機動戦士ガンダムSS -アフターストーリー オブ センチネルー   作:豊福茂樹

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 今回も半月ぶりの御久し振りです、またお会いする事が出来て感謝感激の豊福茂樹、またの名を東の外記・しげき丸です。
 初めましての方は興味をお持ち下さりありがとうございます。是非第一話からを宜しくお願いします。もちろん今話をつまみ読みしてからもOKですよ!
 月2回の連載もどうにか軌道に乗ってまいりました。全12話、アニメで言えば1クールの予定ですので、本連載は予定では丁度年内いっぱい12月中旬までと言う事になります。宜しければ最後までお付き合いください。
 今回はニュータイプ(強化人間)や元ティターンズパイロットとの大規模演習回です。全開戦闘成分不足だった分も是非お楽しみください。人間ドラマの方は、特にラマカーニおじさんに注目となっております。
 それではどうぞ本編をお召し上がりください。
 m(--)m

 追伸:捩じれ骨子様、毎度感想有難うございます。
 


シミュレーション

 機動戦士ガンダムSS

 

 第4話:――シミュレーション――

 

 -1-

 

 大西洋上空。高高度航空展開部隊。

「悪いな。大尉の辞令は俺が先に受け取らせてもらった」

 ヴァースキ元中尉はそう言って、シェイド中尉の胸を拳で軽く小突く。

「演習はアンタの勝ちだったんだ。当然だろう」

 シェイドは眉根を寄せて言い返す。

「何故負けたかわかるか?」

「腕の差だろう?」

「違うな」

「?」

「見たところ貴君は苦労を背負い込む性質らしい。周りを俺が面倒見てやっていると思ってないか?」

「説教か?」

「まあ聞け。所詮それは、貴君が好きでやっている事に過ぎんのだよ。自分が割を食ってやっているだのの、美化や言い訳はしない事だ。素直に楽しめ。結局勝負を分けるのはそんな事の差だ」

「アンタは、何が好きでやってるんだ?」

「戦争さ。

 好きな事をやっているんだ、そもそも損などしてはいない。

 それで不自由ない給料まで貰えている。十二分だろう?」

 そしてヴァースキはシェイドの肩を叩き、すれ違いその背後に去って行く。

「行くぞ、バレンスタイン、カワセ」

「「はっ」」

 

 シェイドは暫らく言葉の意味を考えながら、三人の去った通路を眺めていた。

 するとポケット端末が鳴る。

 見ると馬鹿二人からのメールだ。

 地獄耳め。

 シェイドは唸る。

 美化や言い訳か。そういえば先に大尉になっちまったルーツは、美化や言い訳なんか大嫌いな、ツッパリ野郎の大馬鹿で、クリプトの奴は美化や言い訳以前の、只のお調子者で素のおバカだったな。

 あいつらもこれから演習か。

 シェイドは『うるせー、お前等も負けちまえ!』と返事のメールを送る。

 そのまた返信は『『負け犬の遠吠え、腹抱えてワロタ(^Д^)』』。

 端末を床に投げつける。

 頑丈な軍用で無ければ壊れていただろう。いと哀れ(合掌)。

 

 -2-

 

