×月×日
【 具現化系念能力 デメちゃん 】
念で具現化した掃除機「デメちゃん」を使ってシズクが念じたモノを何でも吸い込む能力。ただし、シズクが生き物だと認識しているモノは吸い込むことが出来ない。また、最後に吸い込んだモノなら吐き出すことが可能。吸い込まれたモノがどこに行くかはシズク自身も分かってない。
系統別の修行が始まって2か月、シズクは「発」を作った。
ババア曰くここまで完成度が高くかつ高性能な「発」をたった2か月で作れるのは、修行の成果もあるけどそれ以上に才能のゴリ押しらしい。
因みに現在の俺達の系統別修行の進行度は、シズクが具現化系レベル5と変化系レベル4、俺が強化系レベル4と変化系レベル3、放出系レベル2となっている。
シズクは、特質系の才能が無いため修行は具現化系と変化系の二つとなっている。そのおかげで俺と比べて修行の進行度が速い。そういった理由もあってシズクは俺よりも先に「発」の開発を進めていた。ただ、それでもシズクは異常らしい。特にデメちゃんと呼ばれる掃除機。その具現化は、一番異質だとババアが言ってた。
確かに自我を持ってる掃除機をどうやったらイメージ出来るんだ……。
×月×日
シズクになんでその掃除機をイメージ出来たのか聴いたところ、流星街に居た頃にこの掃除機を持っていたかららしい。そう言われたら確かにシズクが小さい頃に動かない掃除機を拾ってきたような思い出が無いでもない。ただ、確実に言えるのは拾ってきた掃除機は「ギョギョギョ」とは鳴かなかった。
それに関してはシズクにも分かって無いらしい。気付いたら勝手に鳴いてたという。
まぁ、別に強いから良いけどね、シズクも気に入ってるみたいだし。
×月×日
今日は、放出系のレベル3の修行に入った。
【 放出系修行レベル3 早打ち 】
レベル2の修行では、オーラで作った球を50メートル先の的まで飛ばしていたが今回はそれを10秒以内で出来るようにする修行。最終目標は、3秒以内。
どんなに頑張っても30秒から短くならない。ババアはこれが出来ないと実戦レベルでは使えないと言っていた。普通の放出系は、この程度の球遊びは1秒も掛からずやる。別に自系統じゃなくても遅くて3秒又は2秒と時間をかけない。だから、最終目標が最低限レベルみたいなところがある。
ババアは、強化系にとって放出系は「発」を考えるうえで最も相性が良いとか言って、めちゃくちゃ修行に熱が入ってる。でも、俺は放出系の念能力を作ることを今のところ全く考えてない。それよりも変化系寄りでの念能力を考えてる。イメージも大体固まってる。だから、後は作るだけなんだけど変化系の修行がレベル5に行くまで我慢してる。
「発」に関する詳しいことは二人には何も言ってない。理由としては、いきなり二人の前でめちゃくちゃ完成度の高い「発」を見せて自慢したいから。それ以外特に意味はない。
自分で考えてもちょっと幼稚かと思ったけど、必殺技って相談せずにカッコいい状態で見せたいじゃん。
×月×日
今日から変化系レベル4の修行に入った。
【 変化系修行レベル4 長文 】
レベル4では、指先のオーラを長文へと変える修行。ルールは、作る長文は毎回変えること。クリア条件は、一分以内で長文を完成させること。
だんだんと変化させる量が増えているが、今回はそこまで難しくは感じない。確かに長文になったことで、一分以内に完成させることは難しくなったが、俺も成長していない訳ではない。ここまでしっかりと修行を重ねてきた時間と経験がある。それに、逆を言えば時間を短くするだけである。毎回の系統修行で反復練習を忘れずにやれば二十日以内には行けそうな気がする。
×月×日
今日は、前回から引き続き強化系レベル4の修行をしている。
【 強化系修行レベル4 強化石割り 】
自身で強化した石をまた別の強化した石で割る修行。石を割るときは、粉々にならないように理想は半分に割れるようにする。クリア目標は、一日500個。これは、レベル3でやった並行石割りの強化版。この修行の目的は、強化の加減を覚えること。
今日で一日471個まで行けるようになったから次はクリアできると思う。
