自分の事をギャルゲの親友だと思い込んでいる精神異常者 作:胡椒こしょこしょ
オリジナル:現代/恋愛
タグ:残酷な描写 自分の事を親友だと思い込んでいる異常者 宙と交信する系ヒロイン 他作品ネタ 幼馴染 勘違い
世の中には二つの人種が存在している。
それは主要人物とそれ以外。
言うならギャルゲで言う所の主人公やヒロインに該当する目立つ人物。
もう一つは準レギュや顔などのグラもないような連中。
それが分かっているかどうかでこれからの生き方が変わっていくと俺は思っている。
そして、俺は所謂親友キャラなのだ。
そう確信する理由は、ある日リビングで祈っていたら荘厳なる我が主ラブコメ様から啓示を受けたなど色々あるが、最たる理由は隣の居る少年に起因している。
「今日もいい天気だな。友也。」
「それな大将。良いラブコメ日和だ。」
俺の隣でほんわかと笑っている少年。
前髪が長くて目元が隠れているが、どことなく目鼻立つが整っているのが見えて端正な顔をしているのが俺には分かる。
もうこの見た目からして典型的なノベルゲーの主人公だって分かるんだよね。
ギャルゲ、なんならエロゲの部類の見た目だろ。
名前は或主公人、俺の親友である。
もう名前を見た瞬間、主人公をもじっているよね。
俺には分かるよ、プロだから。
「あ~、ちょっと待ってよ~!」
後ろから一人の少女の声が聞こえてくる。
快活で跳ねるような声。
どうやらヒロインの一人が来たようである。
ゆっくりと振り返ると、そこにはツインテールの少女。
傍から見ればどこか小動物のような印象を抱かせるような少女。
彼女は、こちらまで追いつくと息を切らしながら顔を上げる。
「はぁーっ、はぁーっ....もう!公人ぉ!少しは待ってくれても良いじゃん!!」
ぷ~と頬を膨らませて公人に詰め寄る彼女。
すると、その彼女を見て公人は笑みを浮かべていた。
「いや、だって沙織を待ったら遅刻しちゃうんじゃないかなって....。」
「む~、最近起こしてくれなくなったんだから.....、あっ!おはよう天親君!」
「おはよう、樋井さん。」
公人に対してジト目で見つめながらも、こちらに視線を向けると挨拶をしてくれる彼女。
そんな彼女に挨拶を返しつつも、彼女をしっかりと見る。
活発で親しみやすい少女でありながらも、最近の公人の変化に敏感。
これはどう見ても幼馴染系ヒロインだな。
二人は小学校時代からの付き合いであり、親同士の仲も良いらしい。
こう、なんだろう。
なんていうか主人公の心の支えにはなるけど、肝心の主人公の恋人という立ち位置は他の人に取られてしかもそれを良しとして応援するタイプに見受けられるね俺には。
所謂負けヒロインだ。
しかし、俺は親友。
俺から見れば負けヒロインだろうが勝ちヒロインだろうがお色気要因だろうがすべからく情報を得るべきヒロインに相違ないのだ。
「安心してくれ。最近は幼馴染が勝つラブコメも増えてる。負けるとは限らないさ。」
「....?なんかマンガの話でもしてたの?」
「いや....?」
二人は首を傾げていた。
なに、ここで全てを口にするのは野暮というもの。
親友キャラというのは裏から主人公を支える者。
なればこそ余計なことを考えさせたくない。
ラブコメ様の啓示を受けた俺は、その義務があるのだ。
不詳、天親友也....今日も友人の為の道を切り開くとするか。
◇
チャイムが校舎に鳴り響く。
昼休みが始まることを告げる鐘の音。
生徒たちは身体を弛緩させると弁当を持っている生徒は広げだし、学食の生徒は教室を出る。
各々の自由時間が始まろうとしている中、俺は更に気を引き締めた。
それはなによりもこの時間が俺にとっては重要であるからだ。
親友キャラの昼休みは速い。
まずは廊下に出る。
この時、公人などに呼び止められないようにチャイムがなった瞬間、弾かれたように立ち上がるのだ。
手には袋。
