寝落ちでクロス   作:浅草一丁目

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一期の終わり

 そこでは、半壊しながらも陣形を組み、執拗に攻撃を仕掛けるカルタのグレイズリッターとその親衛隊、そして機動力を生かして縦横無尽に駆けるキマリスが、バルバトスと激戦を繰り広げていた。

 

『鬱陶しい……!』

 

 さしもの三日月も攻めあぐね、ヴァルキュリア・フレームのグリムゲルデの援護で均衡を保っているが、やはり決め手に欠けている。

 

「君の力はこんなものか、三日月・オーガス」

『ていうか、チョコの人がなんでここにいんの』

「私の目的は以前話した通りだが……しかし、せめて指揮官機とキマリスだけであれば、隙も作れるのだがな」

 

 そんなことを話しながら、バルバトスの一撃で態勢を崩したグレイズリッターに、トドメの突きを繰り出そうとするグリムゲルデ。

 

「なに……!?」

 

 その腕から伸びるブレードは、瞬きする間もなく両断されていた。

 ほんの一瞬だけ見えたのは、翠の光の尾を引く青い飛来物。

 

『ベルティーナ、何のつもり?』

 

 三日月の双眸は、降臨するように高度を下げてくるクアンタに向けられていた。

 

『この場は任せて。クーデリアを狙ってギャラルホルンの機体が市街地に入ったから、三日月はそちらの迎撃を』

『ん、了解。こっちは大丈夫? ……って、聞くだけ無駄か』

 

 意図は答えなかったが、任せろと言うのなら任せられる相手だ。

 返事も聞かず、三日月は市街地へと駆ける。

 それを黙って見過ごすギャラルホルンではなく、しかし意識をバルバトスに向けた瞬間に無力化される。

 

 縦横無尽に奔るソードビットだけでなく、クアンタ自身がGNガンブレイドを駆使して次々と機体を撃破していく。

 

『こ、こんな、無様なっ、ぁあッ!』

『キっ、キサマぁあ!!』

 

 まるでついでのようにカルタ機も無力化され、その怒りに突撃を仕掛けようとするキマリスは、下半身を両断されて地面を転がった。

 そこにトドメを刺そうと距離を詰めたグリムゲルデも、飛来したソードビットにブレードを破壊され、追撃の中断を余儀なくされる。

 

 ブレードだけで済んだのは、ただの偶然。

 もう少し踏み込んでいれば、腕ごと両断されていたことはマクギリス本人がよくわかっている。

 

 誰もが動くに動けない。

 張り詰めた静寂が、戦場を包む。

 

「……君は鉄華団の味方だと思っていたが?」

 

 睨めつける視線と共に投げかけた問いは、

 

『味方のつもり。でも、あなたの味方じゃない。マクギリス・ファリド』

 

 その場に、大きな衝撃を産んだ。

 

『マ、マクギリス……!?』

『マクギリス、だと……? キサマ、何を言って』

 

 告げられた言葉は、真実か、それとも動揺を誘うための虚言か。

 困惑が広がる戦場の空気で、唯一グリムゲルデだけが、その苛立ちを隠せずにいた。

 

「……何のつもりだ。ベルティーナ・ビアンコ」

『あなたに言葉を尽くしても、無駄だってことはわかってる』

 

 本人が言うように友情も、愛情も、信頼も響かないのであれば、単なる言葉では意味がない。

 しかし暴力では、彼らの力がマクギリスに届かない。

 

『だから、無理にでも響かせる。――トランザム』

 

 クアンタがトランザムバーストを発動。戦場に、光が満ちる。

 

「これは……」

 

 マクギリスがその神々しさに怒りを忘れかけ、

 

「マクギリス……」

「本当にマクギリス……お前、なのか?」

 

 確かに自身を認識している、知古の存在を認めた。

 青い機体の発した光といい、機体を越えて他者そのものを認識している状況といい、幻かと思いたくなるが、すべて現実だと本能が告げている。

 

 だからこそ、ガエリオは困惑した。

 

「なぜ……、どうしてお前がそこいる……! どうしてお前が、俺たちの命を狙う!? マクギリス!!」

 

 通信ではなく、また単に言葉を交わしているわけでもない……まるで心に直接心を投げかけられているような感覚に戸惑いながら、しかしマクギリスは彼に告げた。

 

