Devilblade -デビルブレイド-   作:滅悪狩人

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第二話 終焉

 

 

 

「現地到着!!各作業員は持ち場に着け!!サルベージャーは装備を整えてハッチに集合!!」

サルベージに備えてサルベージスーツを着たまま睡眠を取っていたレックスは、チームリーダーの号令により目を覚ました。

レックスは、近くに置かれたサルベージヘルメットを脇に抱え足早に集合場所に向かったのであった。

 

 

 

 

 

 

数分後には、ハッチ前にサルベージャーが全員集合しておりチームリーダーが引き揚げ作業手順の説明が行われそれぞれが持ち場に着こうとしていた。

 

 

 

「高い金払ってんだからしっかりやれよ、あとレックス気をつけなよ」

上の階からニアがそう言うと、レックスはニアにむけて親指を立ててサインを送ると雲海に向かいチームリーダーの潜行の号令とともに雲海に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

サルベージャー達がしばらく潜り続けていると、何やら大きな物体が見え始めレックスはその物体を観察していた。

 

 

 

「あれか……想像していた物よりずいぶんデカいな、かなりの年代物だ…それにアレは推進器か?いずれにしても見たことのない船だな」

レックスが観察して分かったことは、引き揚げる物体が想像よりも大きな船でありその構造が今まで見たことのないものであるということであった。

そして、観察もそこそこにやめてレックスを含めたサルベージャー達はフロートと呼ばれるバルーンのように膨らんで沈んだ物体を持ち上げる道具をそれぞれ手にすると、沈没船の両サイドに等間隔になるようにフロートを取り付けてその場から離れた。

サルベージャー達が離れるのと同時にフロートが大きく膨らみ沈没船が軽く浮き上がった。

そこをすかさずクレーンがガッチリ掴むとゆっくりと浮上していった。

 

 

 

 

 

 

「お、大きい」

浮上し終えた沈没船を見たニアはその大きさに驚いていた。

 

 

 

「見てくれは情報通りだな、問題は中身……か」

 

 

「……………」

メツは沈没船を見て何かを気にするようなことを呟き、シンは何も言わず静かに沈没船を見据えていた。

 

 

 

 

 

 

「お〜い、レックス」

 

 

「ん?…猫ちゃんか」

浮上した沈没船の甲板で機材の箱を降ろしていたレックスが名前を呼ばれ、そちらへ目を向けるとウズシオから橋をかけて沈没船に乗り込んでくるニア達の姿が見えた。

 

 

 

「見事な手際だった、なかなかやるじゃない」

 

 

「ふっ、ありがとよ」

 

 

「各班、準備が出来た者から侵入開始」

 

 

「さて、俺達も行くか」

レックスとニアが軽く言葉をかわしていると、チームリーダーからの号令が聞こえメツ達も船内に向かい始めた。

 

 

 

「……お前も来い」

 

 

「あ?」

 

 

「レックスも連れて行くって言うの?シン」

しかし、不意に振り返ったシンが突然レックスについてこいと言って呼ばれた本人は怪訝そうな表情を浮かべた。

ニアも突然の事で驚きながらもシンに聞き返していた。

 

 

 

「お前らだけじゃ不安だとよ」

 

 

「なっ!?……くぅ〜」

 

 

「ハッハッハッ」

聞き返したニアに対してメツが遠回しに子供扱いするような事を言うと、ニアは悔しそうに地団駄を踏みながらメツを睨みつけたがメツは気にも止めず笑い飛ばした。

 

 

 

「あ〜、ついて行くのは別にいいんだけどよ一ついいか?」

 

 

「……なんだ?」

 

 

「着替えて来てもいいか?俺サルベージスーツ嫌いなんだよ、それに濡れて肌に貼り付いてるから気持ち悪くて仕方ねぇ……あと装備もな」

 

 

「……急げよ」

シンがそう言うと、レックスは着替えと装備を取りに行くためにウズシオの船内へと入っていった。

 

 

 

しばらくしてアヴァリティア商会で着ていたジーパンと紺色のコート姿に着替え、大型リボルバーと大剣を装備したレックスが戻ってきた。

 

 

 

「よぅ、待たせたな」

 

 

「遅いぞレックス」

 

 

「まぁそう怒るなよ、猫ちゃん」

 

 

「……行くぞ」

レックスが戻ってくると共にニアから文句を言われたが軽く受け流した。

そしてシンの言葉と共にレックス達は沈没船の内部に入るために入口へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

