「「「なんでお前は女っぽいのに男なんだ!」」」と変態三人衆に言われるレヴィアタンの血を引く少年の、余計な要素が無駄に入ったD×Dのお話   作:グレン×グレン

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 はい、ちょっとしたオリジナルバトルがスタートです!


第五話 運命の恋物語、開幕

 一志Side

 

 振るわれる爪を回避し、そして即座に反撃を叩きこもうとして、それより早く来る追撃を回避する。

 

「ひゃはははは! 獲物風情が調子乗るんじゃねぇええええ!」

 

 そう吠える龍は、明確にポテンシャルが高い。

 

 まず間違いなく上級悪魔クラス。それも中堅どころには到達しているだろう。

 

 正直解せない。

 

 最初の攻防で察せられるのは、こいつはそんなに大した奴じゃないということだ。

 

 龍なだけあって、中級悪魔クラスは余裕であっただろう。だが同時にその程度でしかない。

 

 はっきり言って、魔装具込みのレイナーレの方が数段上だ。それが、今は互角に渡り合えるレベルにまで強化されている。

 

 振るわれる攻撃をいなしながら、俺はそこが懸念だった……が、すぐに気づいた。

 

 見れば、奴の刻印は小さくなり、光も弱くなっている。

 

 これはあれだな。そういう能力なのかブースターなのか。

 

 この光の消耗具合なら、時間稼ぎをすれば十分勝てる。

 

「クソガキがぁ! いつまで逃げれるか見ものだぜぇええええ!」

 

 そしてこの調子に乗りすぎた対応。馬鹿なんじゃなかろうか。

 

 自分が持久戦で勝てると自惚れているところといい、行動があまりにもずさんなところといい、はっきり言って阿呆としか言いようがない。

 

 だが警戒するべきところはある。

 

 具体的に言えば、奴が気になるところを言ってきたことだ。

 

―もうそんなことを気にしなくてもいいからよぉ?

 

 この発言が気にかかる。

 

 いくら何でもこいつ程度の輩が、ここまで阿呆なことをして人間世界に害をなしてただで済むわけがない。

 

 日本にだって五大宗家という異能集団が存在する。それはそれとして日本の首脳陣が悪魔と契約することで、対応可能な戦力を送る可能性もある。現地の妖怪や八百万の神々が動く可能性もなくはない。

 

 全てにおいて悪手だろう。流石にコイツ自身、自分が神や魔王に喧嘩を売れる手合いであるなどという自覚はないはずだ。

 

 となれば、奴の後ろに何かがある。

 

 神や魔王と戦争を行えるだけの後ろ盾が、こいつにはあると考えるべきなんだろう。

 

 ……幸い電話は繋いでいる。声が遺されることは十分あり得るだろう。

 

「……俺に万が一があった時は、この会話を冥界政府()にお伝えください」

 

 そう呟いたうえで、俺は声を張り上げる。

 

「……神や魔王すら恐れぬ龍よ! お前達はいったい何者だ!」

 

 この馬鹿なら、口が滑って少しぐらい情報を出してくる可能性は少なからずあるだろう。まあなくても時間を稼ぎさえすれば、こいつのガス欠は十分狙える。そうでないならその時成すべきことを考えればいい。

 

 そこまで踏まえ、俺は防御態勢を取りながら答えを待つ。

 

「いいぜぇ! 冥途の土産に教えてやらぁ!」

 

 ―いう可能性はあるとは思っていたが、こうも気持ちよく言おうとするとは思わなかった。

 

 嬉しい誤算だ。これはかなり情報を確保できる。

 

 さあ語れ。すぐ語れ、俺も記憶するが電話越しにも聞こえるように、大きな声で語ってくれ。

 

 俺は一字一句記憶するべきと判断し、奴の口が開くことを待ち―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでにしなさい、このおバカ」

 

「へぶぁ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 ―突如舞い降りた少女の踵が、龍の口を強引に塞いで地面に叩き付けた。

 

 状況は分からないが、奴の増援というよりかは、余計なことを言わせない為の迎えと取るべき。次点で敵の敵といったところか。

 

 こちらに敵意や殺意を向けてないことから、すぐに攻撃を仕掛けてくる可能性は引く。なら周囲にさらなる増援が来ないかどうか、そちらの警戒にも意識を割く。

 

