悪くねえ 大したもんだ ハルウララ   作:黒チョコボ

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落し物

 

日差しが暑く世界を照らす今日。誰しもが空調の効いた部屋で閉じこもっていたいと考える程に、不快で湿った空気が学園を覆い尽くしていた。

 

そんな中、汗をダラダラと流しながら、慌てた様子で辺りをキョロキョロと見回す一人のウマ娘がいた。

 

「うぅ……ここにも無い。どこで落としちゃったのかな……キングちゃん達から貰った物なのに……」

 

桜色の尻尾をその先までじっとりと濡らしたその姿は、紛れも無くハルウララである。しかし、今の彼女の様子は元気いっぱいないつもとは少し違っていた。

 

「よしっ! お水飲んだらまた探そう!」

 

流した汗の分を補充するかのように、彼女は水道の水を沢山飲んだ。

 

しかし、飲みすぎてお腹が一杯になってしまい少し苦しくなってしまった。そんなこんなで、その場で立ち往生していると、彼女の目に見知った姿が入り込む。

 

「あっ……トレーナーだ!」

 

暑すぎるからか、コートを鉄槌の先端に引っ掛けて彼女と同じように汗をかく彼女のトレーナー。彼女と同様に存在に気づいた彼から送られたのは悪態混じりの挨拶だった。

 

「よお、こんなクソ暑い中何やってんだ? あのポンコツみたいに熱暴走がお望みなら別に止めはしねえが」

 

「うん? ねつぼーそー? 何かおいしい食べ物のこと!?」

 

「違えよ」

 

良く分からないが取り敢えず食べ物だと認識したのか、彼女の口端に涎が滴る。とうとう脳味噌が熱暴走を起こしたかとハイゼンベルクは頭を抱えた。

 

「あっ! ねえねえトレーナー! これからこーじょーに帰るよね?」

 

「ああ」

 

「そしたら、こーじょーにこれ落ちてないか探して欲しいんだ!」

 

彼女が彼の眼前へ唐突に突き出してきたのはスマホの画面。そこに映っていたのは、人参の形をしたキーホルダーだった。

 

「多分、こーじょーか寮か教室のどこかにあると思うんだ! わたしはこっちの方探すからトレーナーはこーじょー探して!」

 

「あー……気が向いたらな」

 

「ありがとうトレーナー! そしたら、わたし教室の方探してくるね!」

 

返した言葉は肯定の意では無いはずだが、彼女は完全にやってくれると勘違いをして感謝の言葉を述べると、そのままどこかへ走って行ってしまった。

 

彼もどうやらそれを察したようで、何とも言えない表情を浮かべながら特大の溜息を吐いたのだった。

 

 

 

 

 

 

ハルウララのお願いをこなすかどうかは置いておいて、とりあえずさっさと帰るためにハイゼンベルクは己のトレーナー室へと足を運ぶ。もはや、約半分がゾルダート置き場となっているその部屋に着くと鍵の掛かったドアの前に二名の望まぬ客人の姿があった。

 

「おい……何してんだ?」

 

「ピッキングの練習。大丈夫だって! アタシは開けるだけで何もしないからよ!」

 

「ふざけんな、テメエの背後でニヤついてるイカれ科学者が何かするだろうが……!」

 

鍵穴に真剣な表情で向かうゴールドシップに、その後ろで不敵な笑みを浮かべるアグネスタキオン。

 

彼の部屋の鍵はセキュリティが高い故に、きっとコレに慣れておけば他のものにも対応出来ると考えたからこその行動だろう。そんな、はた迷惑な練習の副産物を享受しようとしていると思われる白衣の者だが、彼女の発した言葉はその意とは違っていた。

 

「おっと、勘違いしないでほしい。私はただ君に用があって今来ただけなんだ。そもそも、君の部屋に入ろうなんて思わないしね」

 

最後に"どんな恐ろしい罠が仕掛けられているか分からないからね"と付け足すと、アグネスタキオンは怪しく笑った。

 

