【悲報】ワイ、ワーム。竜やけどモテない   作:オリーブそうめん

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好きだから──────


あんたの夢叶えたろか~強ければ生き残れるならネアンデルタールが現生人類やで~

「始めまして竜さん。唐突で申し訳ありませんが私を食べて貰えません?」

 

 凄い自殺願望持ちのお嬢ちゃんがいた。

 最初はまーた終末願望持ちの狂信者が来たかと思ったで。

 

 人類という時点でワイの性癖を外れるけど、人類としてはトップクラスに奇麗な方ではないんか?

 まあ、気配からして普通の人間でないのは分かっとるけどなー。

 

「私、それなりに竜さんのお口とお腹を満たせると思いますよ。…私の言うこと、理解できてますよね」

 

 とりあえず頷いておくで。

 竜に他種族の言語を理解出来る知能が無いという意味合いならともかく、多くの竜が他種族の言語に価値を感じないと言う事を理解した上での発言なら無下にはしないんや。

 

 女性の人類種が一人。

 まあ、普通は腹の足しにもならないかもしれないが、近くにあった大量の死体を喰ったワイには分かるし、目の前の女も隠す気は無いやろうな。

 

 吸血姫。

 吸血鬼最後の末裔。

 

 ヒトの軍勢に追い立てられ、刺され、切られ、裂かれ、それでも返り討ちにしてここまで生き延びてきたんやな。

 ヒト・人魚・獣人・セイレーン・鬼…。

 アンコーンみたいな人外は別として、あらゆる人類を含めた中で、最高の性能を持った人型生物の頂点で、その生き残りって訳や。

 

 やけど悲しいかな、その強さを危険視され、最も繁殖力が高く最も弱い人類であるヒトに、滅ぼされようとする寸前にある訳や。

 最も強いから、最も弱い存在にとって最も脅威足り得るんやろ。

 強さだけやったら竜の方が強いんやが、勝負にならない他種族ではなく、自分達に近くて自分達より強い種族が気に入らないんやろうか。

 でも実際、人類種派生型の最強生物は今、風前の灯火やからな。

 それも人類種最弱の個体性能を持つ種族によって。

 個体性能として最も強い生物が必ず生き残れる訳やない。

 う~ん、世知辛いなあ。

 

 

 

 人類種の最高傑作種族『吸血鬼』。

 

 その魔力はセイレーンに匹敵し、その膂力は鬼に匹敵する。

 そして何より、槍で刺されても、剣で切られても、丸太で圧し潰されても、無から再生する生物や。

 ワイからしたら大した事は無いけどな。

 

 後は、頭ぶっ壊れてる奴は、魂の栄養はともかく味がスカスカというか、パサパサでボロボロしとる。

 正直美味しくなかったで。

 ワイも何度か他の吸血鬼を喰ったことがあるから自信をもって、鮮度の悪い吸血鬼は不味いって言えるわ。

 ワイが喰った吸血鬼は、どいつもこいつもスカスカした意識しかなかったんや。

 

 死んでも龍脈に還らず其の場に留まろうとするから、その場で元の自分に再生するんやろうな。

 ある意味一番シンプルな転生と言ってもええやろ。

 

 まあ、生物の細胞と一緒で、個体差大きいけど何度も死ぬと魂の情報自体がバグるけどな。

 やから他の人間種の血に寄生して、バグを修繕しなきゃあかんのや。

 …生物なんて、一度星に還らずに転生するようにはできてないんやから。

 やから、人類種の分際で星に還る事無く、再生を繰り返して摩耗した魂は不味いんやで。

 

 

 

「心を壊した同胞に止めを刺してくれた地竜さんにもう一度お願いします。

どうか私を食べて欲しいの」

 

 再生ありきの死でなく、完全な消滅(竜に喰われること)を選ぶかー。

 …いや、何やろうか。

 取り敢えず通訳(姫さん)連れてくるか。

 ワイじゃ人間の言語使えんしな。

 通訳としてワイに使われるってのは姫さん的にブチ殺し案件かもしれんけど、何だかんだで聞いてくれるやろ。

 …多分な。

 

 ひとまず今日は帰るで。

 お願い聞いてもらう為に、パンダを居住区ごとプレゼントせなあかんし。

 パンダで喜ぶ系女子じゃなかったらどうしようか。

 ツキノワグマより内臓の歯応えが優しくて美味しいから大丈夫やろ。

 ホッキョクグマよりは美味しくないかもしれへんけど、パンダが嫌いな女の子はおらんのやないか?

