寝落ちでクロス   作:浅草一丁目

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初コンタクト

 最後の最後にケチが付いたものの、クランク・ゼントとの決闘に勝利した鉄華団。

 だが、その門出は華やかとは縁遠いもので、活動資金の確保でさえ覚束ない状態だった。

 

 そんな状況を打破するための一手が、クーデリア・藍那・バーンスタインの護衛。

 彼女からの申し出で、CGSから引き続きその依頼を請け負うこととなった鉄華団だが、ギャラルホルンに睨まれている現状、正規の航路が使えないこと等考えなければならない事柄は多い。

 

 そんな中、一つの知らせが彼らの下に届く。

 

「クロスレイズ商会?」

 

 聞いたことあるか? と鉄華団の団長、オルガ・イツカが参謀であるビスケットに目を向けるが、彼もまた首を横に振って否定を示した。

 

「で、その無名の商会がなんだって?」

「その……、これを」

 

 主計である男性、デクスター・キュラスターが差し出したタブレットに目を通すと、オルガは自分の目を疑った。

 

「こいつは正気か?」

 

 回し見するよう渡されたタブレットを受け取ったユージンも、また同じような感想を抱いた。

 

「鉄華団の買収、お嬢さんの護衛依頼の引き継ぎ……こいつはケンカ売ってんのか?」

「ば、買収金額についてはこちらの言い値でいいと言っていますし、所属している団員も全員引き継ぐと……」

「あ、怪しすぎる……」

 

 ビスケットの引き攣った呟きに、反論の声は挙がらなかった。

 

「トドは?」

「オルクス商会と話を詰めるって言って、まだ戻ってきてねえよ」

 

 そのオルクス商会との繋ぎといい、オルガたちにはない知識やコネを持つ男だ。一応聞いてみたかったが、あちらに集中させた方がマシか。

 あるいは、いない方が好都合かもしれない。

 

「……話だけは聞いてみるか」

「正気かよオルガ!」

「ああ。これだけじゃ狙いがわからねえ。こっちの懐事情を知ってたとしても、断られることが分かりきってる提案をするか?」

「何か他に狙いがあるってこと?」

 

 それを確かめんのさ、とオルガが端末を操作すると、すぐに反応が返ってきた。

 タブレットと壁に備わる端末を繋げ、モニターに対面するように座るのと、

 

『初めまして、鉄華団の皆さん』

 

 その声が届いたのは同時だった。

 若い女の声。

 だが、妙に落ち着きがあるとオルガは感じた。

 

『私は2B。クロスレイズ商会の代表をしている』

 

 トゥービー?

 妙な名前に意識を引っ張られそうになったオルガだが、仮にもここは交渉の場。

 相手に主導権を渡すのも面白くないと、そのまま流して話を進める。

 

「俺が鉄華団の代表、オルガ・イツカだ。あんたからの提案は見せてもらった。で、聞きたいんだが……あれはどういうつもりだ?」

『どう、とは?』

 

 本当にわからない、という風な声に、オルガは眉を顰める。

 

「あんたが何を考えてるかわからねぇって言ってんだ」

『何を考えて、ですか』

「そうだ。なぜ鉄華団を買収しようとする」

 

 前社長が持ち出したせいか、資金はほとんど残っておらず、施設とその土地に大した価値はない。

 所属している人間を全員引き継ぐと言っているからには、バルバトスや阿頼耶識の施された子供、そしてヒューマンデブリが目的か?

 そんなオルガの予想に反して、2Bは言う。

 

『その方が、運営するのが楽だから』

「は?」

『買収されるのが嫌なら、資金援助という形で構わない』

「待て。待ってくれ!」

 

 何もわからないどころか、わからないことが増えて、オルガは堪らず制止の声を上げる。

 

「ますます訳が分からねえ。そんなことをして、あんたに何のメリットがある。何が目的だ」

『メリットは、自己満足を満たせる。目的は……あなたたちに潰れて欲しくない。それでは納得できない?』

 

 鉄華団の面々は絶句していた。

 自己満足で資金援助する? 鉄華団に潰れて欲しくない?

 善人……善意のつもり、なのだろうか。それを信じろと?

