ひはつ君のデュエル回です。
「うぅん・・・知らない天井だ」
翔が目を覚ますと保健室のベッドの上だった。
「目が覚めた?」
保健の鮎川先生が翔を見る。
「君、 急に倒れたんだって、 大丈夫?」
「急に? いや、 僕は」
「あー、 先生はここは後は私が見ておきますからー」
杏子が割って入る。
「あら、 そう、 じゃあここは任せるわね」
鮎川が部屋から去っていく。
「・・・・・君、 僕を殴ったッスね?」
「お前が余計な事を言おうとするからだよ
この馬鹿、 サイバー流を貶めようとするな」
「貶めるなんて、 そんな気持ちは無いッスよ!!
リスペクトの精神が無い事を批難しただけッス!!」
「そういうのが問題なんだよ・・・えーっと・・・名前何だ眼鏡」
「丸藤 翔ッス」
「丸藤? カイザー亮と同じ苗字だな」
「お兄さんッス」
「あのカイザーに弟が居たとは知らなかったな
私は佐倉、 じゃなかった才倉杏子、 一昨年の全中ではベスト16だった
アンタは?」
「え、 アンタはって・・・」
「全中で何位だった?」
「予選落ちッス・・・」
杏子は溜息を吐いた。
「予選落ちなのにリスペクト云々言ってたの?」
「わ、 悪いッスか!?」
「はぁ・・・ちょっと呆れるわぁ・・・
兎も角自分でリスペクトを実行するのは良いが
揉め事を控えてくれ」
「控えてくれって・・・」
「あのなぁ」
ガラッ、 と保健室に入って来る。
「ふぅむ、 才倉君、 保健室に来ているって聞いたけど
どうしたのかなぁ?」
「あ、 先生」
少しひょろ長い先生が入って来た。
「才倉君、 保健室に来たって大丈夫だったのかい?」
「えぇ、 大丈夫です、 ちょっと格下の同門に説教していただけです」
「格下の同門って僕の事ッスか!?」
「ん-・・・あぁ丸藤さんとこの次男坊だね、 久しぶりー」
「久しぶり・・・?」
「あぁ、 前に会った時にはおちびちゃんだったから忘れているんだね
改めて自己紹介、 僕はこの学校で実技を担当している才眠 述
サイバー流では教士の位に入る」
「教士?」
「うん? 君もサイバー流だろう? 階級は?」
「階級・・・?」
首を傾げる翔。
「あれ? 何で知らないの?」
「僕は通信教育でサイバー流の門下生になったので詳しい事は良く・・・」
「あらら・・・じゃあ一から説明してあげよう
サイバー流には階級分けが有るんだよ
階級は低い順から無階級、 君の様にサイバー流の基礎だけ知って居る
特に何の呼び名も無い階級だね、 履歴書にも書けない」
「そうだったんスか・・・」
「サイバー流に師事するなら通信教育でも説明していると思うけど・・・」
「いや、 分かんないス」
「そうか、 君の階級の上に
徒弟、 錬士、 教士、 範士、 準師範、 師範代、 免許皆伝と7段階ある
これは資格として認められていて履歴書にも書ける」
「師範代と免許皆伝は聞いた事有るッス」
「そう、 現在のサイバー流の師範代にして最高責任者マスター鮫島
そして君の兄のサイバー流免許皆伝のカイザー亮
デュエルアカデミアで教鞭を振えるのは教士以上と定められている」
「そうなんスか・・・勉強になります・・・」
「因みにアタシは錬士、 公式大会で優秀な成績を残したからな」
「むむむ・・・」
「ってこんな話じゃない、 アンタの振舞はちょっと問題がある
リスペクトデュエルをしてないからって声を荒げるのは問題があるってんだ」
「なんで何スか?」
「ふむ、 じゃあ僕が説明してあげよう」
才眠がまた説明を始める。
「今現在、 サイバー流がぶつかっている大きな問題がある」
「問題・・・スか?」
「その通り、 その問題はサイバー流の講師不足だ」
「講師不足?」
「サイバー流で人に教えられるのは教士以上とされている
しかし教士のみでは実力的に問題があるから
実際に市井のサイバー流の道場を開いているのは範士以上となる
稀に教士が開いている場合もあるがその時は錬士がサポートに入る
そしてサイバー流の運営はブロック毎に分けられている」
「ブロック?」
「所謂地域の支部みたいな感じだ
北海道ブロック、 東北ブロック、 関東ブロック
中部及び四国ブロック、 九州及び沖縄ブロック
そして童実野町ブロックの6ブロック
この地域のブロックを統括するのは準師範
若しくは特別師範と特例で任じられている範士になっている
市井の道場の教鞭を取る者は足りているが
このブロックを束ねる準師範が全く足らないのが実情だ
ブロックを束ねる責任者の半分が特別師範と言う立ち位置になっている」
「で、 でもサイバー流には有名で若い人材とか居ますよね?