❴古代船❵

 

 

 

レックス達が入口に近付いていると不意に入口の扉が内側からこじ開けられようとしていた。

不審に思いレックス達が足を止めた瞬間、扉が吹き飛ばされ中から甲殻類と昆虫をかけ合わせたようなモンスターが出てきて、ギョロリと動く四ツ目がレックス達を見ていた。

 

 

 

「気色悪い出迎えだな」

 

 

「下がってなレックス、ドライバーの力見せてやるよ」

そして、ニアは腰に下げていた二つのリング状の武器“ツインリング”を両手に持ち構えるとリングの周りに青色の刃が形成された。

対してレックスは、背中から大剣を抜くこともせずに軽く体勢を整えるだけであった。

 

 

 

「そいつの相手は任せるぜ?ニア、坊主(ボウズ)

 

 

「…………」

 

 

「ちょっ!?メツも戦えっての!!」

 

 

坊主(ボウズ)の実力を測るいい機会だ、頑張れよ」

そして、メツとシンは二人の少し離れた後ろから見学をしていた。

どうやらレックスの実力を測るために戦闘には不参加のようである。

 

 

 

「あ〜っ、もう!!行くよビャッコ!!レックス!!」

 

 

「承知!!」

 

 

「オーケー!!」

 

 

「グルブブゥッ」

ニアの掛け声にビャッコとレックスが答えるのと同時に、四ツ目の気色悪いモンスター"キングリター・シース"が襲いかかってきた。

キングリターは手始めにニアに向かって飛びついてきた。

しかし、ニアは横に跳んでかわしつつ体を回転させながらツインリングでキングリターの側面に連続して斬撃を叩き込んだ。

 

 

 

だが

 

 

 

「かったぁ〜!?」

 

 

「ブググゥ!!」

 

 

「しまっ!?」

兜のように全身を覆うキングリターの甲殻を切り刻むことは出来なかった。

あまりの硬さにニアはツインリングを握っていた手に伝わる痛みに悶絶していた。

そんな隙を見過ごすわけもなくキングリターは鋭く尖った前足をニア目掛けて突き出した。

 

 

 

「お嬢様!!」

ニアが鋭い前足に貫かれる前にビャッコがニアの前に割り込み、大きな咆哮を繰り出すとシールドが展開されて攻撃を防いだのであった。

 

 

 

「助かったよビャッコ!!今度はこっちの番だ!!〘ジェミニループ〙!!」

ビャッコに助けられたニアはすかさずツインリングをキングリターに向かって投げつけ、四ツ目のうち外側両サイドの目を斬り裂いた。

 

 

 

「グブギャァ!?」

四ツ目のうち2つを切り裂かれ、キングリターは苦悶の声を上げた。

そして、ニアの投げたツインリングはまるでブーメランのように戻ってきていた。

 

 

 

「派手に行くよビャッコ!!」

 

 

「了解です!!お嬢様!!」

ニアはビャッコに声をかけビャッコが答えると二人は同時に走りだし、ブーメランのように戻ってきていたツインリングの片方をニアが手で掴み、もう片方をビャッコが口に(くわ)えて構えるとキングリターを同時に斬りつけた。

 

 

 

「「〘メイルシュトローム〙!!!!」」

 

 

「グブブゥ!?」

怒涛(どとう)の攻撃に怯んだキングリターはニアを襲うことを諦めると標的を変え、今度はレックスに向かってきた。

 

 

 

だが選んだ相手が間違いであった。

 

 

 

「気色(わり)ぃんだよ!!」

レックスは向かってくるキングリターの残りの目に向かって容赦なく大型リボルバーの引き金を引いた。

放たれた弾丸は残った目を貫き、キングリターの視界は完全に潰された。

 

 

 

Blast(吹っ飛べ)!!」

 

 

「グブゥ!?」

そして、逆手に持った大剣を勢いよく振り上げ斬り上げた。

レックスの大剣はキングリターの硬い甲殻をものともせず、軽々と砕き割っていた。

甲殻を割られたキングリターは断末魔をあげながら、吹き飛ばされひっくり返ってしまった。

 

 

 

「くたばりやがれっ!!」

 

 

「グギァァッ!?」

さらにレックスは大きくジャンプしてひっくり返ったキングリターの上に飛び乗りながら大剣を深々と突き刺した。

そして傷口を広げるように何度も何度も大剣をグリグリと捻り、最後に突き刺したまま大剣を振るい頭を真っ二つに切り裂いた。

 

