採掘現場の視察は、ギャラルホルンの調査に伴い予定日を遅らせるかもしれない。
その旨を各代表に送った数週間後、オルガの姿はクリュセの議事堂にあった。
しかし、区議でもない彼が座るのはもちろん本会議場ではなく、委員会の話し合い等が行われる委員室の一席。
そして彼を含む全員の視線は、前に立つ一人の男性に注がれていた。
「急な話にも関わらず、お集りいただき恐縮に思う。私は、ラスタル・エリオン。月外縁軌道統制統合艦隊司令だ」
火星支部ではなく、圏外圏統制統合艦隊の長であることに動揺する面々に、しかしラスタルは全くと言っていいほど感情を変えずに言葉を続ける。
「本会議は事前に通達した通り、火星全土での発掘調査を円滑に行うためのものだが、改めて、この調査が各々の権利を損なうものではないことを明言しておこう」
司令自ら発した言葉が、容易く覆されることはないだろう。
参加した者たちの弛緩を認め、ラスタルは座り部下へと詳細の説明を引き継いだ。
地球のおよそ半分の大きさとはいえ、火星は広い。
一か所ずつ調査しては埒が明かないため、複数箇所を同時に執り行うことになる。
その日程調整や、注意事項を一通り説明した後、ラスタルの部下は改めて参加者の面々に視線を向けた。
「質疑応答に移りたいと思うが」
「エイハブ・リアクターの持ち込み、接近を禁ずるとありますが、警備等は考慮しなくてもよろしいので……?」
「調査中は、直上宙域に艦を待機させ、宙域に接近するものがあれば迎撃、地上であれば部隊を降下させて防衛に当たらせる」
それは、占拠されているのと同じでは?
そんな不安を抱いたのか、表情が優れない者もいた。
彼らの不安を感じ取り、手を挙げたのはオルガだった。
「お気遣いいただくのはありがたいんですが、ここは見つからなかった場合じゃなくて、見つかった場合を考慮して説明しておくべきじゃないんですかね」
やはりどこかチンピラじみている物言いだったが、ラスタルは「ほう」と面白そうに声を漏らした。
チラ、と視線を向けた部下に頷きを返し、ギャラルホルンの懸念していることを説明させることにした。
「今回の調査は、新たに見つかったハーフメタルによって阻害され、これまで見つけられなかったMAを早期に発見、その再起動を防ぐためのものだ」
「モビル、アーマー……?」
やはり先日の鉄華団同様聞いたことがなかったのか、そんな声を漏らす者たちに、詳らかにとはいかずとも、その脅威となる存在を説明する。
ある者は恐怖し、ある者は理解が及ばず困惑する中で、ラスタルは告げる。
「言っておくが、MAは利用するとかしないとかいう程度の存在ではない。火星の人間もギャラルホルンも関係なく、ただ人間を殺すだけの機械。それがMAだ」
それは自戒の言葉であり、同時に他を自重させるための言葉でもあった。
「MAは、エイハブ・ウェーブの反応によって再起動する可能性がある。よって、先に述べた布陣は調査範囲の警戒を厳とし、エイハブ・リアクター搭載機が接近することを防ぐためのものである」
MAの脅威度に関しては理解が及ばなかったものの、理由を知れたことで参加者たちも幾らかの落ち着きを得る。
その後、各々の日程などの調整も兼ねた休憩を挟み、改めて日程を詰めて会議は終了。
「鉄華団の代表、オルガ・イツカだったね」
退出しようとして呼びかけられたオルガが振り向くと、そこには近づいてくるラスタルの姿があった。
「アリアンロッドの司令に名前を覚えてもらえるとは、光栄ですね」
「そう警戒しなくていい。エドモントンと、そこに至るまでの経緯は聞いているが、私は君たちに思うところはない」
「それを信じろと?」
ギャラルホルンが一枚岩でないことは既に知っているし、ベルティーナにも裏は取ってある。
警戒しつつ、しかし敵意は含まずに疑うオルガに対し、ラスタルは苦笑する。
