Devilblade -デビルブレイド-   作:滅悪狩人

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ようやく出来ました

リアルが忙しすぎてほとんど寝る前にしか達筆出来なかったので時間がかかってしまいました


第四話 右腕

「はぁっ!!」

メツとザンテツに向かって走り出したホムラは、大きくジャンプすると落下の力を利用してメツ目掛けて聖杯の剣を振り下ろした。

しかし、メツはトンファーを上に構えて軽々とホムラの攻撃を受け止めたのであった。

 

 

攻撃を止められたホムラは、鍔迫り合いの状態のまま倒立のような体勢になりながら剣を弾き距離を取った。

 

「オラァッ!!」

剣を弾かれたメツは体勢を整えるとホムラに接近しレックスの時のような連撃を繰り出すが、ホムラはレックスのような荒々しい攻撃とは裏腹に女性特有のしなやかな動きと柔軟性を活かし、メツの攻撃を最小限の動きだけで受け流し回避していた。

 

「やぁっ!!」

メツの攻撃を後ろに飛んで回避したホムラは聖杯の剣を振るい炎の斬撃を放つがメツはトンファーを振るい、いとも簡単に斬撃をかき消してしまった。

 

 

しかし、ホムラはかき消されて霧散した火の粉の中に紛れてメツに接近して斬りかかった。

メツも少し驚きはしたが冷静にホムラの攻撃を受け止め、再び両者は鍔迫り合いの状態になった。

 

 

 

「寝起きにしちゃあ、いい太刀筋してるじゃねぇか……坊主(ボウズ)程じゃねぇがな」

 

「くぅっ!?」

 

「しかし、俺にばかり構ってていいのか?坊主(ボウズ)が危ねぇぜ?」

 

「なっ!?」

メツの言葉にホムラが休んでいるレックスに目を向けると、メツのブレイドであるザンテツがレックスに襲いかかろうと走っていた。

 

「そこを退いてくださいっ!!」

 

「退くわけねぇだろ!!」

ホムラが焦りメツを引き離そうとするが、メツは離れようとせず攻撃を叩き込み続けホムラを逃がそうとはしなかった。

 

 

 

 

 

「クソッ……やべぇな」

先程の力を使った反動で立ち上がることすら出来ない状態のレックスは、こちらへ向かってくるザンテツを見て冷や汗をかいていた。

 

「これでくたばりなぁ!!」

ザンテツは自身の鋭い爪を構え動けないレックスを引き裂こうとするが

 

「させるかぁ!!」

 

「っ!?」

ザンテツの背後から声と共に衝撃波のようなものが放たれ、ザンテツはシールドを張って防いた。

 

その(すき)()(くぐ)って白い影がレックスを守るように立ちふさがった。

 

 

「これ以上レックスを傷つけさせるもんか!!」

 

「……ニア…」

レックスの前に立ちふさがったのは、ビャッコに(また)がったニアであった。

 

 

「ニア!?テメェどういうつもりだ!!」

 

「それはこっちのセリフだよ!!レックスを巻き込んで、ここまで連れてきたサルベージャーの人たちまで殺そうとして……アンタ達こそどういうつもりなのさ!!」

 

「テメェがそれを気にする必要はねぇんだよ雑用が!!」

ザンテツはニアとの話を切り上げ、邪魔をした彼女を攻撃しようと突っ込んできた。

 

「ビャッコ!!」

 

「承知!!」

突っ込んでくるザンテツに対して、ニアもビャッコに跨ったまま共に走り出した。

ニアが声をかけ、ビャッコが咆哮を上げると衝撃波が放たれたがザンテツは持ち前のスピードを駆使して衝撃波を回避した。

 

「そんな攻撃なんざ当たらねぇよぉ!!」

 

「くぅっ!?」

衝撃波を回避したザンテツはニアを爪で引き裂こうとするが、ニアもタダでやられるはずもなく両手のツインリングで攻撃を防いだ。

 

「防いだか……だがな!!」

 

「うわっ!?」

 

「お嬢様っ!!」

攻撃を防がれたザンテツはそのままツインリングを掴むと、ビャッコに跨るニアを引きずり下ろすと甲板に叩きつけたのであった。

 

