ふと思いついたやつを雑に出力しました。
先にごめんなさいしときます。

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最初に言っておく。これはかーなーり、酷い!!


強襲のタキシードクイズ

 某年某月某日某所、百合ヶ丘女学院所属のレギオン「ラーズグリーズ」…もとい「一柳隊」は苦戦を強いられていた。

 戦っているのはラージ級ヒュージ。周辺のスモール・ミドル級を退け、あとは群れの中心であるそれを倒すだけのはずであった。

 

 しかし、時間が悪かった。

 現在時刻は夜の7時。青空はとっくに星空へと変わっており、夜目の効かない彼女たちは森へと逃げ込んだその巨体を探すのに手間取っていた。

 

 レギオンメンバーに"鷹の目"を持つ者もいるが、対象が黒色であることも相まって夜間の発見は困難を極めていた。

 全員が警戒しながら森の中を進んでいる。散開して探すよりも固まって動く方が死角からの攻撃に対処しやすいと考え、円陣を組みながら。

 

 しかし、元より視界の効きづらい森の中。しかも月明かり以外に照らすもののない夜である。当然、見落としというのはどうしても出てくる。

 ヒュージは既に闇の中で狙いをつけていた。自分たちの力を削ぎ、あまつさえそれを味方の強化にさえも使ってしまえる、"カリスマ"持ちのリリィに。

 

 闇の中。木々のから光が漏れる。それはヒュージのレーザー攻撃の光だ。

 

 

「っ! 梨璃!!」

 

 

 咄嗟に気付いた夢結が梨璃を庇うように前に出る。ラージ級の狙いすました一撃。こんな咄嗟の行動で防ぎ切れる可能性は低い。

 だが、シルトを守るのが姉の務めだ。夢結は怪我を覚悟で光へとCHARMを構え──

 

 

「…強くなったね、夢結」

 

 

 ──しかし、その光が彼女へと届くことはなかった。ビームに対してどこかからマギの弾丸が撃ち込まれ、そのまま光は軌道を変えて明後日の方向へと飛んでいったのだ。

 全員が遅れて攻撃を受けたことを理解し、構える。その瞬間、戦場に似つかわしくないエレガントな音楽が流れ始めた。

 

 

「なんですの?この音楽…」

 

「ヴァイオリン…?」 

 

 

 突如流れ始める音楽。弦楽器の音色が美しく夜空に響き、場違いな音に全員が困惑の表情を見せる。

 しかし、夢結だけはこの中で一人違う反応を見せた。

 

 

「このジングルは…タキシードクイズ!」

 

「タ、タキシードクイズ?」

 

 

 瞬間、ある一点がライトアップされ全員の視線がそちらに向く。梨璃は敬愛するお姉様から急に知らない単語が出てきて頭上に疑問符を浮かべていた。

 

 

「さあ今夜もやって参りました。リリィによるリリィのためのシルクハットなお時間、ザ・タキシードクイズ! 回答席のヒュージよ聞くがいい。動けば撃つ」

 

「誰ですのこの方ー!?」

 

「あっみんな見えてるんだ…てっきり私だけに見える変な妖精さんかと……」

 

「大丈夫ですよ雨嘉さん。不本意ながら私も見えています」

 

 

 視線の先には黒と白のタキシード。黒いシルクハットを被り、赤い裏地のマントを靡かせ、マスクで目元を隠した変人。赤い薔薇を模したマイクを手に持った、タキシードの奇人であった。

 夢結以外の一柳隊のメンバーは自分がおかしくなったのかと目を擦るが、現実は非情である。彼女たちの瞳に映る光景が変わることはなかった。

 

 

「では早速問題。ちんちん電車から電車を取ると何が残るでしょうか!はい雨嘉君、上のお口で答えて!」

 

「わ、私!?えっと…えっと…」

 

「雨嘉さん?別に無理に答える必要ないと思いますよ?」

 

「というか出題の時点で最低だゾ…」

 

 

 突然の出題。それも小学生の男児が戯れに出すような下品ともとれるそれに、純真な雨嘉は慌てふためく。そんな彼女と止めようと神琳は言葉をかけるが、パニックに陥っている雨嘉の耳には届かない。

 梅はタキシードの変態に心底軽蔑したような視線を浴びせていた。

 

 

「お…おっ……!」

 

「雨嘉さん?聞こえますか?言わなくていんですよ?雨嘉さん?」

 

「そうだよ雨嘉。急に出てきたタキシードの変態のクイズなんて律儀に答える必要ないから」

 

 

 神琳に続いて鶴紗も説得に加わるが、それでも声は届かない。元来より目の前のことに集中すると周りが見えなくなる類のリリィではあったが、今はまるで暗示にでもかけられたようにこちらの言葉に反応しない。

 遂に彼女は蚊の鳴くような声量で回答を絞り出した。

 

 

「お〇んちん…です…」

 

 

