はくのんは転移した   作:鎖佐

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エンダーリリィ面白いよ。みんなやろうよ。
二次創作やるなら呪術廻戦あたりと相性良さそう。誰か書いて。


殺さない決意

 42名のハウリア族を連れて白野達は樹海に向けて歩いていた。先頭を歩くのは道案内のカムと白野、最後尾にハジメとユエ、そしてシアだ。子供たちは後ろの方についており、ドパンドパンと魔物を蹴散らすハジメをキラキラした目で見ていた。

 

 最初は怖い人だと思っていたが、なんかカッコイイ武器で派手な効果音とエフェクトをまき散らしながら戦うハジメは、やっぱりカッコよかったのだ。しかも、眺めていたら「モタモタするな、早くいけ」と言いながら口に何か甘い物を放り込まれた。糖蜜の塊とは違った味わいに、子供たちはすでに虜になっていた。

 なお、その飴玉を作ったのは白野である。

 

「へぇ~~~、ハジメさん、子供には優しいんですね。なんだかちょっと意外ですぅ」

 

 そんなハジメにウザがらみするシアにハジメは青筋を浮かべる。コイツウザキャラだったのかと。

 当然大人しくされるがままになる理由もないのでシアの口に指弾で飴玉をぶち込む。

 

「アボグッ…て、照れ隠しですかあ?……、んっぶ、あんれすかこえぇえええ!?」

「8倍濃縮ミント?味だ。しばらく鼻が仕事しなくなる」

 

 当然後味はお察しであるし、アメであるためすぐさまかみ砕いて飲み込むことも出来ない。もし噛み砕いたら今味わっている数倍の清涼感が喉や鼻を蹂躙していく。無濃縮なら普通のミント?味なのに…

 

「白野の趣味?なんだよなぁ…」

 

「ん、困った悪癖」

 

 ゲテモノ作りが趣味なのかと言うほどに料理の際に要らないことをやりだすのが白野である。打率は六割五分程度、材料がほとんど揃わない迷宮深層でよくもそこまでバリエーションを増やせると感心したほどだ。それでもハジメやユエよりは上手く料理出来るため、義手を手に入れてからは白野がずっと厨房に立っている。

 

「しょれでもこれ…ひゃーはなが‼スースーしましゅ‼」

 

 恐らく初めてミント?味を味わっただろうに、その最初が8倍濃縮と言うのは酷い仕打ちかもしれない。ミントスキーもこれは無理だろうという味なのだから。それを吐き出さずに律儀に舐め続けるあたりシアは人が良いのだろう。

 

「白野曰く罰ゲーム用だそうだ。それ食って大人しくしてろ」

 

ガリリ

 

 そんな音が聞こえた。ハジメはえ、マジで?と思わず振り向くと、そこにシアは居なかった…いや、視界の下に何か見える。ウサミミが見える。

 

 …涙目で蹲っていた。馬鹿なのか?

 

「馬鹿だろ」

 

「うう、今わらしの事、馬鹿らって決めつけまひたね!?」

 

「ん、自覚が無いとは救いようがない」

 

「誰が救いようのない馬鹿ですか‼というよりも、聞きたいことがあるんです‼…お二人とも、魔法陣や詠唱無しで魔法が使えるって、本当でアイタア‼」

 

「周りに人がいる状況でなに言ってやがる馬鹿ウサギ」

 

 鋭いチョップがシアの脳天に突き刺さった。魔法を魔法陣や詠唱無しで扱える存在、そんなものは魔物しかいないのだ。悪く捉えればシアのセリフは人型魔物なんですか?と聞いているようなものだ。

 勿論原因は分っている。だが、このデリケートな問題を周囲に子供とはいえ人がいる状況でするようなものではない。

 

「す、すみません、ちょっとテンション上がっちゃいました…」

 

「いや、普通不気味だとか思うところ……まさか」

 

「…シアも?」

 

「はい‼私も魔法陣や詠イッタアア‼」

 

「猶更気を付けろ間抜けウサギ‼」

 

 持たないはずの魔力だけでなく、魔法陣や詠唱無しで魔法を発動する魔物にしか出来ないはずの技能、つまりは〝魔力操作〟を持つ忌み子。それが、シア・ハウリアとハウリア族が追放された理由だった。…やはり人前で暴露する秘密ではない。いくら周りにいるのが子供とはいえ…いや、子供だからこそきちんと隠し通すべきだろう。もし子供たちから秘密が漏れたら、彼らは抱かなくていい罪悪感を持つことになるのだから。  

もう知られている、なんていうのは言い訳にもならない。事の重大さを正しく理解しているかなんて、分らないのだから。

 

 ハジメとユエは最後尾からさらに数歩分後ろを歩いてシアと話を続ける。元々白野が大抵の魔物を蹴散らすため、ハジメ達の仕事は多くない。ユエだけでも置いていこうかと思ったが、先天的に〝魔力操作〟を持つ者同士、気になる話だろうと思ったため二人とも一行から距離を取った。