 

「……すまねえが、その話は受けられる程、あんたを信用できない。できる根拠がない。お嬢さん……バーンスタイン嬢の件もだ」

『……あなたたちの考えもわかる』

 

 拒否の言葉に帰ってきたのは、それを受け入れる旨の言葉。

 これで良かった、はずだ。

 困惑のただ中にあるオルガは、続く言葉に声を疑った。

 

『なら、信用してもらえるよう努力する』

「は? あんた、何を言って……」

『近々、あなたたちは危険に晒される。その時、求められれば力を貸す』

 

 そう言って送られてきたのは、通信回線の暗号コード。

 

『今回は急な話にも関わらず、応えてくださりありがとうございました。鉄華団の益々のご発展をお祈り申し上げます』

 

 格式ばった別れの挨拶を告げ、通話を切ろうとする2Bは、

 

「ちょっと待ってくんない?」

 

 三日月の声にその手を止めた。

 

「信用して欲しいなら、まず顔を見せてよ」

 

 その言葉通り、鉄華団は全員カメラを通じて顔を見せていたのに対し、2Bとして表示されているのはサウンドオンリーの文字……音声のみでの通信だった。

 特に珍しいことではないが、やはり初対面から顔を見せないというのは心証が良くなるはずもない。

 

『なるほど。確かに失礼だった』

 

 映し出された映像に、またもオルガたちは困惑する。

 

『改めて。クロスレイズ商会の代表、ベルティーナ・ビアンコ。略して2B。お見知りおきを』

 

 シルバーブロンドのやらかそうなショートボブ。言葉を紡ぐ口や、その輪郭や肌、顔を構成しているパーツ一つ一つが、まるで作り物のように整っていた。

 しかし、彼らが困惑したのは、その見目の良さではない。

 

 いや、他があまりにも整っているからこそ、というべきか。

 少女の目元が黒い布で覆われ、窺い知ることができないその様が、あまりにも異様だった。

 

 

 ☆

 

 

 通信が終わり、俺は崩れ落ちた。

 

「断られた……」

 

 というか、交渉なんて素人にできるわけないじゃん!

 しかも近々危険にーって、なんでそんなことわかるんだよって話だよね。

 信用を得るどころか、逆に疑われるようなことしてない?

 

「スメラギさんがいてくれたら……」

 

 的確な予報で導いてくれたかもしれないのに!

 彼女は私の母になってくれるかもしれなかったオギャー!

 

「……やっぱり人員は必要」

 

 艦の操作、整備はハロで問題ないけど、世界に関わるとなれば交渉やら何やらに強い人は欲しい。

 でも、この艦や機体の性質上、下手に人間を関わらせることができないってのがネックなんだよね……。

 

「なんとかしないと……」

 

 ロジャー・スミスとかいないかな。いても駄目? そう……。(控えめな同意)

 

 

 ☆

 

 

 それから数日後。

 

「これが、あいつの言ってた危険ってやつか……?」

 

 オルガの脳裏に過ったのは、目元の見えない少女の顔。

 

 イサリビの艦長席で、彼は思案する。

 後方からは、こちらを騙しギャラルホルンに売ったオルクス商会の船が、攻撃しながら迫っている。

 三日月はバルバトスに乗り、ギャラルホルンの機体を引き付けてくれているが、万全とは言えない整備に初の宇宙空間戦闘で、こちらにまで気を回させるわけにはいかない。

 

「おい! なんでその船がここにいる!? 静止軌道で合流だったはずだ!」

 

 裏切りが発覚したことで、顔を青あざや打撲で腫らしながら喚くトド。

 

「これまでにお前が信用に足る仕事をしたことがあったか?」

「おぉっ!?」

 

 CGS時代、一軍の後を金魚の糞のようにくっつき威張り散らしていた男。そのくせ、一軍の中でも何でも叱責を受ける姿を、鉄華団の誰もが目撃していた。

 鉄華団に残ると言っても端から信用はしていなかったが、ここにきて馬脚を現したわけだ。

 

 もちろんバカなことをしないに越したことはなかったが、地球への航路確保というタイミングでやらかしてくれた結果が現状だ。

 

「てめぇ!」

「おい!」

「倉庫にでもぶち込んどけ!」

 

 暴れようとするトドを押さえるシノに命じると、負け犬の遠吠えじみた怒声を起こしてトドたちは退室。

 

「ひゃっ!」

「あっ」

 

 代わりに姿を現したクーデリアが、思わずその様子を困惑しながら目で追っていると、止まった彼女にアトラの小さな体が慣性に従ってぶつかり小さな悲鳴を上げた。

 なぜ彼女たちが。

 その声に驚いたのは、彼女を護衛しなければならない鉄華団の面々だ。

 

