「「「なんでお前は女っぽいのに男なんだ!」」」と変態三人衆に言われるレヴィアタンの血を引く少年の、余計な要素が無駄に入ったD×Dのお話   作:グレン×グレン

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 カタカナなのには理由があります。誤変換ではないのでご注意を。


第六話 奇縁のコウサク

 その日、駒王町では慌ただしい者達が何人もいた。

 

 全体でいえば三十人ぐらいだろうか。外国の者も含めた神父の服を着た男が、明らかに不穏な雰囲気で誰かを探していた。

 

 本来ならすぐに気づかれるだろうが、彼らは気配を認識されづらくする術を持っていた。そうでもなければ、単一民族国家のこの国で神父の格好をした者達が何人もうろついているなどという事態がここまで隠されているわけがない。

 

 そして、その三十人の中には女性もいた。

 

 そしてそのうちの一人は、小走りで街中を駆け、誰かを探しているふりをしながら、どこかの路地裏に滑り込む。

 

 そして軽くため息をつくと、襟に仕込んだ小型通信機を起動させた。

 

「……定時連絡。対象は本日夜間に神器を摘出される予定でしたが、事情を知らずに脱走を敢行。前夜に彼女を連れて外出した、シグルド機関のフリード・セルゼンの行動が下劣な物だと思われ、それが理由ではないかと思われます」

 

 そう告げる女性は、そこで何故か沈黙すると、小さくため息をついた。

 

「……そういえば、アンヌと話す予定だったのを忘れていました。アーシア・アルジェントの捜索はお願いします」

 

「……もうちょっと話してほしかったのだけれど。そんな符丁を入れなくてもよかったのよ?」

 

 そんな言葉と共に、一本の剣が女性の首元に近づけられた。

 

 堕天使の部下に見つけられたのかと思ったが、どうやら違うらしい。

 

 少なくとも、自分が知っている限りでは彼女達にこんな声の者はいなかった。

 

 やけに聞き覚えのある声な気がするが、思い当たる節がない。

 

「こんなところで、なんではぐれ悪魔祓いが活動しているのかしら? いくら教会がいないからって、はぐれ悪魔祓いが集団で、しかも悪魔と殺し合うわけもないのにいるのはおかしくない?」

 

「……悪魔に亡命するつもりの堕天使、って可能性はあるんじゃない?」

 

 そう茶化すが、しかし苦笑が聞こえてくる。

 

「ないわね。レイナーレの思想は堕天使優遇の差別主義者。そのくせ総督を神聖視し、更に上昇志向が強い困ったちゃんよ?」

 

 ―その返しに、女性は内心で状況を推測する。

 

 レイナーレの部下ではない。その上、レイナーレより堕天使の内情を知っているかのような口ぶりだった。

 

 そして、そこから可能性を想定しつつ、警戒するべき可能性も考慮する。

 

「……正規の教会から来たのかと思ったけれど、もしかして(からす)の方が好みなの?」

 

「どうかしら? まあ、蝙蝠の縄張りを荒らしてまで、(はと)(からす)の代理戦争をする必要はないと思うわよ?」

 

 そう言いながら、後ろの声も上を向いた気配を察知する。

 

 そして、女性もまた上を見る。

 

「……なんだ、気づいてたのか」

 

 その言葉と共に、建物の屋根から一人の少年が飛び降りる。

 

 二人を結ぶ直線状には降りず、しかし距離が等辺になるように着地。

 

 同時に、三人は即座に動いた。

 

 女性は十字架を模したナックルダスターと、光の弾丸を放つ拳銃を。

 

 少年は巨大な大剣と魔力の蛇を。

 

 そして、後ろを取っていた少女は銃剣のついた小銃と、聖なるオーラを放つ剣を。

 

 それぞれがそれぞれに警戒の得物を突きつけ、そしてそれぞれの姿を見て―

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「……すいません。どこかで会ったことあります?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―「会ったことがある」という妙な確信だけを感じた、見知らぬ他人に首を傾げながら素直な疑問が出てきてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜。

 

 アーシア・アルジェントは発見され、堕天使レイナーレの計画は最終段階を迎えることとなった。

 

 彼女の目的は単純明快。アーシア・アルジェントが持つ神器を取り出し、自分に移植することだ。

 

 神器は人の魂を深く結びついている為、取り出せばほぼ確実に死に至る。堕天使側はその技術を確立させているが、それでも無差別にやることはなかった。

 

 だが、レイナーレはそれを行い、そして自分に移植しようとしている。

 

 その理由は、アーシアが持つ神器の持つ価値にある。

 

 神器、聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)。その力は強力な回復の力を持つことだが、そう言った回復系神器の中でも、特に秀でた固有の特性を持つ。

 

 それは回復対象を選ばないということ。

 

 本来、治癒の力は神の祝福に由来する者に作用する。その為祝福を捨てた堕天使や、悪魔のような種族に治癒の力は効かない。それを可能とするのは、本当にごく一部の稀少な薬や異能だけだ。

