今回は流れをぶった切って短めの過去話を始めたいと思います。
それからアルファポリスの
【第2回次世代ファンタジーカップ】の作品を仕上げる必要があるので
来月は更新が出来ません。
長々とお待たせして申し訳ありません。
第一サイバー流デュエル部部長、 天野 才覚。
彼は極彩との通話を切ると瞑目した。
「あの人に恥をかかせる訳には行かない・・・」
今から5年前、 天野は実家の手伝いをしていた。
天野の実家は相撲部屋であり
天野の父である天野 祭礼は元関脇の親方であり
現在は相撲取り達に稽古をつけていた。
天野は跡取りとして期待されていたが食が細く太りにくい体質の為
母の綾子共々、 裏方をしていたのだった。
「才くん、 お買い物に行って来て」
「分かりました!!」
「元気一杯ねぇー」
父である祭礼は力士としての教育をしていた為
威勢よく礼儀正しい男には育っていた。
「とりあえずこのお金でこれだけ買って来てね」
「はい・・・?」
母から渡されたのは何時もよりも多いお金と
買って来る物のメモも何時もより豪華な食材である。
「お母さん、 何だか今日は多く無いです?」
「今日はタニマチさんが来るから」
タニマチとは角界で言う所の贔屓にしてくれる客である。
いわばスポンサーの様な存在。
「ウチにタニマチ?」
「そうよ、 先々月から御贔屓にして貰ってるのよぉ」
あまり有名な力士の居ない相撲部屋に?
不思議に思う天野だったが口にする様な事はしなかった。
「そうですか・・・じゃあ行って来ます」
相撲部屋から出る天野。
買物を終えた天野は猫車に荷物を載せて帰路に付いていた。
相撲部屋に帰るとデカいリムジンが駐車場に停めてあった。
「うお、 すげ、 タニマチのか」
そう言いながら部屋に戻る天野。
「才くん、 おかえり
タニマチさん達も御飯食べていくから早めに作っちゃうわよ」
「分かりました!!」
テキパキと調理を始める天野と綾子。
ちゃんこ鍋は勿論、 鶏肉のグリルや唐揚げ。
厚焼き玉子、 味噌汁、 変わり種としてパスタや鰻巻きなんかも作る。
それに加えて今日は牛肉の良い所を焼いたステーキも作った。
「御飯は?」
「今日は良い所の米を使ってます!!」
「OK」
食事の準備が出来た所でそそくさと料理を持って行く二人。
「おい!! 二人共遅いぞ!!」
「すみません親方!!」
祭礼が怒鳴る。
親子とは言え親方呼びする位上下関係は厳しい。
「あと客人に挨拶!!」
「は、 はい!! 天野 才覚です!!」
「七色 極彩」
彼女は煌びやかな極彩色の髪の毛を靡かせながら胡坐をかいていた。
「こっちの手下の万歳」
「おっす」
「どうもこの度はありがとうございます!!」
頭を90℃下げる天野。
「元気が良い奴ね」
「コイツは昔から食が細いからあまり稽古出来ない分
礼儀と雑用を叩き込んでます
ちゃんこ番も任せているので料理の腕は保証します」
「それは楽しみね」
「親方、 ちょっと・・・」
「ん?」
祭礼を連れ出す天野。
「如何した?」
「すみません、 今日パスタ作りましたけども
ペペロンチーノなんですよ」
「あぁ、 女だからって気にするな
あの人は何でも喰うからニンニクなんざ気にしない」
「そうですか、 それにしてもお若い人ですね
あの人がタニマチ?」
「あぁついこの前成人したばっかりだが
サイバー流って言う流派の免許皆伝の腕前を持っているらしい」
「サイバー流?」
「デュエルモンスターズっていうカードゲームの流派だな
結構大きい流派らしくて、 色々稼いでいるらしい」
「それは凄い、 でも何でウチみたいな所のタニマチを?」
