「「「なんでお前は女っぽいのに男なんだ!」」」と変態三人衆に言われるレヴィアタンの血を引く少年の、余計な要素が無駄に入ったD×Dのお話 作:グレン×グレン
もっとも、今回は序幕程度でしかありませんが。
第一話 欠点があることと惚れる理由があることは別問題。
一志Side
今俺は、夢を見ているようだ。
映像は見えるが、体の自由がきかない。
勝手に動く体を制御できない。同時に何もかもがぼんやりとしていて、意識を集中することもできない。
だからこれは夢だと思うが、その光景がよく分からない。
たぶんだが、船にいるんだろう。それも客船とかフェリーの類であり、その外側にある廊下を歩いている。
物珍しげな雰囲気で視界が動いているが、同時になんとなく観察もしている。救命用のボートや筏をちょくちょく観察しているが、好奇心もあるが緊急時の確認だろう。
視界から判断して、たぶん十代前半のころだろう。こんな時から成すべきことばかり考えていたのかと思うと、俺は普通の子供からずれているなぁとなんとなく思う。
そして思うと同時にふと気になった。
……これはもしかして、過去の記憶を思い出しているのだろうか。
夢とは荒唐無稽なものが出てきたり、内心の願望が投影されたりするなど言われている。その中には過去の思い出をベースにした、再現VTRじみた物もあったはずだ。
これはそういうことなんだろう。となると、覚えがないのに出てくるなら、可能性は一つだ。
俺のぶっ飛んだ記憶。中学二年の春休み。そして四か月の間漂流していたという、俺が人生で最初に死にかけた、大事故。
ハイジャックの結果墜落した旅客機が客船に激突し、十人足らずを除いて全員が死亡もしくは行方不明になった大惨事。
これは、その記憶が元になっているのだろう。
俺がそんな風にぼんやりを思っていると、ふと視界に何かが映り、すぐに俺の視界が二度見する。
あっという間に大きくなっていくのは、間違いなく旅客機のそれだ。しかもこの調子だと、横っ腹からど真ん中にぶつかるだろう。
短時間ですぐに沈没したのも頷ける。やけにリアルなのも、俺が本当に見た光景が元になっている映像だからだろう。
そして俺の体はすぐに動く。
ただ遠くに離れようとするのではない。不幸中の幸いか、俺がいる場所に旅客機は激突しない。
何を一瞬で考えたのかはすぐに分かる。
親に伝える余裕はない。このまま船にいては沈没に巻き込まれる。そして家族のことを考えれば、それこそ俺もまとめて沈没に巻き込まれる。
幸運だったのは、俺の近くに救命イカダがあったことだ。
咄嗟にそのカバーを叩き壊し、海に投げ込むと急いで俺も飛び降りる。
成すべきことをできる範囲で、俺はまさにそれを成し遂げた。
そして俺が祖父から教わった緊急時の飛び込み方をかろうじて成して海に飛び込む瞬間、あまりにも大きな音が鳴り響いた。
海面に飛び込み、何とか海面に上がった俺の視界は、海水の影響もあってぼやけが酷い。
だが無意識に振り返れば、そこでは爆風で貨物室の荷物などを飛び散らせた旅客機がぶつかったことで、横向きに倒れながら、更に真ん中から割れそうになっている客船の姿があった。
流石に唖然としながらも、しかし視線の隅で膨らむ救命イカダを見つけると、すぐにそちらに苦労しながら泳いでいく。
……俺は本当にやるべきことをしっかりするタイプだったらしい。
最初から救命イカダに備え付けの機器の確認をしていたのだろう。そういえばオールとか多少の水と食料、イカダに入ってきた水をすくうあかくみという道具などが入っていることを覚えている。
救命イカダに這い上がった俺は、すぐにオールを取り出すと、船から離れようとする。
大きな物体が沈み込むと、その影響で更に周囲の物を沈めるような動きを水面はする。それを理解しているからこその行動だろう。
既に視界がぼやけているのは、海水と夢の影響だけではない。
