はくのんは転移した   作:鎖佐

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今更ですがオリ魔法とかも出します。


最奥のガーディアン

 長い、長い迷宮攻略も遂に山場を迎えた。

 奈落に落ちた階層から降りること100層。先んじて下の階層を見たとき、明らかに人工物の階層となっていることに気付き、一度引き返した。

 

 ユエのいた階層とは違う。階層丸ひとつが人工物なのだ。明らかに何かあると訴え掛けている。

 ハジメは武装の最終調整を行い、全員に神水の入ったケースを渡す。加えて、口に神水の入ったカプセルを仕込み、保険を掛ける。

 

 白野の皇后特権はリキャストをリセットし、どの天職でも即座に使えるようにする。もうこの戦いに戦闘要員として活躍する見込みは無いと判断し、状況を見て結界師か治癒術師になると伝えている。

 

「用意は良いな」

「勿論」

「んっ」

 

 ハジメ達は、遂に最後の試練を受ける。

 人工物の階層を進み、魔法陣は現れた。

 

====================================

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:66

天職:錬成師

筋力:1782

体力:1881

耐性:1863

敏捷:2205

魔力:1602

魔耐:1602

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・熱源感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・金剛・威圧・念話・言語理解

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岸波白野 17歳 女 レベル:55

天職:

筋力:1350

体力:2250

耐性:3000

敏捷:3600

魔力:6000

魔耐:3000

技能:皇后特権・投影魔法・道具作成〔+狐之嫁入〕・自己改造・先読・気配操作〔+気配遮断〕〔+幻踏〕・回復魔法・言語理解

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現階層 最終層 

前方、ヒュドラ 討伐記録なし。

当方、ハジメ、白野、ユエ 不足事項なし。

 

 

 体長30m以上、6つの頭を持つ竜が不遜なる侵入者に吠えた。

 

「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」

 

 ハジメはプレッシャーに飲まれかけるも、一歩前に出た白野の背中を見て冷静さを取り戻す。

 生きて帰す。生きて帰る。

 そのために、目の前の敵が邪魔だ。

 

「デカ物が、まず一撃喰らっていけ!!」

 

 ズパアアアアアン!!

 

 初手を切ったのはパーティ最高火力であるシュラーゲンの一撃。サソリモドキから採れたシュタル鉱石によって性能が増した銃撃は最早レーザー兵器の如く、空気を焼いて赤い軌跡を残す。

 

 胴体を狙った射撃は黄頭が射線に並ぶことで防がれ・・・頭を吹き飛ばした後胴体に穴を空けて向こう側の壁にクレーターを作り出した。

 

「!!!クルルアアン」

 

 敵が圧倒的脅威であると理解したヒュドラは残った5つの頭全てが同時に行動を起こす。

 赤と青の頭はハジメに向けて炎と氷の弾幕を放つ。緑頭は角度を変えて不可視の風の砲弾を放つ。そして白頭は黄頭を回復する。

 

 迫る炎と氷に対し、ハジメはアクションを取らない、目の前に白野がいる。ならそれらは届かない。

 

「聖域をここに、〝聖絶〟」

 

 ハジメ達が気配遮断を十全に扱えるようになってから、白野はメインの天職を結界師に切り替えた。今では深層の魔物の軍勢すら押さえ込める強度が、この聖絶にはある。

 すなわち白野の後ろはハジメにとって絶対安全圏であったのだ。

 黒頭の視線が、最大の脅威へ向く。

 

「なっ、魔法が消された!?」

 

 絶対安全圏で、あったはずだ。

 

「白野!!」

「はい?え?ちょっと!?」

「〝緋槍〟こうほ、ハジメ!?」

 

 聖絶が消され無防備となった白野を庇う。もう、自分のせいで白野が傷つくところを見たくない。これ以上、自分の弱さで誰かが傷つくところなど・・・!!