「クーデリアさんは危ないから奥にいてください! アトラも!」

「わたしはこの目で全てを見届けたいんです」

 

 ビスケットの言葉に従わず、むしろ彼の座る座席にとりつきクーデリアはモニターを見据える。

 

「あっ三日月が!」

 

 一緒にモニターを覗き込んでいたアトラが、望遠で歪に映るバルバトスの姿を認めて不安げな声を上げた。

 そんな彼女を安心させるため、ビスケットは説明する。

 

「遠距離で撃ち合ってるうちは大丈夫。モビルスーツのナノラミネートアーマーは撃ち抜けない」

 

 ナノラミネートアーマーは、正確には装甲そのものを指すのではなく、特殊な金属塗料を塗布した装甲を指す。

 エイハブ・リアクターから発するエイハブ・ウェーブに反応し、鏡面状の構造をした複層分子配列を形成。エネルギーを有した分子が衝撃を吸収・拡散し、鏡面構造によってビームを反射するため実体弾、ビーム兵器に対し圧倒的な防御力を発揮する。

 

 そう言われても、理解できないアトラが「でも……」と呟くうちに、オルガは決断した。

 

「ヤマギにあれを準備させろ!」

「あれって……売り物を使う気?」

「ここで死んだら商売どころじゃねえ」

 

 確かにその通りだ。

 しかしそう思うからこそ、ビスケットにはもう一つの案が浮かんでいる。

 

「……あの回線を使えば……」

「……確かにピンチだ。だが、まだ八方塞がりってほどじゃねえ。昭弘、頼めるか」

 

 水を向けられた昭弘はただ静かに頷き、承諾する。

 

 

 バルバトスは火星支部の長、コーラル指揮による猛攻に曝されていた。

 それでもほぼ無傷で凌いでいるのは、先にビスケットも言っていたナノラミネートアーマーの恩恵と、阿頼耶識を含めた三日月の技量に因るものだろう。

 

「くっそぉ、ちょこまかと! 援護しろ! 接近戦をやる!」

「はっ!」

 

 部下に援護射撃の弾幕を張らせつつ、コーラルが吶喊。

 

「……くっ」

「私の……邪魔をするなぁっ!」

「っ!」

 

 避けられない。

 息を飲む三日月。――しかし、衝撃は来なかった。

 

「ぐっ、何だ!?」

 

 思わぬ攻撃に晒されたのはコーラルだ。

 破損はなくとも衝撃に機体が揺らされ、好機を潰された苛立ち混じりに反応を追うと、そこには見慣れた機体があった。

 

「グレイズだと!?」

 

 しかし細部が違う。

 頭部や肩が、最も安価なナノラミネートの塗料で白く塗られていた。

 

「三日月ぃー!」

 

 仲間の危機を救わんと、昭弘が叫ぶ。

 その機体は、オルガがヤマギに準備をさせていた、売り物となるはずだったもの。

 それは即ち――、

 

「まさか、あのグレイズは……!」

「コーラル三佐!」

「……!?」

 

 その動揺を見逃す程、彼らは甘くない。

 一瞬のうちに距離を詰めたバルバトスのメイスの穂先が、コーラルの機体に衝突。

 同時に放たれたパイルが、その胴体を貫いた。

 

「そんな……、司令が……!」

「またあいつに……!?」

 

 動揺するギャラルホルン兵の中で、一人の青年……アインだけは、その怒りに声を震わせていた。

 クランク二尉のみならず、コーラル司令までも。

 

「アイン! もう一機来る! 援護しろ!」

「ッ、なっ!?」

 

 言われ、反射的に反応を確かめるアインは、自らの目を疑った。

 それは、ギャラルホルンの乗機であるはずのグレイズ。そしてなにより、固有のリアクター反応が示す事実は、

 

「クランク二尉の機体かぁー!!」

 

 気にかけた相手を殺すだけでなく、その機体を奪うという罪を重ねる暴挙。

 仲間の制止する声も届かず、怒りに駆られアインは突撃する。

 

 そんな青年の怒りなどつゆ知らず、三日月は冷静に状況を分析。

 

「足の止まったのからやろう。援護頼む」

「っ……!」

 

 投げ渡された滑空砲を慌てて受け取りながら、昭弘は焦る。

 

