エドモントンでの戦いから、二年の月日が流れた。
鉄華団はその戦いによって名を上げ、ハーフメタル利権を手土産にテイワズの直系団体へと昇格。
また、ギャラルホルン頼みだったアーブラウが、防衛力強化のために発足する正規軍の軍事顧問を鉄華団に任命したことで、彼らは地球支部を開設する。
混乱する情勢の中でその実績を買われ、同業者も羨む急成長企業となった。
一方、クーデリア・藍那・バーンスタインはテイワズと協力し、アーブラウ植民地域のハーフメタルの採掘、一次加工、輸送業務を行うフリージア商会を設立。
鉄華団やクロスレイズ商会と提携して、桜農園の敷地内に孤児院を設立し、社会的弱者への能動的支援と火星全土の経済的独立のため、奔走する日々を過ごしている。
彼らの地位向上と活動の順調さに反して、ギャラルホルンは社会的信用と権威を失い、世界の治安は悪化する結果となった。
テロ行為が頻発し、罪のない者が傷付いていく。
……しかし、大勢の予想に反し、鉄華団の活躍によって有用性が証明された少年兵は、目に見える程の増加は起こらなかった。
それどころか、ヒューマンデブリとして扱われる子供は逆に減少したとすら言われている。
それでも、力なき子供たちが搾取される社会は、未だに続いていた。
「今回の運送人員の名簿です。社長」
「ありがとう、フミタン。以前のように呼んでくれてもいいのよ?」
「いえ」
素っ気ない返事は以前と同じ。
しかしその表情は柔らかく、他人行儀ではなく自身の外聞を慮っての言葉であることを察して、クーデリアは頬を緩ませた。
「……今回も、彼女はタービンズや鉄華団に委託を?」
「……はい」
クーデリアの言う彼女とは、ベルティーナ・ビアンコである。
運送人員とは、彼女が保護してきたヒューマンデブリの少年たちのこと。
初めの数回こそ彼女自身が輸送して来たものの、火星近海の海賊を一掃した後は、より範囲を広げるためタービンズや鉄華団に輸送を委託していた。
「彼女には、フミタンのことも、元ヒューマンデブリの子供たちの保護のこと……それに、会社の融資のことも含めて改めてお礼を、と思ったのだけれど……」
「……」
フミタンも同意なのだろう。
壁に掛かる額縁の一つ……集合写真に写る少女に目を向けていた。
「やはり、怒っているのでしょうか。……誰も2Bと呼ばなかったから」
「それはないわ」
……ないわよね、と僅かな不安を覚えた時。
「社長っ」
入室した女性の慌てた様子に、クーデリアたちは気持ちを切り替える。
「どうしました、ククビータさん。アリウムさんがいらっしゃるには少し早いようですが……」
「そ、それが、これを……」
渡されたタブレットに表示されている文字に、クーデリアは言葉を失った。
――ギャラルホルンは、クロスレイズ商会を違法組織として認定。
それは、実質的な討伐宣言だった。
ほぼ同じ頃、その情報を眺めてほくそ笑む男がいた。
男の名をジャスレイ・ドノミコルス。自称テイワズ№2の人物である。
「クジャン家の坊ちゃんも、中々いい仕事するじゃないの」
目ざわりな名瀬・タービンは、鉄華団がもたらしたハーフメタル利権で若頭筆頭と目されるようになった。
さらには多数のエイハブ・リアクターをテイワズにもたらすことでその評価を固めつつあり、ジャスレイにとって面白くない状況が続いていた。
だから、彼は一つの手を打つことにした。
エイハブ・リアクターを供給している、クロスレイズ商会という輩を潰す。
子飼いの海賊を潰され目障りだったこともあるが、何より多数の海賊を潰しているという事実が重要だった。
今や、海賊から「死神」と呼ばれ、ヒューマンデブリを扱う海賊などの非合法組織を震撼させている存在だが、だからこそエドモントンの戦いによって権威を失ったギャラルホルンが、その力が健在であることを示す絶好の相手となる。
情報によれば、タービンズや鉄華団の戦闘員全員と渡り合うとも聞くが、所詮女子供が相手。
どれだけ強くとも、多勢に無勢で磨り潰せば問題ないだろう。
それこそギャラルホルンの真骨頂なのだから。