「ぐぅ!?」

 

「これで終わりだ!!」

 

「ヤバッ!?」

叩きつけられた痛みで悶絶するニアにトドメを刺すために、ザンテツは空中で身を(ひるがえ)し爪を突き出した。

 

 

 

 

しかし

 

 

 

 

ズドンッと重々しい音と共に空中にいたザンテツを何かが吹き飛ばした。

 

「がっ…あ"ぁっ!?」

受け身をとったザンテツであったが脇腹からの激痛に思わず(うずくま)ってしまい、痛みの元である脇腹を見ると痛々しい銃痕が刻まれていた。

 

「な…なにが……」

 

「大丈夫か?」

 

「ふぇっ」

突然吹き飛ばされたザンテツに呆然とするニアであったが横から声を掛けられて隣を見ると、ブルーローズを構えたレックスが立っていた。

 

「レックス!?…アンタもう大丈夫なの?」

 

「まだ大丈夫とは言えねぇが、女に守られっぱなしってのはカッコわりぃだろ?」

そう言うと、レックスはブルーローズをホルスターにしまい背中の剣用ホルスターからレッドクイーンを引き抜くと、そのまま甲板に剣先を突き刺した。

 

「来なトカゲモドキ……あの時の続きを始めようぜ!!」

そんなセリフと共にレッドクイーンの柄を捻ると、エンジン音と共に炎が吹き出した。

 

「この野朗……いいぜ、テメェをズタズタに引き裂いてやるよ!!」

対してザンテツも脇腹の傷をブレイド特有の回復力により治すと、自身の鋭利な爪を構えた。

 

 

 

 

 

 

「"Blast(吹っ飛べ)"!!」

先陣を切ったのはレックスであった。

レックスはザンテツに向かって飛び出しレッドクイーンの吹き出す炎によって剣速を上げた横薙ぎを繰り出した。

だがザンテツは、身軽な動きで上にジャンプして避けると空中で前転してレックスの頭に踵落としを叩き込もうとするが

 

「ルアァッ!!」

横薙ぎに振るったレッドクイーンの重さを利用して、左足を軸にその場で回転するとそのまま切り上げへと繋げ、踵落としを繰り出したザンテツの足を真っ二つに切り裂いた。

 

「いっでぇ!?」

足を真っ二つにされたザンテツは激痛に声を上げるが、空中で体勢を立て直し素早くレックスから離れるように距離を取った。

しかしザンテツが距離を取り着地して前を向いた瞬間、眼前にはレッドクイーンを振り上げたレックスの姿があった。

 

「オラァ!!」

 

「ガハッ!?」

レックスはレッドクイーンを振り下ろし、ザンテツの胸元から腹にかけて深々と叩き斬った。

コアクリスタル自体にはダメージがなかったためザンテツがコアクリスタルに戻ることはなかったが、叩き斬られた衝撃で吹き飛ばされてしまった。

 

「チィッ!!……この野朗!!」

 

「ぐぅっ!?」

吹き飛ばされたザンテツであったが素早く受け身をとりレックスに向かって飛び出すと、体を回転させて尻尾を横薙ぎに叩きつけた。

尻尾の攻撃をレックスはレッドクイーンの腹で受け止め防いだが、体調が万全ではなかったことが(わざわ)いして攻撃の衝撃を受け止めきれずバランスを崩してしまった。

 

「しまっ!?」

 

「もらったぁ!!」

体勢を崩し膝を着いてしまったレックスにザンテツは好機と思い尻尾の攻撃から爪の攻撃に切り替え、レックスを引き裂こうとするが

 

「あっぶね!!」

 

「か…(かて)ぇ」

レックスは爪の攻撃を右腕を盾にして防御しており、ザンテツは右腕のあまりの硬さに(うめ)いていた。

 

「テメェッ!?その右腕……鋼鉄の篭手(こて)でも仕込んでやがるのかよ!!」

 

「へっ!!んなもん仕込むか…よ!!」

篭手の存在を疑ったザンテツにレックスがしかめっ面でそう返すと同時に右拳によるアッパーを顎に叩き込んだ。

 