「待てよ! 俺はまだこれに慣れてねぇのに……!」

「角付きぃー!」

 

 状況は待たない。

 

 突っ込むアインを何とか援護しようとするギャラルホルンの僚機を、バルバトスが狙う。

 縦横無尽に宇宙を駆けるガンダムに敵は翻弄されるが、それは昭弘も似たようなもの。

 

「三日月の野郎! こっちは阿頼耶識がねぇんだぞ!」

 

 技術的な理解力に乏しい鉄華団の面々がMWを自由自在に操縦できるのは、阿頼耶識による特性が大きい。現に、阿頼耶識のインターフェースを搭載していないグレイズを、昭弘が十全に動かせているとは言えなかった。

 

 故に、援護射撃はするが、効果を出せている自信はない。

 それでも、一機、また一機と撃破していくバルバトス。

 

 そんな折に降り注いだ射撃に三日月が足を止め、見遣った先にいたのは一体のグレイズ。

 しかし、色と細部が違う。

 色はどうでもいいとして、サイドスカートのスラスターに、両肩、背部、太腿のバーニアを見るに高機動型か。

 

「新手?」

 

 見上げるバルバトスを睥睨しながら、銃口を向けつつ操縦席の男は呆れたように愚痴る。

 

「コーラルめ。我々を出し抜こうとしてこのザマか」

 

 男……ガエリオ・ボードウィンは状況を把握。

 

「グレイズをすでに4機……。見てくれよりは、出来るようだな!」

 

 戦闘は、第二幕へと突入した。

 

 

 ☆

 

 

 どうもこんにちは。

 こちら、助力を求められるかなーと思って待機してるけど、おあずけ食らってるベルティーナ・ビアンコ、略して2Bです。

 頑張って考えた名前の意味は、光り輝く高潔な白。中二病? そうだよ。

 

 さすがに名前が2Bは怪しいよなぁってことで、名前を考えました。

 初めは日本人名+外人姓で考えてたけど、イニシャルBな名前がベア子しか思い浮かばなかったから、月鋼のイタリアンマフィア繋がりでイタリア人名にした。

 結構気に入ってるけど、どうせなら2Bと呼んでほしいよね。見た目は2Bまんまだし。

 

 それはさておき、光学カメラによる観測を続けてるけど、戦闘は原作通りに進んでる。

 現に今も、ガエリオとミカの戦闘にマッキーことマクギリス・ファリドが参戦し、冷静に立ち回ってミカを追い詰めております。

 

「イサリビは……」

 

 目を向けると、丁度小惑星に向かっているのが見えた。

 距離と航行速度から見て、既に作戦を決めて実行に移ったところだろうか。

 

「今回も出番は無さそう」

「出番ナシ! 出番ナシ!」

「そうだね」

 

 出番がないことはいいことだ。

 慣熟訓練でもしようかなぁ、なんてことを考えながら、パタパタするハロを撫でた。

 

 

 ☆

 

 

「どうなってもしらねぇぞ団長!」

 

 迫る小惑星に、悲鳴じみた声を上げるダンテにオルガは笑う。

 

「文句はあの世でユージンに言え」

『んなもん言わせっか!』

 

 通信越しに聞こえたユージンは、モビルワーカーの中。

 

「ユージンの出撃準備、完了!」

「さーて、鉄華団の門出だ。景気よく前を向こうじゃねぇか!」

 

 その声を合図に、作戦は始まった。

 

「アンカー射出!」

 

 イサリビから射出された錨が、狙い通り小惑星に着弾。

 

「あいつら何やってる!?」

 

 彼らを追うオルクスの戸惑いを他所に、アンカーに沿って一機のモビルワーカーが奔る。

 小惑星の横を過ぎるイサリビと繋がるアンカーのワイヤーが伸び切り、反動で艦が大きく揺れる。

 しかしイサリビは速度を下げずに直進。

 アンカーを支点に、小惑星を回り込むように回頭する。

 

「今だっ!」

「やれユージン!」

 

 ビスケットの声に、オルガが号令を発する。

 

「言われなくてもやってやらぁ!」

 

 モビルワーカーの機銃が、アンカーの先に着けられていた弾薬に着弾。

 大きな爆発を生じ、アンカーの刺さる岩盤を抉る。――しかし、

 

「抜けてねぇぞ!」

 

 アンカーは、未だに刺さったままだった。

 

「計算よりアンカーが深いんだ!」

「ぶつかる!」

「っ」

 

 シノの悲観混じりの声に、オルガは僅かな動揺を見せた。

 ――あいつに頼るべきだったか?

