はくのんは転移した   作:鎖佐

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初の戦闘描写、正直はくのんの話し方に一番悩む。
7/5ステータスを若干変更しました。気にしなくても大丈夫です。


戦闘訓練

 岸波と南雲の評価は2週間で大きく変わった。

 

 一つは岸波白野の正体不明スキル、皇帝特権の効果が分かったことだ。

 その効果は適正のある天職に一時的になること。

 これにより白野は剣士、拳士、治癒師、結界術師、炎術師、風術師、土術師、暗殺者、錬成師・・・そして、勇者にすらなることが出来た。

 無論万能ではない。特に勇者にいたってはたった3分間だけであり、言ってしまえば白野に許された限界突破のような扱いだった。さらに、勇者になると限界突破が使えるようになるのだが・・・活動時間、僅か30秒である。

 だが剣士なら10分間の使用でリキャストが30分。30分なら90分といったかなり融通の利く性能になっていた。普段使う天職を例に挙げるとこうなる。

 

(使用時間/リキャスト)

剣士      1:3

拳士      1:2

治癒師     1:3

結界術師     1:5

炎・風・土・闇術師 1:4

暗殺者     1:3

錬成師     1:1

勇者    3分/12時間

 

 教会関係者からすれば一瞬といえども勇者として戦える岸波の存在は歓迎するべきものだった。

更に一つは、投影で聖剣を作れることだ。

これは南雲ハジメの極めて高精度な錬成で聖剣の模造剣を作り、其れを母体に投影を行って初めて5分ほど聖剣を作り出すことが出来た。当然聖剣のバフとデバフをばら撒く効果もそのままにである。

他にも任意で縮地が使えるようになる西洋剣や着弾地点が判る弓など様々な武器をハジメと白野は作れるようになった。

 

 

 

「シッィ!!」

「遅い!!」

 

特に好んで使う剣士の天職に慣らすため、専ら訓練相手は雫だった。

剣士になった岸波のステータスはこうなる

 

===============================

岸波白野 17歳 女 レベル:12

天職:剣士

筋力:60  [+剣士60]

体力:100 

耐性:50

敏捷:160  [+剣士160]

魔力:260

魔耐:200

技能:皇帝特権・投影・道具作成・先読・言語理解・剣術・剣理観察

===============================

 

筋力と俊敏が大幅に向上し、剣士必須スキルである剣術も獲得した。加えて剣理観察は相手の太刀筋を見てどのような剣術であるか理解するスキルである。

 

そもそも雫と白野とでは実力差は明確である。現に今も先に動いた白野の攻撃を雫が捌き、がら空きになった体に竹刀を叩き込んだ。同じ剣術スキルであっても経験が違いすぎるのだ。

 

「それでもキチンと防ぐのね」

「本来一本だと思うけどね」

 

 問題は攻撃の受け方だ。剣道では篭手で受けるなどありえない。小手を取られて終わりである。

 しかしここは実戦形式であり、白野にはアーティファクト(投影品)があった。龍太郎が使っている壊れない篭手と脛当てだ。訓練中のため衝撃波を使うのは禁止だが、防具としても極めて優秀であり、普段の訓練から常用していた。特に壊れないという性質が投影と相性が良く、真剣を使ったメルド団長の一撃すら防ぎきれる。

 

「ところで真剣の作成は上手くいってる?」

「ふふ、もう現時点でかなり満足できる出来よ」

 

 真剣作成、それは八重樫雫に合わせた日本刀の作成計画だ。

 八重樫雫は前衛主力であるが武器の性能がやや低かった。というのも彼女の八重樫流剣術は日本刀を想定した剣道であり、雫は抜刀術すら収めた本物のサムライガールという点と、この王国の主流剣術が直剣による西洋剣術であることに起因する。

 つまり雫にあう武器が無かったのだ。現状は日本刀とシャムシールの中間のような曲刀が渡された。無論名品ではあるが・・・

 

『日本刀、作らせれば良いじゃん』

 