 

 故に、重傷を負ったイッセーを治療するのにリアスはあれでも手間をかけた。直接肌を重ね合わせたうえで一晩魔力を注ぎ込んだのは、それだけする必要があったからだ。

 

 だが、聖母の微笑はそんな手間を必要としない。アーシア自身の素質もあるし、体力の消耗は回復しない。しかしリアスが一晩懸けた治療と同様の効果を、一分も掛からずに成し遂げられる余地がある。

 

 それを堕天使であり自分に組み込むことで、彼女は自分の地位を高めようとしているのだ。

 

 ドーナシーク達はそれに協力する代わりに、恩恵を会得するという取引をかわしている。更にその後の発言力を磐石なものとする為、偶々接触できた商人から、相応の装備すら確保していた。

 

 だが、一つだけイレギュラーが発生してしまった。

 

 レイナーレがアーシアを見つけた時、アーシアのそばには兵藤一誠がいたのだ。

 

 レイナーレ自身が殺した男が、寄りにもよって薄汚い悪魔に転生することで生きながらえている。まして、堕天使の危機で殺す必要があるだけの危険な神器を持っていると判断された男がだ。

 

 不幸中の幸いは、彼が持っていた神器は龍の手(トゥワイス・クリティカル)という「所有者の力を二倍する」といった程度の物だったことだ。

 

 どうやら彼は、神器を使う素質があまりにも低かったらしい。ものによっては潜在能力は高いが、本来なら危険と判断されるほど強力ではない。ましてやただの人間やなり立ての転生悪魔では、二倍になったところで自分達が危険になることはまずないのだ。

 

 なのであっさりと一蹴することができ、更に彼を助けようとするアーシアに「兵藤一誠を見逃す代わりに戻る」という条件を結ぶことができた。

 

 いくらなんでも直接殺し合いを仕掛けるわけでないのなら、この地の上級悪魔も見逃してやった下僕の命を危険にさらすような真似はしないだろう。

 

 ……と思っていたら、兵藤一誠と上級悪魔の下僕二人が、儀式の真っ最中に襲撃を仕掛けてきた。

 

 念には念を入れ、余計な捜索活動を引き起こす理由になったフリード・セルゼンを警備につけていたが、どうやら逃げたらしい。

 

「まったく。罰として魔装具を取り上げたのは失敗だったかしら」

 

 そうため息をつきながらも、レイナーレは余裕の表情を崩さない。

 

 何故ならば、今の自分達が負けるどおりなどどこにもないのだから。

 

 事実、突入してきた兵藤一誠たちは完全に食い止められている。

 

「レイナーレ様ぁ、ウチらも魔装具使っていいっすか?」

 

「落ち着けミッテルト。外の警戒をしているドーナシーク達が戻ってきてからにするべきだ。……その方が楽しいだろう?」

 

 既に堕天使であるミッテルトとカラワーナも、この日の為に購入した魔装具を装着している。

 

 そしてその視線の先、兵藤一誠達は三十人を超える数の、魔装具を装着したはぐれ悪魔祓いたちに囲まれていた。

 

「くそ! どけよてめえ……ぐはっ!」

 

「兵藤君! く、この程度のはぐれ悪魔祓い如きに後れを取るなんてね」

 

「……これが、魔装具の力……っ」

 

 三人の転生悪魔を追い込むのは単純なまでに装備の差である。

 

 汎式装具、陸兵剣(りくへいけん) 一打(かずうち)

 

 最も数が多い汎式奏具である両刃の片手剣。タングステンに匹敵する強度を誇り、しかし神域装飾をつけなければ片手剣としても軽量で、神域装飾を展開すれば能力の向上に伴いタングステンを超える比重を発揮する。

 

 叩き付けるタイプの片手剣に相応しいこの魔装具は、最も数が多いがゆえに性能もさほど高くない。しかし剣術の素人であっても、装甲車の装甲や戦車の履帯を切り裂く程度のことはできる。

 

 それが、仮にも対悪魔の戦闘訓練を積んだはぐれ悪魔祓いが着用している。その上で十倍以上の数があれば、負けるどおりがまず存在しなかった。

 

「アッハハハハハッ! 薄汚い悪魔のクソガキが三匹程度で、私が偉大な堕天使になる邪魔ができると本気で思ってたの? 馬鹿ねぇ、そのままそこで、アーシアから神器が抜き取られるところを見ていなさい!」

 

 絶対的な優勢を確信しているが故の、悪辣を一切隠さないレイナーレの隣で、十字架に磔にされたアーシアが、十字架ごと強い光に包まれる。

 

「アーシア……アーシアぁあああああ!」

 

 そして、イッセーは絶望すら感じて絶叫し―

 

「は、はい! イッセーさん、大丈夫ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『『『『『『『『『………あれ?』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 むしろイッセーを心配する余裕がある……を通り越し、特に苦痛すら感じてないようなアーシアの声に、誰もが呆気に取られて振り向いた。