 余談だが、羞恥に頬を赤らめながらその答えを出した雨嘉に対し、このとき神琳は底知れぬ昂ぶりを感じたと言う。

 

 

「フフッ…まあ普通はそう答えてしまうよね。正解は『線路と駅』だけど」

 

「シンプルに最低じゃなこやつ…!」

 

 

 タキシードの変態の答えは想像よりもずっとしょうもない。雨嘉の羞恥は臨界点に達してしまい顔を真っ赤に染めたままその場にしゃがみこんでしまった。

 鶴紗は落ち込む彼女の背を優しくさすり慰めている。

 

 

「さてそんな雨嘉君大好きおち〇ちんを模した大人の玩具…」

 

「大好きじゃないよ!?」

 

 

とんだ風評被害である。雨嘉は珍しく大声を上げた。

 

 

「フフッ…まあ聞き給え。百合ヶ丘でも密かに人気の"本質的マギ交感専用玩具"たちだが、実は特許を出願する場合該当する分類が存在しないんだ」

 

 

内心何の話だ…と思いながら全員が一応話を聞いている。ヒュージも何故か大人しくしており、戦場であるはずの空間にはよくわからない空気が流れていた。

 

 

「なので『大人用玩具』なのに『子供用玩具』として出願される訳だな。神琳君、キミがルームメイトとの本質的マギ交換で使おうと百由君に作ってもらったあれらの道具も…っといきなり撃ってくるなんて酷いじゃないか」

 

「落ち着け神琳!気持ちはわかるがあんなのでも一応人間だゾ!?」

 

「どいてください梅様。あれは人類の敵です」

 

「…神琳?道具って何…?私知らないんだけど……」

 

「というか百由様もなんてもん作っとるんじゃ…」

 

 

 場の混沌は加速する。滅多に怒らない神琳が無言でマソレリックの引鉄を引き、梅が「殺人はマズい」とそれを必死に止めようとする。

 ミリアムは百由が作っていたものに呆れ、雨嘉はルームメイトが自分に何かしらの道具を使おうとしていたという事実に衝撃を受けている。

 

 

「ちなみにリリィの中にはアーセナルにそういった玩具のアップグレードパーツの製作依頼を出す者もいるぞ!ミリアム君、キミが昨日納品したパーツもその類のものだ」

 

「なんじゃと!?」

 

 

 予想外の方向から知らない情報で殴られたミリアム。昨日納品したマギで稼働するウルトラチューンモーター、製作の苦労の割に使われ方があんまりであった。というか最高出力で人体に使うと最悪怪我するのでやめてほしいとも思った。

 

 

「フフフ…鶴紗君にはこの手の話はまだ早かったようだね。『誰のことも好き』と宣言した手前特定の相手を作れないでいる梅もカワイイ後輩の普段見せない表情に少しは揺らいだんじゃないかな?」

 

「……」

 

「…なんで黙るんですか梅様」

 

 

 梅は否定したかったが出来なかった。りんごのような赤で彩られた鶴紗の顔に実際ちょっと魅入っていたからだ。

 鶴紗も文句を言いつつも心のどこかで梅に期待していた。

 

 

「余談だが最近は体躯の小さな方でも安心して使用できるようにスモールサイズの玩具も開発されているらしい。楓君、工廠科に依頼するなら今の内だぞ」

 

「え、楓さん?流石に梨璃さんにそっち方面で手を出すのはやめた方がいいと思いますよ?」

 

「…お黙りちびっ子」

 

 

 楓は普段なら声を荒らげそうなところを逆に静かな様子で言った。それは自覚の無い人間に向けられる呆れの感情にも似ていて、二水はというといつもと違う様子の楓の反応に首を傾げていた。

 彼女がこのときの楓の反応、その意味を知るまであと3時間。

 

 

「おっと、もうお開きの時間が近づいているようだね。今回罰を受けるのは回答席にいる0ポイントのヒュージ、貴様だ。まあ罰を下すのは私ではないがな…今だ!梨璃君!」

 

「はいっ!」

 

 

 タキシードクイズは終わりを告げる。何故か律儀に待っていた回答席(?)のヒュージはそれを合図に触手を仕向けるが──もう遅い。

 タキシードクイズが展開されている間、一柳隊の皆は無意識的にノインヴェルト戦術を展開していたのだ。ついさっき最後のメンバー…梨璃にマギスフィアが渡り、臨界まで膨張したマギの塊は銃口と共にヒュージへと向けられていた。

 即ち、フィニッシュショットである。

 

 マギスフィアをまともに喰らったヒュージは砕け散る。なんとも奇妙な一幕であったが、彼女たちは確かに任務を達成してみせた。

 

 

「フフッ…愛を解せぬ獣には難しい問題だったかな?次はよくお勉強してからクイズに臨むといい」

 

 

 あの低俗なクイズに果たして愛は関係あったのだろうか。その場の誰もがそう思ったが、あえて誰も口にはしなかった。

 