『オヤッさん、有難う』

『オヤッさんのお蔭で物資に苦労せず戦えたよ』

『一年戦争の時とは大違いだぜ。あの時は晩飯が缶詰一つだけなんて時も有ったもんな』

『弾薬の心配もせずに済むし、飯の苦労どころか本物の肉だって好きなだけ食える』

『これでゲリラになんか負ける訳無いって』

『バスクの親父なんか、人使い荒いだけで、オヤッさんみたいな気づかいしてくれないもんな』

『ジャミトフの爺さんだって、ラマカーニのオヤッさんには頭が上がらないよ』

『オヤッさんの恩に報いるためにも、早くゲリラを根絶やしにしないとな』

『そしたらみんな平和に暮らせる』

『待てよ、そうなったらティターンズも解散か?』

『連邦軍だって大半はリストラだぜ』

『モビルスーツだって、昔のカートゥーン(子供向けアニメ)みたいに、小型の警察用しか要らなくなるって』

『いいな、それ。子供のヒーローだぜ。じゃあ、俺達みんな警官に鞍替えだ』

『じゃあ総監はオヤッさんがなってくれよ。バスクの親父はホント人使い荒いから』

『しょうがねえよ。あの親父だってオーストラリアのコロニー落としで身内が死んでんだ。親父自身だって目をやられてる、そりゃ、仕事にも身が入り過ぎるさ』

『ジャミトフの爺さんだって、可愛い部下を沢山スペースノイドに殺されてる』

『必死にもなるよな』

『だから俺達だって、付いて行くんだ』

 そこには、確かに平和を願ってやまぬ、夢と理想が有った。

 だが、彼等の姿が消える。

 ラマカーニは必死で探す。

 彼等の姿は手の届かぬ所にあった。

 ある者は士官の身分を剥奪され、仲間に蔑まれ、暑い日も寒い日も銃を持って孤独に歩哨を努める。

 ある者はやはり身分を剥奪され、仲間に蔑まれ、整備士の下働きで、来る日も来る日もMSにすら触らせてもらえずに、重いオイル缶や工具箱やMS部品を運ばされるだけの、奴隷同然の扱い。

 ある者は、独房の中、雑居房の中、監獄の中、戦争犯罪者として絶望の日々を過ごす。

『『『助けてくれ、ラマカーニ、オヤッさん』』』

 せめてその声だけでも、聞く事が出来ればどれだけマシか。

 彼等からの電話は、メールは、連邦に厳しく監視され、連絡を取り合う事すら反逆準備罪に受け取られかねなかったのだ。

 手を伸ばす、手を伸ばす、手を伸ばす。

 だが、可愛い子供たちに、この手は届かない。

 自分にもっと長い手が有れば、自分にもっと力強い手が有れば。

 必死に手を伸ばし叫ぶ。

 なのに、叫んでも叫んでも喉から声が出ない。

 伸ばせ、振り絞れ、もっと、もっと―――

 

「ヒハッ」

 

 気付くと、そこはベッドの上だった。

 腕を虚空に伸ばし、息を荒げる老骨の無様な姿が有った。

 ラマカーニは身を起こし頭を振る。

「大丈夫だ」

 立ち上がり歩き出し、カーテンを開け、朝日を睨み付ける。

「必ず、手を届かせる、届かせてみせる」

 流す涙は、決して眩しさの所為だけでは無かった。

 

 -3-

 

 北米カリフォルニア基地、アルビオンMSデッキ。

「………参ったな」

 スミスがぼやく。

「どうしたのよ?」

 共に整備していたブラウンが、スミスの手元を覗き込む。

「――スマッシュユニット納入延期の御報せ――って、演習に間に合う筈だったモノじゃない?」

「工廠の奴らめ、本当なら俺達がカリフォルニア入りする前に届けるって言ってやがったんだぞ」

「無いとヤバいんじゃない?」

「仕方ねえ、戦闘機用の短距離ミサイルやロケット弾でも積むしかねえな。この基地なら模擬弾の備蓄があんだろ。重量増加対策は、有りもののブースターでどうにかするか」

「まあ、相手がIフィールドなら、それしかないわよね」

「そういや、こっちもスマッシュユニットに付く筈だったIフィールド装置だが、どうする?」

「強化バックパックが無いと、SSに付けても出力不足がいなめないわよね」

「ますます機動力が落ちちまうからなあ、いっそ別の機体に付けちまうか」

「そうね、どうせ別ユニット用のと予備も併せて3基もあるし―――」

 

 一方、整備の様子をキャットウォークから眺めながら、ルーツ達パイロットは流動食での昼食を摂っていた。

 パイロット用に凝った味付けがされているとはいえ、やはり満足感には欠けるが、大規模演習前の、最後の実機練習を控えているので、高Gに備えて吐瀉の危険は減らさねばならない。