アルミホイルに包まれたおにぎりを手に取ると、歩きながら口へと運ぶ。
時間がもったいない、現場に向かいながら食べる。
食べ終わると、胸ポケットからメモ帳を取り出す。
そこには今日の朝会った沙織も含めた3人の少女の名前が書かれていた。
今俺が把握しているヒロインであろう少女達。
まずはそこの交友関係から当たってみるとするか。
そう思うと、隣のクラスへと移動する。
まるで歴戦のFPSプレイヤーが行うようにパッと教室を見回して、目当ての集団が居るか見る。
そして案の定彼らはそこに居た。
このクラスの中でもあからさまに目立つ、どう見てもスクールカーストが高いであろうギャルたち。
ヒロインの一人である神野瑞樹。
彼女と仲の好い連中である。
彼女は大胆で大雑把な感じの性格であり、正直俺的にはあまり話したいとは思えない。
だが、目元の隠れていることから見た目見ればクソ陰キャであろう公人とも仲良く話しているのを俺は目撃したことがある。
つまりはオタクに優しいギャルなのだろう、もしくはお色気担当。
だからこそ、彼女の嗜好や傾向を公人がアプローチ掛ける前に知っておく必要があるってことだな。
他クラス、そしてあまり話す機会のないギャル連中。
普段であれば物怖じしていたであろう。
しかし、今俺は霊験あらたかなラブコメ様から賜った人生の使命を遂行しているのだ。
だからこそ、あの程度の小娘共に精神的な遅れを取るわけにはいかない。
足を踏み入れると、クラスの視線が俺に集中する。
しかしそんな疎外感はまったく気にならない。
お目当てのギャル集団へと歩みを進めて行く。
彼らの元までたどり着くと、こちらに気づいた少女がびくりと訝し気な目を向けてくる。
そんな彼女達を見て、口を開いた。
「悪いが、話を利かせてもらえないかな。」
「あっ...誰かと思ったらこの前からチラチラこっち見てたやべー奴じゃん。」
....やべー奴じゃないもん。
親友としてなすべきことを為していただけだもん。
3人いるギャルの中でも一際ちっこい子の言葉が俺の心をピンポイント抉っていた。
多分長男じゃなかったら耐えられなかっただろう。
「なんだお前いきなり。きもっ。」
すると、隣のなんかガラ悪い黒ギャルがこちらに睨みを利かせる。
正直怖いが、でも俺にはラブコメ様が付いているので負けない。
神様から啓示を受け取った俺と何も受け取っていないであろう貴様ではどちらが勝つかなんて明白だろう。
はい、俺の勝ち~!対あり~!!
「神野さんについて聞きたいことがある。良いかな?」
俺がそう言うと、黒ギャルはこちらを睨みつける。
「誰かもわかっていないような奴に、友達の事教えるわけないでしょ。馬鹿じゃねーの?あーしら、お前みたいな奴と話す時間ないの。帰ってくんない?」
すっぱりとそう言って俺を拒む彼女。
やはり一筋縄ではいかないか。
今まで情報を集める過程で、友達の情報を教えることに難色を示す人間は多く出てきた。
しかし、俺もそれについては予測している。
だからこそ、対策は一応練っているのだ。
これでも休日はプロデューサーとトレーナー兼業している。
女の子とのコミュには慣れているつもりだ。
俺のコミュ力を見ろ.....。
「じゃあ、あの子の年齢と体重を教えてくれるかな?」
「話聞いてた?」
駄目だと....?
こういう会話では質問攻めにする方が相手から色々聞きだせていいと本には書いてあったのに....。
インタビュー形式だったのがまずかったのか....?
色々考えている中も、彼女らは苛立ちを隠し切れない様子。
その内、その場から去ってしまいそうな様子である。
それは困る。
もし公人にフラグが経った場合に、俺に情報を聞いてきて何もわかりませんでは話にならない。
俺は親友であるのなら、そういう恋の助けにならねばならぬのに。
なんとか話を聞いてもらう手段はないか....?