 大剣を盾にしつつ様子を伺うと、少女はため息をつきながら踵をぐりぐりと奴の上あごに押し込んだ。

 

「マジやめてくれない? 私はあんた達のことは嫌いじゃないけど、こんなところでぺらぺらぺらぺら内情しゃべらないでよね。たまたま近くに来てたからよかったものの、これでウチが潰れるようなことになったら殺してるところよ?」

 

 そうため息をつきながら、少女は今度は俺を見る。

 

 ………俺は息を呑み、彼女は少しだけ目を見開いた。

 

 縁は無い。会ったことは無い。こんな顔は記憶になく、亞里亞や冴姫派のような「どこかで会った」ような気持ちすら浮かばない。

 

 だが、その一瞬で俺は一つだけ分かった。

 

 直感した。

 

 確信した。

 

 悟ったと言っても過言ではない。

 

「………君は一体、誰だ?」

 

「……そうね。貴方には何故か名前を言いたいわ。なら教えてあげる」

 

 その苦笑交じりの微笑みを、俺は一生忘れないと、万年生きれる悪魔の若輩者にも拘らず、何故か強く思ってしまう。

 

「ジュリア・C・コロンブス。コロンブスの意思を継ぎたいと願う女。ジュリエットって呼んで頂戴?」

 

 その名前を、生涯記憶すると、先のことなど分からないのにそう決意した。

 

「貴方の名前は? すごく聞きたいのよ」

 

「……一志・L・モンタギューだ」

 

 それを聞いてほしいと、覚えてほしいと、俺の魂が叫んでいた。

 

 そして俺の返答を聞いて、少女は頬を赤らめながらはにかんだ。

 

「そう、ならロミオと呼ぶわ。ええ、そう呼びたくてたまらない」

 

 俺はこの時、何を成すべきかを考えるのが数秒遅れた。

 

 そしてその隙をついて、ジュリエットは龍を抱えると瞬時に跳躍する。

 

「縁があったらまた会いましょう! そして―」

 

 そう、これは俺と彼女の物語の始まり。

 

 

 

 

 

 

 

「私とあなたで殺し合いましょう! 嫌だと言っても殺しに行くわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 ―血塗られたお互いが恋願う、鮮血の恋物語(ラブストーリー)のプロローグだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……不覚でした。本当に不覚でした。本気で土下座案件です」

 

「そういう問題じゃないわよ? というより、貴方が一目惚れなんて概念を経験するとは思ってなかったわ」

 

「部長に同感です。……一志、お前って一目惚れなんてするキャラだったか?」

 

 リアス部長とイッセーにそう言われると、実際俺も同感だから頷くしかない。

 

 よもや俺が一目惚れをするとは。

 

 一目惚れってつまり、外見だけで判断するか直感オンリーで判断するかだからな。俺みたいなタイプはそれなりに知り合ったりして判断する男だと思うから、どう考えてもキャラと合わない。

 

 自分でも不思議なぐらい彼女に目を奪われて、部長達が帰ってくるまで三十回はふとあの笑顔を思い出したぐらいだ。

 

「……何がどうしてこうなったのか、本気で疑問符だ。人間にしろ悪魔にしろ、生物は曖昧な存在だということか」

 

 本気で俺も首を捻る。

 

「いや、これが恋愛感情なのかというのはそれはそれで疑問ですけどね? 何より前提条件として、俺は恋愛経験が無いからこれが一目惚れなのかもそれこそ不思議なんですけどね?」

 

「っていうか、そのジュリアってお前のことを「ロミオ」って呼んだうえで「ジュリエット」って呼んで欲しがったんだろ? ……縁起が悪いぞ」

 

 イッセーがそうげんなりするが、まあこれは仕方がない所もあるだろう。

 

 ロミオとジュリエットなんて、この国でも子供すら知ってるだろう悲恋だ。

 

 対立する二つの家に生まれた男性と女性が、対立に巻き込まれ情報のすれ違いを起こし、二人とも死んでしまうという悲劇の物語。その主人公ともいえるカップルだ。

 

 態々それになぞらえるなんて、中二病かメンヘラ化、とにかく問題のある少女なんだろうな。

 

「そして刻印の力を借りて強化される朱炎龍ねぇ? どういう原理かは分からないけれど、五大宗家や高天原も警戒しているようだわ」

 

 部長はそちらの方も気にしているが、これは当たり前だ。

 