「ぐぶっ!?」

アッパーを喰らったザンテツの体は半回転してレックスに背中を向けるように空中で逆さまになるような体勢になってしまっていた。

 

「まだまだ!!」

空中で逆さまになったザンテツの背中にレックスがしがみつき、抱えあげてジャンプすると

 

「オゥラ!!」

そのままザンテツを頭から甲板に叩きつけたのであった。

それは所謂、ジャンピングパワーボムという技である。

あまりの威力にザンテツは悲鳴を上げることもなく意識を失ってしまっていた。

 

「シャァ!!…ヤッハァ!!」

 

「………凄すぎでしょ」

 

「出来ればあんな技は受けたくはないですね」

大技が決まりまるでリングパフォーマンスのようにガッツポーズを行うレックスにニアとビャッコは呆然としていた。

 

「へへっ!!………っ!?」

気持ちのいい決め技に笑っていたレックスであったが、不意にかすかに聞こえた駆動音のような音に反応して振りかえると自分たちのいる古代船に並ぶように、巨大な船が姿を現していた。

 

「あれは……アヴァリティア商会の港にいた…」

 

「モノケロス!!」

 

「なるほど、そいつがあの船の名前か」

レックスがそう言っていると、黒い船モノケロスから砲台のような物がせり上がり、とある場所に狙いを定めたのであった。

 

「っ!?…やべぇぞ!!」

砲台の狙う先を見たレックスはそう言うと、全力で走り出した。

 

 

 

なぜなら砲台に狙われていたのは、メツと対峙しているホムラであったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は数十分前、ザンテツがレックスに向かっていくのを止めるためにホムラがメツとぶつかりあっていた所まで(さかのぼ)る。

 

「オラオラどうした?その程度じゃ、俺を倒すことなんか出来ねぇぞ!!」

 

「くぅっ!?」

初めは互角の勝負に持ち込めていたホムラであったが、体格の違いからか徐々に力負けしてしまい攻めあぐねていた。

 

「もっと来いよ!!」

 

「ヤァッ!!」

メツの振り下ろしたトンファーに対してホムラは逆手に構えた聖杯の剣で防ぎ、この戦いで何度目かの鍔迫り合い状態になった。

 

「へっ、こうしてお前と戦っていると思い出すぜ500年前を………だが“その姿”どういうつもりだ?……やはり目指すか?楽園を?」

 

「それが“私達”の望みです!!」

 

「なら、させるわけにはいかねぇなっ!!」

そう言ってメツは、ホムラの聖杯の剣を弾き左手に禍々(まがまが)しいオーラを纏わせてホムラに拳を振るうが、ホムラは大きく後ろに飛んでメツの攻撃をかわしたのであった。

そのまま着地したホムラは再び聖杯の剣を構えてメツとの戦闘に備えた。

 

 

 

しかし

 

 

 

「ホムラ!!後ろだ!!」

 

「っ!?」

こちらに向かって走ってくるレックスの言葉に反応したホムラが振り返ると、黒い船体をした船の砲台がこちらに狙っていたのであった。

とっさにシールドを展開すると同時に砲台から槍のような形をした砲弾が放たれた。

 

「うぅっ!?」

ブレイドが発生させるシールドは大抵の攻撃を防げるほど強固ではあるが、流石に長時間の維持は難しく雨のように降り注ぐ砲弾を受け続けるホムラは苦しそうに表情を歪めた。

 

 

 

 

「チッ!!あの砲台をなんとかしねぇとッ!!……っあれは?」

砲弾の雨にさらされるホムラを助けるために走っていたレックスは、途中サルベージに使われる大型の機材が視界に入りホムラの方に向かいつつ機材のそばまで近付き右手で掴むと

 

「ウォラアァッ!!」

まるでボールを投げるかのように軽々と機材を投げ飛ばしモノケロスの砲台のひとつを破壊したのであった。

 