 ルーツとクリプトは、たまたま隣にいたバードマンに声をかける。

「よう、お前等の休暇はどうだった?」

「ナンパでもした~?」

「したよ………」

「ほう。の、割には浮かない顔だな?」

「フラれたんだ~、あらら」

「違うっすよ………」

 バードマンは続きを言い辛そうにしていたが、やがて口を開く。

「………ウォードの奴、俺が声をかけてた女の子を、横から攫いやがったんだよ!それも可愛い方を!」

「「あ~~~~」」

「お前、戦闘でも女でも、いざ相手が近付くとテンパるもんな」

「そうなんだ~、じゃあ今度、俺がナンパ教えてやるよ」

「ち、違うっスよっ、俺の所為じゃなくて奴の所為だよ!」

「どっちでもいいよ、そんなの。それよりもクリプトの好意は素直に受け取っとけ。折角の度胸を磨くチャンスは棒に振んな」

「そ、そんなのって、どっちでもよくねーよ!」

「まあ、それでも可愛くない方とはよろしくやれたんだろ? どこまで行った? シンお兄さんに教えて御覧」

「それが、途中でバックス中尉がやって来て、『大規模演習前に不謹慎だ』って。お流れだよ」

「「あ~~~~~~」」

「ヒデエだろ。全く踏んだり蹴ったりだよ!」

「美味くねえなあ」

「確かに」

「だろう? 俺可哀想だよ!」

「いや、お前だけじゃなくてさ、三人とも可哀想っつーか、ウォードの奴、その内手前の狡すっからさで自爆して痛い目に遭うだろうし、バックスも、その内爆発するぜ。さて、どうしたもんかなぁ?」

「部隊長は大変だ~」

「他人事みたいに言うな、てめーも副部隊長だっ!」

 ルーツの振り下ろす拳槌がクリプトの脳天をクリティカルヒット。

 KO。

 

 -4-

 

 やがてカリフォルニア基地は演習当日を迎えた。

 基地東部の演習場の荒野で、お互いの部隊長が開始前の儀礼としての挨拶を交わす。

「リョウ・ルーツ大尉です。よろしく」

「カルロス・アヴァン大尉だ。よろしく」

 年の若いルーツから出した手を、アヴァンが握り返す。

「実は、もう二人、ルーツ君に挨拶したい者が居る」

「光栄だな。喜んで」

 アヴァンの後の車両から、小柄なノーマルスーツ姿が二つ。

「お前ら………」

「人工ニュータイプのセヴとノイだ。なんでも一度会った事が有るそうだな?」

 かつてそれは強化人間と呼ばれていたが、今は差別用語としてそう呼ぶ事は憚った。

「軍人だったのか?」

 二人に問うルーツ。

「違う」

「軍から協力して欲しいと言われただけ」

「立場は民間人」

「軍属、違う」

「そりゃそうだな。お前等は子供をするのがホントの仕事ってもんだ」

「ソランもそう言ってた」

「うん」

 アヴァンは口笛を吹く。

「驚いた。本当に普通の子供として扱うんだな、剛毅なものだ。流石スーパーエースは違う」

「……別に、普通だろ」

「でも、お兄さんを負かしてもいいの?」

「負けたらお兄さんが可哀想」

「言ってくれるな、俺様達に勝つ気でいやがる。心配するな、どっちが勝っても誰も死なねー御遊びさ。この前のビーチバレーと同じだ、負けん気もいいが楽しむくらいで丁度いい」

「本当?」

「いいの?」

「ああ、手加減無しでいいさ、こっちもそうする。

 それに俺達は本当の事がわかりたいんだ。もっとMSを上手く操るにはどうしたらいいか、もっと強いMSを作るにはどうしたらいいか、いつだって本当の事が知りたいんだ。お前等が本気で戦ってくれなきゃわからない事がきっといっぱいある、それはきっとお前らもだぜ。ワクワクするだろう?

 だから本気で来い。ニュータイプなんて関係ないさ」

 セヴとノイはまた目を丸くし、それから顔を見合わせ、少しだけ喉をククッと鳴らす。

 それは、僅かだが、初めての年相応の笑みだった。

 

 -5-

 

「ではこれより大規模実機シミュレーションを開始する。カリフォルニア基地司令として模擬交戦を許可する」

「ヒースロウだ。同じく許可する」

「では、見届け人として私ラマカーニも許可します」

 准将3人の立会いの下、演習が開始される。

 3人の他にもモニターでは、ブラウンやスミスはじめ技術者たち、ゴップ議長や軍高官たちがこの演習を眺めていた。それには新型機開発のみならず、もう一つの重要事案の対処にも関わる判断が有ったからだが。

