はくのんは転移した   作:鎖佐

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内容の3分の1を次話にしました。本日19:00投稿予定。


ツーマンセル

蹴りウサギを食べてから、ハジメは白野と同じように死の淵を彷徨い、神水によって助かった。そして、毒性を克服するための超回復により肉体の成長性を大幅に拡大させ、ステータスはオール100を超えた。

 

 加えて手に入った技能、天歩〔+空力〕〔+縮地〕はハジメの機動力を大幅に向上させた。

 流石に移動しながらの精密射撃は不可能だが、熊くらいの大きさなら割と雑に狙っても当たる。当たる精度になるまで練習した。

 

 他の魔物を喰えばより強くなるかも知れないが、激痛によってダウンしていた時間と天歩の練習に時間を割きすぎた。白野の生存はかなり絶望的であることは理解している、だが自分が先に諦める訳には行かない。ハジメは白野の捜索を開始した。

 

 

 恐らく、白野は水の確保を行うだろう、そう予想して行動する。我武者羅に逃げた場合はもう虱潰しで探す他ないが、逃走先を考えるなら自分達が落ちて来たあの水場だ。なにより、そこに向かった場合と向かわなかった場合では、生存率が段違いだ。

 

 音を立てないよう慎重に慎重を重ねて進行する。クリアリングは徹底し、神水を舐めてでも最高の集中力を維持する。

 今の武装はようやくこのエリアを攻略する最低限度の武装だ。有効打はハンターの2発。装填は練習したとは言え明確に隙。爪熊を相手にするなら確実に当て、2発中、1発は頭に当てるのが理想だ。恐らくその上でもシュラークを使った戦いになる。勝算は3割以下、1割はあると思いたい。

 

「水の音。このあたりだ」

 

 居てほしいという願望と居なかった時の不安がどんどんと膨れ上がる。もしかしたら残っているのは死体かもしれない、あるいはただ血の染みだけが残っている何て事も考えられる。

 その確率は決して低くない。

 

 

そして、そこにいたのは・・・

 あの時の、熊の魔物だった。

 

 ドパン!!

 

「!!グルァ」

 

 一目見た瞬間溢れる殺気、白野の両腕を奪ったこの魔物、本来は出会ったら即撤退のつもりでいたが、

 

「予定変更だ、絶対にぶっ殺す」

 

 ハジメの本能が死ぬぞという警告を全力で響かせる

 ハジメは理性で死ねと返し、敵へと銃声を響かせた。

 

排莢した弾丸が地面に落ちる。

後ろを取れた絶好のタイミング。狙ったのは後ろ足だ。

 

弾丸は確かに毛皮と肉を貫通したらしい、これでアイツの速度を封じる。

 痛みから接近を止めた爪熊は飛ぶ斬撃、風爪を放つ。しかし、距離が離れすぎている。

 縮地で回り込む動きをして移動する。それで風爪は当たらない。

 

 爪熊は避けられたことに対し生意気であると怒り、負傷など無かったかのように接近する。

 その速度は限界突破の白野を上回るかもしれない。

 

「だがな、その速度は見慣れてるんだ」

 

 今までハジメは白野の附属品だった。

 附属品としての性能だけは、一切の妥協なく磨いてきたつもりだ。

 限界突破中の白野に対して的確なサポートを実現するには、動体視力を鍛える必要があったのだ。

 

 目と鼻の先で爪熊が振りかぶる、早くて速いその腕の一振りを、

 

 ハジメは早くて速い上、動作が短い『銃を撃つ』という行動で反撃する。

 

「グルァァアア!!?」

「クソ!!やっぱり一撃じゃ死なねえか!!」

 

 良く引き付けて放たれた弾丸は確かに爪熊の頭部に直撃した。

 しかしこの階層最強種の実力か、あるいは獣の本能か、爪熊はとっさに頭を逸らした。

 結果弾丸は正面から頭蓋を貫かず、頭蓋骨に沿って逸らされる形となった。

 

 とは言え、ダメージは大きいようだ、追撃に移るべきである。

 

「ほら、プレゼントだ。ピンを抜いたグレネードを、てな」

 

 圧縮した石片と超圧縮の燃焼石によって作られたグレネードを投擲する。

 同時にハジメは空力と縮地を使って全力で下がる。

 

 直後、爆発。下がっている間にハンターのリロードを2発分行う。そして構えて、射撃。

 

「グルルアァ!!」

「っち、この短時間でジグザク走行とは学習能力高いな!!」

 

 ドパン!!ドパン!!と放つがクリーンヒットには程遠い。毛皮を貫通すらしないようなヒットはこの爪熊には痛痒ですらないらしい。

 爪熊の攻撃を躱しながらハンターを背中のホルスターへとしまう。同時に抜いて発射するのはハンターを超える大口径拳銃シュラークだ。

 

 ドパパン!!渇いた銃声が重なる。以前のステータスなら静止状態からスタンスを取り、その上で一発撃つのが限界だっただろう。しかし、いまや常人の数倍の筋力を有するハジメはシュラークの連射を可能にしていた。

 

「グルッ」

「マッズ!!ぐおお!!」

 

 だが、シュラークはハンターと比較して貫通性能が甘い。爪熊に対して強力な打撃にはなるようだが、その程度。機動力に優れる蹴りウサギが爪熊に対して逃げの一手なのは、爪熊はその程度では怯まないからだ。

 腕の振りでは避けられやすいと見て、爪熊はタックルを放ってきた。ハジメは如何にか防御姿勢を間に合わせるが吹き飛ばされる。

 

 不味い。

 

 空力を使って姿勢を戻し、地面に足がついた瞬間空中へと逃げる。直後風爪が地面を抉る。

 立体軌道で狙いを絞らせないよう動き回り、敵の攻撃を阻害するよう射撃する。だが、

 