 

 

「ふぅっ」

 

 

「結構エゲツないね、アンタ」

 

 

「そうか?」

動かなくなったキングリターの死骸を踏みつけながら大剣についた血を振るい落とし背中に背負い直したレックスに、ニアは顔を引き攣らせていたがその本人は平然としていた。

 

 

 

「お〜い、終わったぜ」

キングリターを倒し終わったレックスは、離れて見ていたメツとシンに声をかけたが二人は真剣な表情をしていた。

 

 

 

「どう思う?あの坊主(ボウズ)の動き」

 

 

「あの大剣を片手で持ち、なおかつあの身軽な動き………あきらかに人間に出来る動きではない」

 

 

「…とするとあの坊主(ボウズ)は……」

 

 

「……おそらく…」

 

 

「おい!!聞こえねぇのか?来ねぇなら先に行かせてもらうぜ!!」

シンが何かを言おうとしたその時、しびれを切らしたレックスがかなりの大声でメツとシンを呼ぶと先に船内へと入っていってしまった。

 

 

 

「とりあえず話はあとだ」

 

 

 

「あぁ」

そう言って、二人は古代船の中へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

船内はひどく劣化が進んでいるもののしっかりとした作りをしていた。

 

 

 

「ひどく傷んでるが、それでも状態がいいな」

 

 

「うわぁ〜、すっごい」

レックスが歩きながら船内の状態を冷静に分析している横で、沈没船の内部というものを初めて見たニアはその風景に驚いていた。

しばらく下に向かって進み続けると広い空間に出た。

 

 

 

「ここは……倉庫か何かか?」

 

 

「みたいだね」

レックスとニアが周囲を見渡しながら歩き、少し後ろからメツとザンテツ、シンが付いてきていた。

そして、レックスとニア倉庫中央のフェンス状になっている床部分の上に差し掛かったその時

 

 

 

「うおっ!?」

 

 

「レックス!?」

老朽化していたのか床の一部が抜け落ち、レックスだけが下の階に落ちてしまったのである。

 

 

 

「おい!!大丈夫かレックス!!」

 

 

「問題ない、そんな高くなかったしな……ただモンスターの寝床だったのかウジャウジャ湧いてきやがった」

そう言いながらレックスが周りに視線を向けると、ヤドカリのような姿をしたモンスター"レクター・クライブ"とクラゲのように空中を浮くモンスター"バブル・ジェリー"がどこからか現れ取り囲んでいた。

 

 

 

「とりあえず俺はこいつらと遊んどくから、お前らはゆっくり来いよ」

 

 

「何言ってんだよ、すぐに行くから……」

 

 

「ゆっくりでいいんだよ、久しぶりに大剣(コイツ)を暴れさせねぇといけねぇしな」

そして、レックスが大剣の柄を握り大きく捻ると重厚なエンジン音が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「す、すごい」

 

 

「かなりの実力者だとお見受けしていましたがこれ程とは」

レックスの元へ向かっていたニアとビャッコであったが、二人とも唖然とした表情で見つめていた。

 

 

 

それもそのはず

 

 

 

Let's rock(派手に行くぜ)!!」

重厚なエンジン音を響かせながら火を吹き出す大剣を豪快かつ華麗に振るい、群がるモンスター達を殲滅するレックスの姿があった。

 

 

 

「オラオラどうした!!ガッツが足りねぇぞ!!」

 

 

「ギギィッ!!」

 

 

「ブグギャァッ!!」

 

 

「へっ!!そうこなくっちゃ……なぁ!!」

数回大剣の柄を捻り刀身を赤く発光させるとレックスは武器を構え、地面を蹴り向かってくるモンスターの群れに突っ込んでいき

 

 

 

One(ワン)!!two(ツー)!!crazy(クレイジー)!!」

横に大剣を振るうと同時に大剣から火が吹き出し、その推進力を活かして一回、二回、三回と回転しながら斬りつけモンスターの群れを吹き飛ばした。

 

 

 

「ふぅ〜」

 

 

「なかなかの腕だな」

モンスターの群れを薙ぎ払い一息ついたレックスの後ろから、ニア達を引き連れたシンが話しかけてきた。

 

 

 