 

 部隊は共に中隊規模、9機対8機。

 カリフォルニア特別編成部隊が8機なのは、セヴとノイの人工ニュータイプ部隊が2人で1小隊とするからだ。その理由は、セヴ操る可変巨大モビルスーツ、サイコガンダムMk.Ⅱを、その巨大さゆえに1機で2機分と戦力換算しての事だ。

 カリフォルニア特別編成部隊は、カルロス・アヴァン大尉の指揮第1小隊がジェガン・Oタイプ3機、第2小隊もジェガン・Oタイプ3機、そして第3ニュータイプ小隊がドローンファンネルを12基装備したサイコガンダムMk.Ⅱと2基装備のサイコバイアラン。

 ジェガン・Oはジェガンをプロトガズィ同様のチューンを施した機体。ノイのサイコバイアランも通常型より機体を強化したニュータイプ専用機である。

 対する第8期MS実験開発部隊は、ミサイル強化型となったガンダムSS、そしてやはり使い捨てのミサイルポッドを装着したプラスF2機、デルタS、プロトガズィ2機、及びファット・バレットとグスタフ・ガン2機のおなじみの面子である。

 

 カリフォルニア部隊は鉄壁の防御力を誇るサイコガンダムMk.Ⅱを前面に押し立て、両翼をジェガン・O部隊で固めるオーソドックスな戦法。サイコバイアランは単騎で遊撃役である。

 対するヒースロウは、前衛兼右翼を第1指揮小隊。左翼やや後方を第3火力小隊にして、戦況の推移によってはそのまま火力の力押しで前面を受け持たせる戦法を選択。

 これには、第2小隊のプロトガズィがMS形態での近接戦に、改良を加えたものの不安が残るためで、なるべく高速飛行形態での遊撃のみをさせたい事からの、苦肉の策であった。

(α任務部隊では火力支援機のFAZZの運用に、マニングス共々手を焼かされたが、今度は可変機の方とはな。やはり試作機がすべて上手く行くと思うなど、虫のよい話だ)

 基地管制塔の特別席で、肉眼とモニター両方で戦場を眺めながら、ヒースロウは誰にも聞こえぬ声で呟く。

(一番の問題はやはりファンネルだな。ルーツの奴、1基でも多く引き付けろよ)

 

 ガンダムSSが突出する。

「行くぞ、ぺ……じゃなかった、アーサー!」

『はい、大尉』

 12基のドローンファンネルがWR形態のSSを一斉に取り囲む。

「うおおおぉおりゃあぁあ!」

 警告音とモニターに浮かんだ矢印で、ALSSが最適の回避ルートを示す。

 ルーツはそれに大体は従いつつ、時に自分の勘も優先し、ビームの嵐を潜り抜ける。

 SSがサイコガンダムMk.Ⅱを短距離ミサイルの射程に捉える。

 

『やらせない』

 セヴは拡散メガ粒子砲で迎撃にかかる。

 

 だが、ルーツは機体を寸前で翻し、全てのミサイルをジェガン・O部隊に放つ。

 

『馬鹿なっ?』

『うわあぁあっ!』

 2機のジェガン・Oに下される戦闘不能の判定。

 

「よっし! ヒースロウの作戦通りだ!」

 ルーツの快哉。

 ミサイルと言えど、西暦時代の『外れる事の無い』レーダー誘導と違い、ミノフスキー粒子下では、不確実な熱源、光学併用誘導方式に過ぎない。厄介な事に、これらの誘導方式で確実に命中させるには、今度はミサイル自体の速度を落とさざるを得ず、そうすると今度は拡散メガ粒子砲のような対抗火器で撃墜されやすくなる。

 ならばミサイルは通常MS相手にさっさと使い切り、機体を身軽にしてから無誘導のロケット弾を超至近距離でぶつける。

 ヒースロウの戦術が、1手目は上手く嵌った。

 しかし―――

「と、っとと。やっぱり、躱すだけで精一杯かよ!?」

 再接近を試みるも、弾幕が厚すぎる。

 だが、他の仲間にこの大量のファンネルが向かえば負ける。

 自分が引き受けるしかないのだ。

 

 -6-

 