「……お前たちの犠牲が、変革に必要だったからだ」

「そんな……」

 

 裏切りを告げる言葉。

 その言葉が嘘偽りのないものだと、直感的に思い知らされたカルタは言葉を失い、ガエリオは憤り……涙する。

 

「お前がっ……俺たちがっ……、俺に語った言葉は! 嘘だったというのか!」

「嘘ではないさ……」

 

 マクギリスの語気は、自身が思うよりずっと弱かった。

 

 ガエリオの言葉、心の痛みが、まるで自身のものであるかのように感じる。

 それは、マクギリスが抱いたことのない……或いは、既に忘れてしまった感情。

 

 これこそ、彼が恐れる変化でもあった。

 

「……ただ、お前を……お前たちを受け入れてしまえば、もう前に進めなくなるような気がして……、決別しようとした」

「それは決別じゃないっ! 逃げているだけじゃないか!!」

 

 どこまでも真っ直ぐな言葉に、マクギリスの顔に浮かんだのは2Bの知る見下すような笑みではなく、自らを嘲るような苦笑。

 

「……そうだな。だが、それしか知らなかったんだ。……信じられなかったんだ。怒りの中で生きていた、俺には……」

「知らないなら知ればいい! お前が! 俺に、色々なことを教えてくれたように!」

 

 ガエリオは憤る。

 

 隣に立ちたかった。

 遠い存在と憧れた彼に、認められ、隣に在れる人間になろうと思った。

 

 成長するにつれ、他者と接する際には仮面を着け、本来の自分を隠すようになったマクギリスも、自分の前では仮面をはずしてくれている。

 そう感じていた。

 ……隣に立てたと、思っていた。

 

 なのに、彼は孤独だった。

 

 他の人間と接するのと同じく仮面を外さなかったマクギリスに怒り……それ以上に、そのことに気付けなかった自分に怒り……叫ぶ。

 

「一人で進めないというのなら! 俺が押してやる! 支えてやる! 一緒に……前に進めばいい!」

「ガエリオ……お前は」

 

 いつもの強さのない、しかし確かにこちらを見る目が、声が、その心情を伝えてくる。

 だからこそ、やるせ無い思いが込み上げる。

 

「こんなバカげた力に頼ってるのに、まだ分からないのか!!」

 

 自分には、こんなにもお前の中にある怒りや痛み、後悔や迷いが感じられているのに。

 

「俺を……許すというのか、ガエリオ……。お前たちを裏切った俺を」

「当たり前だっ……、お前の裏切りで誰かを失っていたら、もしカルタを、アインを、妹をっ……誰かを傷つけていたら、俺は許せなかったかもしれない……!」

 

 何か一つのピースが違えばそうなっていたかもしれない。

 でも、そうはならなかった。

 

「カルタも、アインも、俺も! ……みんな、生きてる! 生きてるんだ!」

 

 だから、

 

「やり直そう……マクギリス……!」

 

 なかったことにはできない。

 それをしては、唾棄すべき者たちと同じになってしまう。

 語り合った言葉が嘘でないのなら。

 そうしないからこそ、また再び前を向いて進むことができるはずだ。

 

 ガエリオの潔さが眩しく、それが過去の屈託のない表情で話しかけてきた幼い頃の彼に重なり、マクギリスの顔には弱弱しく、しかし純粋な笑みが浮かんだ。

 

「……また、共に歩んでくれるというのか」

「……友人、だからな」

 

 対話は果たされた。

 

 カルタも、決して蚊帳の外だったわけではない。

 彼女もまた、ありのままのマクギリスを見ようとしていなかった自らの不甲斐なさに打ちのめされ、彼が再び歩もうとするのなら力になろうと決意した。

 

 それこそ、哀れみでも情けでもなく、平等に接すると告げた、あの頃のように。

 

 

 ☆

 

 

 蒔苗を議事堂に運ぶ計画は成功した。

 原作ではグレイズアインとして猛威を振るった阿頼耶識搭載グレイズは、半死だったコーラルによって操られたけど、グレイズアインより苦戦せず勝利したらしい。

 

「あっちの阿頼耶識が思ったより早くて驚いたけど、なんとか勝てたよ。ベルティーナと訓練しといてよかった」

 