 という恵理の一言で日本刀作成計画が立ち上がった。メインの人員はハジメと王国直属の錬成師達だ。

 ハジメは錬成の精度を向上させるため戦闘訓練とは別に国の錬成師達の下で錬成の訓練を行っていた。当然メインは聖剣やその他アーティファクトの模造品の作成であり、速く、精確な錬成が求められた。そして錬成精度が彼らに並んだ際に日本刀の作成を恵理が提案した。オタクであるハジメはある程度日本刀の知識があり、そこに異世界の錬成師達が集結することで実用に適う日本刀が作成された。

 

 が

 

 錬成師曰く『強度が足りない。これじゃ武器ではなく美術品だ』

 ハジメ曰く『重過ぎる。強度を足すのに重くしようなんてセンスが無い』

 

 という議論が勃発、遂には材料選択から再検討が始まった。今頃ハジメは工房で次の新作日本刀を作っているのだろう。

 因みに作って満足の行かなかった物は男子達がいくつか持って行った。男の子ってこういうのが好きなのだ。

 

「まあ好きにやらせよう。流石に毎日同じものを作らされてストレスが溜まったんだと思う」

「ま、わたしも自分の武器が優れた物になるなら文句ないわ」

 

 命を預ける物だし。雫はそう続けた。

 恐らくだが、ハジメもそれを理解している。自分の作った武器で戦う人が居る、ということを。であれば妥協など出来るはずが無い。現にハジメは訓練が始まってから魔力が空になるまで錬成を繰り返し、その状態で戦闘訓練すら受けていた。

 基本的にハジメと白野はワンセットだ。ハジメを庇いながら白野が戦い、白野の邪魔にならないように投影母体の模造剣を作る。手を地面につけている暇など無いことを考えると材料は常に所持する必要がある。つまりデッドウェイトで戦場に出るということ。

 クラスメイトの中で最低値のステータスであるが、彼の負担はかなり大きい。だが、ハジメは逃げなかった。その事実に対してハジメの見方が変わった者も多い。

 ・・・変わらない者もいるが。

 

「ッチ、次は乱取り稽古かな」

「手伝い要る?」

「したら逃げるよ、あいつ等」

「それもそうね」

 

 手を軽く振って別れを告げ、白野は次の訓練相手である檜山大輔率いるチンピラグループ(恵理命名)に向かう。

 何度も言うが、白野とハジメはツーマンセルのワンセットだ。つまりハジメに喧嘩を売ったら白野も買うし、白野が喧嘩をするならハジメも巻き込まれるのだ。

 

 

「根を詰めすぎた・・・」

 

 南雲ハジメはオタクである。凝り性で趣味の分野なら拘りは多い。其れゆえの座右の銘「趣味の合間に人生」なのだ。つまり趣味は人生より優先される。つまり日本刀の作成に妥協などありえないということだ。

 ・・・最も大きな理由は、きっと自分の作った武器に命を掛ける人がいるという事実だろうが。

 

 異世界召喚されてからこの二週間は本当にきつかった。大して交流のあったわけでもない女子のクラスメイト、岸波白野からツーマンセルの宣言受けてからというものハジメは完膚なきまでに扱きあげられた。

 

 元々白野は運動部(バレー部のセッター)であり、フィジカルは地球に居たときでもハジメより悠に優れていただろう。そこに来て異世界召喚によるステータスが発生。差は開いた。

 そんな彼女に合わせての訓練は地獄だった。

 

 やれ『動けなくなったら死ぬぞ!!足を止めるな』と持久走

 やれ『最低限受身ぐらいは出来るようになれ』と組み手

 やれ『錬成に関してはプロに任せよう』と王国お抱えの錬成師の下で修行。

 

来る日も来る日も能力差を見せ付けられるようでかなりキツかった。ついでに言うと白野の親友である恵理から向けられる視線が非常に怖かった。

 

・・・だが、手を抜くようなことは出来ない。白野が真剣にハジメのことを心配していることがわかるからだ。

 

