×月×日
今日は四大行の応用技の本格的な修行に入った。
修行の内容は、岩石地帯でひたすら穴を掘る作業。本当にこれで修行になるのかと最初はババアを疑ったが、その認識も陽が落ちるころには変わった。この穴を掘る作業、実はめちゃくちゃ疲れる。穴を掘るのに腕の力だけでなく、下半身の腰回りと足と身体全体を使う必要がある。
纏の状態で掘り進めて言っても200・300m程しか進まない。正直、念を習っていなかったら一日で100m程度しか進めないと思う。それくらいヤバイ。
そして、今日から夜も修行になった。寝る時は、座った姿勢で岩を付けたロープを持った状態で眠る。そして、寝ている時にそのロープが切られた時は即座に避けるといった修行。まぁ、この程度は流星街における日常と変わらないレベルで何の問題も無かったが、それを雰囲気から感じ取ったババアがロープじゃなくて身体に投げるようになった。
うぜぇ。
×月×日
今日も穴掘り作業。
今日は、穴掘りの作業中に『周』に関する詳しい説明を受けた。
『周』とは、物体にオーラを纏わせることで、その物体が持っている性質を強化する技法。例えば、剣に周をすれば切る力が強化され、盾なら防御力が増す、そして今俺達が使っているシャベルに周をかければ掘る力が強化されると言うめちゃくちゃに便利な技。
ただ『周』は、前に習った『凝』や『隠』とは違って桁違いに体力と気力が持っていかれる。それを抑える為にも、周で纏わせる量は極力節約して必要最低限のオーラでシャベルの強化をする。言葉では簡単だけど実行は四大行よりも圧倒的に難しい。
自分の持っているシャベルを身体の一部だと思って、オーラを纏わせるのがコツ。
×月×日
穴掘り作業。
少しずつだが着実に掘れる量が増えている。周の方は、まだまだ粗削りで実戦では使えないレベル。一回だけババアの周を見せてもらったが、イカレテタ。マジでババアの底が見えない。顔色一つ変えることなく綺麗に纏わせてた。何よりも恐ろしいのがその展開速度。本当に一瞬で、ON/OFFの切り替えをしてた。
×月×日
穴掘り作業。
今日もババアの周を見せてもらった。ババアにこれは年を重ねてきたから出来てるのであってあんた達みたいなひよっ子には無理だからあんま落ち込むんじゃないと言われた。あの年増、心配している風の声をかけながらも顔はしっかりと煽ってた。
ムカつく。
×月×日
穴掘り作業。
今日もババアの周を見た。正直言って、ババアの周はかなり勉強になる。自分の感覚で探っていくよりもババアの見本を見ながら一緒に練習した方が何倍も効率が良い。ババアと同じくらいの展開速度は無理でも、そこそこ速くはなった。オーラの纏う量は別として。
×月×日
穴掘り作業。
シズクの周が完璧すぎる。シズクも俺と一緒にババアの動きをマネしていたが、俺よりも覚えが早い。シズクも周を簡単に覚えられたことに自分で驚いてた。それくらいスムーズに出来てた。
……負けらんねぇ。
×月×日
穴掘り作業最終日。第一段階の修行終わり!