「いや、別にたいしたことじゃねぇよ……“ヤツら”の相手に比べたらぬるいもんさ………おっと今のはただの(ひと)(ごと)だ、さっさと進もうぜ」

 

 

「…………」

ポツリと呟いた一言をレックスは独り言だと片付け、先へと進んでいった。

そんなレックスの後ろ姿をシンは黙って見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

特に敵に遭遇することなく船内を進んでいたレックス達一行であったが、途中巨大なシリンダーのようなものが立ち並ぶ奇妙な空間に辿り着いたのであった。

 

 

 

「なんだここは?……見た感じシステムの中枢っぽいな」

 

 

「レックス!!これ動かせるんじゃない?」

ニアに呼ばれ、そちらに目を向けると何やらレバーのようなものが部屋の真ん中にドンと鎮座していた。

その上、レバーの正面には操作すれば開きそうな巨大な門があった。

 

 

 

「ん〜っ!!う、動かない〜っ!!」

 

 

「貸してみな」

ニアの小さな体では難しいと考えたレックスが、ニアに変わってレバーを操作するがウンともスンとも言わず、周囲にあるボタンを適当に押して再びレバーを操作するが反応がなかった。

 

 

 

「チッ!!」

思うように動かずイライラし始めたレックスがレバーの台座に蹴りを入れ

 

 

「このポンコツがっ!!」

 

 

「ちょっ!?」

なんとレバーの台座に向けて大型リボルバーを構えると、ズドンッと重々しい銃声と共に発砲したのであった。

 

 

 

「何やってんのレックス!?」

 

 

「何って、動かねぇから壊したんだよ」

 

 

「壊しちゃったら先に進めないじゃんか!!」

 

 

「知るかよ、んなこと」

先に進めなくなってしまいニアとレックスが口論していると、ショートしてしまったのか撃ち抜かれたレバーに電流が走りひとりでに動くとガコンッという音と共に正面の門が左右に開いたのであった。

 

 

 

「……開いたな」

 

 

「……ウソォ〜」

 

 

「なにバカやってんだ、さっさと進め」

レックスとニアはお互い目の前で起きた出来事に対して信じられない様子ではあったが、メツに急かされ二人は開いた門へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「グルルァァ!!」

開いた門を通り過ぎたレックス達の前にサメに足が生えたようなモンスター"メガロエッジ・ディブロ"が立ちふさがった。

 

 

 

「また随分(ずいぶん)とイカツイモンスターのお出迎えだな」

 

 

「こっから先は通さねぇってか面白れぇ、ここからは俺も戦うぜ」

 

 

「せいぜい足引っ張んなよ」

 

 

「ほざいてな坊主(ボウズ)

 

 

「はぁ〜、ったく男ってのはなんでこうなのかな?」

メガロエッジを前にレックスとメツは互いに軽口を叩きながら武器を構え、そんな二人を見て呆れたようにため息を吐いたニアも自身の武器を構えた。

そして、シンは後ろで腕を組みレックス達の戦いを観戦していた。

 

 

 

「グルァァ!!」

 

 

「へぇ〜、デカい図体のわりに結構速えじゃねぇか」

 

 

「ニャアっ!?」

 

 

「おっと!?」

先制攻撃はメガロエッジから仕掛けられ、鋭い歯が生え揃った大口を開きながら床を滑るように突進してきた。

それに対してニアとメツは左右に分かれてかわし、レックスは大きくジャンプしてメガロエッジの上を飛び越えてかわした。

 

 

 

「グルゥッ!!」

 

 

「っと!!おいおいその程度か?」

ジャンプしてかわしたレックスにメガロエッジは尾ヒレを横に振るい叩きつけようとしたが、レックスは迫る尾ヒレに蹴りを入れてさらにジャンプしてかわしたのであった。

 

 

 

「〘ジャガースクラッチ〙!!」

 

 

「グギャッ!?」

レックスに攻撃が集中している隙に、ニアが両手に持ったツインリングを回転させながらメガロエッジの頭を斬りつけた。

攻撃をくらったメガロエッジは怯んだが、攻撃をしてきたニアを食い千切らんとすぐに大口を開けて襲いかかった。

 

 

 

「〘ハンマーバッシュ〙!!」

しかし、ニアに襲いかかってきたメガロエッジの横顔をメツがシールド状に変形させた武器で殴り壁に叩きつけた。

 

 

 

「ザンテツ!!」

 

 