「もし、君たちを倒すことでギャラルホルンの権威が戻るのであれば話は違ったかもしれないが、君たちの行いはなんら世間に悖ることのない行動だった。これを自らの都合で否定し、潰そうとすれば、我々は平和と秩序の番人とは名乗れなくなる」
僅かに警戒心を解いたオルガだが、罪をでっちあげてでも潰そうとするのが汚く狡賢い大人であり、ギャラルホルンだ。
そんな彼の意思を感じ取ったのかは定かではないが、ラスタルは自嘲気味に加えた。
「最近、部下がそれを蔑ろにして痛い目を見たばかりだ。軽々なことはできんさ」
「……そうですか」
親父から聞いていた、ベルティーナが蹂躙したという話だろうか。
確証もなく、無駄に藪を突くことはないと流そうとしたオルガだったが、ラスタルはむしろそれを意外に思った。
「ベルティーナから聞いていなかったのか? 君たちは、何かと結びつきの強い関係だと思っていたが」
「……確かにうちにとっては身内みたいなもんですがね。アイツが何をしてるかなんて、一から十まで知ってるわけじゃありませんよ」
むしろ十あるうちの一つくらいしか知らないのでは? とすら思える。
だが、それでも鉄華団にとって身内のようなものであることには変わりない。
何かと頼りっぱなしで、恩を返せているのかもわからないような関係なのは歯痒いが。
「……ふむ。では、君たちも彼女がどこの誰であるかわからない、か」
「地球圏の人間じゃないのか?」
カマをかけられただけかもしれない。
思わず口にしてから、オルガは顔を顰めた。
それは敬語を忘れてしまったことではなく、勝手に他人の情報を与えるような真似をしてしまったからだ。
「聞かなかったことにしてくれ」
「彼女がそう言っていたのか?」
「忘れてくれ。アイツには返しきれない恩義があるんだ。一度敵対したあんたらに、勝手に情報を与えたくない」
「ふむ……それも道理か。わかった。忘れよう」
受け入れつつ、鉄華団は恩義や情を優先するという情報は正しいようだ、と確認したラスタルは、別れの言葉を告げて踵を返した。
オルガと話し合ったクーデリアは、視察を予定通りに行うことを決定した。
これは何を仕掛けてこようと鉄華団であれば防げるという信頼でもあり、またギャラルホルンが展開している火星にモビルスーツなどで襲撃してくる可能性は低いだろう、と予想によるものでもあった。
だが、非合法組織……それも大きな組織であればあるほど、その矜持は高いもの。
ギャラルホルンなど何するものぞと言わんばかりに(しかし、しっかり展開されている宙域は避けて)、鉄華団の本部をモビルワーカーやモビルスーツが襲撃した。
原作とは違いバルバトスが万全だったこともあり、無事に撃退した鉄華団だったが、襲撃者の名前を聞いては喜んでばかりもいられなくなる。
夜明けの地平線団。
地球火星間の航路を主な活動区域とする宇宙海賊であり、構成員3000人、10隻の艦と多数のMSを有する大組織である。
その大所帯からは考えられないほど神出鬼没で、それは野放しにできないはずのギャラルホルンも頭を悩ませるほどと言われている。
そんな海賊が相手でも、鉄華団は対処するしかない。
この世は未だ、弱い者が強い者に一方的に搾取される理不尽が罷り通る世界だ。
ここで下手に泣き寝入りをしようものなら、今後も同じような事態を招きかねない。
ベルティーナにも参戦してもらうべきか。
そんな意見が出る中で、彼らに一報が届けられる。
内容は、アリアンロッド艦隊の参戦要請。
先の襲撃で舐められたのは、彼らもまた同じだった。
結果として、調査を続けるために残すものを除外した艦隊と鉄華団で、夜明けの地平線団と戦うこととなった。
全ての艦隊が赴けば、いかにプライドが高くとも逃げの一手を打っただろう。