「なんだとっ!?」

それを見ていたメツは信じられない物を見たように驚き、砲台を破壊したレックスに視線を向けた。

そしてレックスは砲撃の止まった隙をみて右手を振りかぶり、離れているにも関わらずホムラに向かって右拳を振るう動作を行った。

 

 

すると

 

 

「きゃっ!?」

突然ホムラの体が"何か"に掴まれるような感覚と共にレックスの方へと引き寄せられたのであった。

 

引き寄せられたホムラをレックスは素早く横抱きで受け止めて後ろへと下がった。

 

「大丈夫か?」

 

「は…はい、大丈夫です」

横抱きのままホムラに顔を向け安否を確認するレックスであったが、対してホムラはレックスの顔が近くに迫っていたために顔が赤くなっていた。

 

「そうか……っ!?」

ホムラが大丈夫だと分かり微笑んだレックスであったが、前方からの殺気に反応して反射的に右腕を構えると同時に衝撃が襲いかかった。

 

「やってくれるじゃねぇか坊主(ボウズ)!!」

メツは砲台を壊されたためかレックスに怒りを向けてきていた。

メツは攻撃を防がれた状態からレックスを蹴り飛ばした。

 

「ちぃっ!?」

左腕でホムラを抱き支えているため防御に徹するしかないレックスは舌打ちをしつつも的確に攻撃を防いでいた。

 

「レックス!!私のことはいいですから……」

 

「黙ってろ!!舌噛むぞ!!」

 

「ひゃあっ!?」

自分のことは気にせず戦ってほしいとホムラが言おうとしたが、レックスは怒鳴るようにそう言うとホムラを抱えたまま後ろへ大きくバク宙するようにジャンプしてメツの攻撃を回避した。

 

「はっ!!女を守りながらじゃ戦えねぇか?」

 

「うるせぇよ!!」

メツからの猛攻をレックスは右腕で防いだり、刃のない部分を蹴って弾きながらしのいでいた。

 

「そこぉ!!」

 

「うぉ!?」

メツがトンファーでの攻撃と思わせて振るうと同時にブレードへと武器を変換させて攻撃範囲を変化させるというトリッキーな動きをしてきた。

レックスは持ち前の反射神経で反応することが出来たが、バランスを崩してしまいホムラと一緒に倒れてしまった。

 

「もらった!!」

倒れたレックスをホムラごと串刺しにするかのようにメツが空中からブレードを突き立てながら落ちてきていた。

 

「ちっ!?(わり)ぃホムラ」

 

「きゃあっ!!」

倒れている状態のままレックスは自分の上に乗っかっているホムラを腕と腰の力を使って横に軽く投げるように退かすと、すぐに右腕を盾にするように構えた。

 

次の瞬間、メツのブレードとレックスの右腕がぶつかり合いギャリギャリと金属同士が擦れるような音が響いた。

 

「このっ…いい加減鬱陶(うっとう)しいんだよ!!」

剣と右腕の(つば)()り合いの状態から、レックスはメツの腹を蹴りつけて引き離したが蹴り飛ばされたメツは空中で体勢を立て直し甲板に着地したのであった。

 

「レックス!!」

 

「ホムラ」

起き上がったレックスの隣にホムラが駆け寄り、武器を構えた。

レックスもそれに続くように背中からレッドクイーンを抜き、甲板に突き立てると柄を捻りエンジンを吹かした。

しかし、戦いが長引いたせいなのかレックスは軽く息を切らし始めていた。

 

「ずいぶん粘るじゃねぇか、坊主(ボウズ)

対するメツはレックスから受けた傷が残っているものの一切息を切らしておらず、それどころかいまだに余力を残しているようにも見える。

 

「くそっ」

 

「レックス!!大丈夫!?」

 

「ニア……」

 

「ここからはアタシも加勢するよ!!」

 

「微力ながら私も加勢いたします!!」

そう言って、ニアはツインリングを両手に持ち、ビャッコもニアの隣で体を低くしていつでも動けるように構えていた。

 

「ニア……お前、本当にそっち側に行くんだな」

 

「いままで世話になったけどね……もうアンタらのやり方にいい加減嫌気が差したんだよ」

 