「ほう、テメエにしては利口な判断じゃねえか。命拾いしたな」

 

ハイゼンベルクの返答と同時に、ドアの方からガチャリと鍵が開いたような音が響く。抑え切れぬ歓喜の声と共にそのドアが開け放たれ、防犯用の中が見えないガラスの先が明らかになる。

 

だが、そうして姿を見せたのは冷たく光る銃口だった。

 

「はあっ!?」

 

中にぶら下げられてご丁寧に頭へと標準の合ったソレを前に、ゴールドシップが驚愕と恐怖を同時に味わう中、想像とは違った軽い破裂音と共に得体の知れないものが彼女へと降り掛かる。

 

「ふうん、成程。強引に開けるとこうなる訳だね」

 

興味深そうに向けられた視線の先には、黒いワイヤーの網に雁字搦めとなった哀れな者の姿。

 

どうやら、あの天井からぶら下がったショットガンのような代物はネットランチャーらしい。

 

「ああそうだ、おまけにワイヤーだからな。電気も流せる! おい、黄金虫。何Aがご希望だ? テメエの無様な姿が見れたからな! 今なら50から200の中で好きな所を選ばせてやる!」

 

「し、知ってるかおっさん……? 人体に0.1A流れたら致命傷なんだぜ?」

 

「ああ、知ってる。だが、0.1だと生き残る奴がいるもんでな、だから最低値は50にした」

 

「成程、確かにそれなら電圧や人体の表皮状態に左右されずに結果が出るね」

 

「やべえ……! コイツら話通じねえ!」

 

拘束されて動けないゴールドシップに対して交わされる恐ろしい会話。というか、選択肢の単位が電流しか無いのが非常にいやらしい所だろう。

 

もし、この単位が電圧ならばまだ希望はあった。

 

まあ、その時はその時で単位の前にKだかMだかのイカれた乗数が付きそうだが……

 

そうして、虫網から抜け出そうとする哀れな存在を横目に、ハイゼンベルクはトレーナー室へ荷物を片付けると、その網を乱雑に掴んでそのまま廊下を歩き始める。

 

引き摺られるゴールドシップに、さも当然かのように引き摺るハイゼンベルク。そして、その様子をマッドな瞳で眺めるアグネスタキオン。

 

何というか、ヘマを犯した部下とそれに見合う仕打ちを与えんとする悪の企業の上司達のようである。

 

金属の紐に体を覆われたまま廊下を体で掃除する羽目となっている彼女は、今の己の現状に異議を唱えた。

 

「なあ、もうそろそろ離してくれね? この後、オホーツク海で蟹狩りに行くからよ」

 

だが、返されたのは無慈悲な言葉だった。

 

「ゴールドシップ君、良いことを言うじゃないか。お陰で面白い事が思い付いたよ」

 

いつもなら己に向けられているであろう"何を言っているんだ"という表情を彼女は科学者へと向ける。

 

「工場長知ってるかい? 実は電気風呂という物がこの世にはあるんだ」

 

「テメエ……偶には面白え事言うじゃねえか。どんなもんなんだ?」

 

その言葉に、一人はニヒルな笑みを、一人は絶望の表情を浮かべる。

 

「フフッ、電気の流れるお湯に体を沈める拷問の一つさ。モルモット君曰く、中々に耐え難いらしくてね」

 

きっと、当人が苦手なだけであろうそのレビューを丸々参考にしたのだろう。それ故に、酷く身勝手に着色された意見が彼女の口から飛び出した。

 

「そうそう、これは特に関係ない話なんだが、海などの塩水は普通の水よりも導電率が良いんだってね」

 

おまけに、想像力をかき立てる一文もセットである。

 

「ほう、そういえばテメエ、海に行くとか言ってたよな? そんなに海水浴したけりゃ俺がさせてやるよ!」

 

「……絶対生き残ってやるかんな!!」

 