しかし、敵の数が自身の保有する艦の半分にも満たないと知った夜明けの地平線団は、戦いを選ぶ。
機関を停止した艦を曳こうすることで総数を欺瞞した夜明けの地平線団だったが、アリアドネによって複数の航路を持つギャラルホルンは、別動隊が大きく迂回しながら戦場に接近。
援軍を呼ばれてはさすがに敵わないと短期決戦を挑んだはずが、時間差で現れた艦隊によって包囲され、逃げ場を失った夜明けの地平線団は壊滅した。
早い者勝ちとなっていた戦果も、団長サンドバル・ロイターの乗るユーゴーをバルバトスが仕留めたことで、鉄華団はその実力を改めて示す形となった。
航路の安全を確保したことと、ギャラルホルンに対し力を示したこと。
それらの功績により、テイワズのハーフメタル採掘権は鉄華団のしのぎとなる。
アリウム・ギョウジャンは犯罪幇助の罪でギャラルホルンによって拘束され、テラ・リベリオニスは解体。
ここに、クーデリア襲撃に伴う一連の騒動は決着を見た。
――そう、誰もが思っていた。
「あれが、モビルアーマー……」
それは誰の呟きだったのか。
人々の見下ろす先には、まだ半分ほど埋まった機体の姿があった。
「……本当に見つかるとはな」
直上の宙域に待機させた艦の中で、モニターに映し出された姿を視ながらラスタルが唸る。
装甲や色は劣化が見られるが、間違いなく伝え聞くMAの一種である【ハシュマル】だろう。
「……もっと、禍々しいものかと思っていました」
どこか拍子抜けしたようなジュリエッタの呟きに、ラスタルは笑う。
「恐ろしい見た目をしたものや、逆に美しいとすら思えるものもあったらしいがな。何の変哲もないからと言って、侮っていいものではないぞ」
「……はい。軽率な発言でした」
「畏まる場でもない。構わんさ」
わかりやすく朗らかに告げたのは、彼女が若干顔を青ざめていたからだ。
そんな反応をしたのは、軽率な発言とやらでラスタルの不興を買ってしまったこと……ではなく、見た目で侮ってはいけない存在……一人の少女を思いだしただろうことが、ラスタルには容易に想像できた。
「起動はしていないが、彼女に連絡しておいた方がよかろう」
どこかで見ていても驚かんがな、と自嘲気味に粗って、ラスタルは部下に指示を出した。
「司令、通信です」
「早いな。ベルティーナ・ビアンコか?」
「いえ、これは――」
「接近するエイハブ・ウェーブの反応!」
専用回線ではなく、宙域全てに送信する通常回線。
そう告げるよりも早く声を上げたのは、別のオペレーターだった。
ベルティーナであれば、エイハブ・リアクターの反応は感知されないはず。
では、存在を隠そうともせず近づいてくるのは何者だ?
可能性を探りつつ、ラスタルはオペレーターへと命じる。
「通信を繋げ」
モニターを見据えるラスタルの目に映ったのは、ケツアゴの男。
『やぁやぁ、ご健勝そうでなによりですよ、アリアンロッドの大将』
「雲隠れしていたと聞いたが、自首をしにでも来たのかね? ジャスレイ・ドノミコルス」
ラスタルは訝しむ胸中を隠し、お道化て返す。
乱れた髪に、伸ばしっぱなしの無精ひげは、かつての自尊心の高さが窺えた風貌からはかけ離れている。
なにより、その目はどこか虚ろで、隈のように落ち窪んで見える様は、まるで狂気に取りつかれているようではないか。
『それもいいかと思いましてねぇ。わざわざ足を運ばせるのも忍びねえってんで、こっちから出向いたわけです』
「ならば停船したまえ」
言いながら、チラ、と視線を向けられた副官は、小さく頷くこともなく無言で周囲に伝令。
展開されているモビルスーツ隊は迎撃態勢へ、格納庫で待機している部隊も出撃態勢に移行する。
その間も、ジャスレイの乗る戦艦、黄金のジャスレイ号は真っ直ぐにラスタルの乗る旗艦との距離を詰めてくる。
捨て鉢の特攻か?