「そうか……ならいい、お前はもう用済みだ!!」

メツは左手に紫色のエネルギーを纏わせると、そのままニアに向かって突っ込んできた。

 

「ニアッ!!」

メツが突っ込んでくるのを見たレックスがニアを守るように前に出て、迎え撃つためにレッドクイーンを振り下ろした。

 

「ハッ!!読めてんだよ坊主(ボウズ)!!」

 

「なっ!?」

だがメツはそれを待っていたのかメツは紫色のエネルギーを纏わせた左手でレックスのレッドクイーンを受け止めたのであった。

 

「そらよ!!」

メツはレッドクイーンを掴んだまま大きく腕を振るい、レックスを剣ごと後ろへと投げ飛ばした。

 

「ちぃっ!!」

レックスは舌打ちすると素早く空中で体勢を整えて甲板に着地したが、ホムラとニア達から引き離されてしまっていた。

 

 

 

「今度こそ死ね」

 

「っ!?」

 

「させないっ!!」

レックスを引き離したメツは再び左手に紫色のエネルギーを纏わせニアを始末しようとしたが、それを黙って見ているホムラではなく助けようと剣を振るうが

 

「邪魔だ!!」

 

「キャアっ!?」

メツの攻撃を受けて吹き飛ばされ甲板に体を打ちつけながら転がった。

 

「お嬢様には手出しさせません!!」

 

「お前もうるせぇんだよ!!」

 

「ビャッコ!!…うわっ!?」

ビャッコもニアを守るためにシールドを張るがメツの攻撃により軽々と破られ、(たてがみ)を掴まれてそのまま投げ飛ばされてしまう。

 

「あぐっ!?」

ビャッコが投げ飛ばされる際に、振り落とされたニアは甲板に落ちてしまった。

 

「あばよ……ニア!!」

 

「っ!?……(レックス!!)」

甲板に倒れたニアにトドメを刺すべくメツがエネルギーを纏わせた左手を振り下ろした。

メツに殺されると覚悟したニアは、目を(つむ)りレックスの名前を心の中で叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「させねぇよっ!!」

 

坊主(ボウズ)!!いい加減しつけぇんだよ!!」

そんなニアの願いが届いたのかトドメを刺される前にレックスが現れメツの左手を右手で掴み止めたのであった。

そして、レックスは先程投げ飛ばされたお返しと言わんばかりにメツの左手を掴んだまま投げ飛ばそうとするが、メツは左手から発生させたエネルギーを放ちレックスの右手を弾いた。

 

「ちっ!?」

右手を弾かれたレックスは即座に蹴りを繰り出すが、メツのトンファー型に形を変えた武器で受け止められてしまった。

しかしレックスは蹴りを止められるとすぐに体を(ひるがえ)し、もう片方の足で回し蹴りを繰り出した。

 

「ぐぉっ!?」

そしてレックスの回し蹴りは見事にメツの腹を捉え、苦悶の声と共にメツを蹴り飛ばした。

メツはそのまま甲板に落下して転がりながらも素早く受け身を取り立ち上がった。

 

「オラアァッ!!」

すぐに立ち上がることを想定していたのかレックスは大きくジャンプして右腕を構えると、メツ目掛けて右拳を振り下ろしたのであった。

 

「くっ!?」

レックスの右拳に謎の悪寒を感じたメツは横に転がるように回避すると標的を失ったレックスの右拳は甲板に当たり、まるで紙細工に穴を開けるかのように軽々と鉄製の甲板を突き破ったのである。

 

「そこだっ!!」

 

「っ!?」

しかし、甲板を突き破り一瞬動きが止まったのを見逃さなかったメツは回避したあとにレックスに接近すると右腕を掴んだのであった。

 

「悪いが坊主(ボウズ)、お前の厄介な右腕消さしてもらうぜ!!」

そう言ってメツはレックスの右腕を掴んだまま紫色のエネルギーを纏わせ、そのまま放とうとした。

 

「やめろ!!メツ!!」

 

「レックス!!」

レックスの右腕が無くなるという最悪の結果を想像したニアとホムラが叫ぶが無慈悲にもメツはエネルギーを掴んだレックスの右腕に放った。

 