ジャスレイはそう考え、先代クジャン家当主の頃に使ったパイプを用いて現クジャン家へと連絡。クロスレイズ商会を狙うよう誘導した。
「しかし、ノブリスにも疎まれるとは、随分と恨みを買ってるみてぇだな」
海賊、夜明けの地平線団以上に神出鬼没と言われる某商会だが、拠点とする小惑星の位置をジャスレイに知らせたのはノブリス・ゴルドンだった。
それをクジャン家に教えた先の違法組織認定だ。
補給などを行わせないよう周囲との関わりを断ち、孤立させたところで確実に仕留める腹だろう。
今回の討伐が成功すれば、ジャスレイとクジャン家……アリアンロッド艦隊に所属するセブンスターズとのパイプ強化に繋がる。
そうなれば、タービンズを煮るも焼くもジャスレイの匙加減。
「せいぜいいい夢見てろよ名瀬ぇ。決して叶うことのない夢をよぉ」
ジャスレイにとって、障害となるのは名瀬・タービンただ一人。
タービンズの下でうろちょろと鬱陶しい新参の若造どもも、正面からぶつかれば吹き飛ぶような零細企業も、彼にとっては本命の前の前菜ですらない、下拵えの一つでしかなかった。
☆
「……そろそろか」
乗り込んだモビルスーツを戦闘態勢へ移行し、小惑星から距離をとる。
勿論その小惑星は拠点なんかじゃないし、トレミーも別の場所で待機中。
しばらく移動すると、展開しながら直進してくる艦隊を捉えた。
さらに進むと相手もようやくこちらを捉えたようで、通信が飛んでくる。
『私はアリアンロッド艦隊所属、イオク・クジャン! 違法組織であるクロスレイズ商会が有するモビルスーツ、並びに艦艇を接収する! 従わぬ場合、武力行使に移らせてもらう。賢明な判断を期待する!』
一方的な物言いにブリッジを狙撃したくなったけど、ここは我慢してこちらも通信を繋ぐ。
「こちら、クロスレイズ商会の2B。ギャラルホルンの通告は、一方的かつ正当性に欠けると判断し、拒否させてもらう」
『……その蛮勇に敬意を表し、我ら、ギャラルホルンの正義の力を示そう!』
その言葉を号令として、艦隊の各艦から光点が散らばり始める。
モビルスーツの展開が始まっても、戦闘距離にまで入るのは先の事。
あちらは言いたいことを言いきったようなので、今度はこちらが最後通告を告げる。
「まず、頭、手足のいずれかを破壊する」
『は?』
間抜けな声は無視。
「それでも戦闘行為を止めない者から完全に破壊する。以上」
通信を切り、深く息を吸う。
目を閉じると、まるで自分が宇宙に溶けたように感覚が広がっていく。
刺すように迫る敵意は敵モビルスーツのもの。
……大丈夫だ。
まだ、人がどうでもよくなるほど追い詰められてはいない。
この二年間、ヒューマンデブリを扱う組織と散々戦ってきた。
子供たちを使い捨ての道具やゴミのように扱いながら、自らは他者を差し出してでも命乞いをする醜い大人たち……。
その汚い心に曝されて、自分でもわかるくらい参ってたけど、まだ殺しを望むほど壊れてはいないことに安堵した。
目を開き、敵意を視ることなく見据える。
「使わないけど、ハロもつれてくればよかったかな」
今、私が乗っているのはサバーニャで、原作では二台のハロによって補佐されていた。
補佐がいらない自分でも、自動で動かして負担を減らすこともできるし、気分を和ませるという意味なら最高の相棒だ。
連れてこなかったのは、勿論焦ってたとかそんなんじゃなく、普段使っているクアンタの感覚で出撃したからだしね。
「……まぁ、いいか」
手に持つGNピストルビット二挺を残し、GNピストルビット、GNライフルビットⅡ、GNホルスタービットを展開。
「ロックオンに敬意を表して……、乱れ撃つ」
もうちょっとノッてくれよこの身体! って言いたいところだけど、まだ言えただけマシか……。
なんてことを考えながら、先に伝えた言葉に則り、まずは機体の一部を破壊。
それでも向かってくる者を破壊する。
飛来する砲撃は躱し、撃ち落とし、絶え間なく敵を墜としていく。
一機、また一機と仲間が撃墜される度に敵意、殺意、害意が膨らみ、その傍らで恐怖と悲嘆、絶望がじわじわと這い上がる。
次々と発艦してくるモビルスーツも意気揚々としていたが、それも三分の一が撃墜されると、次第に変化していった。