 と三日月は語り、疲弊こそあったものの五体満足で、右目や右腕の不具合もなかった。

 アインがやられてないからグレイズアインはないだろう、なんて甘く考えてた自分の失敗だけど、何ともなくてよかった。

 ……相変わらず、2Bと呼んでくれないけど。

 

 蒔苗氏が代表に返り咲いたことでハーフメタル利権の交渉も進み、革命の乙女クーデリアとその騎士鉄華団の名は世界に轟いた。

 

 これから、彼らの立場は目まぐるしく変わっていくことだろう。

 

「報告書は受け取った。想定したより手を借りたみてぇだなぁ。補給が必要なら言ってくれ」

「ありがとうございます」

 

 対面するマクマードさんの好意に礼を告げるけど、受けるつもりはない。

 一枚岩じゃないテイワズをトレミーに近づかせたら、どうなるかわからないからね。

 悪意をもった人間は分かるけど、悪意なく害をもたらす真の邪悪って存在もいる。

 近づかせないのが無難だろう。

 

「で、事の顛末は名瀬からも聞いてる。お前さんの望む、ハッピーエンドってのは迎えられそうか?」

「このまま上手く運べれば、というところかと」

「運べれば、ねぇ?」

 

 マクマードさんは面白そうにこちらを見る。

 

「まるで、鉄華団やクーデリアを手の平の上で操ってるみてぇに聞こえるな?」

「まさか」

 

 きっぱりと否定したけど、マクマードさんの表情は変わらない。

 

「ハーフメタルの件で、ノブリスとの会談が増えたんだがな。奴さん、お前の名前が出る度に顔を真っ青にしてたぜ? 死神にでも会ったようなツラしてよ」

「彼には、金や権力ではどうにもできないものがあることを思い知ってもらいました」

 

 当人から聞いたのか、さして驚くこともなくマクマードさんは言葉を続ける。

 

「……聞けば、奴さんの企みをほんの少し変えさせただけで、止めなかったそうじゃねえか。お前さんなら、労働者たちが行動を起こせばどれだけ死人が出るか……分かってたんだろ?」

「はい」

 

 躊躇いなく肯定すると、さすがに意外だったのか眉がピクリと反応する。

 

「体験してこそ言葉に重みが増す。心が折れそうになるのを乗り越えてこそ、芯は強く、太くなる。クーデリアの成長に必要だと思いましたから」

「底なしの善人かと思えば、必要であれば悪も許容する。……面白ぇじゃねえか。ベルティーナ・ビアンコ」

 

 その威容に迫力が増すけど、言葉や纏う空気は好意的なもの。

 

「で、これからどうする? 鉄華団と本格的に手を組むのか?」

「……いえ。しばらく単独で動こうと思っています」

「ほう?」

 

 原作通りなら、これから世界の変化が始まる。

 コロニーや圏外圏の独立の機運は高まり、イズナリオ・ファリドとアンリ・フリュウの癒着が発覚したことでギャラルホンへの信用、鉄華団の活躍によってその威信が低下し、治安の低下とテロ活動が活発化。

 鉄華団の活躍は少年兵とモビルスーツの有用性を知らしめ、海賊などの非合法組織のモビルスーツ保有数と、ヒューマンデブリは増加の一途を辿ることになる。

 

 そして何より……、

 

「何か、嫌な予感がするので」

「予感とは……また妙な言い方をするじゃねえか」

 

 これまで情報を混ぜて確信的な物言いをし過ぎていたせいか、どこか拍子抜けしたような表情をされたけど、こちらとしても苦笑するしかない。

 

「そうとしか、言いようがありませんから」

 

 

 




え!? GN空間でマッキーの説得を!?

出来らぁ!!


二期での発言を鑑みると、変われる可能性はあり、リボンズやサーシェスのように絶対に分かり合えない類の人物ではないと判断しました。

もちろんGN空間にマッキーとガエリオを突っ込めばいいわけではなく、
カルタ生存、アイン生存を成立させた上で、GN空間でガエリオが説得する必要がある、という感じです。

どちらかを死亡させていると、マッキーを理解しつつも「そんなことのために犠牲を強いるお前を、許すことはできない」とかなんとか言って、決別ルートに行きます。二期と似た感じ。

言い訳終わり!閉廷!以上!みんな解散!
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