「おうよ!!〘ストームエッジ〙!!」

そしてさらに、メツがザンテツに武器を投げ渡すと鎌鼬(かまいたち)の竜巻を発生させてメガロエッジを包み込んだ。

 

 

 

「グルルァ!!!!」

 

 

「俺様のストームエッジをっ!?」

だが、タダでやられるメガロエッジではなく咆哮(ほうこう)と共に体を回転させて尾ヒレで薙ぎ払いストームエッジをかき消したのであった。

驚き動きを止めたザンテツに向かってメガロエッジは口から水の塊の大砲を吐き出し攻撃した。

 

 

 

「させるかよっ!!」

しかし、吐き出された水の塊はメツによって縦に切り裂かれ左右に分かれてメツとザンテツを通り過ぎた。

 

 

 

Double(ダブル) down(ダウン)!!」

水の塊を吐き出した隙を狙いレックスが上からメガロエッジの脳天目掛けて、火を吹き出して推進力で加速させた大剣を突き刺した。

 

 

 

「グギャァッ!?」

 

 

「大人しくしてな、テメェの脳天をカチ割れねぇだろうが!!」

そう言いながら、痛みで暴れるメガロエッジの頭に立ち続けるレックスは何度も何度も大剣を脳天に叩きつけた。

叩きつけると同時に柄を捻り、エンジン音と共に大剣からは火が吹き出していた。

 

 

 

「いい加減に……くたばれっ!!」

最後に大剣を深々と突き刺し、切り裂くように振るいながら大剣を引き抜くとレックスはメガロエッジの頭から飛び降りた。

大剣にこびりついた脳片や(したた)脳漿(のうしょう)を振るい落とし背中に背負うと共にメガロエッジは倒れ、それからはピクリとも動かなくなった。

 

 

 

「ふん、手こずらせやがって……サメモドキが…」

 

 

「うぷっ!?」

 

 

「お、お嬢様!?大丈夫ですか!?」

激しい抵抗を続けたメガロエッジにレックスが悪態をつく横で、脳漿(のうしょう)をぶちまけるバイオレンスなトドメシーンを見てしまったがゆえにニアが吐きそうになっており、傍にいたビャッコが背中を(さす)っていた。

 

 

 

「おい、大丈夫か?猫ちゃん」

 

 

「これが大丈夫に…見えるか…うぇっ……ばかぁ〜」

 

 

「……っ!?レックス様!!!!」

具合を心配するレックスにニアが弱々しく答えた時、レックスの背後に気づいたビャッコが大声を上げた。

 

 

 

「グギャガァァッ!!!!」

なんと死んだと思われていたメガロエッジが再び動き出しており、大口を開けてレックスとニアをまとめて喰らおうと飛びかかってきていたのだ。

 

 

「…えっ……」

迫るメガロエッジを見てニアは一瞬思考が止まり、その場から動けなかった。

しかし、レックスだけは違った。

 

 

 

「しぶてえな……それに…」

背後から迫るメガロエッジにレックスは苛立(いらだ)ちの感情を隠す様子も見せず、包帯の巻かれた右拳を握りしめて

 

 

 

「テメェ、口がクセェんだよ」

メガロエッジの鼻先を右拳のアッパーカットで殴り上げた。

 

 

「…はぇ?」

 

 

「なっ!?」

ニアとビャッコは目の前の光景が信じられなかった。

 

 

それもそのはず人間の力で巨体のメガロエッジを殴ったところで逆に殴った方がケガをするはずなのだが、レックスが繰り出した拳を受けたメガロエッジは体ごと頭が大きく上に跳ね上がったのであった。

そして、跳ね上がったメガロエッジの頭を追うようにレックスもジャンプして右腕を構えると

 

 

 

「一生閉じてろっ!!!!」

力の限り右拳を振り下ろし、跳ね上がったメガロエッジの頭を床目掛けて殴り落とした。

メガロエッジの頭は床に叩きつけられるだけにとどまらず、床を突き抜け深々と床下にまでめり込んでいた。

 

 

 

「ちっ!?バッチィな」

完全にメガロエッジにトドメをさしたレックスは、右腕についた脳片や脳漿(のうしょう)を顔をしかめながら振い落していた。

 

 

 

「レックス!?アンタ、メガロエッジ殴って拳大丈夫なの!?っていうかアンタの拳どうなってんの!?」

 

 

「えっ?……あ…」

ニアにそう言われてレックスはそこでようやく自分が右腕を使ってしまったことに気が付き、そっと包帯の巻かれた右腕を体の後ろに隠した。

 

