ツインテールが虹龍洞の中で見つかってしまい、菅牧典は頭を抱えた!?

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俺、ツインテールを食べます。

 妖怪の山の地下に掘られた虹龍洞。

 現在、そこではとんでもない問題が発生していた。

「こーん……」

 ふらりと現れた菅牧典は、問題のブツを見て呆然としていた。

 狐が困っている。

 即ち、(こーん)惑していた。

「はっはっは、お前が私を呼び出すなんていったい何があったんだ?」

 高笑いを上げながら、上から飯綱丸龍が典の背後に降り立った。

 典は、上に穴がないにも関わらず、いったいどうやって上から降りてきたのだろうかと不思議に思った。

「あー、きたきた。飯綱丸様……」

 しかし、目下の問題は目の前のデカブツである。

 些細な疑問は頭の片隅に閉まって、典は自らの上司に対処の相談をしようとした。

 しようとして、典は飯綱丸の方を向いた。

「ギャーーーーーーーーー!!!!」

 そして、叫んだ。

 何故なら、振り向いた典の目の前には頭から血を流した飯綱丸が立っていたからだ。

「どうした?」

 だが、飯綱丸は特に気にしている素振りもない。

「いや、どうしたもこうしたも……」

 典は身振り手振りで、自らの上司に惨状を説明した。

 途中、飯綱丸の頭部に何かがくっついていることに典は気づいた。

 そこにいたのは、姫虫百々世だった。

 飯綱丸の頭に百々世が齧り付いていたのだ。

「あのー飯綱丸様……頭に百々世どのがくっついて大変なことになっておられますが……」

「なに、いつものことだ」

「ええ」

 飯綱丸に軽く流され、典は再び(こーん)惑した。

 私のご主人は、しょっちゅう頭から血を流しているのだろうか?

 まさか、そういう性癖!?

