【悲報】ワイ、ワーム。竜やけどモテない 作:オリーブそうめん
アネキさあ、嘘は良くないで。
皇帝バハムートさんとこの次男と結婚やって?
いやいやいや、
ほらオカンも何とか言ってやってや。
えっ? 前から婚約してた?
いやいやいやいや、嘘やん。
二匹してさあ、ワイをからかうにしてももっと自然な嘘ついてや。
あからさまな嘘過ぎて笑いどころ無いんやけどなあ。
なあアネキ。
オカン……?
何で無言なんや。
ほら、ここらでネタバラシしてええねんで。
…。
……。
………。
…………えっ、マジなん?
もしや酒で酔わしたり、デキない日とか嘘付いて騙したりしたんか?
それともバハムートさんとこの次男坊ってブス専なんじゃ─痛ッ!!!!
ワイそんな変な事言ってないやろ。
あ、ちょい言ったけどまあそんなんどうでもええやん。
いやいやいや、アネキがバハムートと結婚とか、ワイがレヴィアタンと結婚するレベルやで。
ワイとセティスさんが結婚とか格差あり過ぎて想像出来へんし。
…なあ、何したん?
どんな弱み握ったらそんな事が出来るんや。
可愛…くはないけど実の弟に教えてくれんか?
えっ、普通に穴掘り仕事してたら話しかけられた?
一体バハムート一族は何を企んでるんや。
いや、企んだ所でワームの利用価値なんて穴掘るだけやし、薄いプレートを浮かせて
血筋か?
いや、そんなの気にする奴は今時おらんやろうな。
ワームが盟主からズリ落ちたのって、竜が派生した初期の初期やぞ。
爺ちゃんの爺ちゃんの爺ちゃんのそのまた爺ちゃんのずっと前やぞ。
曾祖父ちゃんの時には、ワームは非モテ街道まっしぐらやったろうしな。
何せそれ以降は、ワームと婚姻してくれるのはワームしかおらんからって、親戚間の婚姻しか無いんやで。
まあ仮にいとこがおったとしても、ワームと結婚とか嫌やな。
ワイもワームやけどワームとは結婚したかないわ。
まあ実際には、いとこはおらんから意味の無い想定やけどな。
でな、いとこがおらん時点で、ワイもアネキも婚姻無理って思うとったのに、この度アネキはバハムートと婚姻やってな。
相手は今世紀最高のイケメン一族やぞ。
何でワームなんかと婚姻関係結ぶんや。
ワイがバハムートなら絶対にやらへんわ。
雄も雌も皆イケメン一族という、ワームの真逆みたいな竜やぞ。
羨ましい通り越して信じられへんわ。
折角の優良遺伝子でワーム産むとか、バハムートの無駄遣いや。
なあアネキ、嘘でしたーって言うなら今のうちやぞ。
…そろそろオトンの命日や。
アネキの代でワーム種絶滅ってのを回避出来たって報告せなあかんな。
ワイは雄やし仮に結婚出来たとしてもワームは産めへん。
オカンは再婚する気無いやろしな。
主に子育て面倒って理由とかで。
アネキ、おめでと。
それと、ありがとな。
◆
災厄の魔王リンドゥルム。
彼の者は魔物にして魔物にあらず。魔王にして魔王にあらず。生命にして生命にあらず。
防ぐ事も倒す事も人の身には許されない。
人に許されるのは、リンドゥルムの進路に立たぬ事を祈り今日を生きるのみ。
嫉妬を司る深海の女帝。
強欲を司る豊穣の支配者。
傲慢を司る極北の煌女。
それらはまだ生命としての概念が通用する。
喪われし命により鍛えられた正しき怒りの刃が届く程度の絶望でしかない。
『
力無き敗北者の願いの雫を集めて作りし、果てなき
それさえ通じないのであれば、果たしてそれは魔王の範疇に収まるのだろうか…。
何故、原初の竜ワームがここまで減ったのか。
それは単純に、現代の竜の美意識にワームが適わなくなった事だけではない。
そういった理由も否定は出来ない。
だが、それなら同族婚で数を保っているはずだ。
単純に、最も星にとって脅威であったこと。
そして、全ての竜の根源たるワームは、敗北した竜の魂の受け皿足り得た事。
即ち、竜による『
使えば最後、竜も人も関係なく星と共に沈む終末を呼ぶ角笛とならん。
竜を超えし竜。
その芽を摘まねばならなかった。
生物は進化する。
しかし進化の果てにいつかは行き詰まる。
世界の環境が変わった時、行き詰まった進化は自滅する。
世に生きる竜が極光竜以外いないのならば、オーロラを通る大気の龍脈を留め置けば、竜は絶滅するのだ。
しかし、原種が残り続けるのならば、また新たな系統図を生むことも出来る。
最古の原種とは、至高のバックアップ。
起点に戻れば確実にやり直せるのだから。
ワームを元にした竜は多岐にわたる。
古竜の流れを汲む蛇型の代表と言えばレヴィアタンであろうし、新しい蜥蜴型の代表と言えばバハムートであろう。
最新の竜にして進化の袋小路たる極光竜も忘れてはならない。
しかし、ワームの原種が今も尚存在する事は、最も強い意味を持つのだ。
リンドゥルムは雄竜故に、次代にワーム種を残す事は出来ない。
バハムート一族は、七千年振りの降嫁に打ち震えた。
これで、レヴィアタン一族を大きく引き離せると。