 

「ではまた会おう、夢結。そして一柳隊の諸君。ちなみに過度な本質的マギ交感は最悪腰を壊すので若気の至りでやりすぎないようにな!フハハッ!」

 

 

 そう言ってタキシードの変態は闇夜に消えていく。残された一柳隊の全員は、過ぎ去った嵐に唖然とするばかり。

 無傷で戦いを終えたというのに、そこに流れる空気はなんとも微妙なものだった。

 

 

「…なんだったんですかね、あの方」

 

「…私も一年ぶりくらいに遭遇したけど、わからないわ」

 

 

 比較的被害の少なかった夢結と梨璃が呟くように言う。他のメンバーはというと、例の玩具の話のせいで混沌と化していた。

 

 

「あれ?ポケットに紙が……」

 

 

 梨璃が自分の制服、一つのポケットに違和感を感じる。そこには、一枚のメッセージカードが入っていた。

 薔薇の文様が刻まれた上品なメッセージカードにはただ一言、こう書いてあった。

 

 

『ちなみに夢結のスリーサイズは上から90/59/90だ』

 

 

 このメッセージカードは後で気付いた夢結によって破り捨てられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりに会ったが…元気そうでなによりだよ、夢結」

 

 

 暗闇の中、一人の少女の声が響く。

 声の主は、銀の髪と凛々しい顔立ちが特徴的な美しいリリィであった。しかしその手には何故かシルクハットと目元を隠すマスクが握られている。

 

 

「最近はG.E.H.E.N.A.を相手取るのに手間取って中々様子を見に来れていなかったが…いい仲間と巡り会えたようだね」

 

 

 靡くマントに漆黒のタキシード。夜に溶け込むそれらが月明かりに照らされる姿は、着ている本人の美貌も相まって御伽噺の一節のようにさえ感じられる。

 彼女が浮かべる微笑みはたった一人、大切なシルトに向けられたものであり、僅かに上がった口角と細められた目はより一層彼女の美しさを際立たせた。

 

 

「…ずっと見守っている。既に表舞台から去ったボクだけど、それなら裏でやれることをやるだけさ」

 

 

 微笑みは崩さぬまま、心中で決意を新たにする。ふと、向こうでヒュージの気配がした。

 

 

「フフッ…今夜は寝かせてもらえそうにないな…!」

 

 

 マスクを着け、シルクハットを被る。そして自分の"レアスキル"で他者から自分への認識を書き換え、飛び出して行く。

 ポケットに忍ばせた機械から、いつもの音楽を流しながら──

 

 

「このジングルは…タキシードクイズ!」

 

 

 ──タキシードクイズは、本日も絶賛放送中である。

 

 

 




あとがき

『タキシードクイズ』

 神出鬼没で正体不明の謎のリリィ。小綺麗なタキシードとシルクハット、赤い裏地のマントに目元を隠すマスクが特徴的。
 1年半ほど前から百合ヶ丘周辺で存在が確認されている謎のリリィであり、登場の際には特徴的な音楽が流れる。

 彼女が登場するとその瞬間に『ザ・タキシードクイズ』が始まり、この間はヒュージも何故か大人しくなる。なお出題は基本的に低俗で最悪なものばかりである。

 結果的に見ればヒュージを押さえつけノインヴェルト戦術のための時間を稼いでくれる良い存在なのだが、過程が酷いため戦局的にはプラスでもリリィたちからしたらマイナスどころではない。
 "カリスマ"に該当する力を持っているとされ、回答権を与えられた者は本人の意志と関係なくクイズに答えてしまう。乙女の恥じらう顔を見るのが好きらしい。

 百合ヶ丘の、それも外部に伝わらないような生徒たちの個人的な情報ばかりを持っているため学院内で一斉に捜査を行ったが、結局どこから情報が洩れているのかはわからず仕舞いだった。
 百合ヶ丘所属のリリィの誰かが正体ではないかという噂がある。


『川添美鈴』

 夢結のシュッツエンゲル。2年前の甲州撤退戦で死んだとされているが、実はG.E.H.E.N.A.に謎多き"カリスマ"の非検体として回収され生き残っていた。
 息を吹き返した後にカリスマの上位スキル"ラプラス"を使って研究所から脱走。その後は日々追手たちと戦いを繰り広げている。CHARMは無いので薔薇型のマイクから無理やりマギを射出する。

 正体がバレないように服装を変え、マスクを装着した上で認識を書き換えている。実は巷で噂のタキシードクイズの正体。
 夢結が低俗なものを嫌っていたこと、そして周りからリリィの理想像のような扱いをされていたことで自制していたが、世間一般的に死んだことになってから枷が外れてしまった。
 正体が誰にも知られていないため今は好き勝手にやっているが、実はカリスマ持ち相手には認識の書き換えの効果が薄く数ヵ月後梨璃に勘付かれる。


『本作における著しいキャラ崩壊について』

 すまんかった。

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