 

「いいや!」

 

 しかし、そんな逡巡はすぐに消えた。

 より強い、揺るがない信頼によって。

 

「ユージンはやるさぁ!」

『てめぇのそういうとこは、ホント気に入らねぇなぁ!』

 

 ユージンはモビルワーカーに備え付けていたボンベを投げつけ、そこに銃撃を浴びせたことで――爆発。

 外れたアンカーがイサリビを旋回軌道から解放。

 速度を落とさずラセットブラウン色の艦が向かう先は――、

 

「敵艦回頭! 来ます!」

「なぁにぃー!?」

 

 クーデリアを、鉄華団をギャラルホルンに売った『敵』、オルクス商会の船。

 迫る艦船に悲鳴じみた声を上げるオルクスなど知ったことかと、擦過する程の距離を過ぎるイサリビは同時に主砲を斉射。

 

「続けて閃光弾!」

 

 放たれた光は、オルクスの船に向けたものではなく、その後方……ギャラルホルンの艦に向けてのもの。

 

「照準補正急げ!」

「間に合いません!」

 

 閃光弾がしっかりと効果を発揮したことで、ギャラルホルンはイサリビの後逸を許す。

 彼らを追うには、速度を落としつつ回頭し、再び加速する必要がある。

 それだけの時間があれば、逃げ切るには十分だ。

 

「よっしゃぁああ!」

「かましてやったぜぇー!」

「やりゃあできんじゃねぇか! ユージンも!」

 

 沸き立つブリッジで、オルガは感情を抑えるようにチャドへと声をかける。

 

「ミカと昭弘は?」

「……昭弘機は補足。三日月機は……」

『団長!』

「どうした!」

 

 その悲鳴じみた通信に、異常を察したオルガがすぐに反応する。

 

『ユージンさんが、ユージンさんが戻ってきてない!』

「なんだって!?」

「アンカーを掴み損ねたんだ!」

 

 ビスケットの言葉を否定できる者は一人もいなかった。

 そして、正しかった。

 

 物語を知る者……2Bことベルティーナ・ビアンコであれば気付いただろう変化。

 それはアンカーが抜けなかった際の、一瞬にも満たないようなオルガの動揺。

 続く言葉、その声音と込められた意思は同じでも、その一瞬がユージンへの発破の一瞬の遅れとなり、その変化がモビルワーカーの回収失敗という形で現れた。

 

「どうすんだ!?」

「助けるに決まってんだろ!」

「でも今戻ったら、またあいつらとかち合うぞ!?」

「どうする、団長!」

 

 助けない、という選択肢はない。

 だがどうする。

 今戻れば背後を突けるか? しかし、先に回頭されていた場合、追い付かれるだけでなく再び数的不利で戦わなければならない。

 だがそれでも、助けないという選択肢は……あり得ない!

 

「戻るぞ!」

「待って、オルガ!」

 

 号令を発する声に被せるタイミングで、ビスケットは彼の眼前、モニターに表示された文字をオルガに伝える。

 

「『ユージン・セブンスタークはこちらで回収する。イサリビは先を急がれたし』! クロスレイズ商会からだ!」

「クロ……!?」

「……信用できるのか? オルガ」

 

 歓喜より困惑の強い声に、僅かな逡巡の後にオルガは返す。

 

「あいつは俺たちを信用させたいはずだ。少なくとも、俺らをハメたいならこのタイミングで騙すメリットはねえ」

「あ、あそこ!」

「あの光……」

 

 アトラとクーデリアが見つけた光……バルバトスがガエリオとマクギリスの挟撃を抜け、通り抜けるイサリビのスタビライザーに掴まり包囲を離脱する。

 それを追うように銃口を動かしていた、青いグレイズ……シュヴァルベグレイズが遠ざかるイサリビとバルバトスを認め、搭乗するマクギリスは「潮時か……」と砲口を外す。

 

「くっ……!」

 

 冷静なマクギリスと異なり、アインは仇を逃したことへの憤りと不甲斐なさに呻き声を漏らした。

 

 

 




原作と変わらない箇所はけっこうカットしていきます。
二次創作のそういう匙加減って難しい。
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