 というところまで考えて、典は思考を現実に戻した。

「まあいいでしょう。さて、本題なのですが、飯綱丸様、これはどうしましょう」

 そして、虹龍洞の中にある問題を指さした。

 そこには、とても大きな顔があり目を閉じていた。

 更にその後ろには身体が続いている。

 若干ユーモラスな顔つきをしており、典には可愛らしくも感じられた。

 だが、問題のブツはその大きさから、暴れられてはただで済むはずがない事は、誰の目から見ても明らかだった。

 自分がどうにかできる範疇を越えている。

 そう考えた典は、飯綱丸を虹龍洞に呼び寄せたのだった。

 虹龍洞の現場監督である百々世に相談することも典は考えたが、そもそもその百々世が気づいていない段階でお察しだったため、直接飯綱丸に伝達したのだった。

「これは……!!」

「飯綱丸様、これを知っているのですか?」

 巨大な顔を見た飯綱丸は目を輝かせた。

「古代怪獣ツインテールだ!!」

「は?」

 大方、大ナマズの類だろうと予想していた典は、聞き慣れない言葉に首を傾げた。

「今なんておっしゃりました?」

「古代怪獣ツインテールだよ! 知らないのか?」

「こだいかいじゅうついんてぇる?」

「そうだ! 体長45メートル、体重1万5000トン、武器は噛み付きと2本の尻尾だ! ちなみに、後付けで水中戦闘が得意だという設定が追加されている」

「へえ」

 飯綱丸の熱弁に、典は空返事をした。

「やあそうかそうか。ツインテールも幻想入りかあ。かつて、外の世界から紛れ込んだ書物を読んで1度で良いから見てみたいと思ったんだ!」

 目をキラキラさせている飯綱丸に典は若干引いた。

 まさか、自分の上司にそんな趣味があったとは思わなかったからだ。

「コホン。飯綱丸様、飯綱丸様。ところで、このついんてぇるという輩はどのように処分いたしましょうか?」

 調子を崩された典は、咳払いをして気を取り直し、飯綱丸に相談した。

「え? 殺しちゃうの?」

 既に三脚とカメラを用意して撮影の準備を始めていた飯綱丸は、典の進言を聞くと固まった。

 その顔は絶望一色であった。

「そりゃ、そうしないとまずいのは飯綱丸様も分かっているでしょう? うっかり、こいつのせいで虹龍洞が落盤したら飯綱丸様の計画は水の泡ですよ」

 典はジト目で飯綱丸を見つめながら言った。

 予想だにしていなかった自らの上司のはしゃぎっぷりに、典の元からあまりない忠誠心は揺らいでいた。

「うーん、そっかあ、殺しちゃうのかあ……」

 飯綱丸はまだ名残惜しそうだ。

「はい。それでどうやって処分します?」

「ウルトラマンに来てもらって」

「いきなりの他力本願はやめてください。まだ、未練を引きずってますね。いい加減、現実を見ましょうよ」

 典は頭を抱えた。

 仕方がないので、話題の切り口を変えることにした。

「何か、ツインテールに弱点とかないんですか?」

「弱点? そうだねえ……。実はツインテールには地底怪獣グドンという天敵がいる」

「へえ。で、そのグドンというのは何処にいるんですか?」

「さあ?」

 典はいい加減、堪忍袋の緒が切れそうになっていた。

 上司に知恵を借りようとしたはずが、むしろ悩みが増えていたのだから。

「というか、そのグドンというのも怪獣と言うからには物凄くでかいんですよね?」

「そうだねえ」

「もし、グドンがツインテールを食べようとして互いに暴れ回ったらどうなるんです?」

「幻想郷は滅ぶだろうね」

「駄目じゃないのよ」

 典はそう言って、慌てて自分の口を塞いだ。

 うっかり上司にタメ口を聞いてしまったからだ。

 幸いにして、飯綱丸は気づいていないようだ。

「後は、弱点と言えるかどうかは微妙だが、実は海老のように美味しいらしい」

「何!? 海老!?」

 突然、百々世が海老という言葉に反応して飯綱丸の頭から離れた。

「百々世どの。ようやく、飯綱丸様から離れましたか」

「海老!? 海老は何処だ!?」

 典を無視して百々世は辺りを見回していた。

「海老はいないが、そこに海老のように旨いらしい奴ならいる」

 涎を垂らして海老を探している百々世に、飯綱丸はツインテールを見せた。

「飯綱丸、これ食ってもいいのか?」

 百々世は食い気味に飯綱丸に聞いてきた。

「あ、あー……。食べても良いが、その代わり海老のように美味しかったか後で教えてくれ」

「ヒャッホウ!」

 飯綱丸は一瞬言い淀んだが、しばらく考えた後に百々世に許可を出した。

 それを聞くや否や、百々世はツインテールに齧り付いた。

 突然の激痛にツインテールの目が見開かれるが、すぐに大蜈蚣の毒が全身に回りそのまま動かなくなった。

「飯綱丸様、百々世どのに全部投げましたね」

「どうとでも受け取ってくれて良い。元はと言えば、百々世がお前より先に気づいていればお前が私を呼び出したりはしなかったんだからな」

 典のジト目を飯綱丸は軽くいなした。

 飯綱丸と典の目の前では、百々世がツインテールをガツガツ食べている。

「うめええええええええええええええええ!!!!」

 その歓喜の叫びは、虹龍洞の外にまで響き渡ったという。

「さて、問題も片付いたので、私は地上に戻りますよ」

 そう言って典は地上に戻ろうとした。

 この発言は、暗に飯綱丸にも地上に戻るように促すつもりで典は言っていた。

 だが、飯綱丸はその場で何かを考えているようだった。

「百々世は大蜈蚣……、ということは、百足怪獣ムカデンダーのように胴体を真っ二つにしても生きているかもしれない……? フフフフフフフフフ……」

「Oh……」

 自らの上司の危険な企みを聞いてしまった、典の背筋に冷たいものが走った。

「知ーらないっと」

 だが、典は混乱を引き起こす管狐。

 黙っていた方が面白そうだと考えた典は、何も聞かなかったフリをして虹龍洞を後にした。


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