 いくら龍が種族として最強格であろうと、個人であの程度の龍が神や魔王を警戒しないわけにはいかない。

 

 それなのにあんなことを言った以上、何かしでかす可能性は間違いなく大きいって奴だ。

 

「今後を踏まえると要警戒ね。既に魔王様にも連絡が言っているはずだけれど、後であなたからの視点の資料を提出した方がいいと思うわよ」

 

「了解です。あとでレポートを作らせてもらいます」

 

 そう返すと、俺は何故かイッセーがじとりと見ていることに気が付いた。

 

「……一志、その助けたお姉さんとは、そのあと何かあったのか?」

 

「残念ながら期待外れだ。事情が事情だから記憶処置は施しているし、当面は刺激したくないからあの喫茶店にも行けないんでな」

 

 全く持って困ったものだ。

 

「……個人的にあそこの喫茶店のメニューは今後も食べたかったんだがな。あの龍は機会があれば今度こそ捕縛して突き出したいところだ」

 

 俺がそうぼやくと、イッセーとリアス部長はちょっと半目だった。

 

 そっち?……とかそういう感じの視線なのは分かるが性分だ。

 

 会ったばかりの女性とラブロマンスとかは柄ではない。

 

 だからこそ、ジュリエット……ジュリア・C・コロンブスのことは俺にとってかなりのイレギュラーだ。

 

 ある意味で、冴姫派や亞里亞と同格以上の展開と言ってもいいだろう。俺の人生、ここ数か月で一気に急変しすぎではなかろうか?

 

 まあ、それは今どうでもいい。

 

「俺の恋愛より部長の婚約問題です。今日のレーティングゲーム、勝算はあるんですか?」

 

 そう、そこが重要だ。

 

 十日間の特訓で、どこまで高められているかの問題だ。

 

 特に重要なのは、伏せ札と言えるアーシアの回復能力と、同じく伏せ札となっているイッセーの赤龍帝の籠手だ。

 

 悪魔すら治療できる回復能力と、極めれば魔王すら殺せる絶大な力。

 

 運用次第で状況をひっくり返すジョーカーになりえる。そこは間違いないんだがな。

 

「……基本的に、アーシアは部長につけることになってる。一番重要なのは(キング)の部長だしな。俺達は状況次第で合流して回復ってことになるかな」

 

「イッセーに関してはだいぶ仕上がったわ。赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)も倍加を溜めて叩きつければ、ライザーにすら届くはずよ」

 

 イッセーと部長の言葉を聞いて、勝機は確保できたことを理解した。

 

 ライザー側は圧倒的有利であることから、受けに回った方向性になるだろう。また自身の不死と眷属の数の多さから、レーティングゲームにおいては駒をあえて撃破させて後の有利をとる戦法をとることが多い。

 

 必要な時は誰かを切り捨てることもできなければ、大きな集団の長は務まらない。私的にそういう戦法を好かない者は多いだろうが、一つの立派な戦略ではある。

 

 なりふり構えないところのある実戦ならともかく、たかがゲームでそこまで酷い事をしたくないという者はいるだろう。

 

 まず死なないゲームならまあ仕方がないが、本当に死ぬ実戦で仲間を見捨てられないという者もいるだろう。

 

 どちらであってもそんな勝ち方は御免だという者もいるだろう。

 

 そして、俺のようにどちらであってすべき時はする者もいるだろう。

 

 その上で、見捨てる選択をとることで心が痛むかどうかも別問題。

 

 ……思考がずれたな。今はライザー氏とリアス部長のレーティングゲームのことを考えるべきだ。

 

 といっても、俺はどうあがいても関与できない身だ。ここからは黙って見守ることしかできない。

 

「……部長、試合の内容は観戦させてもらいます。その上で、ご武運を」

 

「ええ、ありがとう。その応援に恥じない戦いをして見せるわ」

 

 その笑顔が、曇らないことを心から願っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 試合内容は、善戦という言葉を遥かに超えた戦いだったといえるだろう。

 

 ライザー氏の眷属は、女王のユーベルーナと僧侶のレイヴェルを除いて全員が全滅。レイヴェル嬢はライザー氏の妹君で、レーティングゲームには基本参加しないスタンスだから殆ど全滅と言ってもいい。

 

 また、イッセーの編み出した洋服崩壊(ドレス・ブレイク)には頭痛を覚えるほかない。

 