 ハジメは白野を地面に押し倒し、錬成によって迫る風の砲弾を防ぐ、攻勢に出るべきハジメが守勢に出たことでヒュドラは次の手を打つ。

 

 炎と風が同時に放たれ辺りを焼き、黄頭による地面の隆起で逃げ場を塞がれる。

 そして、黒頭の視線は次のターゲットに向けられる。

 

「いやぁああああ!!!」

 

 劈く悲鳴はユエからだ。迫る火炎に何の対策もできて居ない。

 ハジメはそれを見て錬成の壁をユエまで広げる、より逃げ場が無くなった形だ。

 

「あ~、黒は精神攻撃だったか」

 

 事ここに至って白野はようやく理解する。ハジメもユエも先ほどからうわ言の様に「もう傷つけさせない」や「一人は嫌・・・!!」などと言っている。

 ついでに言えば今、チェックを掛けられている。

 

 青頭が白野達の頭上に巨大な氷塊を生成していた。落下すれば白野の聖絶でも耐えられないだろう。

 

 離脱は出来ない。白野に二人を連れて逃げることは愚か、石壁を越えて一人で離脱することすら出来ない。

 

「聖絶じゃ無理、か」

 

 必要なのは、絶対に砕けない盾。

 

 

 

 

 

 白野はそれを、知っている。

 

―――やれやれ、あの盾は其処まで万能ではないのだがね。まあ、この程度の攻撃を凌ぐだけならば、訳ないが。

 

「〝聖絶〟」

 

 白野の中の何かが起動する。最近見る戦争の夢、月の記憶。その中で見た、最も確かな護り。

 白野の投影魔法は彼の投影魔術とは異なるものだ。ゆえに、異なるプロセスで、その贋作を創り上げる

 

「―――〝投影(トレース)()開始(オン)〟」

 

 こぽりと泡立つ白野の心象。光の射さない暗い海の底の底。拾い上げるべきモノが、眠っていた。

 

「〝熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)〟」

 

 光の壁はそのテクスチャを書き換えられ、その属性を変換され、その性質を代入され、その性能は原典を忠実に再現する。

 その姿は鮮やかな7枚の花弁となる。

 

 そして遂に氷塊は落とされる。

 最早形容する事さえ難しい、衝撃波にも似た大音量が鳴り響く。

 盾に着弾した時点で花弁は4枚散った。

 残り3枚

 

 

 

 

 

ハジメはその爆音を聞いてようやく正気に戻った。

周囲を見れば周りは壁に囲まれ、頭上には自分達を圧殺せんと迫る氷の塊。

そして、見たことは無いが心当たりがありすぎる盾を展開した白野がいた。

 

「ああ、情け無いな、全く」

 

 ガリガリと頭を掻く。まさかこの局面で白野の足を引っ張ることになるとは、自分で自分の首を絞め落としたくなる。

 だが、後だ。まず目の前の敵を殺す必要がある。

 シュラーゲンならば頭上の氷を粉砕することも出来るだろう。だがそれでは意味が無い。

 今この石壁の向こうでは6つの竜頭が追撃を構えているに違いないのだから。

 

 つい、と袖を引かれる感触が合った。ユエだ。

 瞳に涙を浮かべていた。恐らくは黒頭からの精神攻撃を引きずっているのだろう。

 

「ユエ、悪いが後にしよう」

「でも・・・でも、私はこんなに足手まといで・・・見捨てられたら・・・もう・・・わたしは」

「そうだな、怖いだろうよ。見捨てられるのも、一人になるのも」

 

 ハジメはユエを抱き寄せてシュラーゲンを構える。すぐさま次弾を装填できるよう弾丸も出しておく。

 

「でも、後にしよう。俺だって今、自分が情けなくて堪らない。気にして無い風を装ったって、白野が両腕を失ったのは俺のせいだ。俺の罪だ。だというのにこの体たらく、無様だよな」

「ハジメ・・・」

 

 パキンと花弁が一枚散ったのが見える。白野が限界を迎える前に、勝負を決める必要がある。ハジメはさらに深呼吸して狙いを定める。岩の、壁越しにだ。

 

「この戦いが終わったら、これまでと、これからの話をしよう。一人が寂しいんだろ?俺達がこの世界が居なくなった後のことが不安なんだろ?」

「うん」

「俺も同じだ。白野の腕を治せなかったら、白野が俺のせいで死んでしまったら。そんなことばかり考える自分が居た。でも、それはもう、止める」

 

 ハジメは石壁に向けてシュラーゲンを構える。チェックを掛けて満足するような甘い敵に向けて、逆撃の合図を送る。

 

「今の白野を見れば分かるだろ。俺達に、不可能なんて無い。敵は倒す。腕は治す。故郷に帰って、ユエは白野の妹になる。何も難しいことなんて、無いんだ」

 

 ズパアアアアアン!! ズパアアアアアン!! ズパアアアアアン!! ズパアアアアアン!!