 

 

「なん……だと…っ!?」

 

 

 

はずだったが

 

 

 

「悪ぃが……俺の右腕は嫌になるくらい頑丈でな」

メツのエネルギーを受けてもなおレックスの右腕は健在していた。

しかし右腕を包んでいた包帯が解け、隠されていた右腕が姿を現していた。

 

 

「なに……あの右腕…っ!?」

右腕を見たニアが思わずそう呟いている隣で、ホムラも声を出してはいないが驚愕の表情を浮かべていた。

 

「おいおい…なんだ坊主(ボウズ)その腕は……」

 

「……答えてやる義理はねぇよ」

そう言うと、レックスは右腕を振るいメツを弾き飛ばして距離を取るとおもむろに右手で甲板を殴り浮かせ、そのまま掴み上げて甲板の一部を剥ぎ取った。

 

「オラァッ!!」

そして剥ぎ取った甲板の一部をメツに向かってブーメランのように投げ飛ばしたのであった。

 

「へっ!!こんなもん……っ!?」

向かってくる投げ飛ばされた甲板の一部を見たメツは余裕そうな表情のまま武器を構えたが、そんなメツの前に今まで傍観していたシンが割り込み背中の太刀を抜刀と共に縦に振り下ろし向かってきていた甲板の一部を切断した。

 

「シンッ!?」

 

「ここは引くぞ、厄介な連中が出てきた」

太刀を背中に納刀しながらシンがそう言うのと同時に、古代船の甲板を埋め尽くすように無数の小さな空間の歪みが発生し始めた。

 

「なにっ!?なんなのこれっ!?」

 

「お嬢様!!何かが来ますご用心を!!」

 

「これは一体!?」

突然の空間の歪みにニアとビャッコ、ホムラが驚いている中、レックスだけはお構いなしにメツとシンに向かって走り出していた。

 

「"Die(死ね)"!!」

エンジン音を響かせながら、突進力と炎の推進力を利用して横薙ぎにレッドクイーンを振るったレックスであったがメツとシンは大きく跳躍して回避するとモノケロスの甲板に着地していた。

 

(わり)ぃな坊主(ボウズ)、今回はここまでだ……次に会う時にでも決着(ケリ)をつけようぜ」

 

「チッ!!待ちやがれこの野郎!!!!」

捨て台詞を吐いてメツ、シン、そしていつの間にか目を覚ましたザンテツがモノケロスと共に離れていくのを見たレックスは、舌打ちしながらブルーローズで狙い撃ちにしようと構えたが

 

「っ!?」

歪んだ空間から巨大な鎌のような刃物が飛び出してきたためレックスはメツを狙い撃つのを諦め後ろにジャンプして鎌を回避した。

 

 

 

「うわぁっ!?」

ニアの悲鳴が聞こえレックスが視線を向けると、ニア達にも空間の歪みから出現する巨大な鎌に襲われていた。

 

「クソッ!!」

それを見たレックスはニアとホムラのもとへ駆け出そうとしたが、行く手を(はば)むように空間からツギハギだらけの袋のようなものが現れたのである。

しかし、よく見ればただのズタ袋ではなくハリボテの手足のようなものがついており、さらには個体によって手か足の一部に巨大な刃を付けていたのであった。

そして、ズタ袋の中でボゴボゴと無数の“ナニか”が(うごめ)きまるでひとつの生命体のように動いていたのであった。

 

「テメェら……っ!!」

現れた異形のモンスター……否、悪魔"スケアクロウ"の姿を見たレックスの脳裏には、最愛の人を失ったあの日の光景が

 

 

 

 

逃げろ!!!!

 

 

 

レックス!!

 

 

 

 

 

逝かないでくれ……俺を…一人にしないでくれ……

 

 

 

 

 

 

 

ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ア゙ア゙ーー!!!