 だって、あんなに美味しいんやからなあ。

 

 

 

 

 

 それから数日後、何だかんだで姫さんはやってきてくれた。

 パンダがお気に召したんやろうな。

 今度は蜂蜜抱えて逃げ出した金色のクマも付けたいけど、アレは絶対に捕まえられん気がするんや。

 

 

 で、待ち合わせ相手の肝心の吸血姫さんは、何かヒトの男とイチャイチャしてた。

 これって、まだ出ていく訳には行かないよなぁと思っていたら、男のほうが倒れた。

 死んではないようやけど、意識は飛んどるなあ。

 恐らくはこいつに聞かれたくない話をするんやろ。

 吸血鬼ってこと隠しとったんかな。

 黙ったままズルズルと関係を持ってしまったってとこか。

 まあ、吸血鬼の生態って、精の代わりに血を吸うアルラウネみたいなところあるし、ヒトを騙すくらいはおかしくはないんやけど。

 

 で、そろそろええかなーって雰囲気を出してみるで。

 

 …。

 ……。

 ………。

 倒れた男の様子ずっと見てないで、はよせんかいっっ。

 一回目は早めにワイが吠えたけど、姫さんは吠える前にブレス出すで。

 

 

 

「お待たせしたわね。私は最後の吸血鬼エリザベート・アレクラード」

 

 ホンマに待たされたわ。

 人間同士のイチャイチャなんか見ていても、何も面白くないからなあ。

 それとそっちが本名なんやな。

 人間達の記憶では、苗字をひっくり返した偽名(ドラクレア)の方が有名やで。

 

 じゃあ姫さん、後はお願いするわ。

 

 

「如何してこの私が命令されているのかしら」

 

 命令やなくてお願いや。

 どうか、どうか世界で一番美竜で一番知的な姫さんの流暢な人語聞かせて貰えんやろうか。

 

「…まあいいでしょう。吸血鬼、貴方の要件を速やかに話しなさい」

 

「驚いたわ。貴方竜なの?

まるで人間みたい。

…いえ、普通の人間はそんなにキラキラしてないわね。

もしかして聖女…とは違うわよね、竜だし。

……まあいいわ。

竜さん、私を食べて欲しいの。私は殺されたくらいじゃ死なないから」

 

 姫さんの擬態は人間みたいだけど、どう見ても人間やないしなあ。

 勇者ちゃんのキラキラフォームが姫さんの人間基準やし。

 吸血姫の言う通り、普通の人間はキラキラしてないんや。

 勇者ちゃんが姫さんの人類の唯一の基準になってしもうたのが原因やろ。

 …これって勇者ちゃんのせいや無い気もするけどな。

 

 竜に喰われた魂の情報は一気に真っ白になるから、魂の情報破損による自己定義不順による苦痛も────っておい姫さん。

 吸血姫の上半身ぶっ飛ばしちゃった?

 

 まあ、でも再生するんやけどな。

 

「…見てわかったでしょう。

星に還れぬ魂には、安息はないの。

だから────彼とは一緒にいられない」

 

 

 そういって、諦めたように、諦めきれぬ寂しさを込めて呟く吸血姫。

 はぁー。そういうところやで、姫さんが気に食わないのは。

 そもそも彼って誰や。

 まあ、文脈からして、横で倒れとる吸血姫ちゃんの想い人やろうなぁ。

 つまりはモテ野郎か。けっ。

 

「……どうしたのかしら」

 

 いや、気にせんといてや。

 続けて。

 姫さんに色々聞いてもらわんと、話が進まんのや。

 

「……そうね。

吸血鬼、どうしてかしら。

吸血鬼が人類の敵として滅ぼされようとするのなら、人類の敵として人類を滅ぼせば安寧ではなくて?」

 

 さすが姫さん。

 そういう単純なところ、ワイは好きやで。

 しまった、つい声に出てたわ。

 

 