 ルーツ以外の機体も戦闘状態に入る。

 右翼、プラスFの2機が、残り1機となった敵左翼部隊に襲いかかる。

「沈めぇええ!」

 ランファンが距離を詰めるや変形、いきなりロングビームサーベルで斬り付ける。

 

『させるかっ!』

 ジェガン・Oがサーベルをかざして受け止める。

 

『ランファンちゃん、後ろ!』

 カーリーがライフルを撃つ。

 ビームがランファンのすぐ横に着弾。

「わわわわっ!」

 着弾したのは無論、カーリーのビームでは無く、機数不足となった左翼小隊の為に、セヴがファンネルの内2基を寄越したモノだ。

 カーリーがファンネルに向けてビームを撃たなければ、ランファンはやられていただろう。

「くそっ! へたれルーツのアホ! もっと引き付けろよ!」

『12基も有るのよ、無茶言わな~い』

 

 -7-

 

 上空ではサイコバイアランとB小隊が対峙する。

 1機対3機。

 だが、2基のドローンファンネルも数に入れれば3機対3機。

 ファンネルの基数は姉に比べれば少ないが、逆を言えば、より集中した高度なコントロールが可能だ。

『隊長、私にバイアランを任せてもらえませんか?』

 ケンザキからの通信。

「ま、ファンネルなんか墜としても、スコア的には美味しくねえもんな」

 クリプトが面倒臭げに答える。

『…………』

「オコーナーはそれでいいのか?」

『お、俺はファンネルでいいです。ファンネルを精一杯怖がります』

「ふーん」

 クリプトはニヤリと笑う。

 モニターに映るオコーナーの顔は、情けない台詞とは裏腹に、なかなかいい面構えになっていた。

「なら好きにやれよ」

『『了解』』

 ドッグファイトに突入。

 

 -8-

 

 C小隊とアヴァンの指揮小隊はやや離れた距離で対峙。

 3門のメガスマートカノンが、模擬戦出力と言えど閃光で大気を灼く。

 

「散れっ!」

 アヴァンは即座に散開、前進を命じる。

 更にこちらにも2基のファンネルが援護に飛ぶ。

 

「ファンネルは私が受け持つ。お前等は落ち着いてジェガンを迎え撃て」

 バックスの指示。

『『了解』』

 グスタフ・ガンの火力の前にジェガン・Oはなかなか近付けない。

 だが――――

 サイコガンダムMk.Ⅱが、いきなり大型メガ粒子砲の火箭をこちらに向ける。

 着弾。巻き上がる風と砂塵。

 

「やったか?」

 アヴァンは慎重に覗き見る。

「『『うぉおっ?』』」

 反撃のメガ粒子砲。

 ジェガン・Oの3機はは辛うじて回避。

 敵3機の重モビルスーツは無傷だったのだ。

『馬鹿な?』

 胴体で呻りを上げるユニットに気付く。

『向こうもサイコガンダム同様のIフィールドかよ?』

『隊長?』

「動揺するな。どうせ通常MSの出力では背中にまでIフィールドは張れん。予定通り包囲するまでだ!」

 

 -9-

 

 サイコガンダムMk.Ⅱに、プラスチック模擬弾と言えど、少なくない質量のロケットがぶつかる。

「きゃああぉあ!」

 着弾の振動にセヴが悲鳴を漏らす。

 コンピューターは肩への着弾に左椀部全ての喪失を判定。

 甘かった。

 ルーツを完全に封じ込めていると思っていた。

 だが、本体の火力を敵左翼に振り向けた途端、ルーツは針の穴ほどの僅かな隙に捩じり込んで、ロケット弾を喰らわしてきた。

 負かしてもいいの?など、とんだ思い上がりだ。

「負けない―――――」

 ソランを悲しませるわけには行かない。

 

 -10-

 

