【悲報】ワイ、ワーム。竜やけどモテない 作:オリーブそうめん
『ワーム』
それは脚の無い竜であり、力ある大蛇である。
棘と化した鱗を体表面中に纏い、身体の内側にも同じように鱗が生えており、歯としても柔毛に代わる消化器官としても機能している。
表面には眼はなく耳も鼻も視認できず、ヤツメウナギのような円口だけを頭部に備える。
実際に視力は無いが、強い光を嫌う程度には光に対する感受性は存在し、口の中にある複数の舌の様な器官による優れた嗅覚と、センサー染みた皮膚細胞による聴覚と振動感知能力は極めて高い。
その単純な見た目に反して、その脳の容量は多く、知能は高いが、高い知能を駆使する事は稀で、例外はあるが、多くのワームは思考を行う事は好まない。
マンションワーム、ダンジョンワーム等とも呼ばれ、ミミズのようにワームが彫り続けた穴には、多種多様な魔物が居住し、その領域は魔窟と化す。
また、地下深く、つまりはより星の中心に近い鉱物を移動や捕食で巣穴の中に撹拌させる行為により、極めて希少な金属や星の魔力が高濃度に充満される。
これがモンスターが集まり強化される理由であり、人が挑む理由でもある。
尤も、人間が挑んでどうにかなるのは、巣穴が出来て間もない間だけだ。
コウモリのモンスターでさえ、仮に巣穴の最深部で十年間生き長らえることが出来たのならば、人間の街一つ程度は一夜の内に壊滅出来るようになるのだから…。
竜と呼ばれる生命体は、本質的には星を捕食することで生存している。
オーロラの空に存在し、磁気と共に極地に集まる大気を循環する星の力を吸う美しく狡猾な竜種。
最も深く根を張る植物を大地に植え、その植物の根を通じて星の核のエネルギーを吸う温厚で頑固な竜種。
様々な竜種が存在する。
中でもワームは、星を喰らう事に特化した竜種であり、見た目は他の竜とは大きく違うが、衝突した岩盤を即座に粉塵へと変えたり、岩盤そのものを透過する能力や、地熱に対する極めて強い耐性など、まごうことなき
竜とは姿に関係なく
星の天敵。星の寄生虫。星を捕食する者。
それこそが竜であるとするのならば、如何に他の竜と違う姿をしていようが、ワームは間違いなく竜である。
◆
ワイはリンドゥルム。種族は
星に蓄積された叡智、魔力、生命力を喰らう2200歳の若手や。
星の中心を循環する生命の流れ。
これをパクパクして生きとるで。
死者や今から生まれ変わろうとする者の魂を栄養に、記憶を知識として溜め込むんや。
それらの魂の知識の総和を、
オカンや姉貴は、星の叡智には一切興味ないようで、栄養だけ取れれば、星の叡智部分は受け入れずにポイらしい。
まあ、オトンの死因が、星の叡智に仕込まれた
竜が星に接続して流れ込む龍脈により得られる物は2つ。
エネルギーと知識。
その内知識に関しては高密度に圧縮されて凍結されてあるため、余計な事をしなければ特に問題はないんやで。
せやけどオトンは、好奇心に駆られて無警戒にデータを閲覧しようとしたんやな。
エネルギー吸収機構に致命的な書き換えが起こって、心臓にエネルギーが溜まり続けて過剰分を放出出来なくなってしもうて、ワイとアネキの目の前でパーンしてしまったんや。
アネキとオカンはそれが理由で、星の叡智の流入を拒絶したり、開く事なく削除するようになったのも分からん訳ではない。
いや、アネキもオカンも元から考えるの嫌いやったし、よくわからんものは読む気も聞く気もない性格やったな。
そもそも考え事するの好きな種族やないし、大量の知識とか欲しがる方が稀やしな。
ワームってそんなもんやし。
膨大な記憶野は地形を覚えることと、感情論的な事にしか興味ないから、ワイとオトンが例外なだけや。
だから星のエネルギーだけ啜るのがワームとして正しく賢い生き方なのもよーく分かっとる。
魂そのものに毒が仕込まれることはないしな。
でも、ワイからすればセキュリティさえしっかりしてれば知識部分も受け容れてええんやないって思うんやけどな。
せやから、星が蓄積した魂の中にある霊体情報の内、竜に対する悪意や殺意の部分だけ霊体ごとグチャグチャにミキサーしてやれば、安心して星の叡智を楽しめるって訳や。
オーロラ経由の龍脈は元々薄い霊体情報が気化して分解されてるし、世界樹経由の龍脈は世界樹自体がフィルターになって霊体情報を丸々遮断してエネルギーだけに濾過されてる。
生きた情報を丸かじり出来るのは地中深く潜るワームの特権なんや。
そもそも
所詮一度はワイらに喰われた連中の敗残兵やから、ビビる方がダサいとは殆どの竜が認識しているが、まあ実際に打ち込まれたら殆どの竜が死んでしまう。
それでも、ビビらないのが竜なんやけど。
…ビビらないから敗残兵に殺されてしまうんやなあ。
全く恐れないのは蛮勇で、時折『竜殺し』と名の付いた武器を持った人間が襲いかかってくるけど、ああいった武器の本質は注射器や伝送路であって、中には勿論
斬られた時に猛毒の様に身体に侵入してくるから、自己防衛機能が強制的に働いて、竜殺しに触れた部分が一気に裂けて自壊する。
竜殺し持ちには、自分が引き裂いた様に思えとるんやないか?