一ヶ月近くやっていた穴掘り作業が今日で終わった。あの後、俺も一日遅れで周がスムーズに出来るようになった。それでも、シズクのようにどんな物でも綺麗に周でオーラを纏わせるような芸当は俺には出来ない。ババアもあの技術はシズクにしかない才能だと言ってた。
×月×日
今日から組み手による実戦練習が始まった。
実際に組み手を始める前に、『硬』と『堅』、『流』の説明を受けた。
『硬』とは、『纏』『絶』『練』『発』『凝』を複合した応用技。『凝』によりオーラを身体の一部へと集中させ、その集中させたオーラを『纏』で留める。次に身体を纏っている微弱なオーラを『絶』で止める。すると、『凝』で集中させている部分に最初よりも多いオーラが集まる。この『凝』→『纏』→『絶』→『凝』の工程が基本的な『硬』の流れ。この工程に『練』や『発』を加えることで、さらに『凝』によるオーラの力は高まる。ただ弱点としてオーラを一点に集中させるため他の部分の守りが薄くなるというデメリットがある。
そして次に、『堅』。『堅』とは、全身を通常よりもはるかに多いオーラで覆い防御する『纏』と『練』の応用技。念能力者同士の闘いにおける戦闘態勢の基本。実は、俺達は三大行の時点でこの鍛錬を行っていた。練→纏の流れによる基礎固め。あれが実は『堅』の鍛錬になっていた。というか、その工程が『堅』だった。
ただ、『堅』はそれだけでは終わらない。俺達が今までやっていた『堅』は、攻撃力50・防御力50のいわゆる攻防力50と呼ばれる『堅』におけるニュートラルな状態。実践の中では、この攻撃力と防御力のオーラを『凝』を使うことで瞬時に状況に合わせた攻撃力・防御力に加減する。それが『堅』における攻防の基礎と言ってた。
そして、そういった攻防力を状況に応じて瞬時に変える技術を『流』と言うらしい。
今日からその『硬』『堅』『流』の三つを使った組み手を行う。
×月×日
組み手は、シズクと俺の二人で行う。防御側と攻撃側を交互に行い、その時々で攻防力を変える。基本的には、武術としての組手ではなく、念における攻防力の移動『流』の鍛錬としての組手。
穴掘り作業とはレベルが違い過ぎて気が抜けない。ババアが四大行の時に言ってた「凝が戦闘の基本」の意味を身を持って体験してる。そりゃあ堅での攻防戦を考えたら凝の大切さって異常だわ。てか、凝の応用力が半端ない。隠を見破れるし、硬における基本だし、攻防戦でオーラ量の見極めで重要だし、と引っ張りだこ過ぎる。
×月×日
攻防力組み手。
なんかめちゃくちゃ思い通りにオーラが動く。周の時は自分の体以外にオーラを纏わせる感覚に手古摺ってたけど、自分の身体の周りで動かす『流』は、『周』の百倍やりやすい。てか、四大行の鍛錬の時にやった『堅』の修行が今になって生きてきてる気がする。あの時に諦めずにやっておいて良かった。
ババアも『流』に関しては誰よりも才能があると言ってた。
ババア……わかっとるやん。うちできるこやでもっとほめてな
×月×日
昨日、ババアに才能があーだこーだ言われてから調子に乗ってババアよりもうめーわとか言ったらコテンパンにされた。年の功には勝てなかった。
×月×日
今日は『硬』の鍛錬をメインに修行した。
『硬』は、強化系の俺にとってめちゃくちゃに相性の良い技術だった。ババアも言ってたけど、強化系は硬をして相手を殴るだけで必殺技の『発』レベルになる。ただ、ソレは念能力者にとっては、太陽が東から登って西に沈むくらい常識だから基本的には当てられないことが多いらしい。
×月×日
今日は、攻防力組み手。
この組み手は、めちゃくちゃ好き。自分の得意分野で勝負できるから調子に乗れる。それでシズクを煽ってたら周で煽られた。
×月×日
今日からババアとの組み手がメインになった。
ババアとの組み手は、流の速度勝負になる。かなり実戦を意識した組み手になってる。正直言って、今の俺が唯一ババアに一泡吹かせられる分野だから死ぬほど真面目にやってる。ただ、ババアも伊達に年齢を重ねているわけではないため、簡単には勝たせてくれない。
でも、少しずつだが近づいてる……気がする。
×月×日
ババアとの攻防力組み手。
やっぱりババアは、決まった動きに対しての流の速さは異常だ。正拳突きや上段受け、下段受け等の武術における型の動きはマジでヤバいレベルだが、少しでも崩れた動きになると流に少しだけラグが出てる。それをどう突けるかが重要になってくるが、ソレはババア自身も気づいてる。その上でババアは、それを修正することなく、組み手におけるフェイントとして活用してくる。そのせいで逆に俺の流が乱れるっていう理不尽。
化物がよー、少しは夢見させてくれや。
×月×日
シズクもババアとの組み手で流のコツを掴んできた。かなりの速度での組み手が出来てる。ババアは、もしシズクが具現化した武器を持ったらそこら辺の強化系なら簡単に倒せるレベルになってるって言ってた。具現化系として、そのレベルまで行けるのは少数だからマジで凄いっぽい。それに加えてまだまだ伸びしろもあるから、具現化系の中では珍しい武闘派路線も全然いけるらしい。
具現化系武闘派 シズク 爆誕!!!
それに対して俺は、強化系として中堅クラスにはなってるらしい。言われたのはそれだけ。なんか俺に対して冷たくねーか?
前々からやたらとシズクの事を猫可愛がりしてるから、そういうもんだと思ってたけど、相対的に俺に対しての態度が冷たくなるのはナシだろ!家族の中で両親から愛情がもらえない方の兄になってるって!