もうこうなったら俺の鍛え上げた筋肉で説得(物理)を.....。
「なーにしてるの美由、万梨阿?」
すると、俺の背後から明るい声がする。
女の子の声。
振り返ると、そこには一人の少女。
着崩した制服に、ナチュラルに決まったメイク。
栗色の髪が窓から吹き込むそよ風で揺れている。
「あっ、麻耶。なんか変なのに絡まれちゃってさぁ....。」
「変なのって....あっ....。」
ヘラヘラと笑いながらこちらに歩み寄る麻耶という少女。
その彼女と不意に目が合う。
その瞬間、彼女の瞳が一瞬揺らいだ気がした。
顔立ち的には悪くない、寧ろ可愛い部類だ。
しかしどこかちぐはぐとした印象を受ける少女だった。
何故だか分からないがなんか違うような....。
「えーと、誰?」
「俺の名前は天親友也。君達の友人であるところの神野瑞樹について聞きたいことがあって来た。」
「天親...、あ...あー!えっーと瑞樹について聞きたいことがあって来たってこと?はぁ~やっぱ瑞樹モテるんだぁ~。」
「つかそれって要するにストーカーっしょ?いや、普通にキモイでしょ。」
苦笑いを麻耶という少女は浮かべ、黒ギャル(多分美由?)がこちらを睨みつける。
...ストーカー?
それにモテると....もしかして彼女達は勘違いしているのではないか?
俺はあくまで天におられます我が父ラブコメ様が与えてくれた使命である親友。
その親友としての義務を果たす為、俺は情報を集めているだけに過ぎない。
というか、俺個人の好みとしてはああいうギャル系よりももっとこう優しそうな子が良いっていうか....。
いやまぁどちらにせよどうでもいい話なんだが。
まぁなんにせよ勘違いされたままというのは望ましくない。
「いや、俺個人としては神野瑞樹に関心はないが、どうにも親友と良い感じだからな。もしデートプランや好みなどを電話で聞かれた時、答える為に聞いていてだな....。」
「いや、それこそ本人が知っていくことでしょ....。」
「つかその親友って誰かもわからないし、コイツが聞いて回る意味が分からないんだけど。マジでヤバい奴なんじゃないの?」
麻耶は呆れたように言葉を漏らし、黒ギャルはこちらに警戒を強める。
やれやれ、どうやらコミュ失敗のようだ。
麻耶以外の少女の視線が突き刺さる。
失敗したのであれば、ここに居る必要もない。
聞き込み出来なかったであればそれこそ本人を観察するしかないだろう。
「そうか。ならばここには有益な情報はないということだな。貴様ら、友人であるのに揃いも揃って有益な情報が出てこないとは情けない。俺は帰らせてもらう!!」
「ねぇ麻耶、多分アレ会話出来ないタイプの人種だわ。」
捨て台詞を吐き捨てた後に、少女たちの視線を背中に浴びながらその場を立ち去る。
生憎とラブコメ様の使徒である俺は忙しい。
親友というのは得てして予定が詰まっている物なのだ。
「なんか変なのが瑞樹に関心示してるじゃん。」
「まぁ今度来たら股間でも蹴り上げて泣かすっていうのは....麻耶?」
「う、ううん。なんでもない。そうね.....。」
まるで嵐のように教室を去っていく少年。
周りの少女達は口々に彼の悪口を言うが、麻耶は彼の背中を見つめていた。
「天親....ってやっぱり.....。」
溢す言葉。
それは彼にも周りの少女たちの耳にも入らずに、彼女自身へと還る。
◇
授業中であるにも関わらず、俺の使命は終わらない。
俺の目の前には硬く閉ざされた扉。
後ろには階段。
この扉の向こうには屋上が広がっている。
屋上。
それは出会いと育みの場。
大抵は主人公がなんか不思議系のヒロインに出会ったり、ヒロインの一人と弁当食ったり、なんか不良っぽいヒロインと愛を育む場所だ。
だからこそ、いつ公人が屋上に来ても良いように下見をしているのだ。
トイレに行くと言って抜け出してきたから長いは出来ないが、フェンスなどに経年劣化が来てないかなど調べるには十分な時間だろう。
さて、この硬く閉ざされた扉を俺の鍵開け(筋肉)で開けて...と。
ドアノブを握る。
すると、なぜだかすんなりと簡単に回る。
どういうことだ?