そんなものに構ってはいられないと、ラスタルは告げる。
「最終通告だ。停船しない場合、攻撃を開始する」
『そりゃあ……お優しいこって!!』
言い放つと同時に響く警報が、ジャスレイ号が攻撃してきたことを教えた。
ナパーム弾とて、こうも遠ければ迎撃は容易い。スモーク弾だとしても、一隻、それも遠距離であれば目視できない程度で戦況は変わらない。
「モビルスーツ隊出撃。焦らず迎撃せよ」
直後、弾頭同士のぶつかり合う僅かな閃光の後に、紫煙の幕が広がる。
スモーク弾。
視認性をゼロとすることで、正確な位置や次の行動の認識を一歩遅らせる兵装だが、十分な距離がある上に包囲している現状では、最低限の効果しか望めない。
「エイハブ・リアクターの反応、増加! モビルスーツです!」
「モビルスーツ隊に迎撃に当たらせろ。各艦の援護射撃に当たるなよ」
煙幕の中から飛び出してくる敵モビルスーツに、攻撃が殺到する。
飛び出す位置などを工夫して出現位置を誤魔化してはいるが、多勢に無勢。
元々戦力差は歴然だったが、その数は情報よりも少ない。
「……離反されたか、或いは――」
「新たなエイハブ・リアクターの反応を確認! 直上です!」
伏兵か、と呟くよりも早く、あちらから姿を現した。
「慌てる必要はない。二番艦、三番艦に迎撃に当たらせろ。残りは敵艦の排除だ」
考えてはいるようだが、機に逸った手数の少ない奇襲など、単なる戦力の逐次投入に過ぎない。
破れかぶれの特攻ではこの程度か、と冷めた目で煙幕を見据えるラスタルは、
「なっ」
姿を見せた敵艦の位置に、目を見開いた。
その名の如く黄色く染められた戦艦が現れたのは、煙幕の下方。
その先にあるのは、ギャラルホルンの艦ではなく……惑星。
「艦を火星に落とす気かッ……! 砲撃を集中させろ!」
戦艦にも、当然エイハブ・リアクターは使われている。
まさか、特攻は特攻でも、MAを起動させるためのもの……自身の手で相手を討つのではなく、MAによって討たせるつもりだったのか。
自身どころか、無関係の者までもを巻き込む殺意……それこそが、あの狂気の源だったのだろう。
「敵艦、爆発を確認!」
「……駄目です! 止まりません!」
持ってきていたダインスレイブ……は今更出撃させても間に合わず、何より戦艦ほどの質量では破壊することはできても止めることはできない。
「至急地上に通達せよ! MAが――」
『目標進路の直線上にある機体は、至急退避を』
ラスタルの言葉に割り込んできたのは、少女の声だった。
ジャスレイは、モニターいっぱいに広がる赤茶けた大地に、血走った眼を向けながら叫んでいた。
「どいつもこいつも! 碌に頭の使えねぇ猿が、俺様の邪魔ばっかしやがってよォ!!」
イオク・クジャンはクロスレイズ商会の捕縛に失敗したどころか、ジャスレイを偽計業務妨害で告発し、犯罪者の汚名を着せた。
結果、従ってきた部下は大半が逃げ、表の業務もままならない。
「あのクソジジイも!! 今までさんざんいい思いしてきたのは、誰のおかげだと思ってやがる!!」
自身を庇うどころか、言いたいことを言うだけ言って杯を割ったマクマードへの怨嗟は止まらない。
「……でもなぁ、どうせ死ぬならてめぇらまとめてあの世逝きだァ!!」
爆発で艦が激しく揺れようと、破片が身体に刺さろうと、ぶつかった拍子で血が吹き出ようと、狂気で爛々と輝く眼差しは真っ直ぐ……ただ真っすぐに火星を目指す。
「ヒヒッ、名瀬の野郎、可愛がってた子分がおっ死んだらどうするかねぇ? 鼠共の死骸の前で無力さに打ちひしがれるてめぇを見れねぇのは残念でしかたねぇぜーー名瀬ぇ!!」