「好きって貴方、この私にっ……。

いえ、今回は置いておくわ。

吸血鬼、何故一番分かりやすい答えがあるのに、そうしないの?」

 

「吸血鬼というだけで、人類に追われ続ける。

ヒトも獣人も誰も彼も、己よりも優れた上位互換が存在する事実を許せない。

同種の中でだからこそ、己達が一番優れた種族だと思いたがる。

だからこそ吸血鬼の存在は許されない。

私だけなら大丈夫。

いつか捕まって壊され続けても仕方無いわ。

でも、彼は普通の人間よ。

脆弱で愚かで、でも愛おしい近くて遠い人。

例え彼が最高位の聖騎士であっても逃げられないわ。

寧ろ、最高位の聖騎士だからこそ、教会としては裏切り者がいたという証拠を歴史から抹消する」

 

 人間って、そういうところあるよな。

 姫さんには全く良く分からないやろ。

 ピカピカ光っていても、お友達もピカピカ光ってるからって気が付かない姫さんじゃーなぁ。

 他の人間が光ってなくても、全然気にしてないんやから。

 というか姫さんにとって、あの勇者ちゃんだけが重要な人間で、他の人間はどうでもいいんやろうな。

 そういうところやで、妹分扱いしている勇者ちゃんに微笑ましく思われてんのは。

 

 姫さん、そのお嬢ちゃんにどうして血を与えて魔術で変生させないか聞いてほしいんやけどええか?

 

 

「ならそのヒトも吸血鬼にすればよいのではなくて?

内包する力は十分。

貴方が血を与えて変生の術式を唱えれば可能、でしょう」

 

 今ワイが竜語で教えた事を、あたかも自分の知識のように人語で語る姫さん流石やで。

 

 

「海を流れる星の力は吸血鬼の呪いに相性が悪く、変生して五十年にも満たない弱い吸血鬼では海には逃げられない。

例え船上でも、海流が呪いを乱してしまうわ。

元の素体が良くてその上で吸血鬼になったとしても、どれだけ強い個体になったとしても、人の世界すべてを敵に回して生きていくことは出来ないの。

世界全てを敵に回して生きていくには、私たちは弱すぎる。

絶対の力などというものはなく、その他大勢の暴力に屈するしかないわ。

きっと、何でもできてしまう竜さん達には分からないことだと思うけどね。

吸血鬼はヒトより強い。

でも、吸血鬼の未来は先細り、ヒトの未来は繁栄する。

彼まで…この地獄には巻き込めないの。

好きだから────共に生きる道を選べない。

愛する者がいなくても生きていける超越者には、きっと分からない感情でしょうけどね。」

 

 

 

 …。

 ……って姫さん?

 今凄い音したで。

 一瞬、擬態して隠していた竜の尾出して振り回したやろ。

 吸血姫ちゃんまた死んでおられるで。

 吸血姫、何ですぐ死んでしまうん?

 

 姫さんや、吸血鬼如きに分かってない奴扱い受けて、イライラしたのはよう分かるけど、やりすぎやん?

 いや、吸血姫のお嬢ちゃんを庇う気はまるでないで。

 吸血鬼と竜なら当然、竜の側やし。

 それは疑わんといてや。

 

 でもな、人間に擬態しているとはいえ、その状態の姫さんと喧嘩できるのは人間では勇者ちゃんだけやで。

 あれは人間の標準やなくて、特別な例や。

 人間のサンプルを一例以外興味ない姫さんには言っても無意味やろうけどな。

 あの吸血鬼に興味が無いのなら、それで終わる話やし。

 

「…先ほどから死ねない死ねないとか言っておりましたので、試しに殺してみただけですわ」

 

 

 再生能力を確認しただけ?

 成程、流石姫さんや。

 実際、これで再生しなかったら解決やしな。

 

 で、ホンマのところは?