 

 そうして後回しにされたシアの身の上話や、追放についての詳細が明かされた。

 

「お前、本当に残念だな。他人の恋路に出歯亀した挙句、一族全員追放された気分はどうだよ」

 

「こ、言葉が刺さりますぅ…」

 

 すでに抱いていた敬意だとかなんだとかはどこかに消し飛んでいる。きっと諦めない強さではなく「現状を理解できない馬鹿なんだろう。」

 

「ん、これはちょっと、酷い」

 

「ばかじゃないですぅ」

 

「おっと、口に出ていたか」

 

 さて、とハジメは腕を組んで思考を巡らせる。ハジメは勿論白野やユエも、樹海に到着した後すぐ、ハイさよならと放り出す気は無い。曲がりなりにも追放された場所に向けて逆走させているのだ。流石に不義理が過ぎる。

だが、それでも長い間面倒を見る気は無い。そもそも迷宮攻略をするなら数週間から数ヶ月単位で迷宮に籠る可能性がある。その間にフェアベルゲンの兵士か衛兵がハウリア族を追い出すだろう。

武器やアーティファクトでフェアベルゲンを黙らせる…武力ではなく対価的な意味で取引できる可能性もあるが、シアの問題は予想より根が深い。ハウリア族の追放を無かったことに出来ても、シアは難しいだろう。

 

 ふと、ユエが暗い顔をしているのが目について、思考を切り上げる。少なくともシアやハウリア族の優先度などそれ以下だ。

 

 ユエの肩に手を回して抱き寄せる。拳一つ分の距離が埋まり、触れ合うような距離である。

 

「…えっと、ここでどうして二人の世界を作ってるんですか…?『これからは俺が守るよ』とか言って頭を撫でるところでは?私、イチコロですよ?ヒロインゲットですよ?…どーしてまだ無視するんですかぁ‼」

「黙れポンコツ残念ウサギ、白野から連絡だ」

 

「え?」

 

「帝国兵が崖上にいるんだと」

 

 

 

ハウリア族の行進は止まり、崖上に続く階段前には白野とカムが待っていた。

 

「さて、どうする」

 

 ユエは朧気ながら、ハジメは正確に白野の言葉の含意を汲み取った。だが、関係の浅いカムやシアは冷や汗がつたう。ここで見捨てられては一族の破滅だ。

 

「ど、どうする、というのは…ここで立ち去るのを待つか、追い払うか…という意味ですか?」

 

「殺すか、殺さないかだ」

 

 ハジメが白野の真意を伝える。息を呑むのはシアである。白野は何というか、無茶苦茶な身体能力をしたヤバい人というイメージが後からついたが、最初の交渉で親身になってくれた優しい人というのが第一印象だ。そんな彼女が同族と言える人間族を躊躇わずに殺すという選択肢を上げたのだ。意外という言葉では言い表せない衝撃があった。

 

「で、でも、同じ人間族なんですよね?それに、帝国と敵対することに…」

 

「そう、そこだよ。今後旅を続ける以上、帝国と敵対することは避けたい。かと言って、立ち去るまで待つというのも時間の無駄。だから、目撃者を一人残らず殺してしまうのが、現状の最善手になる」

 

「ん、そうだと思った。白野は良いの?人を殺すことになる」

 

「必要ならやる。生き残りが私たちの事を指名手配でもしたら厄介なんてものじゃない。だから、全員殺すか、納得させて立ち去らせるかだ」

 

 勿論、武力行使以外で帝国兵を納得させて立ち去らせる。まず不可能であることは間違いない。彼らは奴隷獲得という『仕事』に来ているのだ。話し合いで納得するわけもなく、金銭…迷宮にあった金などの貴金属での買収も、むしろ彼らの戦意を高めるだけ。負傷させずにボコボコにする?不可能では無いだろうが、時間が掛かりすぎる。

 殺すだけなら、1分も掛からないのだ。

 

「そして、私達に彼らの殺害を躊躇う理由が、無い」

 

 道徳?奴隷獲得に来た相手に一体どんな道徳や倫理が求められるのか。

 殺人罪?残念だが白野もハジメも日本人だ。異世界での殺人は、日本において罪に問われない。

 …罪悪感?そんなもの、もう躊躇う理由にはならない。

 

「ハジメ、手榴弾が欲しい、30人程度なら2発とナイフで余裕だ」

 

 全員殺すことは、すでに決定事項らしい。極論ここで手榴弾を渡さなかったところで影響はない。10秒で終わる仕事が15秒程になるくらいだ。

 

「本当に殺すんだな」

 

「勿論、ハジメが手を出す必要はないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが断る

「へぁ?」

 

 一瞬、南雲ハジメの画風が変わった。しばらくして、呆けた白野もしばらくして表情を崩し始めた。

 

「ふ…ふふっ、な、ナニッ!!