半ば諦めた意思の感じられる返答。恐らく、彼女の脳裏に今浮かんでいるのは、目の前に立つ二人の存在を"絶対に"意気投合させてはならないという己への警告だけだろう。

 

「ハッハッハッハ! もし生き残ったらテメエも仮想敵に加えてやるよ!」

 

だが、彼の発した黒い笑みとは裏腹に、彼女のこの後の処遇は漏電だらけの深海探索船に乗せられた訳でも、バチバチ恐ろしい音を立てる沸騰したお湯にぶち込まれる訳でもなく、ただただ学園のロビーに宙吊りにされただけであったという。

 

なお、地獄のような所業を想像しすぎて真っ白となったゴールドシップは、無人島帰りのトレーナーにしっかりと保護されたそうだ。

 

 

 

 

 

 

「おい、それで結局テメエは俺に何の用だ?」

 

一人のミノムシを見事に作ったハイゼンベルクは、目の前を歩く白衣の背中へと尋ねる。

 

「ああ、だいぶ前に作ってもらった装置があるだろう? それの修理をお願いしたくてね」

 

「あ? そんなヤワに作った覚えはねえが……」

 

彼の作る製品の殆どは見た目と引き換えに高耐久、高性能、安価を兼ね備えた代物だ。きっと、同業者からすればその特性は非常に厄介な事この上無いだろう。

 

「君の抱いてる懸念に関しては問題ないよ。どこかの誰かさんに落とされようが、雷で停電しようが何一つ壊れなかったさ」

 

「なら、どうして壊れた?」

 

「いやー……この前機材を移動させる時、数が多くて手間取ってね。他の者達に少し手伝って貰ったのさ! ただ、人選が悪かったね……反省しているよ」

 

「クソッ! またあのマシンクラッシャーがやりやがったのか! アイツ用に対策したブツも長持ちしねえし、あの体の中どうなってやがる!? マイクロ波発生装置でも付いてんじゃねえのか!?」

 

故障の原因を察した彼は内に積もった私怨を晴らすかのように、暴言に似た愚痴を吐き出した。

 

だが、考えてみて欲しい。ありとあらゆる電化製品が彼女の前にひれ伏す中、彼の製作物は多少なりとも壊れぬ可能性が残っているのだ。

 

きっと、分かる者ならそれだけで彼の技術力が如何に化け物かよく理解出来るだろう。

 

しかし、同業者と殆ど関わりの無い彼は、そんな事も露知らずに暫く怒りをオーラとして辺りに振り撒いていたのだった。

 

 

 

そして、近寄り難いオーラをばら撒く者達はその原因となった物の鎮座する部屋まで到着した。

 

「ほら、机の真ん中に置かれている遠心分離機。あれさ」

 

アグネスタキオンがそう言いながら指差すと、コーヒーを片手に驚愕の視線を向ける住人に目もくれる事なく、彼はその代物を豪快に持ち上げた。

 

「おい、コイツは回収してく。あんなワケ分からねえオカルトに壊されてたまるかよ! 絶対に壊せないもんを作ってやる……!」

 

先程の話はハイゼンベルクの何かに盛大に火を付けたらしい。アグネスタキオンの返答など一切聞かず、燃え盛るその衝動に駆られるようにして、彼は早々とこの部屋から出て行った。

 

「おや、もう行ってしまったか。幾つか実験でもしようと思っていたのに残念だ」

 

「タキオンさん……今の人は?」

 

「ああカフェ、驚かせたようですまないね。先程の彼こそが、良く話題に挙がる狂った工場長のハイゼンベルク君さ。中々に珍しいタイプの人間だと思わないかい?」

 

「ええ、確かに……そうですね」

 

眉を顰め、思案に耽るマンハッタンカフェ。そのカップに注がれたコーヒーが進んでいない様子に珍しさを感じながら、アグネスタキオンは丁度空いた机のスペースに適当な資料やら機材やらを詰め込んだ。

 

机不足な訳ではない。ただ単に、片付けが足りていないだけである。

 