プライドの高い竜からすれば細胞が自壊しとるだけで、相手に壊されたつもりはないって言い張るんやけどな。
ワイはまあ、プライドが無いとは言わないけど、結果をそれなりには大事にしとる。
実際に壊れてるのなら、壊されているのもおなじと認められるだけの理性はある。
まあ、竜としての意地も分かるけどな。
『
神獣を名乗る巨大なネコ科生物に、幼い姫さんがボコボコにされてるのを今でも思い出せる。
回復するとは言え、初手で尻尾と前脚を同時に破壊されて、後ろ脚踏み潰されても、未だ負けてないって言い張るの半端ないわ。
姫さんの場合は、種族レベルでとことんビジュアルが良いから何言っても賛同されるって点も大きいけどなぁ。
完全な現実逃避の負け惜しみでさえ、不屈の意志に見えてしまうんや。
見た目が良いって本当に得やねぇ。
ワイが同じ事を言ったら、完全に見苦しい噛ませ役やで。
ドデカネコと極光竜の争いなら映えるけど、ワイがドデカネコを丸呑みしても全然映えんかったからなぁ。
ワイがイケメンなら、救われた姫さんが「ありがとう素敵抱いて」とか言ってくれたかもしれんけど、ワームじゃあそんな展開妄想の中にしか無いんや。
本当にワームって損やわ。
意地と言えば婆ちゃんが「いつ結婚するんね」って聞いてくるけど、ワイに言わせればワームで結婚した爺ちゃん婆ちゃんやオトンオカンの方が異常やで。
ワームのビジュアルで相手してくれる竜なんて、ワーム以外おらんし。
完全な余り者同士の妥協婚や。
毎回余り者になってるせいで、ワームはほぼ純血種やで。
ビジュアル負け組の遺伝子濃縮や。
他の竜なんて、普通に考えてミミズみたいなワームと結婚したいなんて思わんで。
それが理由でワームは殆ど絶滅したんや。
自由恋愛主義による、醜い者の淘汰やな。
好きに相手を選べるのなら余程切羽詰まらないとわざわざ醜い竜は選ばんで。
ついでにそこまで切羽詰まったら、マトモな竜なら自害するんやで。
「あなたと結婚するくらいなら死んだほうがマシ」って言ったら本当に死ぬんやで、竜のご令嬢って。
ホンマにプライドの塊やで。
まあ自分が死ぬ竜より、相手を殺す竜が多いのはご愛嬌かもしれん。
他の竜は王族貴族の枠組みなのに、ワーム種だけ不可触民扱いやで。
同じドラゴングループやから、一緒にいたら卵作るなんて事は無いんや。
一緒におることさえ恥ずかしいと思われるんや…。
温厚な
まーあそこも比較的庶民派のカラーしてるだけで、ド級の大地主様やし。
ワイは清楚系お嬢様大好きやけど、清楚なお嬢様達はワームなんてゴメンなんやで。
あの一族の姉妹は、笑う時に「世界樹*3が生えちゃう」が口癖の超お嬢様やからなあ実際。
なんや世界樹が生えるって、世界樹植えるのはニーズヘッグしかおらんやろ。
草と同列とか世界樹が泣くわ。
世界樹を芝生扱いとか、人間が聞いたら嫉妬のあまり死ぬで。
本当に住むとこが違うんや。
芝生扱いで世界樹を占有している大農場の支配者一族と坑夫では、同じ地下住まい組でも違うが過ぎる。
だったら竜以外でって妥協して相手を探しても、他の生物もワームはノーセンキューらしい。
人や獣の分際で一応竜であるワイにノーセンキューとかブッ殺すぞと思わなくもないし、ブッ殺したぞと思い出さなくもない。
他の竜の血なら喜んで受け容れてる人間や獣はホンマに腹立つわ。
星の力を吸い上げる特性をほんの僅かにでも受け継げば、軽く勇者扱いやからな。
でもそれならワームでもええやん。
やけどワームに種付してくださいって人間が出てこないのは何でや?