 

 悪魔側も堕天使側も、戦闘をしているということすら忘れてぽかんとしてしまう。

 

「あ、アーシア? 貴女、なんともないの?」

 

 全く状況が分かっていないレイナーレは、思わず心配しているようにすら思える声色になって訪ねてしまう。

 

 何故自分に視線が集まっているのかわかってない様子のアーシアは、きょとんとしながら首を傾げた。

 

「あ、はい。さっきまでは感電したみたいな感じになってましたけど、今はなんていうか……マッサージみたいな刺激になってます」

 

「はぁ!?」

 

「ま、まさか故障か!?」

 

 ミッテルトとカラワーナが狼狽するのも仕方がない。

 

 このままいけばアーシアは死ぬはずだったのに、むしろマッサージでは健康を歩進してしまう。

 

 訳の分からない本末転倒な事態に、堕天使側は一気に呆気に取られている。むしろ悪魔側で事情にもある程度は詳しい、祐斗と小猫もぽかんとしていた。

 

 そんな中、知識が足りないがゆえに一蹴回って動揺が少ない、そして大事な時に大事なことを忘れない男である一誠だけが、その好機を理解した。

 

 命がけの突撃になるだろう。だが、知った事ではない。

 

 もとより自分はアーシアを助けに来たのだ。その為に命を懸けると決めている。

 

 この、誰もが呆気に取られて我を忘れているチャンスを逃せば、今度こそアーシアを助けることはできなくなる。それぐらいは、自分がバカだと自覚していても分かっていた。

 

 だから、一誠は一歩を踏み出し、真っ直ぐ視線をアーシアに向ける。

 

「アーシア、今行く―」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、そこが最適な位置取りだ」

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、突如飛来した大剣が、アーシアを拘束する十字架を根元から切り裂いた。

 

「なっ!?」

 

 狼狽する堕天使が反応するより早く、大剣はそのまま十字架を押し出すように一誠たちの方向に飛んでいく。

 

「え、あ、きゃぁ!?」

 

『『『『『『『『『『うわぁあああああ!?』』』』』』』』』

 

 勢いよく宙を飛び、しかし支えらえているわけではないので十字架ごとアーシアは落ちる。

 

 割と高さがあり、かつ十字架は固く重い。直撃したら痛いじゃすまないだろう。当たり所によっては下級悪魔やはぐれ悪魔祓いでは命も危うい。

 

 故に慌ててはぐれ悪魔祓い達に祐斗と小猫は落下地点から離れるが、一誠だけは動かない。

 

 彼は自分が十字架にぶつかったらどうなるかより、このままアーシアが堕ちたら怪我をすることだけを考える。

 

「うぉおおおおおおお! 男は度胸ぅううううううっぶへ!?」

 

 そして受け止めて、しかし重さに耐えかねてそのまま倒れた。

 

「兵藤君!?」

 

「兵藤先輩……っ」

 

 我に返った祐斗と小猫が慌てて駆け寄る中、一誠は強引に起き上がると、籠手でアーシアを拘束する高速具を強引に破壊する。

 

 そして混乱しているアーシアに怪我がないことを確認すると、感極まって勢い良く抱きしめる。

 

「……アーシア! 無事で、よかった」

 

「え、あ、はぅ……」

 

 思わず顔を真っ赤にしているアーシアだが、しかし状況は此処で再び動き出す。

 

「何が何だか分からないけれど、その子を渡すわけにはいかないのよ、抜装!」

 

 我に返ったレイナーレは、切り札を即座に展開する。

 

 左腕に手甲を装着すると同時に、それを起動。その瞬間、翼の意匠が施された黒い鎧が、レイナーレを包み込んだ。

 

 その力は、はぐれ悪魔祓い達が装備している物を遥かに超える。間違いなくこの場で最強の装備と言えるだろう。

 

「この反応、王式装具か!」

 

 それを迎撃するように、祐斗は剣を構えて迎撃の体制に入る。

 

 が、その上を飛び越えるように放たれた光の弾丸と大剣が、レイナーレを押しとどめた。

 

「いや、これでゲームセットだ」

 

「ふぅ、いい感じに時間が稼げたわ」

 

「あとは私の仕事なんだけれど」

 

 その言葉ととも、二人の女を連れて現れた少年の姿を見て、一誠は大声を上げる。

 

「一志、お前……何時の間にそんな綺麗なお姉さんと知り合いになってんだ、ずるいぞこの野郎!?」

 

「そこじゃないだろ!?」

 

 ツーカーの勢いでツッコミを入れ、一志・L・モンタギューがそこに現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――やれやれ、これはちょっと想定外ですねぇ。もう一人の上級悪魔を警戒してしまったのが失敗ですか」

 




 さて、レイナーレにとって想定外の非常事態が起きましたが、しかしまだまだ状況な二転三転しますよぉ?
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