「よしよし、これで床に資料を置かなくて良くなったね。まあ、アレが返ってくるまでの間だけなんだが……っと、おや?」

 

少し綺麗になった床を見ていたら、見覚えの無い汚れた紙が目に入る。茶色と黒の混じった指紋が目立つそれは、どうやら裏返しになった写真のようである。

 

聡明な彼女は、汚れの種類からこの写真の持ち主を即座に察した。

 

「おやおや、工場長の落し物じゃないか! 私も学園の生徒の一人だからね、生徒会の言いつけ通り、落し物は拾って本人に渡してあげようじゃないか!」

 

酷く裏のある笑みを前面に押し出した彼女は、その怪しげな写真へと手を伸ばす。ニヤリと歪んだその口端は、きっと親切心から来るものではなく、そこに映る情報への期待の表れなのだろう。

 

そんな心の高揚に背中を押され、彼女はその落し物に写る像を見た。

 

 

 

否、見てしまった。

 

 

 

「……!?」

 

遠くから見れば何が写っているか分からぬそれに、彼女の表情は驚きともう一つの感情に歪む。己の尻尾がピンと立っているのにも気づかぬまま、その狂った瞳でその写真を見据えた彼女はゆっくりと、確実に表情を青く染めていく。

 

「これは、機械じゃない……? だとしたらコレは……いや、そんな事……ある訳が……!」

 

「タキオンさん?」

 

明らかに様子のおかしいアグネスタキオンに、厳しい表情で考え事に耽っていたマンハッタンカフェが思わず思考を中断し、その名を呼びかけた。

 

だが、彼女の目は壊れたかのように写真から離れない。

 

「嘘だ……そんな事あっていい筈がない……! こ、コレは……倫理観の違いで済まされるレベルを超えて……!?」

 

「タキオンさん!?」

 

呼吸が段々と早まり、余裕の無くなった彼女の瞳は恐怖を超えた何かで満たされる。

 

そうして、彼女は糸の切れた人形のようにその場に倒れてしまった。床では無く、ソファの上に転がったのが唯一の救いである。

 

焦りを含んだ表情を浮かべ、マンハッタンカフェは彼女をソファにしっかりと寝かせると、何か異常が無いかどうか素人目で確かめる。

 

「見たところ、タキオンさん自身に異常は無さそうですが……一応トレーナーさんを呼んでおきましょう」

 

半ばモルモットとなっているその者に迅速な一報を入れた後、彼女の視線は床に裏返しになって落ちるその写真へと向けられる。

 

その視線は、危険物に向けるかのように警戒一色に染まっていた。

 

そうして、ゆっくりと伸ばされる手が今にもそれに触れようとした時、まるで誰かに呼びかけられたかの様に彼女は何もない後ろへと振り返る。

 

「"見ない方が良い"……ですか。お友達すら怯えさせるなんて……一体何が写っているのでしょうか?」

 

反対側に潜む真実を見ないように最新の注意を払いながら、彼女はその写真を机の上に置き、決してどこかへ行かぬように適当な機材を重し代わりにその上に置いた。

 

まるで、精密機械でも運ぶかのような緊張感から解放された彼女は、まるで思い出すかのようにこの写真の持ち主に対して、唯ならぬ雰囲気で小さく呟いた。

 

「コレを持っていたあの人……本当に工場長なのでしょうか? 火葬場の関係者であっても、あれ程の数が憎悪一色で纏わりつくなんてこと……」

 

ただ思い出すだけで、彼女の顔色は僅かに青く染まる。

 

賢く、気づいてしまう者。見えないものが見えてしまう者。その両方に等しく恐怖を与えられる人間が、彼女達にとってまともな生き方をしているとは到底思えないのだろう。

 

「あの人が住む土地が良くないのか、あるいは……」

 

彼女の耳に入り込む慌ただしい足音に、今にも発せられようとしていたその言葉は遮られる。

 

どうやら、今ソファに寝ている者のトレーナーのようだ。

 