 

 

 

 

 

世界に絶望したあの日の記憶が蘇っていた。

 

 

 

 

 

「ア"ア"アァッ!!!!」

レックスの中でドス黒い感情が溢れた瞬間、無意識の内にレックスは獣のような雄叫びと共にレッドクイーンを横薙ぎに振り抜いていた。

渾身の横薙ぎにスケアクロウ達は無惨にも上半身と下半身とに両断されてしまい、体液のようなものを撒き散らしながら消滅していったのであった。

 

 

 

「レックス!!……くぅ!?」

まるで人格が変わってしまったかのようにスケアクロウを殺しだしたレックスを心配するホムラがそばに行こうとするが、スケアクロウ達の猛攻のせいで近付けれなかった。

 

「こんの〜、しつこい!!ビャッコ!!」

 

「はい!!お嬢様!!〘ワイルドロア〙!!!!」

呼びかけるニアに応えるようにビャッコが前に出ると、大きな咆哮と共に衝撃波が放たれ群がるスケアクロウ達をまとめて吹き飛ばした。

 

「ホムラ!!今のうちにレックスの所に!!」

 

「ありがとうございます、ニア!!」

ニアのおかげで道が開かれ、ホムラは礼を言いながらレックスを助けるために走り出したのであった。

 

 

 

 

 

「テメェらがァ"ァ"!!!!」

レックスが叫びながらレッドクイーンを振り下ろすとスケアクロウを縦に真っ二つに切断し、さらには甲板さえも切り裂き刃が深々と食い込んでいた。

 

「オ"ア"ア"アァッ!!!!」

甲板に食い込んだレッドクイーンをものともせず力任せに引き抜き踏み込むと、スケアクロウの集団に向かって飛び出しレッドクイーンを叩きつけた。

 

「まだだ……まだァ"ァ"!!!!」

 

「レックス!!」

まるで何かに取り憑かれたかのようにうわ言のように呟きながら次の獲物に向かおうとしたレックスの背中にホムラが抱きつき引き止めた。

だがレックスはホムラを振りほどこう暴れるのであった。

 

「離せぇ!!俺は……俺はアイツらを!!!!」

 

「もうやめて!!これ以上あなたが……レックスの苦しむ姿を見たくない!!!!」

 

「っ!?」

 

 

 

 

 

私があなたを守るわ!!レックスの苦しむ姿はもう見たくないから

 

 

 

 

 

ホムラのその言葉を聞いた瞬間、レックスは過去に大切な人が約束してくれた言葉を思い出していた。

 

 

 

「レックス!!」

 

「…ぁ……ホム…ラ…?」

ホムラの呼び掛けによって意識が戻ったレックスであったが、そんなスキを見逃すスケアクロウ達ではなく数十体のスケアクロウが一斉に飛びかかりホムラとレックスを切り裂こうと刃を構えた。

 

 

 

 

 

 

その時

 

 

 

 

 

 

突然、空から巨大な火の玉が降ってきてレックス達に襲いかかろうとしていたスケアクロウ達を燃やし尽くしたのであった。

 

 

「これは…!!」

 

「レックスー!!!!」

突然降ってきた火の玉にレックスは驚くが、空から聞き慣れた声が聞こえ上を見ると、これまた見慣れた巨神獣(アルス)の姿があった。

 

「ジイさん!!」

 

「レックス!!早くワシの背にのるんじゃ!!」

そして、セイリュウは古代船の横に並ぶように降りてきたのであった。

 

「あぁ!!…ホムラ!!ニア!!……来い!!」

 

「はい!!」

 

「ぅえっ!?」

 

「お嬢様、私の背中に」

ふたりにそう言ってレックスはセイリュウに向かって走り出し、ホムラもすぐに答えてレックスと共に走り出した。

ニアは突然のことに一瞬遅れてしまうがビャッコに背中に乗るように言われ、そのままビャッコと共にセイリュウに向かって走り出した。

 

当然、それを黙って見ているスケアクロウ達ではなくすぐに追いかけるが跳ねるように移動するゆえにほとんど追いかけれていなかった。

 

「あいつら早く動けないみたいだよ」

 

「なら好都合だ!!さっさと乗り込め!!」

レックスがそう叫んだ瞬間、突如背後からギャリッギャリッと金属同士が擦れ合うような音が聞こえてきたのである。

不思議に思い振り返ろうとするレックスだったが謎の悪寒を感じ取った彼は叫んだ。

 