――こんなはずじゃなかった。
――どうしてこんなことに。
練度が違う。
士気が違う。
やっぱりアリアンロッドの兵士たちは海賊とは違った。
だけど、心が折れれば両者もほとんど変わらない。
刃向かう気力もなくなり、漂う機体を素通りして艦に向かう。
時折攻撃を仕掛けてくるのは、発狂した者か最後の勇気を振り絞った者。
後者の人間を殺すのは心にくるが、仕掛けられた戦闘に情けをかければ今後に響く。
淡々と処理しながら派遣艦隊の旗艦のブリッジに肉薄し、銃口を向けつつ通信を繋げる。
「まだやる?」
『き、貴様っ、私たちは悪に屈しない!』
艦内に向けて一撃を入れる。
ゲームであればこれで撃沈となるダメージが入るけど、現実ではダメージコントロールさえすれば航行は可能な損害だろう。
生身を銃で撃たれた時、貫通した方がむしろダメージが少ないとかそんな感じだ。
「次は沈める」
『わ、わたっ、私はぁっ……!』
『待って欲しい』
通信に通信を重ねて聞こえてきたのは大川ボイス。良い声だなぁ。
「アリアンロッド艦隊司令、ラスタル・エリオン公自ら何の用?」
『我が艦隊の負けだ。手を引いて欲しい』
「そうしたいのは山々だけど、イオク・クジャンは依然こちらに敵意を向けている」
『手出しはさせない。だから――』
「それがこいつを甘やかしているっていう自覚はある?」
返答を待たず、私は続ける。
「この男は、ここで引いてもこう考える。部下はこいつのせいで殺された。部下の仇は必ず討つ、と」
『何が違うというのか!!』
溜まらず叫んだイオクを黙らせるため、別の艦を沈める。
『なぁっ!?』
「お前の部下が死んだのは、お前が命じたからだ」
『な、ぐっ……!』
「ジャスレイ・ドノミコルスの言葉に踊らされ、自らの利益のために他者の罪をでっちあげ、武力行為に走った。お前の軽挙妄動が、お前の部下を殺した」
返答はない。
「そんな自覚すらないお前のような人間が指揮を執る地位にいれば、今後も同じことが繰り返される」
『……私が全責任をもって止める。改めて教育も施そう』
「これだけの失態を演じておきながら、切り捨てようとしないその物言いが全てを物語ってる」
『降伏する……!』
その言葉は、ラスタルではなくイオクの口から発せられた。
だが、そこに含まれている感情が私を逆なでする。
「こちらの言葉を理解したわけでもなく、エリオン公に失望されたくない、なんていう馬鹿げた自己愛に付き合うつもりはない」
『や、やめっやめてくれ! もう降参するから!』
「……」
『降伏する』
今度の降伏宣言はラスタルから発せられたものだった。
降伏した相手を打てば、原作でのこのクズと同じになってしまう。
それだけは絶対にご免だった。
「……降伏を認める」
『……助かる』
戦後処理……というわけじゃないけど、ラスタルと面会することになった。
場所は、私の持ち物でもなくギャラルホルンの領地でもないということで、ミレニアム島。
島の中央、水上に浮かぶ屋敷に足を運ぶと、既にラスタルの姿があった。
護衛なのか、その後ろには忠犬ちゃんと何故かイオクもいた。
「……随分と若いのだな」
「見た目通りの年齢ってわけじゃない」
「そうなのか? ……その目は?」
「普通に見えてる。この服も含めて、正装みたいなもの」
鉄華団とかタービンズの人たちにも何度か突っ込まれたけど、やっぱり2Bのゴシックドレスやハイサイブーツは奇異に映るらしい。
私は好きだけどね。見るのは。
「正装か。全身黒一色で、まるで喪服のように思えたが」
目の事をずけずけと聞いてきたり、恐らく挑発も兼ねてるんだろう。
でも、喪服っていうのも設定的には当たってるんだっけ。
「当たらずとも遠からず。下に着てるレオタードは白いし」
「……そう無防備に見せるものではない」
「下着じゃないから、別に構わない」
「それでもだ」
スカートのスリットをひらりと捲って見せると、さすがに意表を突かれたらしく、僅かに眉を顰めて目を閉じた。
白を見せるならロンググローブを見せればいいからわざとだったけど、煽り合戦はラスタルの途中棄権ってことでいいのかな? ざまぁ!