 

「単にイライラしただけですわ」

 

 …流石姫さんですわぁ。

 再生した吸血姫のお嬢ちゃん涙目やん。

 

 でも分かったやろ。

 これくらいでは、吸血姫は死なないし死ねない。

 死に切った瞬間再生してしまう難儀な呪いの種族や。

 魂のコピーを参考に身体を修復してしまう。

 人間が吸血鬼に火炙りを好むのは、継続的に肉体と魂を傷付けさせられるからや。

 

 さっきの話ぶりやと、恐らく百年くらいは生きとるんやろうから、そうそう再生不可にはならんで。

 

 首を落としても、心臓を突いても、叩き潰しても、所詮その場で殺しただけやからな。

 その点、火炙りなら殺し続けられる。

 磨り潰しても、心臓からスタートして完全に再生してしまう吸血鬼にはもってこいや。

 ちょっと昔にそういう実験をしたヒトの記憶を魂ごと喰ったことあるで。

 

 

「私だって彼とともに生きていたい。

でも強き悪も、脆弱な大勢の正義には勝てないのよ。

好きだからこそ、一緒にいられるわけないじゃない」

 

 でも、まあそんなのは竜の理屈には関係のない話や。

 

 

 

 泣き叫んだ吸血鬼ちゃん、またミンチにされとるやん。

 姫さん敗北主義嫌いやからなあ。

 

「誰かの定めた善悪など、彼方に捨てておしまいなさい。

世の理は善悪より強弱。否、善悪とは強弱。

されど誰かの勝利に従う必要などありません。

己の勝利こそが唯一の正義。

誰かの勝利が己の敗北に押し付けた正義など、捨ててしまいなさい。

己が願い(挑み)、己が叶える(勝利する)

それだけが必要な全てなのですから」

 

 バハムート当主といい、極光竜の姫さんといい、その理屈に拘るなあ。

 勝たねば無意味、勝てねば無価値。

 だから敗北したら諦めるなんてことは無い。

 勝利を前提として勝つ為に戦い続ける。

 まあ、ワイも竜やからよーく分かるけどなぁ。

 

「でも、それは(貴方)の理屈で────」

 

 人の分際で姫さんに楯突くから、また殺されてるやん。

 姫さん、せやからぶん殴って死なないのは勇者ちゃんだけなんやって。

 元々勇者なのに、マッドなドラゴンの血を人間の細胞に置換したスーパーウーマンやで。

 アカン。殴って死なないヒトと、殴って死んでも再生する吸血鬼を人間のサンプルにしたら、姫さんの人間観捻じれそう。

 まあ、人間がいくら姫さんに殺されたところでワイは構わんけどな。

 それはそれで困る事はないし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それに、ワイでも吸血鬼のお嬢ちゃんには本気でイライラするところやったわ。

 姫さんとは別の理由でな。

 …分かってる。

 今は形にしてはいけないその感情の名は、■属■悪。

 

 疎まれる種族。

 種族としての性能は高く、その種族の中でも最上位。

 されどその未来はなく、滅びの道を歩むしかない。

 

 分かってる。

 でも、今はそれに名を付けてはいけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうですわ。

これは竜達(私達)の理屈ですの。

その何が問題なのかしら。

貴方も、貴方達だけの理屈を通し切って見せなさいな」

 

「私…達……?」

 

 お嬢ちゃん、それで吸血鬼のヘッドやってきたんか?

 ああ、吸血鬼がほぼ絶滅になってから、人間のサイクルやとそこそこになるんか?

 ずっとボッチやったんやろうなぁ。

 

 まあそんな事はどうでもええわ。

 ところでそこのお兄さん、さっきから起きるタイミング逃して、寝たふりしてるで。

 イビキの演技下手すぎて笑いそうやったわ。

 気が付いていなかったのは、お嬢ちゃんだけやったし。

 なあ、姫さんもとっくに気が付いていたやろ?

 

「えっ、ええ。

そうですわね。

吸血鬼エリザベート。そこの男性、既に起きていましてよ」

 

 

 

 うわーお嬢ちゃんの気配乱れまくってるやん。

 声は冷静だけど魔力乱れ隠し切れてないの笑うしか無いわ。

 相手の男がワームやったらバレバレやったで。

 いや、人間如きと番うワームとかありえへんけど。

 

 それにしても安心感ある反応するなあ。

 もう、「どこから起きてたの」「…好きだから、の部分からかな」とかコテコテの漫才やらなくてええんやで。

 

 

 

 おおっと、吸血鬼狩りが来たで。

 「裏切り者」とか「化け物」とか「彼奴が裏切った以上、俺が新たな騎士団長だー」とか叫んでるなあ。

 

 うわー、めっちゃ矢が降ってきたわ。

 だからってそんなに困ることじゃないけどなあ。

 ワイも姫さんもそんなの効かないし、吸血姫のお嬢ちゃんは効くけど復活するし…。

 

 あっ、人間種ヒト族の男君おったやん。

 お嬢ちゃん庇ってハリネズミになっとる。

 …ハリネズミというには、尖った針の向きが内側やけどな。

 

 というか、吸血姫ちゃんに肉壁になって守ってもらえば良かったのでは?

