二日目も終了して待機場のサウナテントに入る万丈目と太陽。
「サウナテントとか何の冗談だ、 って最初は思っていたが
これは効くなぁ・・・」
「水、 追加して良いですか?」
「どんどんやれ」
じゅう、 と湯気が上がりサウナの温度が増す。
「ふぅ・・・っと来たかルーク」
「おう・・・すまないな万丈目、 あっさり負けて」
ルークが万丈目の隣に座る。
「いや、 あれは仕方ない、 あのモンスタードラゴネクロ、 だったか?
あれは俺も知らないレアカードだったからな」
「そうか・・・熱すぎない?」
「いや、 もっと熱くしても」
「お前等二人しかいないのはこういう事か、 熱くし過ぎだ」
「個人的にバーニャが欲しかった」
「建設しろって言ってる?」
「デュエルアカデミアの風呂は大きいがサウナが無いのが困り物だったな」
「贅沢過ぎるわ、 もう出るぞ」
「おう」
ルークはふらふらとサウナの外に出た。
「太陽」
「はい、 何でしょう」
「ついて来てくれてありがとうな」
「いえ・・・礼を言わないで下さい」
サウナの外に出てふぅ、 とため息をしながら歩いていたルーク。
「ルーク君、 丁度良かった」
「うん? 嬉々先生? 如何しました?」
「ちょっと困った事になってね、 君、 ちょっとついて来てくれないか?」
「?????」
ルークは嬉々に連れられて行った。
「君の試合の前にちょっと停電しただろ?」
「はい、 それが何か?」
「その間にビショップが盗まれたのよ」
「盗まれた? どういう事です?」
「さっきのデュエルで負けたから機会にビショップのソフトウェア
つまりAI部分を渡したのよ、 それで抜け殻になったハードウェア
つまりロボットの部分が盗まれたって訳よ」
「はぁ・・・それで?」
「そのロボットの部分を盗んだ輩の元に今向かっているって事よ」
「警備員とか呼びましょうよ」
「いや、 もしかしたら警備員もグルかもしれない
向かっている事がバレない内にルーク君がボコボコにしちゃって」
「なんで俺が」
「荒事、 得意でしょ?」
「得意ですけどねぇ・・・」
指をくいくいと擦るルーク。
「5万払う」
「ビショップのロボ部分って結構お高いんでしょう?
それなのに5万って言うのは少し足元見過ぎでは?」
「なら8万」
「20万」
「私も研究費でキツイのよ、 10万」
「なら12万円」
「11万、 これ以上は無理」
「OK、 では行きましょうか」
懐からナイフを取り出すルーク。
貧民街時代にも使われた事のある使い慣れたナイフである。
「所で如何やってロボット部分の場所が分かったんですか?」
「これよ」
嬉々が発信機にしか見えない発信機を見せる。
「なるほど発信機ですね」
「その通り、 ビショップの体内にはこれが埋め込んである」
「なるほど・・・近いですね」
「そうね・・・あれかしら」
建物が見えて来た、 二人は知る由も無いが
ここは廃寮になった特待生寮である。
「ボロいな・・・ライトは?」
「持って来ているよ」
懐中電灯で照らしながら廃寮の中に進む二人。
発信機の示す場所に近付く。
「・・・・・この部屋の中みたいだな」
部屋の前に立つ二人、 発信機の反応はこの中である。
「・・・・・」
壁を背にして慎重にドアを開ける。
そして中をそっと覗く。
「・・・・・あ?」
ルークが部屋に入る。
続けて嬉々も部屋に入る、 部屋の中には誰も居ない。
ビショップも無い。
「どゆ事?」
「・・・・・」
ルークが部屋を調べ回ると隅っこに光る機械が落ちてた。
「これって発信機?」
「・・・・・」
持っていた機械を思い切り地面に叩きつける嬉々。
「ああああああああああああああああああああああああああ!!!
きぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」
頭をぶんぶん振り回して悔しがる嬉々。
「ビショップ、 何処に行ったんだろ・・・」
遠い目をするルークだった。
遠くから嬉々の叫び声が聞こえる。
近くで隠れている二つの影、 一つは債務 片。
サイバーパワークラブ元顧問、 現在横領がバレない様に逃亡中。
もう一つの影は文字通りのローブを被って正体が分からない。
「如何やら発信機が見つかったようだな」
「・・・・・」
落ち着かない様子の債務。
「落ち着け」
「本当にこれで俺を開放してくれるんだよな?
あのロボットを運ぶのを手伝ったんだし金も渡したんだから
この島から出してくれるんだよな?」
「安心しろ、 約束は守る、 だが今は人が多いから我慢しろ」
「約束だぞ」
震える債務。
「ほら、 落ち着けよ、 タバコでも吸え」
「あ、 あぁ・・・」
手渡された巻き煙草に火を付ける債務。
「ふぅ・・・良い煙草だよな・・・」
「海外の良い葉っぱを使っているんだからな
カナビス・カップで入賞した葉っぱを使っている名品だ」
「ほへぇー・・・なんだかよくしらないがおちつくわぁー・・・」
因みにカナビス・カップとは
毎年アムステルダムで行われる大麻フェスティバルの事である。
「とりあえずあのロボットは後で仲間が運び出せるようにしておこう
今は待機だ」
「りょーかいりょーかい」
ぷはぁ、 と煙草の煙を口から出す債務だった。
一方その頃、 鮫島は自室にて斎苑と話をしていた。
「鮫島よぉ、 今日のはちょっとまずいんじゃないのか?