「(弾が切れる!!)」

 

 爪熊は蹴りウサギを蹴りの最中に仕留められる程の実力がある。立体軌道などしたところで何の問題もなく攻撃を当てられる。まだ生きているのはシュラークによる打撃を与えているからだ。

 

「(手榴弾はさっきのタックルで落とした。閃光弾は本当に最後の手段だぞ!!)」

 

 とは言え出し惜しみしている場合でも無い。閃光弾を使ってハンターをリロード、次の2発で仕留めるしかない、そう判断して―――

 

 

「ごめん、待たせた」

 

 

 爪熊の後頭部に強烈な回し蹴りが放たれた。

 怯む爪熊をすり抜けて、彼女はハジメの前に立つ。

顔色こそ悪いものの、間違いなく。岸波白野が目の前にいた。

 白野はノールックで足元の石ころを一つハジメに蹴り飛ばした。

 いや、石ころではない、ハジメが落とした手榴弾だ。

 ピンを抜いて、即座に投げる。爪熊の接近に合わせ、真下で爆発するような位置へ。

 

 手榴弾の爆発に怯んだ爪熊を油断なく見据える白野は横目でハジメを見て、

 思いっきり二度見した。

 

「ほら、反撃いくよ・・・南雲?え?南雲だよね???」

「間違いなく南雲だ、岸波、さん・・・いや、気持ちは分かるが」

「・・・まあ、後にしよう。うん、まず、アイツを倒さないと」

「だな」

 

 心から湧き出す安心感を無理矢理沈める、今も白野は腕を失っているのだ。明らかにステータスが上がっている件は自分がそうなのだから、何らかの手段があったのだろうと脇に避ける。

 

「わたしが前衛に立つ、南雲が後衛火力。手早く決めて欲しい」

「了解」

 

 白野は爪熊へと躊躇い無く接近、その速度はハジメの縮地に匹敵し、その上で敵の攻撃を避けるような複雑な動きすら可能にしている。

 爪熊に対して接近戦を挑むなど自殺行為でしかない、ように見えるが、実際爪熊はオールレンジファイターだ。機動力も遠距離攻撃も備えている以上距離を取れば安全ということはない。とはいえ、超接近戦も人のやることではないが。

 懐に入り込まれた爪熊は右腕を振り上げて構え、左腕を薙ぎ払う。後ろに下がれば右腕による渾身の振り下ろしが白野を地面の染みに変えるだろう。

 

 その未来を変えたのはやはり、あの鏡だった。振り上げた右腕が加速する前に押し留めるように出現し、その攻撃をひと時止める。そして白野は薙ぎ払いを下へと避ける。

 

 爪熊は白野を叩き潰さんと体を伸ばし、白野は姿勢を地面と一体化するかのように下げた。

 

「流石だ」

 

射線ガラ空き。

ハジメはハンターを顔面に向けて発砲した。完璧な直撃。

爪熊はまだ死なない。白野は姿勢を低くしたことで爪熊の後ろ足に銃創を発見する。容赦は要らない。渾身の膝蹴りを叩き込み、顔面には鏡を叩きつける。

まだ倒れない。爪熊は最後の力を振り絞り、ハジメに向けて突進する。白野にはこれを止める術が無い。

最後の一発、これで決めなければ、ハジメは死ぬだろう。

 

「(良く引き付けろ。これの威力が脅威だからこっちに来た、死ぬ気で避けてくるはずだ)」

 

 だから、回避など出来ない程引き付ける必要がある。あと、3歩、2歩

 

 そこで、大きく爪熊は横に飛びのいた。

 

 ハジメは困惑する。早過ぎだろ?と、明らかに隙を晒した敵に対して、ハジメは最後の一発を放つ。

 

 

「ああ、岸波さん、暗殺者だったのか」

 

 弾丸が脳天を貫いたことを確認して、ようやく得心する。今のは白野の気配操作の応用『気当たり』だと。実用的な技術ではなかったため、完全に忘れていた。

 

「・・・お疲れ様、相棒」

「ああ、生きていてくれてよかった。岸波さん」

 

 敵がいなくなった今、ようやく再会を祝い合える。状況は未だ最悪の2文字。しかし、きっと、今の自分達ならどうにかなると、そんな風に思えるのだった。

 

「・・・さん付けは、要らないよ。ハジメ」

「お、おう。そうか、なら岸波」

「白野」

 

 ズイッと顔を近づける白野、こうして比較対象がいると、随分と背が伸びたのだと感じる。

 顔色は悪いのに、綺麗な目は一切変わっていなかった。

 

「・・・・・・分かった、白野」

「・・・ふふ、雰囲気変わったね」

「そんなレベルの話か?コレ」

 

 まるで髪を染めたことをからかうような雰囲気で喋るものだから、なんとなく調子が外れる。身長も10cm近く伸びたのだ。

 余談だが理想的なカップルの身長差は15cmであるといわれて・・・

 

「何考えてるんだ俺は」

「俺!!ほんとに雰囲気変わったね!!」

「あ゛あ゛~~あ゛~~あ゛!!」

 

 気ハズさがカンストしたハジメは唸りをあげて悶絶する。というか、先ほどの思考はなんだ。まるでこれでは白野に惚れているみたいではないか。だとすれば身の程知らずも良い所だ。

 

「さ、帰ろう。恵理がそろそろ泣いちゃうかもしれないし」

「・・・ああ」

 

 岸波白野は、レズなのだから。

 




×レズ
○限りなくレズに近いバイ

頑張ればはくのんもハーレムに入れられます。なお、爪熊戦闘中に助けられるは減点対象です。

原作知識について、(ありふれ読了、EXTRA、CCCクリア)

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