昨年の全中の優勝者の・・・えと・・・」
「西前 東立君か
確かに彼は君と同い年で範士クラスの実力者だったが・・・
君、 このアカデミアの入学式で西前君を見たか?」
「え、 いや・・・見てないッス・・・」
「そうなんだよ、 彼は急にデュエルモンスターズを引退してしまったんだ
今は普通の高校に通っている」
「え、 な、 何で?」
「それが分からない・・・何れにせよ人材が足らないんだ」
がっくりとする才眠。
「でも何でそんな事に・・・」
「事の発端は20年前に遡る、 マスター鮫島
いやサイバー流の絶頂期と言っても良いかもしれない
当時は中部及び四国ブロック、 九州及び沖縄ブロックなんて分け方じゃなく
4ブロックに分けられていた、 準師範も多かった
だがしかし!! サイバー流、 いやデュエル史に残る大事件が起こった!!」
「そ、 それは?」
「当時のサイバー流免許皆伝、 サイバー流最強と呼ばれた
国際 善次郎とその一派がサイバー流のリスペクトに傾倒し過ぎて
サイバー流では無い別流派の道場に対して
焼き討ちを仕掛けようとしていた事が発覚した!!」
「!!」
「発覚前に判明したが国際は爆発物を準備していたとして
実刑が確定し刑務所に入った
国際は前々からリスペクトに反しているとしてデュエリストに対して
複数人で取り囲んでカードを没収したり、 家に押しかけたりして
警察の厄介になる事も多かった、 しかし当時のマスター鮫島は
国際を庇い、 示談に持ち込んでいた
しかし爆発物を準備していた事は庇い切れずに
国際と取り巻きは刑務所行きになった・・・」
「何という事っスか・・・」
「甘いぼっちゃんだな」
杏子が割って入る。
「え?」
「考えて見ろ、 爆弾を持って自分と意見が合わない奴と
同じ流派を学びたいと思うデュエリストが居るか?」
「その通り、 それからサイバー流は声高にリスペクトを叫ぶと反感を買い
規模が縮小し始めた、 サイバー流の道場運営よりも
プロデュエリストとして活躍する道を選ぶ者が増えて行った
準師範になってもそこから独立して別の流派を開く者達も現れた」
「現状、 あたし達サイバー流は
アンチ・リスペクトの目を掻い潜りながら
水面下でじっくりと活動を続けているんだ」
「水面下?」
「そう、 相手モンスターの除去や効果ダメージ等の
相手を省みないリスペクト精神の無いデュエルではない
リスペクトデュエル、 それを広める為に
じわりじわりとサイバー流を広めているんだ」
「先輩方の尽力でサイバー流もリスペクトデュエルも
市民権を取り戻し始めたが最近のネット社会の影響で
不用意なサイバー流の過激なリスペクト精神が取沙汰されるんだ
だからアンタの様に表立って不快感を示されては困るんだよ」
「そうなんスカ・・・」
翔はしょげた。
「丸藤君、 君、 僕が顧問を務めるサイバー流のサークルに入りなさい」
「え?」
「君はカイザーの弟だ、 見所が有ると思う」
「・・・・・」
「失礼しまーす」
十代が入って来た。
「じゃあ僕はこれで」
「じゃあな」
杏子と才眠は部屋から出て行った。
「お、 翔、 大丈夫だったか?」
「だい・・・じょうぶッス・・・」
あんまり大丈夫じゃなさそうに翔は言った。
「さっきの眼鏡、 あたし達の仲間になりますかね?」
杏子は廊下を歩きながら才眠に言った。
「まぁどっちでも良いさ、 オシリスレッドだしね
レッドでも頭数には入るし少しずつ派閥を拡げて行きたい
そして空席になっている教頭の座を何としてでも獲得したい」
「教頭になれたらあたしの卒業後の教員の話、 よろしくお願いしますね」
「勿論、 君の様な実力者なら喜んで」
翌日、 早朝
ひはつはオシリスレッドの寮の自室で目覚めた。
「うーん・・・良く寝たぁ・・・」
前日8時に寝て、 現在5時。
早寝早起きである。
「あ、 えーっと・・・なんかメール来てるや」
学生に支給されている端末に誰からかメールが来ている。
「えーっと・・・何て読むんだコレ?
人の名前か? 何々・・・午前0時にアンティデュエルしようって事かな?
あー・・・・・」
過ぎている事に気が付いた。
「じゃあ返信しておくか」
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あさはやくにすみませんきのうはよるおそく
にねむってしまったのでメールをみることが
できませんでしたとりあえずレッドりょうの
前にいるのでよろしかったらどうぞ
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メールを返信するひはつ。
暫くするとメールが返信されて来た。
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良いだろう、昨日のドロップアウトボーイと
のデュエルは中途半端だったからな
受けて立つ、と言いたいが
今何時だと思っている?朝5時だぞ?