 イッセーの皆無に近い魔力量で、あそこまで効果的な破壊力を発揮させるとは煩悩おそるべし。奉作の編み出した祝福風路(メクル・メイク)に感銘でもうけたのかあのバカは。

 

 そしてイッセーが赤龍帝の籠手の新たな力を会得したのも、大きな貢献だろう。心の影響を受ける神器ゆえの奇跡だろうが、最初から分かっていればもっとやりようはあっただろう。

 

 ……だが、結果だけを語るのならば単純だ。

 

 リアス・グレモリーは敗北した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

「あら、意外と善戦してたのね」

 

 記録映像を見ながら、ジュリア・C・コロンブスはそう感想を告げた。

 

 とある伝手から入手した、恋しいロミオを食客として迎え入れているリアス・グレモリーが婚約をかけて婚約者のライザー・フェニックスと行ったレーティングゲーム。

 

 気になったので伝手を利用して記録映像を見ていたが、中々興味深い戦いだった。

 

 圧倒的な数的不利に、切り札と言える回復役と赤龍帝(ロンギヌス)は、実戦経験も訓練も不足している。ことゲームにおいては連戦連勝で、機体のルーキーとされているライザー・フェニックスを相手にするには、圧倒的に不利だと言ってもいい。

 

 しかしライザーの眷属は殆どが撃破されたのだ。十分すぎる脅威と言ってもいい。

 

「……おっと。愛しのジュリアじゃないか。こんなところで何してるんだ?」

 

 その声に、ジュリアは肩をすくめながら振り向いた。

 

「ユウビじゃない。ちょっと興味があった映像を手に入れたから、こうして休憩ついでに見てたのよ」

 

 そう答えながらタブレットを見せると、ユウビと呼ばれた青年は、興味深げに映像を除く。

 

「お、憤怒が送ったとかいうレーティングゲームの映像か? 現ルシファーの妹が、あの赤龍帝を眷属にしたとかいう?」

 

「そういうこと。実は一目惚れで初恋を経験したんだけど、その恋しいロミオがリアス・グレモリーの食客なのよ」

 

 そうさらりと告げ、ジュリアは皮肉気な笑みを浮かべながらユウビを見る。

 

「妬いたかしら?」

 

「ま、ちょっと羨むぐらいはするぜ? つっても、別にそこまででもねえ」

 

 そう返すユウビは、不敵な笑みを持ってジュリアに嗤う。

 

「むしろ俺がお前を墜とせば、俺はお前の愛を踏みにじれるんだ。愛を踏みにじる者として、むしろ燃える展開かもしれねえなぁ」

 

「そういうと思った。できないことをいうもんじゃないけど、そういう自分のやりたいことに忠実な男は好きよ?」

 

 そう平然と返しながら、同時に自嘲をジュリアは浮かべる。

 

 ああ、確かにユウビは好きなのだが、だからこそ嫌味にしかならないだろう。

 

「……でも、だからこそ好き止まりなんてことになるんでしょうね。だって―」

 

 

 

 

 

 

 

 

―したいことだけする女だからこそ、成すべきことを成し遂げる男に恋をする。そんなバカみたいな死に方(生き方)が大好きなんだから。

 

 

 

 

 

 

 そう呟き、二人は将来の敵の戦いを見る。

 

 全ての神話勢力を敵に回す存在。名を禍の団(カオス・ブリゲート)

 

 そこを借りのねぐらとする、二人の大いなる罪を持つ者が、闇に蠢き機会を待つ。

 

 彼らが動き出すまで、後数か月というほかない。




 といってもちょっとだけでしたがね!

 ぶっちゃけアンケート機能をできれば使いたいので、できるだけ早く禍の団の存在を出したかったのがこの幕間じみた話の理由です。

 そして登場したジュリア・C・コロンブス。

 ある意味で一志・L・モンタギューと対を成す存在である、恋願いし殺し合いを果たす間柄。この作品は結構Light作品の影響を受けてますが、シルヴァリオサーガにいれば極晃星をお互いに描く間柄。ある意味で英雄と神星のような星の到達をぶちかます関係性です。

 まあそれはともかく、レーティングゲームは順当に敗北。次からイッセー達が反撃をかましますが………。

 ぶっちゃけ、すごく面倒くさい奴が面倒くささを盛大に発揮する下位でもあります、ハイ。

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