ここは平和な日本ではなく、戦争を間近に控えた王国なのだ。大して役に立たない者にリソースを割いたりしない。事実、最初の1週間中に白野が進言した内容はほぼ無視された。だが、聖剣の投影に作成したところから評価が変わり始めたのだ。

  白野は今の状況を誰よりも深く、重く考えている。自分が感じた動揺の無さを冷静さだと感じていたことが恥ずかしいとすら思うほどに。

 

 もし、今ハジメが城から逃げた場合、指名手配か暗殺者が出るだろう。そう言われた。なぜなら士気が下がるから。神の使徒に戦いから逃げた臆病者がいるなど外聞が悪すぎる。なら居ないことにするのは合理的判断だ。最早この世界に連れてこられた時点で戦うしかない。後はいかに自分達の有用性をアピールし、都合のいい条件を出させるか。そこが肝なのだと。

 現に本来二週間で実践訓練になるところを団長に直談判し、一ヶ月に引き延ばして見せた。ハジメと白野の連携をスムーズに行うための念話のアーティファクトも譲り受けた。

 戦って、生きて帰るためにだ。

 

「よぉ、南雲。なにしてんの? 日本刀なんかお前が持ってても意味ねーんだよなぁ。マジ雑魚なんだからよ~。 岸波に守ってもらわないとなーんにも出来ないんだからさぁ」

「ちょっ、檜山言い過ぎ! いくら本当だからってさ~、ギャハハハ」

 

 だから、何時までもこのままじゃいけないのだろうとも思う。ハジメは檜山率いる小悪党4人組には勝てない。実際、ステータスは平均より上の方なのだ、彼らは。

 岸波白野の実力は聖剣有なら騎士団の殆どの人に勝てる。後ろにハジメを庇いながらだ。故に檜山達は決して白野のいる側でハジメにアクションは起こさなかった。だが今白野は雫との模擬戦中。念話のアーティファクトも外していた。

 

(まあ、そういう問題でもないけど)

 

 ハジメは自分が足手纏いだと自覚している。どれだけ精密に聖剣の模造品を作っても戦闘の邪魔になっては意味が無い。結果メルド団長が決めたのは戦う力ではなく逃げる力を鍛えることだった。

 

(魔力がほぼ空で圧倒的なステータス差、さらには数すら負けている・・・か)

 

 だがこれから実戦を行うなら避けられない状況もありえる。情けないが、白野がこちらに気付いたら助けてくれるだろう。今までもそうだった。

 

(それがいつになるか判らないけど、それまでひたすら避けて逃げ続ける)

 

 後ろから迫る鞘付きの剣を躱す。中は真剣、鉄の棒で殴りかかってくるのと大差ない。

 

「お?いいじゃんいいじゃん。その調子でちゃんと避けろよ~。 ここに焼撃を望む――〝火球〟」

「逃げるのだけは得意だもんなぁ? ここに風撃を望む――〝風球〟」

 

 同時に迫る火球と風球。火球は当たればただではすまないが避ければ風球か、拳を構える檜山かの二択になる。なら、

 

「せい!」

 

 手にある日本刀で居合い・・・は出来ない、万一刃傷沙汰になったら不味いからだ。魔法を斬るなんてことが出来ると思えなかったのもある。

 鞘付きの日本刀で火球を殴りつけた。風球とは違い燃やすことに特化した火球に物理的な衝撃は無い。

 

「っち、調子乗りやがって!!」

 

 いかにも三下な叫びと共に殴りかかってきた檜山。軽戦士である彼はヒット&アウェイを徹底したスタイルをしている。俊敏値がワーストレベルで低いハジメは彼の攻撃を避けられない。

 突き出された鞘付きの短剣を防ごうと腕を構えるが隙間に捻じ込まれる。

 

「ぐぁ!!」

「あん?鎧付けてんのかよこのチキンが。じゃ、もっと強くしてもいけるよなあ!!」

 

