誇りじゃ飯は食っていけないんですよ? そこんところを理解して貰いたいですね」

 

無礼極まりないその男達に、グラスワンダーは怒気のこもった言葉を放つ。しかし、彼女の放った言葉はまともに受け止められることはなく、ただただ軽く流された。

 

「け、けんかはダメだよ! どうしてみんな怒ってるの……?」

 

「確かに良くはないデス。だけど、これだけは絶対に許せません!」

 

「友達をバカにされて黙ってられるほど、私は良い子じゃないからね」

 

暴行事件など起こしたら、レースに支障が出るのは彼女達も分かっている。しかし、それでも彼女達は最悪の場合には手を出す事を躊躇わないだろう。

 

「本当の事言って何が悪いんだよ? 勝てないんだったら雑魚だろうが」

 

「その口、しばらく閉じておいて下さらない?」

 

流石の彼女もここまで言い争いが発展すれば、何がどうなっているのかは察しがつく。そして、その発端には自分が関わっている事も……

 

「み、みんながけんかしてるのは……わたしが弱いせいなのかな……!」

 

とても悲しそうな表情を浮かべた彼女は、今にも泣いてしまいそうだ。

 

そんな様子を見てしまっては、友人達の動きも止まってしまう。しかし、そこに追い討ちを掛けるかのようにイラついた表情をした記者が棘のある言葉を吐いた。

 

「そうに決まってんだろ! どうして弱い奴を弱いって言って文句言われなきゃならねえんだよ! 勝てない奴は隅っこで雑魚共と仲良くしてろ!」

 

他の二人の記者ですら苦笑いを浮かべるその言葉は、確実に彼女達の堪忍袋の緒をぶった切った事だろう。

 

しかし、それだけで済むはずがなかった。

 

 

 

彼らのその発言は、同時に誰かの理性のストッパーを文字通り粉々にしてしまう。

 

 

 

もはや、理性の鎖は意味を成さず、かの者は解き放たれた。

 

 

 

全てを塵へと変えるべく……

 

 

 

 

 

 

とてつもない轟音と共にスクラップの山々が崩壊を始める。障害物全てをただの屑鉄へと変え、無礼な者共の前へとその姿を現した。

 

「は……? な、なんだよコイツ!?」

 

その存在は、自身の怒りを表すかのようにエンジンの回転数を上げる。明らかに、異常であるその音は、エンジンの音という生易しいものでは無い。

 

例えるなら、それは機械仕掛けの咆哮。

 

思わず耳を塞いでしまう程の爆音。それだけに留まらず、憤怒の炎はニトロ燃料にまでその影響を及ぼした。

 

 

 

シュツルムを中心として巻き起こる大爆発。

 

 

 

吹き飛ばされる男達。辺りは既に火の海だ。

 

 

 

地面に這いつくばった彼らが見上げた先には、そんな火炎の床を意に介さず、ゆっくりと近づいてくる悪夢の回転機構。

 

炎で赤く染まった視界に映ったソレは、彼らを文字通り鏖殺するだけでは飽き足らず、魂すら粉微塵にして煉獄にばら撒く処刑器具だ。

 

 

 

 

 

もはや、生物という括りから逸脱したその存在を、形容する言葉があるとしたら……

 

 

 

 

 

それは正しく、"魔物"であった。

 

 

 

 

 

 




シュツルム
元々自我のようなものはあった。しかしそれは、曖昧で残虐なものだった。だが、一人のちっぽけなウマ娘はそんな彼を怖がらず、一人の友人として彼に暖かく寄り添った。

そうして彼に宿ったのは、復讐と暴力に溢れた過去のものとは違う、他者を思いやれる優しい心であった。

だが、もしもの時があれば、彼は悍ましい魔物と成り下がり、喜んで矢面に立つだろう。

きっと、その鋼鉄の体は友人達とたった一人の親友を守るためにあるのだから……
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