 

 

「なんともねぇよ……心配すんな」

 

 

「でもっ……!!」

 

 

「なんともねぇつってんだろ!!!!」

大丈夫だと言い張るレックスに対してそれでも心配するニアだったが、レックスに怒鳴られ体がビクッと震わせた。

 

 

 

「………わりぃ」

 

 

「…レックス……」

つい怒鳴ってしまったレックスは、ハッと我にかえると一言謝ると奥へと進んで行ってしまった。

そんなレックスの背中をニアは見届けることしか出来なかった。

 

 

 

「なにしてんだ、行くぞ」

 

 

「………うん」

 

 

「お嬢様」

 

 

「アタシは大丈夫……行こうビャッコ」

メツに呼ばれ、ニアとビャッコも通路を進み出した。

 

 

 

 

 

 

少し進み続けると、一行は頑丈そうな巨大な扉の前に到着した。

 

 

 

「見ろよシン、あの紋章“アデルの紋章”だ」

 

 

「アデル?」

メツの言ったアデルという名前を聞いてレックスは首を傾げた、何かの文書で見たことがあったようななかったようなと思い出そうとしていると

 

 

 

「おい、その扉を開けろ」

 

 

「は?」

 

 

「この扉は"お前達"でなくては開かん」

 

 

「"俺達"?……いったいどういう………」

 

「いいからさっさとやれ!!こっちは大金払ってんだぜ!!」

 

 

「……チッ」

シンの言葉の真意を聞こうとしたレックスだったが、何故だかイライラしていたメツに急かされたレックスは舌打ちしながらも言われた通りに足を進め、扉の前までやってきた。

そこでレックスはとある疑問に突き当たった。

 

 

 

「(どうやって開ければいいんだ?)」

扉の明け方がまったく分からないのであった。

とりあえずはと思い、レックスは数十歩ほど後ろに下がると突然扉に向かって走り出し

 

 

 

「ウォラァァッ!!!!」

扉の前でジャンプして身体をひねり全体重を乗せた回し蹴りを叩き込んだ。

しかし、回し蹴りが直撃した扉は表面がわずかにヘコんだ程度の損傷しかなく、ビクともしなかった。

 

 

 

「クソッ!!開かねぇか」

 

 

「いやいや!!なにやってんのレックス!?」

 

 

「あ?なにってただ扉を開けようと……」

 

 

「普通に開けようとすればいいじゃん!!」

 

 

「だからその開け方が分からねぇんだよ!!……ったく」

開け方が分からずレックスとニアが言い合いを始めるが、気を取り直したレックスが言い合いをやめて再び扉の前に向かっていった。

 

 

 

「マジでどうやって開ければいいんだ?……ん?」

振り出しに戻りイラついていたレックスだったが、右腕に違和感を感じて見ると右腕に巻かれた包帯の下から淡い光が漏れ出していた。

そして不意に視線を上げて前を見ると、扉に刻まれた紋章部分も右腕と同じく淡く光っていた。

 

 

 

「………まさか」

淡く光る右腕と扉の紋章を交互に見ながらも、レックスは右手を扉の紋章に触れさせた。

 

 

 

すると扉に光のラインが走ると共に、扉がゆっくりと開き始めたのであった。

 

 

 

「(紋章のところがスイッチだった……のか?………まぁなんでもいいか)」

紋章に触れただけで扉が開いたことにレックスが違和感を感じていたが、すぐに思考を切り替えた。

扉を開き奥へ進むレックスについていこうとニアが駆け寄るが

 

 

 

「待て」

シンに声をかけられ、レックスとニアは立ち止まり振り返った。

 

 

 

「奥に、もうひとつ扉がある」

 

 

「開けろ……ってか?分かったよ」

シンにそう言われ、レックスはしぶしぶといった感じで奥の扉に向かい、ニアも結局それを見守ることにしたのであった。

 

 

 

「(……まただ)」

奥の扉にレックスが近付くと、再び包帯の巻かれた右腕から淡い光が漏れ出し始めていた。

 

 

 

「忌々しい腕だ」

レックスは自身の右腕を睨みながら吐き捨てるようにそう言いながら、右腕を紋章に触れさせて最後の扉を開けたのであった。

 

 

 

 

 

 