 南雲は常日頃から防具を付けて生活している。重さと邪魔さに慣れるためだ。そして差し出した腕は防御であると同時にせめて防具の上に攻撃が来るようにという誘導だった。衝撃は受けたが動きに支障が出るほどではない。

 引き抜いた短剣を大きく振りかぶって次は脳天を狙う。檜山らしくない大振りで隙だらけな攻撃だった。

 これなら手にある日本刀で一撃入れるくらい出来るんじゃないか?そう思う。

 そうだ、今はもう法と秩序で守られた日本じゃない。戦争間近の王国なのだ。耐えていればどうにかなる環境じゃない。反撃するべきだ。そう考えて――

 ハジメは刀を手放して両手で防いだ。

 

「はっ!!だからテメェは雑魚なんだよ!!」

 

 どうやら檜山もこの攻撃が隙だらけで、それでもハジメは攻撃できないと理解していたらしい。

 ああ、こんなんだから目を付けられたんだなぁ。と思いながら、激しさを増す集中砲火をのた打ち回るように逃げ続ける。そして、

 

「そろそろ私も参加していいかな」

『南雲、鞭』

 

 強い意志を隠すことなく乗せた鋭い声と頭に直接響く命令文が聞こえた。

 南雲は最早条件反射の速度で懐から材料を取り出して錬成、アーティファクト?殴ると凄く痛いけど傷にならない鞭の模造品を作り上げた。馬上鞭である。

 投げ渡された鞭を受け取って手にパシンと打ち付ける白野は実にサディスティックだった。尤も、表情があまりにも真剣でからかうとハジメですら鞭で調教・・・説教されそうである。

 

「な、待て!達は南雲の特訓に付き合っていただけで、」

「私も入れてって言ってるの。ヨロシク」

 

 白野は模擬戦前の礼すらしっかりと行い、頭を上げた瞬間鋭く間合いを詰めた。

 

「チッ、女だからって優しくしてもらえると思うなよ!!」

 

 そう叫んだ中野は次の瞬間顔面を引っ叩かれてダウンした。即オチ2行だ。

 

「おーい保護者の白野ちゃんが来てくれましたよ~。オラ!!」

 

 先のリンチで息が切れ、最早ボロ雑巾となったハジメは地面に蹲っていた。そこに槍を模した長棒で近藤が叩きのめした。

 振り下ろされた棒を腕で受ける。意識がこちらを向いた岸波に檜山が詰める。

 

「”錬成〟っ」

 

 南雲の腕には篭手が取り付けられている。それと棒を錬成して固定した。遂にハジメの魔力は空である。

 

「なっ、てめえ何しやがる!!」

 

 棒が固定され、ならばと足蹴にされるハジメ。当然逃げも防ぐことも出来ない。そして・・・

 

 近藤の肩に手を置かれた。

 

「あ・・・、待て岸波。話せば分かる」

「君、馬鹿だろ?武器が使えなくなったのならさっさと捨てて、別の武器を拾うべきだったね」

 

 槍術は極論棒なら何でも使えるのだ。中野の持っていた錫杖でも槍代わりに出来たということ。完全な判断ミスだ。

 というか、いつの間にか檜山と斉藤が落ちている。文章にすら出てこなかった。

 フルスイングで放たれた鞭はスパァン!と良い音を響かせて木霊した。

 

 白野は拾い上げた日本刀でハジメの腕に固定された棒切れを一振りで切断し、

 

「ほら」

 

 ハジメは差し出された手に、のろのろと手を差し出す。パンと音を立てて握り返された。勝利のグラップハンドである。

 

 

 

「む~~~~」

「どうどう」

 

 それを膨れっ面で眺めるヒロインが居ることを勿論白野は理解している。焦れろ焦れろ。

 

 




リキャストが如何のは覚えなくて良いです。覚えないで下さい(どうせガバる)

原作知識について、(ありふれ読了、EXTRA、CCCクリア)

  • ありふれ、EXTRA両方知ってる
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