取り敢えず、と仕切り直すように言って、
「降伏を認めてくれたこと、感謝する」
一度頭を下げたラスタルだけど、しかし、と言葉を続けた。
「確かに、今回のことが一部の暴走によって引き起こされたことは紛れもない事実だ。だが、君のような存在が野放しであることは、一般市民にとって恐怖となることは自覚してほしいな?」
「それはあなた方にこそふさわしい評価では?」
背後の二人が纏う空気が剣呑なものとなるが、完全に無視。
「防衛力、抑止力となるどころか、一部の暴走で簡単に市民を害し、暴力で支配しようとする。文民統制はもとより、自浄能力もない……圧倒的多数の、暴力による恐怖によって支配してきたギャラルホルンが言えることじゃない」
「耳の痛い話だな」
こちらの言い分を認めつつ、しかしラスタルは不敵に笑った。
「それだけ我々のことを把握しながら、よく一人で来たな? 豪胆というには、君から覇気のようなものは感じないが……」
「ああ……。それは、敵じゃないから」
意味が分からない、と眉を顰めるラスタルから視線を外し、忠犬ちゃんに視線を向ける。
「護衛だと思うけど……ジュリエッタ・ジュリス。銃は持っている?」
「っ……、持っていますが、私をご存じなのですか?」
「傭兵に拾われ、その傭兵の推薦でエリオン公の下に配属された女性はアリアンロッド艦隊の有名人では? 取り敢えず、その銃を私に撃ってみて」
混乱の極みで目を瞬かせるばかりの忠犬ちゃんに代わり、ラスタルが問いかける。
「何がしたい?」
「ちょっとした証明。私を殺せば、乗って来たモビルスーツは奪える。起動できるかはわからないけど」
こちらの真意を探るように見据えていたラスタルは、しばらくそうしていた後埒が明かないと判断したんだろう。
貸してみろというラスタルの命令に、困惑を多分に含むジュリエッタから銃を渡された彼は、そのままこちらに銃口を向け……引き金を引いた。
「なっ……!」
三者三様の驚く声を上げた三人に見えるよう、ラスタルの前につかみ取った銃弾を転がす。
「ば、馬鹿な……」
バカに言われたくはないが、馬鹿げていることは私も認める。
2Bとしての身体能力もあるだろうけど、たぶんゴッドガンダムに乗れる=ドモンと同じことができる。
ドモンよりステータスが高い=ドモンを上回る動きができる、という感じでゲームの能力が反映されたんだと思う。
サブマシンガンどころかミニガンだって全弾止められるんじゃないかな。
「モビルスーツを無力化するのも、あなた方を無力化するのも、私にとっては同じこと」
すごいよね、ガンダムファイターって。
しばらく呆けていた三人だが、ようやく頭が状況を理解したのかそれぞれ異なった反応を示す。
ラスタルは笑いだし、忠犬ちゃんは笑いだした飼い主におろおろと狼狽えはじめ、クズは腰を抜かしてへたりこむ。
「なるほど。我々は最初からケンカを売る相手を間違えていたわけだ」
「ご理解いただけたのでしたら幸いです」
相手がこちらの力を正しく認識したところで、敢えて慇懃に振る舞ったり……そんな他愛のない牽制から始まった会談は、戦後処理らしくいくつかの決まり事を決めていく。
まず、違法組織の認定を解除し、その過失を認め謝罪を公開する。(前半は既に処置済み)
次いでクロスレイズ商会のギャラルホルンが有する航路、共同港の使用を許可する。
敵対行為の禁止等々。
完全にこちらに有利な内容だけど、一方的な勝利だったからこんなものだろう。
まぁどれも今まで勝手にやってきたことだし、公に認められたってこと以外は今までと変わらないようなもんだ。
「……我々が大敗したという結果を除けば、損失など無いようなものだが……」
「不満が?」
「不満というより、分からない。こんなもので君は満足なのか?」
「そもそも、こちらとしては売られたケンカを買っただけ」
とはいえ、望みがないわけでもない。
「なら、内容を一つ加える」
「聞こう」
ラスタルの促す言葉に頷きを返し、告げる。
「火星全土でMAの調査を行って」
意味を理解したラスタルの態度が引き締まる。
「……火星に埋まっていると?」
「それを調べるためだけど……十中八九」
「……ハーフメタルか」
「そう」
既に枯渇していたと考えられていたハーフメタルが大量に見つかった。
ハーフメタル含有量の多い土地はリアクターから発する反応を減衰するため、発見が困難になる。