家族は助けられない。そうしようとすれば間違いなく自分まで犠牲になる。これはそういう事態だ。
分かっているからすべきことをする。今誰かを助けに船に戻っていく余裕はない。倒れこんだ勢いで半ば一回転した船は、破損個所から海水を取り込んで一気に沈もうとしている。
できるだけ距離を取らないと俺まで巻き込まれるかもしれない。だからこそ、俺がするべきことは離れることだ。
分かっているから涙が浮かぶ。分かっているからそれでも動く。
……何だろうな。客観的に見て頭がぶっ飛んでないだろうか。
そう思いながら、俺は過去の俺の行動の再現をその視点で眺め―
「……そのまま捕まってなさい! でないと本当に死んでしまうわ!」
「でも……でも、こんなところでこんなことになって、こんなのじゃ……死ぬ……」
―その声を聞けたのは、本当に偶然だったのだろう。
冷静な俯瞰視点の俺ならともかく、正真正銘人生初の窮地にいる当時の俺が、そんなものを聞く余裕があるとは思えない。
そして、俺はそこで成すべきことをできる範囲でした。
すなわち、助けられる余地がある人間を助ける為にギリギリの綱渡りをするという、ただの凡人であっても限定的な状態ならするだろう、真っ当な反応で―
「……ん、映画でこうなったらブーイングが確定だな」
俺は目を覚まして、そんなずれた感想を呟いた。
ベッドから起き上がると、まずキッチンに向かう。
口を一回ゆすいでから、牛乳をコップに入れて、それを呑みながらカーテンを開きに向かう。
水分を取りつつタンパク質や脂質も取れるので、最近は朝起きたら一杯の牛乳を飲むことにした。ビタミンを取った方がいいと思ったのでフルーツ牛乳も考えたが、どうも調べてみるとあまりビタミンは豊富でないから、ドライフルーツ入りのシリアルバーをベッドわきに常備している。
そして朝の光を浴びながら、俺はあの夢を思い返す。
「記憶が蘇りかけているのか。だけど、このタイミングだとあれが関わってそうだな」
シリアルバーを牛乳で流し込みつつ、俺は夢を整理する。
夢という形であんな光景を見たのは初めてだ。やけにリアルであったことといい、おそらく過去の記憶が蘇りかけているのだろう。それが混ざり合ったのがあの夢だと考えるべきだ。
ただ、タイミング的にどうしてもレイナーレ達との一件が関わってそうに思える。
時間経過で人間の心の傷も少しは癒えるから、偶々の可能性は確かにある。
ただ、どうしてもあんな機会があったからか、関連付けて考えそうになってしまう俺がいる。
……もし、だとするなら―
「――あの場にいた誰かが、あの事故に関わっているのか?」
―そういうことになるとしか、思えなかった。
俺もちょっと意識を変えたこともあり、生活習慣を少し変えることにしている。
朝起きて牛乳とシリアルバーを取るのもその一環だ。本格的な朝食はまだ後だが、寝起きが一番水分と栄養が枯渇している時間帯なのだから、とりあえずまず栄養を補給する。
それで脳をしゃっきりさせながら、新聞やニュースサイトで情勢を確認。
近年はニュースより民間の映像配信サイトの方に重点を置く若い人が多いらしいが、法的な拘束力がない上にネットの掲示板を主体としてそうなああいうのを無条件で信用するのもあれだろう。テレビや新聞を信用できない層がいるのは事実だが、だからネット掲示板などを全面信用するのもあれだ。
だからそれらに合わせて海外のニュースサイト、それも公式で新聞などを発行している類の有料のそれも確認。三つを流し目で見ながら、気になった事件などに関しては、大使館のサイトやそれが関わっているだろう会社といった当事者側のサイトを確認することで、信用できそうな情報を認識する。
腹がこねるまでそれをしたら、腕立て腹筋背筋スクワットを50回5セット。その後汗をシャワーで流して、本格的な朝食を開始する。