そして今回、遂にババアに攻防力組み手で一勝出来た。一勝したと言っても一回だけ俺の攻撃力がババアの防御力を僅かに上回って吹っ飛ばすことが出来ただけだけどそれでも勝ちは勝ち。全身全霊でババアを煽った。
……気付いたら夜になってた。
×月×日
放出系レベル3の修行。
今日は、26秒までタイムを縮めることが出来た。今日は、ババアの手本を見せてもらった。何とババアはレベル4までの放出系修行を完璧にこなすことが出来る化物だった。てか、この理論で行くと現在のババアは変化系がレベル8以上、強化系・具現化系がレベル6以上で念を修めてることになる。
ババアって念教え始めの時に30年以上修行したから任せなとか言ってたけど、今考えたらヤバいな。ババアは俺達に才能があーだこーだ言うけど、重ねた歳の前にはそんなの関係ないように感じる。
×月×日
前回から引き続き変化系レベル4の修行中
今日は、がっつりお手本を見てた。ババアは文字を書くよりも速いスピードでオーラを変化させる。それに加えて文字が複雑にも拘らずまっすぐな状態で長文を完成させる。完全にオーラの変化を制御してる証拠だ。修行する時は毎回手本を頼んできたから、そのおかげでめちゃくちゃ凝が上達してる。かなり細かい部分までオーラの動きを見分けることが出来るようになってる。
×月×日
強化系レベル4 無事合格。
今日は、スムーズに進んだおかげで他の修行が多めに取れた。いつもは、攻防力組み手を中心に修行してるが、今日から練と堅の維持の修行をメインにやる事になった。ババアの話によると、中堅クラスのプロハンターになると練や堅の維持が3時間以上できないと話にならないという。今の俺とシズクは、1時間30分程しか出来ていないからあと最低2倍、出来れば6倍くらい行けたら最高。
今日から日記は少なめにすることにする。
この修行期間中の集中力が高められるように無駄なことを減らして行きたい。このまま、シズクに独走されるのだけは絶対にイヤだ。
×月×日
今日から強化系レベル5の修行に入った。
【 強化系修行レベル5 強化石割り 】
レベル4の時とは違い今回はババアが強化した石を割る修行になった。目標はレベル1の石割りと同じ1000個。
レベル4の時は、自分で強化した石を割る並行作業だった。あの時は、確かに手抜きはしなかったけど、それでも辛うじて200個は初日で割れてた。けど、今回は初日で79個。段違いにレベルが上がってる。
×月×日
今日から変化系レベル5の修行に入った。
【 変化系修行レベル5 高速長文 】
レベル1は数字、レベル2は単語、レベル3は短文、レベル4は長文と来て、レベル5ではそこに速度が必要になった。具体的には5秒以内で長文を作る。ただそれだけ。レベル4ではそこまで速さを求められていなかったおかげで、時間をかければ簡単に合格できるようなものであったが、今回は違う。
レベル5に入ったという事で、早速二人に隠れて「発」を作った。
【 変化系・強化系念能力 ブレード 】
オーラを刃状の鞭に変形させて対象を攻撃・切断する。最大10メートルほど伸ばせる。その刃は、強化系の性質により極限まで鋭さが増している。
俺は、自分が変化系寄りの強化系と知った時にこの能力を作ろうと思った。理由は、パっと思いついたから。まぁ、元々「発」を作るときには強化系らしい単純な能力を作ろうとは思ってた。それが変化系寄りだと知ったときに……俺の頭にある記憶がフラッシュバックした。
―――それは前世で見たテレビの内容。
『鞭の先端って実は音速を超えるんですよ！』
『え？そうなんですか！？』
『今回はそれを検証していきたいと思いま～す！それでは検証開始！！』
そんな何処にでもやってそうなテレビの内容。小さい頃はソレが衝撃的だった。鞭ってやべーんだ。危ないんだ。凄いんだって子どもながらに記憶に残っている。
その記憶が変化系寄りだと知ったときに溢れ出した。そこからはすぐだった。じゃあ「発」を作るときにはオーラを鞭みたいにに撓るように性質を変え、さらにそこで刃のように鋭くさせたら強くねーか……そんな単純な思考。
それが最終的に【ブレード】を生んだ。結構短時間で作ったけど俺は悪くないと思ってる。それにブレードを使いこなせばもっと強くなれる確信が俺の中にある。
だから、見とけ二人とも。
俺はこの「発」で強くなるぞ。