早過ぎるだろ、とりあえず慕谷を送るから
そいつとデュエルしろ。
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ひはつがレッド寮の前で待つ事10分。
慕谷がやって来た。
「えーっと・・・何て読むんですかこれ?」
「何の話だ?」
「なに谷って読むんですか?」
「したいたにだな・・・
何でこんな朝早くにデュエルしなきゃならないんだ・・・」
「断れば良かったのに」
「断れるかよ、 万丈目さんの命令だしな・・・
お前が勝ったらベストカードを貰う」
「それだったら1000円で譲りますよ」
「譲るって良いのかよ・・・」
「沢山有りますし」
「えぇ・・・」
明らかに困惑する慕谷。
「因みに売ろうとしているベストカードって何だ?」
「強欲な壺」
「もっと他に何かないのか・・・ブラックマジシャンとか」
「ありますよ、 2,30枚くらい」
「多ッ!! 何だそれ、 偽物か何かか?」
「韓国語版ですけど本物です」
「韓国語版・・・」
「えぇ、 韓国の物価は安いから安く手に入りますよ」
「・・・韓国語で書いてあるなら読めないから要らない・・・」
「でも僕の持っているカード韓国語版ばっかりですよ」
「えぇ・・・じゃあ如何すれば良いんだよ・・・」
「デュエルだけして帰ったら如何ですか?」
「そうするか・・・もう眠いし・・・とっととデュエルして帰るわ・・・」
「「デュエル」!!」
画して眠い慕谷とひはつとのデュエルが始まった。
「眠いから先行は貰う、 ドロー」
慕谷手札:5→6
「・・・・・んあ?」
慕谷手札
サファイアドラゴン
サファイアドラゴン
フロストザウルス
炸裂装甲
落とし穴
洗脳-ブレインコントロール
「・・・・・」
悪くない手札だ、 と慕谷は思った。
サファイアドラゴンを召喚して
相手がサファイアドラゴン以上の攻撃力のモンスターを
召喚して来れば落とし穴、 破壊を回避しても炸裂装甲。
次のターンにはフロストドラゴンか、 サファイアドラゴンを召喚する。
駄目押し洗脳まで来ている。
「(何で如何でも良いデュエルなのにこんなに引きが良いんだ・・・
まぁ良いや、 とっとと終わらせて寝よう)サファイアドラゴンを召喚
カードを2枚伏せてターンエンド」
慕谷手札:6→3
「僕のターンドロー」
ひはつ手札:5→6
「エア・サーキュレーターを召喚
手札を2枚デッキに戻してシャッフルして自分はデッキから2枚ドローする
カードを3枚伏せてターンエンド」
ひはつ手札:6→2
「俺のターン、 ドロー」
慕谷手札:3→4
ドローしたカード
サイクロン
「手札からサイクロンを発動、 お前が伏せた右のカードを破壊」
「破壊対象になった罠発動、 ナイトメア・デーモンズ
チェーンで連鎖爆撃」
「ナイトメア・デーモンズ? 何だ? 聞いた事無いぞ?」
「まずチェーン3の連鎖爆撃の効果で君に1200ダメージ
次にナイトメア・デーモンズの効果で
エア・サーキュレーターを生贄にして
ナイトメア・デーモン・トークン3体を
攻撃表示で君のフィールドに特殊召喚」
慕谷LP:4000→2800
「攻撃力2000のモンスター3体を俺のフィールドに召喚だと?
何を考えている? まぁ良い、 ならば遠慮なく攻撃させて貰う
ナイトメア・デーモンズ・トークンでダイレクトアタック」
「つり天井発動
フィールドの表表示のモンスターを全て破壊
ナイトメア・デーモンズ・トークンが破壊された場合
そのコントローラーは1体につき800ダメージを受ける」
「ちぃ!!」
慕谷LP:2800→400
「だがまだ俺は通常召喚を残している
2体目のサファイアドラゴンを召喚してターンエンドだ」
慕谷手札:4→2
「僕のターン、 ドロー」
ひはつ手札:2→3
「カードガンナーを召喚
カードガンナーにヴィシャス・クローを装備させて
サファイアドラゴンに攻撃」
「へ? いやカードガンナーの攻撃力は・・・
今は装備魔法込みでも700か、 サファイアドラゴンには届かないぞ?」
「良いよ」
ヴィシャス・クローを装備したカードガンナーが
サファイアドラゴンに攻撃をする。
当然ながらサファイアドラゴンにはまるで通じず逆に反撃を受けて
ひはつにダメージが入る。
ひはつLP:4000→2800
「ヴィシャス・クローの効果発動
装備モンスターが戦闘によって破壊される場合は
代わりにこのカードを手札に戻す
さらに戦闘を行った相手モンスター以外のモンスター1体を破壊し
相手ライフに600ポイントダメージを与える
トークン生成の効果も有るけども置いておこうか
カードガンナーを破壊して600ダメージを君に与えて僕の勝ち」
慕谷LP:400→0
デュエルが終わってもぽかんとした顔の慕谷。
「何だか釈然としない負け方だな・・・
俺は夢でも見ているのか?」
「さぁ、 どうだろうね・・・」
「と言うか、 お前のデッキ
この前にクロノス先生とデュエルした時とは別のデッキなのか?」
「そうだよ、 沢山デッキあると沢山楽しいから
色んなデッキでデュエルしてる」
「そうか・・・まぁ、 俺は眠いし・・・寝る・・・」
「おやすみー、 僕も適当にネットでも見てるよ」
二人は互いに自分の寮の自分の部屋に戻るのだった。