 

 シュラーゲンの怒涛の4連射が岩壁をまるでクッキーでも砕くかのように粉砕し、ヒュドラの白、黄、青、緑の頭を吹き飛ばした。

 

 即座に黒頭はハジメに精神攻撃を放つ。

 ユエがハジメを庇い、炎に焼かれる幻覚を見る。だが、もう間違えない。

 

「もう、守られることを躊躇わない。俺の仲間は最強なんだ」

「〝砲皇〟〝破断〟!」

 

 迫る炎はユエの放つ風の砲弾によって散らされ、水の刃によって飛び火1つすらハジメには届かなかった。

 さらにユエは氷の初級魔法をシュラーゲンに向け、過熱したシュラーゲンを冷却。ハジメは即座に残りの2頭を粉砕し、氷の塊を粉砕、破片をユエが魔法で溶かした。

 

「はあ・・・はあ・・・遅いわ。壊すの、遅すぎ・・・!!」

「お、おう、正直すまんかった」

「ごめん、お姉ちゃん」

 

 確かに白野が決死の覚悟で氷塊を受け止めている間に、随分と長話をしたと思う。

 

「そういえば、あの盾、何なんだ?ロー・アイアスにしか見えなかったんだが」

「え、知ってるの?」

「まあ、オタクだからな」

「・・・???」

「知らないのか?フェイトとかエミヤとか」

「知らない」

 

 Fateシリーズを知らない白野からすれば、オタクであることとロー・アイアスを知っていることが繋がらない。ハジメからすれば干将・莫耶やロー・アイアスを知っているのにエミヤを知らないことが理解出来ない。

 

 お互いにお互いが?を出し合ったところで、それは起きた。

 

「お姉ちゃん!!」

 

 ユエの叫びを上げた視線の先、倒れたはずのヒュドラは7つ目の頭、銀頭を生み出してこちらを睥睨していた。

 小さな予備動作の後、光が放たれる。白野の限界突破中の〝神威〟に並ぶ、暴虐の光だ。

 

「〝聖絶〟」

「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さず――〝聖絶〟」

 

 ユエと白野が咄嗟に聖絶を張り、白野がもう一枚聖絶を重ねる。だが、ユエは結界系の魔法を不得手である。その上、白野の天職は先ほどの〝熾天覆う七つの円環〟を解いた時点で強制解除され、天職なし状態になっていた。

長くは持たない。

 それを直感的に理解したハジメは即座に石壁を錬成する。白野はアイテムボックスから鉱石の塊を取り出し、ハジメはより強固な壁を作る。

 出来うる限りの防御手段をとって、破滅の極光と対峙する。二枚の結界は数秒の拮抗の後粉砕され、石壁を溶かし、ハジメは破壊される側から石壁を錬成する。

 まるでかつてのサソリモドキだ。そう、作った石壁ではまるで足りないところまで、一緒だ。

 

 極光がやんだ先、ハジメは全身から煙を上げて仁王立ちしていた。魔力が空になった瞬間地面から手を放し、シュラーゲンを盾に白野とユエの前に立ちふさがったのだ。

 そして同じく魔力を完全に使い果たし、体と鏡を盾にしてユエを守った白野も崩れ落ちる。

 

 動けるのは、ユエだけだ。

 

「〝凍獄〟!」

 

 最上級の氷魔法で壁を作り盾にする。先ほどの光線が連発可能な技であれば氷の壁ごと何もかも薙ぎ払われただろうが、幸いにも銀頭は動いていない。勿論、あんな高出力の技が連発できる訳が無いという予想の上での判断だ。

 ユエは自分を守るために覆いかぶさり、今はユエに凭れかかる白野に声を掛ける。

 

「お姉ちゃん!?」

「だ、大丈夫・・・意識は、あるけど、ちょっと動けない・・・ポーションを」

「う、うん」

 

 白野の口にポーションをあて、白野はそこから一口飲んだ。消耗具合からして到底足りる量ではない。

 

「ユエ、ハジメを優先しろ。あと数秒あれば私は動ける、そこから如何にか時間を稼ぐから、隙を見て最上級を」

「だ・・・ダメ!動けるようになったら、どこか・・・あの柱に隠れて!」

 

