書くの辛くて文字数が伸びない。
君の愛バが♪
ずきゅんどきゅん 身を削り〜♪
ばきゅんぶきゅん 駆けて行くよ〜♪
こんなーレース()はーは〜じめて〜♪
はい、すいません。
あの娘を知ったのは偶然だった。いや、思えば必然だったのかもしれない。
「そのウマ娘が……何だって………?」
「………実際、ご覧になるのが一番早いでしょう」
息子の嫁の義兄の子。一応は遠縁になるそのウマ娘の話は、初めは非常に曖昧な情報のみが伝えられた。辛い宿命を背負った少女だ、とだけ。そして作って欲しいものがあると。初めは断った。俺はあくまで装蹄師、作れるのは蹄鉄だけだ。だがどうしても、会うだけでも会ってくれないかと言われた。
実際にあの娘を見て、俺は絶句した。故障したウマ娘、引退したウマ娘、走れなくなったウマ娘は何人も見てきた。だが、初めから走るという選択肢を与えられていないウマ娘を見るのは初めてだった。
皮肉な事に、その身体は足が無いという最も致命的な点を除けば、非常に才あるものだった。今ではただの隠居ジジイだが、これでも数年前まではそこそこに有名な装蹄師だったのだ、良いウマ娘ならば見れば分かる。
「お嬢ちゃん、名前は?」
車椅子に座る両足の無いウマ娘のキラキラとした羨ましげな瞳は、窓の外で走り回る、丁度その娘と同い歳程のウマ娘達に向けられていた。
「ハリボテエレジー」
不思議そうにこちらを見上げたあの娘は、エレジーはそう端的に呟いた。いい名前だと頭を撫でれば、誇らしげにしていたのをよく覚えている。そんなあの娘の目はすぐに外のウマ娘達へと戻った。そこで、俺は自分のやるべきことを理解した。
「嬢ちゃん。走りたいか?」
「……………うん!」
何を言われたか分からない、という顔を数秒した後、エレジーはそう返した。
その時、俺の生涯で最後の仕事が決まった。
────────────
「………すごい」
初めての義足。痛いだろうに、立ち上がったエレジーはそのまま走り出した。方々に掛け合って作った人間用の競技用義足を改造した代物だ。生憎義足そのものを作る技術何てものは持っていないが、装蹄師としての経験から大体どのような機構がウマ娘の走りに相応しいかは分かる。それに合わせて多少の改良を加えたのだ。もちろん、ウマ娘一人一人の走り方にもよるのだが。
「あぁ、クソ。惜しいなぁ………」
あの足が本物だったなら、もし何の問題もなく生まれていたのなら、あの娘はきっと強いウマ娘になっていた。なまじ経験があるばかりに、それを如実に伝えてくる己の目が憎い。
バキンッ!
「エレジー!!?」
そんな折、破砕音とほぼ同時にあの娘の母親の叫び声が聞こえた。思考から意識を引き戻してエレジーを見れば、芝生の上に転がるあの娘が目に映った。
「大丈夫か!?」
母親に抱え上げられた彼女を見れば呆然とした様子だった。幸い怪我などは見受けられない。だが、義足を見て驚愕する。右足の義足が半ばからへし折れていた。見ただけでは破損した理由がわからず本人に聞こうと目を向けようとした瞬間、あの娘は呟くように言った。
「そっか、私曲がれないんだ」
その一言で全てを理解した。この義足はカーブの際の負荷に耐えられなかったのだ。
────────────
その夜、久方ぶりの酒を呷りながら、俺は2年前にくたばった妻の仏壇の前にいた。飾られる写真に写っているのは年老いたウマ娘の姿だ。
「お前も走るのが好きだったなぁ………」
晩年、足を悪くしても毎朝のジョギングを欠かさなかった妻を思い出す。その姿が、どこかハリボテエレジーに重なったように感じた。
あの後、あの娘は俺に「また義足つくってくれる?」と聞いてきた。大きな怪我はしていないとは言え、間違いなく痛い思いをしていただろうに、だ。
酒を呷る。昔、もっと若かった頃だ。装蹄の仕事をする俺に、妻は頻りに「浮気だ!」などと冗談めかしたことを言ってきていた。
「悪いな、最期にもう一度だけ浮気しちまうことになる」
長い仕事になるだろう。この身体が朽ち果てる前に達成出来るかどうかも分からない。だが何としても成し遂げなければならない。これは、俺の最期の装蹄だ。
(安心しろエレジー……時間はかかるかもしれねぇが、俺がお前さんに最高の足を届けてやる…………)
微睡む意識に身を委ねる。願わくば、あの娘の最高の走りを見てから逝けるようにと、俺は意識を手放した。
覚悟ガンギマリ爺。
先に言っておきます。この作品、主要人物(今のところエレジーと装蹄師)はかなりのレベルで覚悟キまってます。
次回の投稿までの期間はフジキセキが引けたか引けないかで決まります。
感想評価よろしくお願いします。