これで、原初の竜を絶やさずに済むと。
これで、意図的に血を隔離してきた盟主一族への貸しが出来ると。
竜種全体のバックアップを残す。
それが皇帝バハムートに相応しい責務。
それは一つの答えではある。
ワーム種を残すことで、進化の袋小路を何度でも打破できる。
それは一応の答えではある。
だが、それは下々の竜へ向けた答えでしかない。
今は亡きワームの先代当主とその妻、レヴィアタン一族とバハムート一族それぞれの当主は知っていた。
何故、ワームの数が減ったのか。
何故、ワームは他族と契らなかったのか。
何故、ワームの先代当主は
それは、ワームは星との決着に一番近い存在であったからだ。
竜が星に勝つにせよ、竜が星に負けるにせよ、その決着は絶対に付けてはいけなかった。
決着を引き延ばしにしなければならなかった。
星を喰らう事に特化した竜『
それは、宿主たる星を殺し得る最悪の寄星生命体。
他の竜種の長が限界に行き着いて自壊したとしても、ワームにはそれを乗り越えられる可能性があった。
レヴィアタンの先代は何故滅んだのか。
それは海の深さが決まっていた為だ。
ニーズヘッグの先々代主人は何故滅んだのか。
それは有り余る豊穣では飢えを満たせなくなると悟ったからだ。
一度太い龍脈で身体を維持してしまえば、細い龍脈では身体を維持する事が出来なくなる。
だが、ワームは何処まで耐えられるのだろうか。
それはリンドゥルムの父にすら想定し得なかった。
その力を飼い殺しにする事を責務とし、他の一族の竜に血を分け与えず、意図してその数を減らして来た一族の長である彼にさえ。
灼熱に胎動する星内部の炎の核に耐えられるまで成長してしまった時、星の魂を丸ごと喰らい尽くし、宿主ごと寄星生物が滅びる事は、
もし、灼熱さえ喰らえる日が来たとしても、それは許される事ではないのだ。
全ての竜種の存続の為に、その日を許してはならないのだ。
……もし、それを許さないのであれば、己を殺せる何かに出会うしかなかった。
彼は自ら
先代のレヴィアタン当主は敗北した。
最も深い海の底に積もり積もった海底の泥。
その表面で息絶えた。
死因は衰弱死。
死した場所よりも深くには潜れなかった。
それは、死した場所よりも太い龍脈を得られなかった事を示す。
彼は一世紀の間、同じ龍脈の量だけで耐え凌いだ。
肉体は龍脈の受け皿として成長していくのに、得られる龍脈は変わらない。
飢えて餓えていく自覚はあった。
しかし、彼は星に勝利出来なかった事に満足して死んだ。
レヴィアタンでは星を滅ぼす事は無い。
宿主を殺せない寄生生物として、歳の離れた娘やその子孫が、これからも続いていけるのだと、彼は己の敗北に意味を感じていた。
星が滅んだとしても、それに至るまで勝利し続けられるのならば、それでもいいと考えたのがバハムート一族当主であった。
彼女は自分の四番目の子に、ワームの娘と婚姻を結べる様に取り計らった。
長男には別の使い道があるし、次男は上に姉が二匹いるから、年上の扱いもなれているだろうと。
星が滅びるのなら滅びればいいのだ。
寧ろ、竜が星に勝つという栄誉こそが大事であった。
その栄光の為ならば、宿主ごと滅びる事など苦と思うバハムート種は殆どいない。
なれば、最も宿主を殺し得るワームを復権させ、その数を増やす事こそが、最も竜種の最強を証明するに近い行動であると認識したのだ。
竜が星を超えると証明する事が出来たのであれば、星と共に、全ての生命と共に滅ぶことも気になどはしない。
どうせ竜も滅ぶのであれば、どれだけ竜を使い潰しても構わない。
龍脈の帯が集中する極地に
竜は勝利しなければならない。
善戦に価値はなく、全戦全勝してこそ竜としての価値を証明出来る。
それがバハムート一族当主代々の狂気であった。
リンドゥルムの姉(レンアーム)
龍脈から知識を得る事はしないが、龍脈からのエネルギー吸収に特化している。
データ移動不可の電力供給専用USBとして認識していればそう間違ってはいない。
宿主たる星を喰い尽くす事を恐れた父の本意を理解して尚、父を殺した星への復讐からバハムート一族と手を組んだ。
名前の元ネタは弟と同じくリンドヴルム。
バハムート一族当主
竜共々星を滅ぼしてでも、竜の最強を証明出来るのであればそれで良いと考えている。
姿が比較的近く、同じく傲慢を司る極光竜を竜血の足りない雑種と見下している。
かつて極光竜を巻き込んだ星破壊を立てたが、リンドゥルムに意図せず防がれた事がある。
リンドゥルム自体の事は気に入っている。
バハムート一族の次男
絶対権力者たる母の命令でレンアームと婚姻を結んだ。
星を殺して竜の最強を証明せんとする母の方針を良くは思っていないが反対する気はない。
婚姻自体に不満は無い。
リンドゥルムの母
星を滅ぼすにしても長くしゃぶり尽くすにしても、今日の龍脈に有りつけるのならそれで良いと考えている────と息子は思っている