見た目か?やはり見た目か?
ホンマ腹立つわ。
後は逆に見た目が似てるからって、ヒルのモンスターに言い寄られるのも弁えて欲しいんや。
一応竜やで。
ヒルにモテても全然嬉しかないわ。
見た目が似てるからって理解者ぶって近づいて来られても、中身全然違うんやで。
好みでない、というか正直に言えば遥か格下の相手にモテたとしても、それは全く嬉しくないんやで。
ワイやて美竜にモテたいんや。
ワイも自分でもアカンのは分かっとるけど、醜い底辺カーストやからお断りされちゃうワイやとしても、自分より醜く格下の相手と妥協婚したくないんや。
ザコから高望みされるのは嫌やけど、ワイは高望みしたいんや。
モテない君やけど、モテないちゃんとは付き合いたくない。
美少女と付き合いたいんや!!
割とクズな事言ってる自覚はあるけど、本音なんてクズなもんや。
ワイ自身そんな考えやから、他の竜から相手にされない理由もよく分かってしまう。
ワイが中身の格で他種族より上だというプライドがあるだけに、他の竜が見た目の格でワームより上だという気持ちがなまじ分かってしまうから何も言えんのや。
世の中の生物がみんな美形ならこんな心配生まれることなかったんやろうな。
綺麗事を言うのなら、他者を見下すから他人に見下されるとか、そんな性格だからモテないと言えるかもしれん。
でもな、そんなん簡単に否定出来てしまう。
ワイを見下す美竜達はモテるんや。
ワイも彼女らになら、見下されるのを仕方ないと受け容れてしまうし、見下されてるのを分かった上で惚れてしまうんや。
ワイと同じ事しといても、ワイとは扱いが違う事を、他でもないワイ自身の性欲が肯定してしまっとる。
恋愛とは違う方面でなら、友愛とか敬愛とか畏怖とか利用価値とか認識される事はあるんやけど、それってチョイ違うやん?
姫さんとニーズヘッグ姉からは、千年前に共同事業を持ちかけられた事はあるで?
極地に深い穴を掘って、地熱を使って世界樹を育てる事業は滅茶苦茶頑張ったのを覚えてる。
相手からすれば、異性としては一切興味ないのは分かっていても、せめて美竜から仕事が出来る竜と思われたい気持ちはあるやん?
今、南と北の極地に生えてる世界樹を見る限り、仕事は成功してるはずや。
これでイケメンなら性行にまで持ち込めたんやろうけど、専門的な仕事が出来る竜で終わるのがワームの限界や。辛いなぁ。
極地の世界樹と言えば、地熱と世界樹のお陰で、人間も住める環境になってるようで、北の極地には定期的に人間が攻め込んではボロ負けしてるで。
勝手に聖地扱いするのはええけど、聖地が人間に与えられるものって考えは気に食わんわ。
聖なる土地というんやったら、人間より強い竜にこそ相応しい土地ってなるのが当たり前やろ。
人間の中には姫さんみたいな圧倒的美竜相手には、敵対するだけでなく信仰する一派も生まれてくるけど、ワイみたいなワーム相手には、都合の良い存在か害悪かといった利害としてしか見て来ないの腹立つわ。
ワイが掘る巣穴は地下深くまで続くから、金床や魔石窟として利用出来るダンジョンが増えると喜ぶ連中と、モンスターが跋扈するダンジョンを増やすと憤る連中がおる。
ワイが穴を掘る→星の核に近いところから魔力が吹き溜まる→モンスターが集まり成長して繁殖する。
これは自然な事であり、憤られても困るんやが。
イラっとして、人間の
巣穴から出て来るモンスターと、巣穴に押し掛ける人間達の争いが起きたやろうけど、ワイの責任ではないんや。
人間とモンスターが隣同士にしてやっただけで、そのご近所さんと争う事を決めたのは、人間とモンスターであってワイではないし。
そもそもワイが弱小生物達相手に責任を負わないといけない理由なんて無いからなあ。
◆
フレシア深緑国。
魔王リンドゥルムの軍勢により、一夜にして人間からアルラウネ*4を中心とした知花種(意思ある植物)により支配権を移された国。
ある日巨大な音と揺れが起きた直後、人間の王国に幾つもの穴が空いた。
そこから現れた大量のアルラウネ達。