「趣味の範囲を広げたいかららしい」
「へぇー・・・」
「それよりも早くちゃんこもってけ!!」
「は、 はい!!」
急いで戻り料理を並べる天野。
座る関取達と極彩。
「それじゃあどうぞ」
「うん」
天野はちゃんこをよそい極彩達に出す。
「美味しいわね」
「うめぇ!!」
「ありがとうございます!!」
食事を進める。
「味噌汁、 ちゃんと出汁取っているわね」
「え? えぇ、 はい基本ですから」
その後もパクパクと食べ進める極彩。
「相変わらず良く食べるなぁボスは・・・」
万歳が呆れながら見る。
「少し喉が渇いたかな」
「あ、 じゃあ何か飲み物でも出しましょうか?」
「じゃあビールを」
「買って来ます!!」
「あ、 無いんだったらいいよ」
「そうですか・・・あ、 親方日本酒有りましたね?」
「出せ」
「はい!!」
酒迄飲みだす極彩。
「ふぅ、 御馳走様、 美味しかったわよ」
「ありがとうございます!!」
食事を終えて頭を下げる天野。
「しかしながら天野君だっけ? 良い腕してるじゃない
サイバー流の道場の食事番よりも良い腕をしてるわ」
「ありがとうございます!!」
「謙虚で姿勢も良い、 根性も有る
是非ともサイバー流に欲しい人材ね」
「い、 いや、 僕、 カードゲームなんてやった事無いですよ」
「それでも構わないさ、 今現在人手不足だしね」
「人手不足?」
酒をどんぶりに注いで飲み干す極彩。
「私はサイバー流を二つに割ろうと思う
目標としては30代になる迄」
「それは・・・まぁ、 凄い、 ですね?」
「受け答えが雑、 しかしながら実際問題手駒が足りない
私について行って大丈夫、 という実績を作らなければならない」
「実績、 ですか?」
「言うならば私の下についてちゃんと就職出来るか?
立派にデュエリストやれるのか? みたいな事ね」
「はぁ・・・」
「君にその気が有るのならば鍛え上げて
君を育ててデュエリストに仕上げるのも良いかなと思う」
「いやぁ、 それは」
「才覚よぉ、 お前、 ずっとちゃんこ番をする気か?」
祭礼が割って入る。
「ちゃんこ番は大事な仕事だが男ならば舞台に上がるのが本望だろう
こんな所でくすぶっていちゃ駄目だ」
「親方・・・」
「七色さん、 こんな息子だがよろしくお願いします!!」
頭を下げる祭礼。
「えぇ、 任せて下さい
確かに力士向きの体格では無いですが体力が有るのならば
デュエリストでもやっていけますよ」
「よ、 よろしくおねがいします」
頭を下げる天野。
それからと言う物
天野はサイバー流道場にも入門してデュエルの経験を積みながらも
極彩の薫陶を受けていた。
最初は極彩に利用されているだけではと思ったが
サイバー流のリスペクトデュエルは見ていて不愉快に思え
極彩の薫陶は文字通り天野が倒れるまで続き
起き上がる迄極彩は待ち、 文字通り付きっ切りで見てくれた。
ここまでしてくれる人に対して天野も必死で応えた。
鍛え上げられた体があってこその無茶な特訓だったと言える。
その甲斐あって入門して一年と言う短期間で範士に昇格し
極彩のサイバー流における指導者としての信用も上がった。
そしてとうとう極彩は
デュエルアカデミアでの特権階級の如き待遇を受ける様になったのだ。
「・・・・・」
天野は眼を開いた。
サイバー流の観点から行って極彩が真っ当なデュエリストかと言うと疑問が残るが
自分を信じ鍛え上げてくれた極彩に恥をかかせるデュエルは出来ない。
それになにより自分は期待されているのだ。
極彩より託された一枚のカードを見て決意を露にし
デュエルリングに向かう天野だった。