 泣きそうな顔をしながらも、ユエは白野の指示に否と返す。目の前の人が、死を前提にした行動をすると、直感的に理解したからだ。

 なる程ハジメはこんな気持ちになったのか、とユエは察する。ユエにこの状況を如何にかする方法は思いつかない、その点命を掛ければ2人を生かす方法を思いつく白野はユエより優秀だ。

 

 その優秀さが、とても許せない。

 自らの無能が、絶対に許せない。

 

「・・・時間稼ぎなら、私の方が適してる」

「ユエ!!」

 

 ユエは白野の周りに氷の壁を作る。透明度を意識し、動けるようになれば援護が出来るようにしておく。白野に頼ることは、未だ変えられない。でも、頼って欲しいと思うことは我侭だろうか。

 

「ハジメ!」

「ああ、大丈夫だ。体中が痛いが如何にかな」

 

 ユエがハジメの方に向かったとき、ハジメはすでに立ち上がっていた。負傷はハジメの方が重いはずだが、すでに立ち上がれている点からして、白野の先ほどの結界魔法は余程負担のかかる物なのだと察することが出来る。

 

「っクソ、左目が殆ど見えねえ、神水飲んでコレとは、ちょっとヤバイかもだな」

「ハジメ・・・」

「ん?ああ、心配すんな、この戦いがじゃねえ。治すもんが1つ増えちまったってだけだ」

「・・・ん、治すために、生きるために」

「ああ、アイツが邪魔だ」

 

 そして、遂に氷の壁は砕かれる。

 先ほどとは違い、無数の光弾がユエとハジメに向けられる。

 

「白野が見てんだ、情けねえところは見せられねえ。ユエ、掴まれ」

「ん!」

 

 ユエの手を引いて背中に背負い、ハジメは宙を蹴る。

 迫る光弾をシュラーク&ドンナーで打ち落とし、リロードの隙をユエが魔法で相殺する。

 空歩で避け、縮地で躱し、聖絶で防ぎ、シュラークで反撃する。

 

「(もっと、もっとだ。遅すぎるんだよ、アイツも、俺も!!)」

 

 空歩をより小刻みに発動し、縮地を連続で発動する。すでに戦闘で扱いきれる速度を悠に超えていた。

 シュラークとドンナーに一発だけ残して回避に全力を傾ける。ユエは身体強化の応用で三半規管を強化し、如何にか目を回すことなくしがみ付いている。

 

「(まだだ!!もっと先!!もっと早く!!もっと速く!!)」

 

 既に銀頭はハジメを捕らえきれず、唯管光弾をばら撒く弾幕戦術に移っている。その隙間を縫うように避けながら、躱しながら、さらに加速する。

 

 加速して、加速して、加速して―――

 そして遂に、壁を越えた。

 

〝瞬光〟発動。

 

 

 

『最高威力でぶち抜く。手伝え』

 

 辿りついた先は、銀頭の真上。シュラークとドンナーを真下に向ける。その手に添えられたのは、この迷宮で出会った新たな仲間、岸波ユエだ

 

「〝天靂〟」

 

 決着の瞬間に、しかして彼女が何もしないなどありえない。

 共に戦い続けた相棒、岸波白野が魔法を唱える。

 

「其の剣は砕けることなく、其の誇りは欠けることなく、其の意思は毀れることなく、あらゆる難敵を撃ち滅ぼす ―――〝真打〟」

 

 

 2丁の拳銃に宿る強化魔法により、その耐久性が跳ね上がる。ユエの雷属性魔法が電磁加速の出力を跳ね上げる。

 2人の助力を得てハジメは魔力を放出する。シュタル鉱石に魔力を流し、圧倒的出力に耐える強度を保持し、〝纏雷〟を最大出力で発動する。

 

 2発の弾丸は銀頭の1点を精確に撃ちぬき、貫通する。

 銀頭は遂に倒された。

 

 

 

 オルクス大迷宮 完全攻略

 メンバー 南雲ハジメ、岸波白野、岸波ユエ




書き溜めに完全に追いつきました。暫くお休みを頂きます
ローアイアスを使っちゃいましたが安定して使えるような代物ではありませんし、今後も早々使うことはありません。使うだけで限界突破を使ったレベルの疲労があります。

原作知識について、(ありふれ読了、EXTRA、CCCクリア)

  • ありふれ、EXTRA両方知ってる
  • ありふれのみ知ってる
  • EXTRAのみ知ってる
  • 両方知らない
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