食事は娯楽だから好きな物だけ食べるのではなく、栄養補給だけを考えて味気ない物を食べるのでもない。栄養バランスに配慮しつつ好みの味付けの朝食を食べ、身だしなみを整えたうえで、今日の授業でやる科目の教科書を、数ページほど流し読みして簡易的な予習を行う。
こういった生活習慣の見直しをする理由は、単純明快。
……今後、イッセーは部長の眷属として色々と動くだろう。だから、俺は友人としてそれの補佐ぐらいはできるようになりたいし、すべきだと思っている。
更に今回の兼で痛感したが、このリアス部長の管轄地に入ってくる無粋な輩は、今後とも多いことが予想できる。まして悪魔の長い人生なら、ガチの戦争を経験することも多いはずだろう。
それに備え、少しずつだが生活の形を実戦に備えた者に切り替えるべきだ。同時に、実戦に備えるために日常の生活を削りきらないように戒めるべきだ。
その辺りの塩梅を測りながらの生活を、俺はしている。
「……はい! では結論はどうなの、諸君?」
「なんでだ、なんでだ、なんでだ、なんでだ……」
「駄目よ、あの変態にあんな純真無垢な子を近づけるなんて、やっぱり闇討ち……」
「……おのれぇ、イケメン王子の木場とも最近つるんでるし、こうなったらホモの噂を流して……」
「……そうよ、どうせ女子に迷惑をかけてるんだし、薔薇に包まれた夢を見せて癒しにするぐらいしても許されるわ……」
「っしゃぁ! とりあえずイッセーの阿呆をぶっ飛ばすぞ!」
「応ともよ! 俺達の嫉妬の炎で焼き尽くしてやる!!」
「やめろ
とりあえず、松田と元浜は後ろからドロップキックで黙らせた。
冗談抜きで何をやっているんだこいつらは。いや、分かってるけど。
俺の強襲にガチの警戒を見せている、クラスの男女複数名。
理由は単純。
いまだに月に一度覗きをしかねない、学園の変態筆頭格であるイッセーこと兵藤一誠。
そして転校生であり可憐な天然金髪の外国人美少女であるアーシア・アルジェントが、イッセーにぞっこんだという点である。
凄まじい勢いで人気を獲得しつつ、男子生徒からの告白は申し訳層にしながらもしっかりと断るその在り方。そしてイッセーと仲が良いを通り越し、はたから見てても好意を寄せていることが丸分かり。とどめに知らぬはイッセーばかりなり。
殺意の領域に近づいていることは気づいてたが、まさか本格的な襲撃を警戒するべき領域だとは思わなかった。
まあ、イッセーは変態で迷惑をかけまくっている性犯罪者だ。集団リンチという犯罪で報復されているからあえて警察に通報するという、死体蹴り+大量の女子もしょっ引かれる駒王学園の大損害はしていないが、即通報という展開になったのなら俺は止めない。
だからまあ、そんな男に可憐な美少女が惚れ込んでいるというのは思うところはあるだろう。そこは理解できる。
だからって限度はあるだろう。
「あのなあ。相手がどれだけ悪辣であっても、こっちがそれ以上の悪辣で潰していい理由にはならないぞ? 毎度毎度思っているんだが、集団リンチは下手をすれば覗き以上に悪質な犯罪行為だって分かってるか? お前らはどっちかがどっちかを訴えたらその時点で道連れに引きずり込まれて退学どこか除籍処分を喰らう側だって理解しろ」
俺はそう前置きをしてから、とりあえず「これはもうとどめを刺しておいた方がいいんじゃないだろうか?」と判断する。
下手に半端な対応をして、変に長続きするのもあれだ。ここはあえて残酷なことを告げるべきだろう。
「……全員、よく聞け」
『『『『『『『『『……な、なに?』』』』』』』』』
俺は真っ直ぐに全員を見渡して、はっきりと告げる。
「細かい内容はプライベートにも関わるから言えないが、アーシアは人生の選択肢において、
実際その通りだ。
追放されたとはいえずっとクリスチャンだったアーシアが、悪魔に転生するというのは文字通りの苦行だろう。祈っただけでも頭痛が襲い掛かるし、十字架や聖水、聖書からも距離をとる必要がある。
暗部とはいえ教会に属せるのは、そういう点においては最適解だ。堕天使側に行くにしても、少なくともいくつものデメリットはなかっただろう。