しかも人間の上半身を持たない既受粉体がその多くを占めた。
アルラウネの生態は、成長すると人間の上半身に似た花弁を作り、オスの精を集めて実を作る。
しかし受粉が終わるとその上半身は枯れて、土台の様に見える下半身だけになる。
その状態になると栄養をそれまで以上に求めだし、時に周辺の栄養を食らい付くし、大量枯死を起こす事もある。
死んだアルラウネは他のアルラウネの肥料になるが、生きている間は共食いを行わない故の欠陥ともいえる。
地下深くの強い魔力により、高次の進化と知能を手に入れたアルラウネ達だったが、地下深くの他種モンスターを食べ過ぎて減らしてしまった。
そうなると、栄養に欠ける地下での生活は不便でしかなかった。
折角モンスターや冒険者の精を使い受粉まで終わらせたのに、栄養不足で種共々枯れるのは苦痛であっただろう。
そんな中、魔王リンドゥルムは彼女達に
最も多くの子孫を生み、尚も今を生きるフレシア王国女王は、リンドゥルムを狂信し、いつかその種で受粉したいと渇望している。
もし、それをリンドゥルムが知ったとしたら
「貞操観念ガバガバの年増ビッチは勘弁や」と言うだろう。
救いは、アルラウネには振られてもショックを受けるという概念が存在しない事だ。
アルラウネの知能は、感情ではなく利益の為にこそ使われる。
誹謗中傷や失恋へのダメージが存在しない。
もし同じ事を竜が言われたとしたら、間違いなく塵一つ残さない程に荒れ狂うだろう。
リンドゥルムの功罪は他にも多くある。
リンドゥルムがものを考えないワーム種であることから、多くの地殻変動を無軌道に起こし、それが有益か害悪かは時と場合によると人間達は認知している。
人間の利益となったのは、北の大地を深く広く複雑多岐に掘り進めたこと。
そこにニーズヘッグの姫竜が世界樹を植えて、輝けるグラシャレースが居を構えた。
『
神竜とも魔王とも呼ばれる美しき竜グラシャレース。
彼女を崇める敬氷教徒に対しては、彼女は寛容な存在である。
ただし、竜の悪口を言わなければだ。
竜以外の存在が他の竜の悪口を言う事に対しては、極めて不寛容な彼女には、魔王リンドゥルムを批判した教徒に対して、彼らの国の半分ごと強力な竜気を纏ったオーロラを照射して、生きたまま遺伝子崩壊によって殲滅した記録がある。
尚、彼女自身は割と信徒の前でリンドゥルムの事を悪く言う。
しかし、信徒がリンドゥルムの悪口を言う事は絶対に許されないのだ。
リンドゥルムは南の極地、その下にある海底にも深い穴を掘っている。
同じく世界樹が植えられており、その近隣の巨大な
世界樹の使用料として、グラシャレース同様にニーズヘッグ一族に支払いをしている。
ニーズヘッグは世界樹のレンタル事業によって巨大な富と竜気を手にしているのだ。
リンドゥルム関連で揉める事の多いニーズヘッグの姫と極光竜の姫とは違い、保守契約関連でニーズヘッグとレヴィアタンは揉める事が多い。
特別な海水適応型世界樹といえど、高濃度塩分により出来た『海中の海』での使用は免責事項であることが大きな理由だ。
それ以外においては、一見友好的だと言われている。
リンドゥルムを介して付近の深海に積もった泥を根こそぎ地上に移動させた事業以降、彼女達は表面的には手を結んでいる。
レヴィアタンにとってはただの埃でしかない深海底堆積物も、ニーズヘッグにとっては世界樹の肥料足り得るのだ。
互いにリンドゥルムに対して友好的な事も彼女達の表面上の友情に一役買っている。
『異種交配』
この世界では違う種族の雌雄が子を成した時に、多くの種族の場合、雌の種族がそのまま受け継がれる。
故に、親と同じ種族を受け継げるように、異種交配を予定する名家の子供は雌が喜ばれる。
己の血を引き継ぐ子供は、やはり己と同じ種族が好ましい為。
竜は雌雄の産み分けが出来る為、多くの竜が雌を選んで生む。
雌の種族が受け継がれる理屈は、サキュバスやアルラウネが人間の男の精を搾取しても、ハーフサキュバスやハーフアルラウネではなく、サキュバスやアルラウネが生まれるのと同じ。
しかし、雄側の特性は受け継がれる。