「ふせろ!!!!」

 

「キャアッ!?」

 

「うぉわっ!?」

突然の叫び声に驚きつつもホムラとニア、ビャッコが伏せるとレックス達の頭上を回転する黒い物体が通り過ぎていった。

 

 

 

しかし

 

 

 

「ウゴァァッ!?」

 

「ジイさん!!」

標的を見失った黒い物体はそのままレックス達を待っていたセイリュウにぶつかり血しぶきが舞っていた。

黒い物体はそのまま跳ね上がるとセイリュウの背中の上に着地してその姿を現した。

よく見れば黒い物体は無数の刃を全身に身に着けており手足の部分もすべて大小の刃物で構成されていた。

そして体は先程のスケアクロウ達と同じようなズタ袋のような体をしているが黒色かつそのサイズは一回り大きかった。

 

「この野郎!!」

共に生活してきたセイリュウを傷つけられ頭に血が登ったレックスはブルーローズを抜き黒い物体に向かって引き金を引いて撃つが、黒い物体"メガスケアクロウ"はその巨体に似合わぬ動きで上に跳んで銃弾をかわし、背中の大きな刃を下にして落ちてきたのであった。

 

「なっ!?」

想像以上の動きにレックスは驚くがすぐに後ろに跳んでメガスケアクロウの落下攻撃を回避したが、メガスケアクロウはすぐに起き上がり手の部分に付いている刃を手裏剣のように飛ばしてきた。

これにはレックスも度肝を抜かれたが考えるよりも先に体が反応して動き、レッドクイーンを逆手で下から斬り上げて飛んでくる刃を弾いたのだった。

 

「アァッ!?ウザってぇ!!」

メツとの戦いから悪魔共との戦いと戦闘続きでストレスが溜まっていたレックスはそう言うと、ホムラを助けた時のように右腕を振りかぶり届いていないにも関わらず殴るような動作を行った。

そこまではあの時と同じであったが今回は少し違った、何もない空間を殴りつけた瞬間にレックスの右腕から青い光が漏れ出し、そこからかろうじて手の形をした(もや)のようなものが伸びてメガスケアクロウを掴むとレックスの方へと引き寄せ

 

「飛んでいきやがれ!!」

メガスケアクロウを右腕で掴むとハンマー投げのようにグルグルと回って遠心力をつけ、こちらへ向かってくるスケアクロウ達に向かってメガスケアクロウをぶん投げたのであった。

投げられたメガスケアクロウはスケアクロウ達にぶつかり、運のいい者は弾き飛ばされ、運の悪い者はメガスケアクロウの刃で真っ二つにされていた。

 

「ハッ!!"Jack pot(大当たり)"!!」

 

「レックス!!」

スケアクロウの群れのド真ん中にクリーンヒットしたのを見てガッツポーズをするレックスを呼ぶ声が聞こえ、そちらを見るとホムラとニア、ビャッコがすでにセイリュウの背中に乗っていた。

 

「今行く!!ジイさん、飛べそうか!?」

 

「この程度かすり傷じゃ、それよりもレックス急いで乗るんじゃ!!」

 

「あぁ!!」

そう言って、レックスは甲板から大きくジャンプしてセイリュウの背中に乗り込んだ。

 

「急いでここから離れろ!!」

 

「分かっとる!!しっかり掴まっとれ!!」

セイリュウは大きく翼を羽ばたかせ飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛び去っていくセイリュウをシンとメツが静かに見つめていた。

 

「戻るぞ」

 

「あぁ?追わないのか?」

 

「目覚めたのなら、それで十分(じゅうぶん)だ……あとはヨシツネに探らせる」

 

「ふん…そういうことか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一章 出逢い

 

 

 

 

 




レックスの右腕の裏話

腕が変異してからは悪魔達を相手に殴る、回復力を高める、引き寄せる、ということしかやったことがないので右腕からはほとんど幻影の腕を出すことは出来ない

出せたとしても(もや)のような不安定な幻影しか出せない上に、そこまで力が無いため直接右腕で殴った方が早い
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