 

「この南雲ハジメが最も好きな事のひとつは自分で強いと思ってるやつに「NO」と断ってやる事だ。…ネタ知ってんのかよ」

 

 正直無茶苦茶恥ずかしい。どうせ知らないだろうとネタに走ったのに、まさか笑いながら応じられるとは思わなかった。おかげで最後までやる羽目になった。頼むからネタの途中で笑うのは勘弁して欲しい。

 

「むう、なんだか二人の世界」

 

「ああ、ごめんごめん。うん、じゃあ断られちゃったし、殺さない方法でやろっか。面倒だなあ」

 

 そう言う白野は硬くなっていた表情を和らげていた。ハジメは一人、選択肢を間違えなかったことにホッと一息、ため息をついた。

 

 

 

 

 

 人を殺すという事に、関わりすぎた。

 今回の出来事は白野に自分を客観的に見直す切っ掛けになった。

 

 そもそもかつての聖杯戦争、これ自体が殺し合いだった。

 子供、軍人、友人…岸波白野の中には平行世界とも言える3パターンもの戦いの記憶が、矛盾なく存在する。

 結局決勝戦までは行けなかった。私の中のアーチャーの残滓が言う限り、何らかのアクシデントによって聖杯戦争から抜け出したのが今トータスにいる岸波白野だ。

 サイバーゴーストという特殊な例を含めて、15回の戦いの記憶があった。

 

 なにより、白野にとって最も大きな殺しの記憶は、やはり今の人生における9歳の時に起こした、あの事件だ。

 

 

 

 昔から岸波白野は浮いた子供だった。

 

 聡明なようでいて意志薄弱。親がいないということの意味を僅か3歳で理解して、施設の大人たちの言うことをよく聞く人形のような子供だった。

 

 自分より小さい子の面倒を見ながら、我儘を何も言わず、楽しそうに笑うことも泣きわめく事もないお利巧で、不気味な子。大人達からはそんな評価だった。

 

 別段困ることは何もないから、大人達は白野に対してさして構わなかった。ふと気づくと出かけていることもあるが、5時前にはキチンと帰ってくる。何も問題は無かった。

 

 自分の居場所はここじゃないという、漠然とした思い。そんな理由から施設をふらりと抜け出しては、近くの公園のブランコを揺らしていた。

 

「ねえ、きみ、なまえは?」

 

 そんな時、名前を聞かれた。白野は一言、「きしなみ、はくの」とだけ答えた。「ふーん」とその少女は続けた後

 

「はくのちゃん!!ひま?ひまそうだね!!かくれんぼしよ!!」

 

 そう誘った。断る理由もないので、しばらくかくれんぼや鬼ごっこで遊んでいた。待ち合わせは無く、会える日、会えない日はあったが、会うたびに少女とその友人たちと遊んだ。

 

 

 

「はくのって親いねーんだろ?コジって奴なんだって‼」

 

 それは友人たちの一人が放った、悪気を僅かに含んだ一言。決してその少年は岸波白野を嫌っていた訳ではない。男子特有の悪戯程度のものだった。

 子供だったのだ。世の中に、悪戯では済まないセリフがある等と、理解できていなかったのだ。

 

 ほとんどの子供たちはコジの意味が分からなかった。だから親に聞いたのだ。そして孤児の意味を聞き、二言目には「もう関わっちゃダメよ」と言う言葉。

 

 その少年は決して白野を虐めたかったわけではない。けれど、引き金は引かれた。

 苛めや暴言は白野に向けられ、白野はそれに取り合わなかった。事実だし、暴行、と言うレベルでは無かったため、無視出来ていた。

 

「いいかげんにして‼そんなこと言うならもうどっかいってよ。このバカ‼バーカ‼どっかいけ‼」

 

 無視できなかったのは、中村恵理という、初めて白野に声を掛けた少女だった。

 一緒に遊んでいた友達を一人残らずボコボコにして叩き返した少女は、息を切らせながらも堂々と言ってのけた。

 

「えりとはくのはしんゆうだから、とうぜん!!」

 

 初めて、選ばれた。

 親に捨てられ、施設の人にも構われず、居ても居なくても変わらない誰かだった少女は、今初めて、

 親友に選ばれた。

 

 その後の事はよく覚えていない。とりあえず泣いたことだけ覚えている。そのままいつの間にか施設に帰っていて、泣き腫らした目を少しだけ心配された気がする。

 

 けれど、もうどうでもいい。どうでも良かった。だって白野は選ばれた。最早赤の他人に如何思われようと、知った事では無かった。

 

「えりちゃん。だいすき」

 

 だから、9歳の時。恵理を押し倒すあの男を見た時、殺してやろうと思ったのだ。

 目の前で男が死んだとき。良しと思ったのだ。

 




うん、まあ、岸波白野の人物像がオリジナルになってくるのは仕方ないよね。ゆるして

原作知識について、(ありふれ読了、EXTRA、CCCクリア)

  • ありふれ、EXTRA両方知ってる
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