上の例でいえば、男性が金髪なら、生まれてくるサキュバスも金髪を受け継ぐ可能性があるというように。
雌のキリンが竜の雄の精を受け入れると、キリン(竜因子持ち型)になる。
因子が蓄積すると種族が分岐していく。
例えば、モグラの雄と配合し続けた野ウサギの雌の家系は、十世代先には地中ウサギになっている。
雌の種族は引き継ぎで雄のステータスが子供に影響するのは、ポケ◆トモンスターに近いかもしれない。
雌の種族を受け継ぐとはいえ、ゴキブリやヒルの雄の精で子供を生みたい(ゴキブリ種やヒル種以外の)女性がいないように、相手の種族は割と気にされる模様。
少ない例外の内の一種が人間の雌。
相手の雄の特性を受け継いだハーフが生まれやすい。
『寄星』
星に寄生して自身のエネルギーとする行為。
リンドゥルム
原始的な竜であるワーム種。
ワームなのでミミズみたいな形状をしている。
食らってきた鉱物によって、様々な魔石に鱗が置換されている。
彼の一族は他の竜から嫉妬と蔑みを込めて『原竜』とも呼ばれる。
人間で言えば原人とかネアンデルタール人みたいなポジション。
実際に竜の中ではそんな扱い。
先祖を遡ってもワーム種同士以外の婚姻がなく、姉と並んで竜因子は現在生存するどの生命体よりもずば抜けて濃い。
種族としては現生竜や人類の主観からすると醜いが、個体として見ればワームの中でもリンドゥルムの家系は美形揃い。
しかしワームの中で美形というだけで、ワーム自体がワーム自身から見ても醜い。
ワーム内でのイケメンランキングは、リンドゥルムの一族以外のワームは滅びているので、ベスト1位でもあるが、ワースト1位でもある。
グラシャレース
氷晶とオーロラの竜。
極めて美しい造形をしている。
竜の進化の行き詰まりの一つ。
馬で言うところのサラブレッド。
血統改良の果て。
様々に計算された歴代の婚姻管理によって生まれた、至高の雑種。
見た目は如何にも神々しい竜だが、竜の因子濃度はリンドゥルムよりはかなり低い。
寄星能力が低い為に龍脈捕食依存度は低い。
代わりに(寄星してこそ竜なので無意味ではあるが)寄星なしでの戦闘力は竜の中でトップクラス。
複雑すぎる雑種故にレヴィアタンやニーズヘッグのような古から存在する明確な種族名はない。
彼女を『貴種』と呼ぶ竜はリンドゥルムぐらいで、他の竜は嫉妬と蔑みを込めて、『最も優れた雑種』と呼ぶ。
彼女の一族は
ブレスはオーロラ(プラズマ放射線)と極低温の息吹。
他の竜の前でリンドゥルムを悪く言う事はあるが、他者がリンドゥルムを悪く言うことは許さない。
ツンデレ。
ニーズヘッグ姉(グレースヒルト)
リンドゥルムの仕事には十分な対価で報いるべきと考えている。
世界樹の育成と賃貸により、星や他の竜から生命力を奪って生きている。
忙しくてもトレーニングは欠かさない。
尚、ニーズヘッグの性能は龍脈依存による所が大きいので、本体のトレーニングは筋肉質になって重くなる以外にはそこまで効果はない。
龍脈による極めて強力な強化魔法が掛かっているのは、要するに素のステータスの差が無意味になるレベルの超強力な装備を持つようなものである。
様々な品種改良をした世界樹を栽培しては、他の竜に貸し付けて管理させ、星から吸い上げた力の一部を受け取るのが生業。
『生命力の金貸し』ニーズヘッグとしては辣腕だが、リンドゥルムには報酬として、今は小さな株だが、いずれ根が伸びた後には急成長する見込みの世界樹の権利を三つ譲渡している。
尚、その三点の中心には彼女の実家がある。
色んな意味で重い。
ドラゴンプラントとの関連から、ニーズヘッグだけが栽培出来る世界樹の秘密がリンドゥルムにバレかけてヒヤヒヤした。
ニーズヘッグ妹(グロウヒルト)
動くことなく不労所得でガンガン龍脈から星の生命力を確保するニーズヘッグ一族を上回る竜気を発する労働者リンドゥルムに驚愕している。
恋愛には一切興味がなく、己の竜気を増す事とペンギンにしか興味がない。
ペンギンと世界樹をどうやって混ぜるかを日夜考えている。