「くそっ、くそっくそっ!」

 ケンザキは呪詛を吐く。

「何なんだよ、意味分かんないんだよ! 点数が高い方が勝ちだろ、評価が高い方が勝ちだろ、金が有る方が権力が有る方が勝ちだろ!? そっちの方が分かり易いだろ!」

 ケンザキは射撃を重ねる。

「人に褒められれば権力が貰える、分かり易いじゃないか!? 素人童貞って何だよぉ? 侮辱だろぉお!!」

 だが、VRシミュレーションではまず外す事の無いその射撃は、ノイのサイコバイアランに掠りもしない。

『褒める人はすぐ裏切る』

 ケンザキの脳裏に響く声。

「や、やめろ」

『褒める人は、結局またその上の人に褒められるのに都合がいいから褒めているだけ。それだけじゃ愛しているとは言えない。すぐ捨てる』

「やめろ、化け物ぉお! 僕の頭に入るなあぁ!」

『貴方可哀想。僕達もそうだったからソラン達に可哀想がられたんだね』

「やめろおおぉぉぉおおおお!!」

 

「ケンザキ!?」

 オコーナーの眼前で、ビームに包まれたケンザキの機体から戦闘不能の発光信号が出る。

『まだだっ! まだファンネルに集中しろ、オコ-ナー!』

「は、ハイっ、隊長」

『こっちはファンネルを墜とした。あいつは俺が受け持つ! よく怖がったオコーナー、その調子でファンネルは任せたぜ!』

「はいっ!」

 

 -11-

 

 昨夜の士官食堂。

「結局な、女も接近戦も秘訣は相手を見る事聞く事なんだよ」

「は、はあ」

 バードマンは結局、クリプトのアドヴァイスを断り切れずに聴く事になった。

「女が近付いてきた、敵が近付いて来た。射撃のコツは引き付けて撃つなのに、慌てて喋っちまう引き金を引いちまう。それでとりあえず喋った事が相手の地雷話題だったらどうなるよ?」

「………逃げられます」

「だろう? こっちが喋るのは相手が喋ってからでいいんだよ。向こうが喋らないなら喋りやすい雰囲気を作って喋らせる。そうすりゃあ、向こうにしてみれば、こっちの話題に合わせてくれる、自分に心から興味を持ってくれているって思う。その逆なら、何だコイツ自分の自慢したいだけかよってなる。こっちから先に喋るのは、気遣い程度でいいんだ」

「そ、それと射撃がどういう関係が?」

「近付かれても相手の動きを見てから撃った方が得なんだよ。

 お前は遠距離なら落ち着いてよく敵の動きを見て撃ってる。だからよく当たる。女でも遠くから見る分には偉そうに品定めできるだろう?」

「いいか?」

 ここで黙って見ていたルーツが口を開いた。

「近くでもそうすりゃいいのにそうできないのは、お前がいつもは偉そうにしてるのに、本当は近付かれて偉ぶる割には大した事ないって、バレるのにビビってるからだ。

 仲間は、偉ぶってるお前にそのまま付き合ってくれるから、平気なのにな。お前はさ、普段いつも仲間に守られてんだぜ。有り難がれよ」

「……………」

「いっそ、近付いた敵の前でも偉そうにしてろ。開き直っちまえ。俺の方が呑んでやる、喰ってやるってな」

 

 演習場、現在。

 近付くジェガン・O。

「こっちから喋るのは気遣い程度。引き金は引き続けない、すぐ戻す」

 一瞬だけブラストファイヤーのトリガーを引く。

 慌てるジェガン・O.

 相手を見る。

 物陰に隠れようとする。

 何だ馬鹿らしい。

 その程度の遮蔽が、ハイパーメガカノンの前に役に立つわけないじゃないか。

 コンピューターが遮蔽を貫通して命中と判定。

 1機撃墜。

 呆気なかった。

 

『くそぉっ! 何すんだよ、美味しい所は俺に譲れよ、生意気なんだよ、モルモットの癖に!』

『ウォード! 同僚への侮辱はよせと何度言わせる!』

『悔しくないのかよ!? 教官、俺はアンタの教え子だろう?』

『いつまで学生気分でっ?』

 

「仲間割れか? 動きが悪いぜっ!」

 アヴァンのジェガン・Oがミサイルを放つ。

 ウォードのグスタフ・ガンは捉えられた。

 戦闘不能の発光信号。

 

 -12-

 

「もうっ! 何でたった1機の敵が墜とせないんだよぉ、これじゃまた、ルーツにでかい顔されるだろぉ!」

『ランファンちゃん焦り過ぎ~、て言うか、もう私も体力が持たないかも~』

 勿論、同様にジェスタ・Oの動きも疲れで悪くなっている。

 にもかかわらず、ファンネルに疲れの色が見えない分、こちらが不利になりつつある。

 