今回見つかったハーフメタル資源の採掘地を調べれば、未発見のMAが見つかるかもしれない……という建前。
当然ながら原作での被害を抑えるのが本当の目的だ。
「発見した場合、私が倒す」
「……君ならできると?」
「そのために私がいる。……というのは冗談でも、少なくとも、ダインスレイブを放つよりは確実だと思う」
ダインスレイブは絶大な威力を誇るが、MAに対して効果的な損害を与えることはできなかったという設定がある。
実際に使われた描写はなかったけど、ナノラミネートアーマーにビームが効かない設定はしっかり描写されてたし、モビルスーツを感知するのと同じように察知して回避するのかもしれない。
「万が一休眠状態でも、エイハブ・リアクターを近づかせなければ活動させることはない……なんて、改めて言うまでもないと思うけど」
「……ああ」
無駄話はこれくらいにして、講和会議(?)は終了。
お暇を……というところで思い出した情報をタブレットに表示させ、ラスタルへと渡す。
「……これは」
「ジャスレイ・ドノミコルス、並びにJPTトラストの内部資料」
「内部資料、というには些か物騒な内容だが?」
言いながら、その顔には獰猛な笑みが浮かんでいる。
「足りるとは思わないけど、ギャラルホルンの力を示す足しにはなると思う。まぁご自由に」
「なるほど。ありがたく受け取っておこう」
ところで、とラスタルは続けた。
「あの小惑星、本当に君の基地だったのかね?」
元々疑ってたところに、今回の情報提供で確信したのかな?
まぁバレたところで全く問題はないから、私は投げかけられた問いに快く答える。
「まさか」
本当に作るとしたら、クアンタの量子ワープでの移動が前提の、誰も来ないような場所だろうなぁ。
☆
少女が去っていった後も、ラスタルたちはその場に留まっていた。
というより、ラスタルが何かを考えこんでいるため、他の二人が動くに動けなかった、というのが正しい。
「ラスタル様?」
「……ガンダム・フレームのうち、エイハブ・ウェーブの反応を隠す機能を持った機体は、三機あったと言われている」
「彼女の操る機体はそのうちのいずれか、ということですか?」
ジュリエッタの問いかけに、ラスタルは答えない。
というよりも、答えられないというのが正しいだろう。
今までに得た情報をまとめると、少なくとも二機……先の戦闘で猛威を振るった緑色の機体と、エドモントンの戦いで現れた青色の機体が確認されている。
ガンダムフレームの特性を考慮すると、外装を変えた一機とも考えられるが、恐らく近接主体の青と射撃主体の緑という両極端な特性の機体を扱うのに、外装の変更だけで済むとは考えにくい。
一機しか無いと考えるよりも、二機有ると考えておくべきだろう。
そして、例え二機だったとしても、あれだけの出力や殲滅力を持つ機体が厄祭戦時代に存在していたのであれば、少なからず情報は残っているはずだ。
それが無いのであれば、新しく開発された機体ということになるが……そんな情報は噂でさえ耳にした覚えはない。
ギャラルホルンだけでなく、火星や木星のいずれの組織にも一切関知されずにそんなものを作れるかと言われれば、不可能に近い、としか言えない。
「わからん」
結局そうとしか言えず、冗談めかした言葉を続け得る。
「三機のうちの一機、グラシャ=ラボラスはその名の原典に曰く、乗用として仕える主がいる。その名をネビロス」
「ネビロス……ですか」
「うむ。その悪魔は、未来を予見することに長けているという」
その文言に、全てを語らずともジュリエッタは意図を理解する。
先の戦闘記録を見た際に感じた、まるで未来を予想しているかのような動きの数々。そして、先の言葉通り火星でMAが発見されたら……。
悪魔の名を冠するであろう鋼の巨人に乗る者と、異常な能力を持つ少女と講和を結んだ者。
「――悪魔と契約したのは、誰なのだろうな?」
振り向き、笑みを浮かべて言うラスタルの言葉に、二人は知らず冷や汗をかいていた。
Q.なんかイオクにだけきつくない?
A.アニメを見て思うところがあったのもあるけど、それ以上にそれまでの海賊狩りで心が荒んでたのが原因。
当然ですが、最後のガンダム・フレームのくだりは全て捏造です。
ゴエティアに姿を消せたり透明にしたりできる悪魔が3人いたので、それだけです。