 普通逆やろ。

 お嬢ちゃんは死ぬけど死なないんやし。

 

 お嬢ちゃんもそう言ってるやんか。

 ──なあお嬢ちゃん、今すぐ血を与えないとそいつ──死ぬで。

 

「ごめんなさい。ごめん、なさい」

 

 謝る暇があったら、早く血をやらんのかなあ。

 って姫さん?

 うわっ、まーた吸血姫ちゃんバラバラやん。

 聖騎士君生きてるけど、吸血姫ちゃんの血肉でびしょ濡れやん。

 

 まあ、解決か。

 

 …後は再生したお嬢ちゃんが呪いを掛ける(愛を誓う)だけやな。

 強引やなあ。

 もう吸血姫ちゃんの血が押し込まれてるから、後は呪いを流し込むだけや。

 もうこれは実質交尾やで。

 無理矢理交尾させるとか、ホンマに凄いわ姫さんの思い切りは。

 流石にマッドの姪やな…って危な。

 今尻尾頭上スレスレ通り過ぎたで。

 

 えっ?

 何か失礼な事を考えてる気配がした?

 いやー、そんなはずないやん。

 

 

 

 

 

 

 

 なあ、姫さん。

 悪い吸血鬼を逃した竜って人間にとっては悪党扱いやろか?

 

「そんな事気にする必要ありまして?」

 

 いーや全く無いで。

 人間にどう思われようが、竜であるワイに大事なのは竜だけやからな。

 

 

 さ~て、少し珍しい人間の一種(吸血鬼の生き残り)さんや、その人間をとっとと吸血鬼にさせてしまうんや。

 ワイも、とっくに変身が解けて竜に戻ってしまった姫さんもそう思っとる。

 

 吸血鬼になったばかりの人間は船でも海が渡れない?

 

 ワイを誰やと思っとるんや。

 魔王リンドゥルムやで。

 

 二人を追手の来れない孤島に逃がす事が出来ないんなら、此処をそのまま孤島にしてしまえばええんや。

 

 姫さんは、その追手達をそのまま全部消してくれればええで。

 そうそう、とにかく派手にや。

 何の証拠も残らないくらいに派手にやってしまってええで。

 吸血姫も彼女を追った聖騎士団長率いる一軍も全て通りすがりの竜に滅ぼされたって逸話が残るくらいにな。

 

 この大地からしっかりと切り離された島にしてやるわ。

 いつかの未来で子孫と共に経済的に他国から吸血する大国にするもよし、いつまでもひっそりと二人だけ生きるもよしや。

 ワイの姿でも紋章にして後世に伝えてくれると、ちょっと嬉しいで。

 

 

 吸血鬼程度には行き詰まった様に見えても、結局桁の違う竜の力があれば、こんなご都合主義も引き起こせるんやな。

 そんな解決法も、まあ、あったんやなーって。

 なら、竜でも行き詰まった時は、どうやればええんやろうな。

 まあ、今はそんな事はええか。

 ワームらしく穴掘る事に専念しとこうか。

 

 

 吸血鬼の新婚夫婦、泣いて喜んでええんやで。

 竜が二体も人間相手にここまでの出血大サービスしてくれることなんて、今後二度と無いかもしれへんのやから。




吸血鬼

かつて教会勢力の熱狂的大派遣により、一時滅ぼし切ったと思われていたが、ある島国に潜んでいた事が後世になって発覚。
紅茶を手に入れる為という極めて優雅な名目で、世界中の金銭を回収した。
その手法は余りにもエゲつなく、リスも木から落ちる程の辣腕ぶりであった。
余りの悪辣さにかつて教会が滅ぼした『吸血鬼の国』と呼ばれたが、まさか事実そうであるとは当時の人々は思わなかったであろう。

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