だが―
「アーシアはイッセーが此処にいるから
―それを踏まえてイッセーを、彼女は選んだのだ。
その意味をしっかり踏まえさせてから、俺ははっきりと告げる。
「……意味は、分かるな?」
分かってないのはイッセーだけだが、その重みはしっかり告げておくべきだろう。
その俺の言葉を聞いて、ほぼ全員が崩れ落ちた。
まあ、ここまで聞いて変な嫌がらせをアーシアを思ってする奴はいないだろう。いたらそっちの方が問題だ。
……一応アーシアに謝っておくべきかもな。とっくの昔にばれているとはいえ恋心をつまびらかにしたわけだし。そもそも上手くぼかしたつもりだが、プライベートにちょっと踏み込む説明までしたし。
俺がそう思っていると、唯一崩れ落ちてない女子が俺の肩に肘を載せてきた。
「あんたも中々苦労してるわねー。もうちょっと気楽に生きれるんじゃないの?」
「性分だ。……第一、気楽に生きさせたいなら煽らないでくれ、桐生」
俺はこの決起集会で幹事役をやっていた桐生に、ジト目を向ける。
この桐生、悪い奴どころかイッセー達変態3人衆とエロ会話に入れる業の者だが、人をからかって可愛がるところがある。
いじめにならないようにギリギリの範囲は見極めているようだが、この手の被害感情はされる側の感覚なんだから、もうちょっと抑えてほしい。
実際アーシアの恋心がガチなことに気づいている節もあるし、変な知識を教えて炊き付けている節がある。
「日本慣れしてないのをいいことに、変な知識をわざと曲解させるなよ? イッセーはイッセーで鈍感ぶちかましてる上にあれだから、下手するとこじれかねないだろ?」
「ん~、大丈夫じゃない? 兵藤って意外とその辺ヘタレだし」
否定はできないが、だからと言ってなぁ。
俺がもうちょっと詰め寄るべきかと思っていたら、桐生は先に俺を覗き込むように目を見てくる。
「そういえばさ、あんたなら真相が分かってそうな噂を聞いたんだけど、聞いていい?」
「何がだよ。それよりイッセーとアーシアの仲を変に引っ掻き回すのは―」
「そこにも関わりそうなことよ。兵藤もアーシアも、あんたも在籍してるオカルト研究部にいるんでしょ?」
……マジな話か。
どうも桐生はマジなのかふざけてるのか読みにくい。
ただ、マジな話なら聞くだけ聞いておくべきだな。
「なんだ? 俺だって何もかも分かってるわけじゃないぞ?」
「いえ、最近グレモリー先輩が憂い顔になってるって話を聞いたのよ。それも近くで恋バナがされてる時に酷くなるって」
………そういえば、時々考え込んでいる時があったな。
とはいえ、ちょっと考える程度では思い当たる節はないな。
「……単純に、アーシアに当てられて恋愛に意識を向けたとかじゃないか? そもオカルト研究部員、俺も含めて全員純血保ってるどころか恋愛経験すらろくにない奴しかいないし」
「そうなの? 引く手あまたな気もするけど?」
桐生が首を傾げるのも当然だが、しかしそうなんだ。
「ああ、部長はいいとこのお嬢様だから許嫁とかいるけど、「大学卒業までに彼氏ができたら無し」って感じになってるから、
実際そうだから、何かあるとは思えないんだが―
「木場きゅんは未だフリー!? つまり、私達にも初めての女になれるチャンス!?」
「リアス先輩もやっぱフリーか! いや、許嫁はいるけどキャンセル可能なら、俺達の誰かが行けるのか!?」
『『『『『『『『『ぃいいいやっほぉおおっっ!!!』』』』』』』』』
「失言、だった……っ」
「お~、別方面で大騒ぎ。ちょっと面白くなってきたかも?」
桐生、お前もうちょっと楽しんでるのを隠せ。
さて、そんな感じで備えやフォローに回っている一志ですが、まさにこの章はその婚約者がらみで問題が起きる話でもあります。
とりあえずひねる方向性は決定していますが、そこから少しずつ詰めながらやっていこうと思いますです、はい。