ことここに至って尚、ジャスレイは自身が害しようとしている鉄華団ではなく、自身を脅かす存在だった名瀬タービンのことしか見えていなかった。
そんな、狂気と血で真っ赤に染まった彼の視界は、
「ヒヒヒ――ヒぁッ?」
光の奔流で満たされた。
光が霧散し、露わとなった戦艦の残滓が火星に向かう勢いは既になく、ただその無残な姿を宙に漂わせていた。
光を発していた青い機体は、手にしていた巨大な剣をバラバラにしたかと思うと肩に組み替え、ただその場に佇んでいる。
以前見た緑色の機体も同様だが、まるで自ら意思をもって動いているようなパーツは一体どうなっているのだろうか。
「……礼を言う、ベルティーナ・ビアンコ」
『MAは人類全体の問題だから、感謝はいらない』
「違いない」
先程、間違いなく戦艦は火星に落ちると確信した時、感じたのは自らの失態や今後への影響、火星で調査している部下たちの命ではなく、ただ純粋に、火星の人々や、その生活への影響を考えていた。
まだ自分にもこんな純粋な善性があったのかと自嘲し、しかしそれを不快に思わないことを自覚して、ラスタルは自然とベルティーナに対し目礼していた。
『っ』
繋がっている通信で聞こえたのは、声にならない、ようやく拾えた程度の息を飲む音。
「どうした?」
「別動隊から通信!」
そうオペレーターが言うのとほぼ同時、
「何!?」
動揺の声を上げたラスタルの視線には、地表から宇宙空間を突き抜ける光――ビームの光跡が捉えられていた。
それも一つではない。
二、三……そして四。
「何があった!」
「ほ、報告によれば、別動隊直下の索敵範囲に、接近するエイハブ・リアクターの反応を確認。その後モビルスーツによる迎撃を行い……」
「続けろ」
「追撃戦に移行。その交戦中……調査開始前の地域に突入したところ、先程の攻撃を受けた、とあります」
これは、運が悪いと言えばいいのだろうか。
迎撃時に撃墜できなかったこと、不用意な追撃を仕掛けたこと、そして不用意に未調査の地域に近づいたこと。
運が悪い、では済まされないミスの連続だが、そこにMAが埋まっていたのは運が悪いとしか言いようがない。
「全艦、並びに火星各所に、MA起動後のプランに移行と通達せよ! ……あちらの指揮はイオクだったな。重ねて撤退命令を出せ」
「は!」
オペレーターが指示を通達し、
「……は?」
直後、困惑の声を漏らした。
「どうした」
「イオク・クジャン公は迎撃のため、レギンレイズで出撃……MAの起動と同時に行方がわからなくなったそうです……」
「……構わん。艦長にプラン通り行動するよう通達しろ!」
捨て置ける者ではないが、かかずらってはいられない。
振り払うように言い切って、直下のMAに対処を――と意識を切り替えようとしたラスタルの耳朶を叩いたのは少女の声。
『回避して!』
直後、爆炎がモニターに閃く。
「四番艦、五番艦、轟沈!」
「攻撃は――下!? か、火星! MAからの攻撃です!」
「なんだと!?」
「追撃、来ます!!」
モニターを見れば、MAは依然その半身を地に埋めながら、頭上に向けた頭部を画面の正面に向け――、
「全速! 回避しろ!!」
光を放つ。
間に合わない。
誰もがそう思い……しかし、変化は何も起こらなかった。
「!」
見れば、光は何かの膜に遮られている。
それを構成しているのは、青い機体の浮遊するパーツだ。
『このまま目標の破壊行動に入る』
青い機体は降下していき、MAのビームが消えると同時に膜を構成していたパーツもそれに追随する。
「速い……」
誰かの呟きが言い終わる頃には、既に青い機体は降下を済ませていた。