 -13-

 

 ルーツは執拗に、腕が無くなり防禦火砲の少なくなった、左半身に回り込もうとする。

 セヴは防戦一方になる。

 懸命に左へ左へとルーツを追い、機体を回しよじらせる。

 このままではルーツに回り込まれる、その瞬間――――

 ――――刹那背中を見せる危険を冒し、右に瞬時に反転。右手五指のメガ粒子砲をビームサーベルにし、ルーツを捉えにかかる。

 だが、ガンダムSSが消える。

 ルーツも瞬時に機体をMS形態に変形させ失速させていた。

 変形版木の葉落とし。

 SSはMk.Ⅱの右脇の下に潜り込んだ。

「これで終わりだ!」

『ソランを、悲しませはしないっ!』

 ルーツが残りのロケット弾を全て解き放ったその瞬間、セヴはIフィールドを切り、ファンネルで、己の機体もろともガンダムSSとロケット弾を撃ち抜いた。

 

 コンピューターの判定は、両機体爆散、相打ち。

 

 -14-

 

『ここまでだ』

 ゴップ議長が演習終了を告げる。

『どちらも兵、機体ともに素晴らしく、ゲリラ討伐の任に当てるには申し分が無い』

 軍高官、官僚たちも同意の首肯。

「それでは―――」

 ラマカーニが期待に満ちた瞳でゴップを見る。

『だが、同種の機体同士を当てるのは消耗戦になり危険が高い。ガンダムSSが巨大兵器に対して有効性を示した分、量産型ビグザムに当てるには、より適当に思う。アムロ・レイとドズルの例も有ろう?』

『ですな』

『ファンネルが無い分、より攻略は容易かと』

『逆にこちらにファンネルが有っても、Iフィールドを抜けねば意味が有りませんからな』

「………そうですか」

『落胆する事は無い、ラマカーニ君。ヒースロウ君に受け持ってもらうのはビグザムだけだ。残りのMSを駆逐するには、それこそサイコガンダムMk.Ⅱを中心にした部隊が適任だろう』

「それでは?」

 ラマカーニの顔が輝く。

『君の提案は前向きに検討させてもらうよ』

 そして、発言する事の無かったヒースロウも、予め自分とゴップの書いた筋書き通りになった事に、人知れず、安堵の息を漏らす。

(周りの顔を立てるのも楽ではないな。だがこれで当初の目的は果たせる。これが高官の処世術か)

 

 -15-

 

「セヴ、ノイ」

 ルーツは再び手を差し出す。

「強いな、お前たちは。楽しかった。一人前の戦士として尊敬するぜ」

 姉弟は手を握り返す。

「ルーツも強かった」

「その仲間も」

「当たり前さ」

「ルーツ達が強かったお蔭で、ソランの願いも叶いそう」

「礼を言う」

「そうか、じゃあ、お前等御褒美に爺さんにうんと甘えさせて貰え」

「甘えさせて貰う?」

「こうされる事さ」

 ルーツはセブとノイを両腕で抱き締めた。

 

「―――化け物相手に、偽善者め」

 ケンザキは遠くから毒衝く。

 

「あの、そのよ」

 バードマンは改まってランファンとオコーナーに向き合う。

「いつもありがとな。えらそうにする俺なんかに二人とも付き合って、仲間でいてくれてよ」

「………なんか悪いもんでも食った?」

 やや引くランファン。

「いや、俺も言うよ。俺もみんなが怖い位大好きなんだ。でも、それだけじゃみんなを守れないから、これからは敵もうんと怖がるよ」

「オコ-ナーまで? やめて、今回一番活躍しなかったのアタシだから! 今感謝とかマブダチ告白とかされるとかえって惨めなんですけどぉ!? それともいやがらせ?コレぇ?」

 それを見る一同から笑いが起きる。

 見れば堅物のバックスまで笑っている。

 だが、ケンザキとウォードの顔に、笑みが浮かぶ事は無かった。

 

 ―第5話に続く―

 

 

 おまけ。

 

 ガンダムSS設定

※キャラクター解説

 