テレビ放送されていたし・・・」
「まずい? 何が?」
「サイバー流のデュエリストが観客席に居なかった事だよ
問題になるんじゃないのか?」
「・・・・・気持ちは分かりますし、 仕方ないでしょう」
「仕方ないって・・・でも仮にもデュエリストの学校の生徒が
デュエルを観戦しないのは不勉強じゃないのか?」
「気持ち的な問題も有るんでしょう」
「不安だなぁ・・・」
「貴方は気にし過ぎですよ」
鮫島は一蹴したが斎苑のこの不安は実は的を得ていたりしていたのだった。
デュエルアカデミアを離れた日本の本州のとある会社。
サイバーフーズ株式会社(東証二部上場)の会議室にて
緊急株主総会が起こっていた。
「サイバー流との関係を断ち切る、 だと?」
社長の才色 手技は皺だらけの顔で重苦しく言った。
「ちょっと待ってくれ
我が社はサイバー流とのコネクションで成り立っている会社だ
サイバー流の農家等から安く仕入れた食材を加工して
様々な食品にして提供している
更にサイバーの名を冠した商品や
サイバー流関係カードのオマケ付き商品で売り上げも上々だ」
副社長の御茶鋸 再々が口角泡を吹きながら言った。
「それなんです、 私が問題視しているのはまさにそこ」
筆頭株主の関はビシ、 と指摘した。
「サイバーフーズはサイバー流と距離が近すぎていると言う事です
サイバー流の凋落がこの会社の凋落になってしまう
サイバー流のマナーの無さは話題になって来ていますし
と言うかそもそもサイバー流に寄り添うのは如何かと思いますよ」
「何故!? 人気の流派じゃないですか!!」
「確かにサイバー流は分かり易く強い流派ですよ
それは認めます、 しかし!!」
関はビシ、 と指を立てた。
「デュエルモンスターズには大ボスが居る」
「大ボス?」
「天下の海馬コーポレーション、 海馬ランドを始めとした
青眼の白龍関連商品の売れ行きは凄まじいの一言
大ボスと組めないからとサイバー流にすり寄るのは如何かと思いますよ」
「関さん、 確かに貴方の言う通りかもしれませんが
サイバー流には関連カードのオマケ商品があります」
「そのオマケカードが問題の一つなのです」
関がプロジェクターを付けると捨てられた大量のサイバー・フーズの
食品、 ソーセージ、 チョコレート、 弁当etc
「オマケ付きお菓子の宿命とも言える本体の廃棄
見ていてとても気持ちの良い物ではない、 非常に勿体無い
食材を提供してくれた農家の皆さんにも申し訳が立たないだろう」
「売上は出ています」
「株価は少しずつ下がっているし
私が見て不愉快だ」
「貴方の感想でしょう」
「筆頭株主が『不愉快』って言ってるんだから止めて下さいよ
文句が有るのならば私が持っている株を全て買い取って貰いましょうか」
「っ・・・」
株式会社は株を持っている者が経営を思うがままに操れる。
サイバーフーズ株式会社の株はサイバー流関係者達が所有していたのだが
関が買い占めて関が実権を握っている
と表向きにはなっている。
実際は関の背後に何かしらの暴力団が居る可能性が有る。
無茶苦茶な要求は今に始まった事ではない。
「社長ぉ、 如何にかして下さいよ」
「再々、 泣き言を言うな、 関さんの言う事にも一理ある」
「うぅ・・・」
「しかしながら関さん、 アンタ色々口出しするが
サイバー流との関係を断ち切って如何するって言うんだ?
アンタの言うサイバー流の凋落による共倒れは防げるだろうが
間違い無く規模縮小するぞ」
「それに関しては御安心下さい
食べ物が無くて困っている国が有りまして
何でも良いから食品を送って欲しいと言って来ております」
「つまり海外進出って事か?」
「大丈夫・・・ですか?」
「先方は日本語が理解出来ますし問題は無いですよ」
「因みにどこの国だ?」
「ムスペルヘイム王国です」
「聞いた事が無い国だが・・・」
「まぁ治安もあんまり良く無いですが金払いは保証しますので」
「それなら・・・まぁ・・・一考の余地は・・・」
「社長、 私は筆頭株主ですよ?」
要約すると『やれ』とこの男は言っている。
「・・・・・分かりました」
「分かれば良い、 取引相手はムスペルヘイム領事館に居るので
明日にでも営業部長を送って下さい」
そう言うとスタスタと関は去って行った。
「・・・社長、 もう奴の株式を買い取りましょう」
「馬鹿を言うな、 奴は買い取りを受け入れる様に見せて
株式を市場価値よりも高値で買わせようとする
俗に言うグリーンメール紛いの事もして来るんだぞ
総会屋の様に金を要求しないだけマシだ」
「件のムスペルなんたらとか言う国からマージン貰っているかもしれないですよ
奴の新規開拓で幾ら損しているか」
「・・・・・サイバー流には頑張ってほしいが・・・」
サイバー流の下がり始めた評価はこうして社会にも
影響を出し始めていたのだった。
社会に出始めた評判は少しずつ回り始めた。
サイバー流関連企業の株価は微減だが下がり始めた。
ネット上でもデュエルアカデミアのサイバー流デュエリストの試合不観戦は勿論
サイバー流デュエリスト達のカイザー亮に対するデュエルでのリンチからの
返り討ちがネット上にながれ、 サイバー流の評価が下がり始めた。
株価以上にネットオークション上のサイバー流関係カードの値段が下がり始め
徐々に悪い方向に行っているのだった。