普段はずっと施錠されているはずの場所。
だからこそ、いつも冷や冷やしながらも鍵を筋肉で破壊しているというのにこれでは....。
開けようとするとすんなりと開く。
やっぱり....。
考えられるのは三つだ。
俺が鍵を壊しすぎてゆるゆるになってるか、担当の人が鍵を閉め忘れた。
もしくは既に先客が居るか.....。
固唾を飲むと、ゆっくりと扉を開けて中へと入っていく。
目の前に広がるのは青空、フェンスに無機質な床。
風が頬を撫でて、雲は空をゆっくりと流れる。
そして、そんな中....貯水タンクの上に立つ人影が一つ。
目が醒めるような銀髪は風に靡く。
日光が反射して、キラキラと光っている。
そして、真っ直ぐに空を見上げて目を閉じている。
その容貌は幼さと端正さが同居して、どこか神秘的な印象を見ている相手に与えていた。
俺は、多分見惚れていた。
彼女の姿が鮮明に目に焼き付く。
それだけ彼女は劇的であった。
「....何を...している。」
彼女は俺に気づいていない。
しかし、俺はどこか彼女に対して怯えにも似た感情を抱いていた。
見れば分かる。
彼女はなんとはなく普通ではない気がする。
何か尋常でない背景を持っていると。
すると、彼女はゆっくりと目を開いてこちらを見る。
さっきまで俺の姿を認めなかった癖に、俺を視認してもなんら顔色すら変わらない。
まるで人形のようであった。
「宙と、交信.....私の使命を果たす為に。」
そう言葉を紡ぐ彼女。
空と交信とかよく分からないこと言っているようにも思えた。
しかし、使命を果たす為と聞いて俺はピンと来ていた。
それは俺と共通する物だったから。
いや、ここに来たのだって俺はラブコメ様の啓示があってこそなのだ。
つまりは、彼女もまた.....。
いや、だとしても俺以外に居るなんて....。
「....まさか君も、ラブコメ様の啓示を受けた使徒なのか!?俺以外に居るなんて俺のデータにはないぞ!!?」
「らぶ...こめ...?でーた??」
彼女は首を傾げる。
表情は変わらない。
しかし、どことなく困惑していることは分かった。
◇
母さんは昔、まだパパと妹と一緒に暮らしていた時にこんなことを言っていた。
『誰かの為に頑張れる人になりなさい。』
幼いながらに僕はその言葉に沿える人間になろうと心に決めていた物だ。
でも、今の僕はそんな人間なのだろうか?
母さんに連れられて座談会なる物連れられて知らないおじさんの長いお話を聞く。
そして母に連れられて家に帰ると、そのまま出来合いの昔よりもなんとはなしに悲しくなるようなご飯を食べる。
家の中では母さんがなんか座談会とかで買ったようなよく分からない物が広がっていて、おもちゃなんてなかった。
いつも母さんは苦しそうな顔をして、救われるはずだからとずっと何かお経みたいなのを唱えている日々。
僕は母さんと並んでお経を唱えていた。
それをしないと母さんは怒る。
なんで分かってくれないんだとおしおきとして、お風呂場に水を貯めた所に顔を突っ込む。
息が出来なくて苦しくて、それでもそれが終わった後に母さんは泣いて。
そんな顔をさせないためにも僕は一生懸命それを覚えた。
慣れれば簡単だった。
考えなくてもいいから。
今日も夜はどこかに仕事に行くらしい。
でもそのお金は座談会に持っていくんだって。
でも、家に母さんが居ないのはありがたかった気がする。
家に居ても母さんはなんかよく分からないきょうぎ?についての話をしているか、パパの悪口を言うだけだったから。
二人とも好きだから、母さんがパパの悪口を言っているのを聞いているのは正直苦しい。
妹とかパパはどうしているんだろうと考える時間も日に日に少なくなっている。
これで良いのかな。
母さんは僕に誰かの為に頑張れる人になりなさいと言った。
それなら、母さんは今...誰の為に頑張っているの?
信仰に破れた者は新たな信仰を捨てるのではなく、新たな信仰に縋る