最後の扉を開けると、そこは今までの部屋とは違った雰囲気の広い空間があった。

沈没船なので電力などのエネルギーなどないはずだが、部屋の床の一部がまるでライトのように光り輝いていた。

レックスはその部屋に先行して入ってきた。

 

 

 

「あ?……なんだアレ」

入ってすぐにレックスは、部屋の中央に鎮座するカプセルと赤い片刃の大剣に気が付いた。

 

 

 

「……女?」

カプセルの近くに寄りあらためてカプセルの中を見たレックスはポツリと呟いた。

カプセルの中には一人の女の子が胸元で手を組むようにして眠っていた。

そして不意に何かを感じ取ったのかレックスが視線を落とすと、台座に突き立てられた赤い片刃の大剣に埋め込まれている十字架の形をした翠玉色のクリスタルから光が放たれていた。

 

 

 

そこへ遅れてシン達が部屋の中へ入ってきた。

 

 

 

「……おい」

 

 

「あぁ…間違いない……“天の聖杯”だ」

 

 

「天の……聖杯…?」

メツとシンの会話を聞いていたニアはそう言いながら、カプセルに眠る女の子を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

その時、レックスはシン達の存在に気づかずに無意識のうちに翠玉色のクリスタルに右手を伸ばしていた。

 

 

 

「っ!?……坊主(ボウズ)!!そいつに触るんじゃねぇ!!」

 

 

「あっ……」

メツに呼ばれレックスが反応するが時すでに遅く、右手は翠玉色のクリスタルに触れてしまったのであった。

その瞬間、クリスタルは強く輝きレックスの周りに翠玉色の粒子が舞い散った。

 

 

 

「なんだ……っ!?」

突然の出来事にレックスは驚くが、さらに驚くべき問題が発生した。

なんと舞い散った翠玉色の粒子が右腕に吸収され始めたのである。

 

 

 

「これは……はっ!?」

右腕の異変に驚くレックスであったが背後からの殺気に気付き、振り向きながら背中の大剣を引き抜き振るった。

 

 

 

「…………」

 

 

「テメェ……」

ガキィンッと金属同士がぶつかり合う音と共にレックスが殺気を放った相手を見ると、なんと太刀を手にしたシンであった。

 

 

 

「なんのつもりだ……いきなり攻撃して来やがって」

 

 

「…………」

 

 

「なんとか言いやがれ!!」

なにを聞いても沈黙し続けるシンに苛立ったレックスが大剣をシンに振るうが

 

 

 

「なにっ!?」

なんとシンは目の前からすでに消えており標的を失った大剣は床へ深々とめり込んでしまった。

 

 

 

「いったいどこに……がっ!?」

目の前から消えたシンを探そうとしたレックスを背後から衝撃が貫いた。

レックスが胸元に視線を下ろすと、そこには胸を貫いて飛び出した太刀があった。

 

 

 

「……なんだよ…これ」

 

 

「悪く思うな、せめてもの情けだ……この先の世界を見ずとも済むようにな………」

そう言いながら、突き刺した太刀を反転させて肉を(えぐ)ると太刀を引き抜き血を振るい落とした。

そしてレックスは胸から血を流しながら前のめりに倒れた。

倒れたレックスを見たシンは振り向き、台座に突き立てられた赤い大剣を太刀の一閃と共に砕き割ったのであった。

 

 

 

「チッ!!余計な手間を……」

 

 

「シン!!!!」

予想外のアクシデントを起こしたレックスに舌打ちするメツの隣からニアが悲痛な表情をしながらシンに駆け寄っていった。

 

 

 

「なんで殺した!!レックスが…何をしたっていうんだっ!?……シン!!!!」

ニアの悲痛な叫びを浴びせられたシンはなにも答えることなく無言で部屋から出ていったのであった。

 

 

 

「……レックス」

部屋から立ち去ったシンを見ていたニアがレックスに駆け寄るが、すでに息絶えていた。

 

 

 

「レックス…ごめん……ごめんね」

ニアは息絶えたレックスの手を握りながら、もう届かない言葉を呟き続けた。

 

 

 

「聖杯を運び出すぞ……ニア、モノケロスを呼べ」

 

 

「…………」

 

 

「チッ!!…ニア!!!!」

 

 

「……分かったよ」

メツに呼ばれ、ニアは目元を袖で(ぬぐ)うと立ち上がり

 

 

 

「さよなら……レックス」

最後にレックスに向けてニアはそう呟くと、部屋から去っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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