×月×日
今日から攻防力組み手や硬の修行に加えて系統別の修行をやる事になった。系統別の修行では、自分の系統を中心に熟練度が山なりになるように鍛錬していくことになった。何でも他の系統もバランスよく修行することによって自分の系統の覚えが早くなるらしい。
そういうわけで、俺は強化系の修行をシズクは具現化系の修行をした。
【 強化系修行レベル1 石割り 】
自分の持つ石で別の石を割る修行。1日に1000個割ることが出来ればレベル1合格。この修行では、自分の持つ石に周でオーラを纏わせ、石を割る瞬間に硬で瞬間的な強化を行う。割る石が増えれば増える程、最初にあった集中力や念の制御、身体的疲労が溜まっていく。めちゃくちゃ理にかなった修行だった。
俺…156個
系統別修行は一日一系統が原則。他の修行は日を変えてやることになった。
×月×日
【 放出系修行レベル1 球遊び 】
球状のオーラを自分の体から切り離し長時間維持する修行。
普通に難しい。系統としては隣にあるおかげか切り離すのまでは簡単にいけたが長時間維持するのがめちゃくちゃ難しかった。普通に40秒くらいして消える。ただ、それも何回も繰り返していくうちに伸びていく。この放出系の修行は、『纏』の力強さに比例するはずだが、俺の場合はそういったのは関係なく、単純に自分から離れたオーラの制御が下手くそだと言われた。
×月×日
【 変化系修行レベル1 形状変化 】
指先のオーラを数字に変える修行。0から9までの数字を1分以内につくれたらクリア。最終目標は5秒以内らしい。
これは、放出系の時と比べて簡単に出来た。数回やった時点で形状変化を五分以内にまで短縮できた。ババアの話によると、俺は変化系寄りの強化系と呼ばれる部類に入っているらしい。放出系が他の強化系に比べて苦手になる代わりに変化系が得意になるのが特徴。と言っても、習得率が遅くなる程度の違いだという。それ自体も俺達みたいな才能のある人間は、普通の人たちよりも早くなるとか言ってたしあんまり気にしなくても良さそうだった。
×月×日
今日は強化系レベル1の修行。今日の石は673個。
あと一回修行を重ねたらいけると思う。やっぱり自分の得意な系統の習得率はかなり高いことになってるらしい。変化系や放出系と比べてかなりスムーズに進んでる。強化系の修行の後は、攻防力組み手をした。ババアには未だに勝ててない。けど、背中は見えてきてる。
×月×日
放出系レベル1の修行。球遊びはやっぱり難しい。
球を長時間維持するのに精一杯で、その後に岩に飛ばすことが出来ない。ただ、切り離した状態の球を維持する時間は延びている。今日で3時間まで伸ばすことが出来た。てか、最近気づいたが自分から離れたオーラを制御するときは、自分の体から離れていても自分の体の一部だと思い込むことが大切だわ。少しでも自分の感覚を騙せればいける。
×月×日
変化系レベル1の修行。変化系は本当に楽。
強化系の修行と同じくらいスムーズに進む。
今日で0から9の数字を1分以内で展開できるようになった。実質的に変化系はクリアした。けど、俺は5秒に縮めるまでレベル1の修行を続けることにした。今回はズルをしたというか、ババアに何回か手本を見せてもらった。それで簡単にクリアまで行けたから、ババアはマジで良い教材なんだけど、得意とか言っておいて頼ったのが何か負けた気がするので自分で5秒以内に行けるまでレベル1は止めない。
×月×日
強化系レベル1 合格。
今日で1149個割ることが出来た。ババアの手本を見ずに簡単にここまで来たからやっぱり自系統って凄い。自分でもそこまで苦労することなく来れてる。ただ、次からはガッツリとババアの手本を見て進めていく事にした。やっぱり使えるもんは全部使っておかねーと損した気持ちになるもんよ。
その代わりにババアにもう少し合格条件を難しくするように言っておいた。そしたら、ババアがめちゃくちゃ良い笑顔でいいわよとか言ってたけど、アレは絶対何かを企んでた。
×月×日
放出系レベル1
今日は、15時間まで延ばせるようになった。ババアの手本はハンター界にて最強! マジでねー、手本があると違うのよ。やっぱりねー、自分のフィーリングで物事を進めていくのは危険。教えてくれる、頼れる人がいるなら頼らなきゃ損!
いやマジでサイコーーーー!
苦手科目で100点取ったみたいな気持ちよさがある。
×月×日
シズクが『発』を作った。