彼は中に入るなり礼を言うと、すぐさま病人を担いで保健室へと行ってしまった。

 

静かになった部屋の中で、何故だか恐ろしく感じてきた裏向きの写真をぼんやりと見つめながら、彼女は心の中で吐けなかった言葉を呟いた。

 

 

 

"死者を冒涜したとしか思えない"

 

 

 

彼女の険しい表情とは裏腹に、その写真には可愛げのある丸みを帯びた文字で"シューちゃん"と書かれていたのだった。

 

 

 

その後、アグネスタキオンは平然と部屋に戻ってきた。特に体に大事は無かったようで、己が気を失っていた事にただただ首を傾げていた。

 

「カフェ、最後に私が何をしたか知っているかい? 何故かそこだけ全然思い出せなくてね……工場長が帰ったところまでは覚えているんだが……おや、この写真は何だい?」

 

……写真は早急に持ち主へと返却された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ、時間食っちまった」

 

何故か理事長経由で突然呼び出され、誰かの手によって厳重に包まれた一枚の写真と学園の機材への要望書を押し付けられた彼は、工場の敷地のど真ん中で悪態を吐いていた。

 

元々今日中にやりたかったあのイカれ科学者からの修理依頼だが、既に時刻は夕方だ。今日中に終える事はどう足掻いても難しい。

 

きっと、その溜息は面倒事を始末出来ずに明日に持っていった事への落胆も混じっているのだろう。

 

「ったく、落し物なんざ放っておけばいいのによ」

 

相手の親切を放り捨てるかのような言葉を吐いたその時、彼はふともう一つの面倒事を思い出す。

 

ピタリとその身を止め、沈黙が辺りを包み込む。緩やかな風がその沈黙を吹き飛ばすと、彼は小さく溜息を吐きながら工場へと向かっていく。

 

 

 

その後、既に暗闇に染まった工場で、地面を光で大きく照らす一つの影がしばらく彷徨っていたそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トレーナー!! 見て見て! キーホルダーあったよ!」

 

次の日の朝。大喜びで作業中のハイゼンベルクへと向かっていくハルウララの姿があった。

 

「そうか」

 

至って興味無さそうな抑揚の無い声を返す彼だが、彼女はその言葉に込められた厄介払いの意味を察する事は出来なかった。

 

それ故に、彼女の楽しそうな会話は続く。

 

「どこにあったか知りたい?」

 

「別に」

 

「あのねあのね! トレーナー室に落ちてたんだ!」

 

残念ながら、この会話は言葉のキャッチボールではなく、ドッヂボールのようだ。きっと、球はハルウララ側へ無限に生成されるに違いない。

 

だが、球を受け続けている彼から明確な否定の意は返ってこない事を見るに、特に止める気も無いらしい。

 

「昨日頑張って探したけど、トレーナー室だけ見てなかったんだよね! それで、今日一番最初に行ってみたら部屋の真ん中に落ちてたんだよ!」

 

ハルウララは見つけた大切なキーホルダーを両手で大事そうに持ちながら、頼んでもない詳細を話し始める。

 

そんな目立つ場所にあるなら、どこかの誰かが気付きそうであるが……

 

だが、そんな疑問は嬉しさの前には無粋であるためか、はたまた疑問にすら思っていないのか、彼女の脳裏にその疑問が浮かぶ事はこれっぽっちも無かった。

 

代わりに、ただただ手の中にある思い出が返ってきた事に安堵するばかりである。それを再度思い起こすかのように、彼女は握った両手を開き、にんじん型キーホルダーをチラリと眺めた。

 

 

 

 

 

 

色々と詰まったそれは、なんだか少しだけ重く感じた。

 

 

 

 

 

 




人参型キーホルダー
良くお土産屋や雑貨屋で売っている人参の形をしたキーホルダー。ハルウララが友人達から貰った大切な物である。



何故か市販品と比べて少し重く、ひんやりとしている。材質でも変わったのだろうか?
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