●シグマン・シェイド(24)

 連邦中尉。おなじみ元祖おニャン子メンバー。

 苦労人は相変わらずだが、吹っ切れてはいない様子。眉間の皺が取れるのはいつの日か。頑張れシグマン。

 でも、出番はこれっきりだろーかなー。ますますいと哀れ(合掌2)。

 だが、テックスの方は本当に美味しい所で出演しそう。はっ?ピンチに新メカを持ってくるって、美味しいけど大概死亡フラグじゃん、どうしよう? 今からそこら辺考えとこう。

 

●ヴァースキ(年齢不詳)

 連邦大尉。みんな大好きカメの人。別名野獣。

 流石に戦闘狂……、もとい、ベテランパイロットして、とても重要な含蓄ある言葉を語ってくれましたね。

 この為にゲスト出演して頂きましたが、彼とバレンタインとカワセの出番もこれだけ……と、思っていたのですが、もう一遍セリフだけ言いに出てくる予定?失礼しました。

 ちなみにヴァースキ好き過ぎて、筆者の別作品にもヴァースキと言う名の軍人キャラを出しましたが、そっちはヤ○ンとは似ても似つかぬ、髭面の太っちょイワン(ロシア系男性の俗称)です。

 

●カルロス・アヴァン(35)

 連邦大尉。

 演習の相手部隊指揮官となったベテラン。彼もやはり元ティターンズでなければ、もっと昇進していたであろう人物。陽気で気さくな好人物である。

 だが、彼らの様な人物評価の無い元ティターンズ将兵は――――

 

●ケンザキとウォード

 再解説だけど二人まとめて。今話如何にも冨野節っぽいセリフを吐いてくれて有難う。頑張れAKG6。

 

 

※メカ解説

 

●アーサー

 ALSSの愛称。人工知能物の名作、『2001年宇宙の旅』の作者アーサー=C=クラーク氏へのオマージュでした。

 

●サイコガンダムMk.Ⅱ

 セヴ・ラマカーニの乗機。

 本体部分は強化Iフィールドと白い機体色以外はZ、ZZにおけるそれとほぼ同スペック。

 最大の変更点は、リフレクターファンネルがドローンファンネルに換装されている。

 地上でも長時間運用可能な、12基のドローンファンネルはやはり凶悪の一言。

 

●サイコバイアラン

 ノイ・ラマカーニの乗機。やはり連邦ホワイト色。

 サイコガンダムと同じドローンファンネルを2基ながら搭載し、バックパックもより高出力型に換装。

 姉弟による剛と柔、大と小の連携は本来恐るべきものであるが、今回は分断せざるを得ず、それを発揮する事は無かった。

 

●ジェガン・O

 Oはゼロではなく、オーバータイプのO。

 熟練兵用にスラスター追加や、動出力系のピーキーハイパワー化が行われている。

 そこら辺はプロトガズィと、見た目はともかくほぼ同じ。違いは、ジェネレーターが脚部に2基でなく、本体と強化バックパックに2基。変形機構の追加と、素材変更による軽量強化が行われていない。装甲形状は、ほとんどノーマルのジェガンと同じ。と言った点である。

 後にそれぞれリ・ガズィとジェスタに分化していったのは、皆様ご存じの通りであるが、実戦採用はエース専用機と割り切って生産された、リ・ガズィの方が早かった。そしてジェスタが生産された頃にはすでに、リ・ガズィはリゼルへとモデルチェンジし、一歩先を行っていたのである。

 特殊部隊用の少数生産ながら、エース専用機なのにその脚光を浴びぬ、時代に埋もれた名機の系列であった。

 ジム・スナイパーカスタムほど人気も出なかったしね(涙)。

 




 
 無敵の進軍を続けるラドック率いる量産型ビグザムを柱に据えたジオンゲリラたち。
 最強のビグザムを撃破する希望は、ルーツ操るガンダムスマッシュシルエットに託された。
 落ちこぼれと見做されていたランファン、オコーナー、バードマンも意地を見せるか?
 第5話 -スマッシュ―
 
 ってな訳で、半月後の次回、ガンダムSS第5話は9月初旬アップの予定です。
 是非是非また次も読んでね!
 お楽しみに~。
 (^^)/
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