【悲報】ワイ、ワーム。竜やけどモテない 作:オリーブそうめん
龍脈。それは星の脈動。
新たな宿り先を求めて吹き出る生者となる前の魂。
役目を終えて星に還る死者の魂。
地下深く、海底深くに太く、地表浅く、海面浅くには細く張り巡らされた龍の脈。
龍とは、則ち星。
魂の総量は、
竜が
◆
いや、なりたかないで。
セティスさんと話ししてたら、何時の間にか寄生生物のヒルクラゲに血を吸われてたんや。
気が付いたら丸々しとった。
「コイツ何寄生しとんねん。自立心持てや」って言ったら、セティスさんは、「私達も寄星してますけどね」って話になったんや。
それでな、「吸われる側になった気分はどうですか」って言われたから、「星になった気分や」って答えたんや。
いや、球体になるまで丸々肥って、そんでその血を吸われ続けるんやろ?
嫌やん。
そんな酷い事されたかないし。
ヒルクラゲな、血を吸ったらまん丸になるやろ?
で、別のヒルクラゲを近付けるとな、前のヒルクラゲから血を吸ってまん丸になるんやで。
嫌過ぎる循環やん。
ワイは吸われる側になるのは勘弁やで。
セティスさん、セティスさん。
最近体調悪いやろ。
顔色青い……のは
でも絶対影響出てるで。
ワイはダイエットなんてした事は一度も無いで。
オカンに倣って好きに食って寝とる。
セティスさんも元々薄い身体なんやし無理無謀なダイエットは…………いえ、ワイが無謀でした。
でも龍脈足りてないやないかって。
踏み込んだ話やけど、セティスさんの親御さんが龍脈失調で死んだってのは知っとる。
因みにな、ワイのオトンは龍脈食べ過ぎて死んだんや。
えっ、余計に寄星衝動減衰した?
いや、今のは完全にワイがミスったんやろうなあ。
雰囲気の良い話題作りとか、
まあ、挽回するしかないな。
セティスさん。龍脈って深い所ほど太いやろ?
でも、海底の深さには限りがある。
それはワイも分かっとる。
ならワイが海底を更に掘れば解決するんやないか?
ワイは海底の更に底の地中を掘って龍脈を得る。
セティスさんは掘られた海底で龍脈を得る。
ん?
龍脈を共有するとか夫婦でも無いのに駄目?
確かに。
未婚女性がワームと龍脈共有とか、完全に刑罰やん。
うん。
セティスさんの無言でニコニコしてくれてるのは、フォロー出来ませんの意味なんやろうな。
姫さんやったらハッキリと全否定してくるで。
でもなセティスさん。
ワイは掘るで。
すっごい深い海溝を掘ったるで。
分かっとる。
仕事賃はいつも通りでええで。
キマった。
いや、ワームの時点でカッコいい事言っても、ブサメンが自分に酔った勘違い君にしかならんのは分かっとる。
でもセティスさんはそこで否定とかせんから可能性感じて、勢いで色々言ってしまうんやなあ。
…セティスさん、何でドン引きしてるんや。
分かっとるで。
ブサメンがカッコつけてるのは、賢いつもりの馬鹿、速く走ってるつもりのデブと並んで三大見苦しいマンやもんなあ。
えっ、それだけやない?
というか、それは否定してくれへんかったんやな。
ワイの後ろ…?
うわっ、キモッ。
ワイが言うのも何やけどキモッ。
ワイの背後にはヒルクラゲが無茶苦茶ついとった。
まるでトサカみたいに背中一列に並んどったかな
しかも全部まん丸に膨らんどる。
グロ過ぎ。
流石に鱗には歯が通って無いけど、何匹か鱗の隙間に食らいついとるのがおるな。
血が出てるやん。
血の匂いに敏感な、臭いけどそこそこ美味い、あの鮫とかいう魚はよってくるやろか。
いや、海の王レヴィアタンがおる所にわざわざ来る無謀な魚はおらんか…。
取り敢えず、このヒルクラゲは何とかせんとな。
地中に潜って無理矢理潰したら暫く口が引っ掛かったままやからな。
ここは、あの沈んだ国に行くか。
今あそこはセティスさんのとこから逃げ出した海中花が咲きまくって、お湯を吐き続けてる。
熱いところ行ったら落ちるやろ。
◆
リンドゥルムに付着した多くのヒルクラゲは熱に弱く死に絶えたが、僅かな一部は熱湯への耐性が発現しており、海中花を住処としている。
人々の中には魔王リンドゥルムは、アリャーケを深く恨んでいると言う者もいる。
アリャーケの生き残りの歴史家は言う。
ヒルの化け物であるリンドゥルムは、背中に自分の子供達を乗せて再びアリャーケに姿を表したと。
彼ら曰く、熱水性ヒルクラゲはリンドゥルムの子供なのだという。
アリャーケに永遠の破滅をもたらす為に落し子を連れて来たのだという説を信奉しているようだ。
学会の一部でも、熱水性ヒルクラゲは竜に含めても良いのでは無いかという意見はあるが、現在これは少数の異端派となっている。
本来ヒルクラゲは、リンドゥルムと遺伝的には何の関連も無い。
あくまで細長い形をしただけの吸血性のクラゲに過ぎない。
しかし、ヒルクラゲの自分の百倍の質量の血を吸って膨らむという特性から、もしや自分の血を遥かに超える量のリンドゥルムの血を取り込んだ事で、リンドゥルム由来の熱耐性と地上行動能力を僅かにでも得たヒルクラゲがいるのではないかという有識者もいる。
一つ言えるのは、熱水を身体に含んだまま地上を這い回り、獲物に熱水を吐きかける厄介なモンスターが増えたということだけだ。
獲物に熱水を吐きかけたものの、獲物を仕留めきれずに、されど水場から離れ過ぎた故に、海に帰る前に干からびた熱水性ヒルクラゲは、昔アリャーケ堤防国家があった周辺では、今ではよく見られる光景だ。
◆
セティスさんの好物って何やろうな。
前回余りにもグロい姿見せてしまったから、今回の仕事頼まれるにあたってお土産買って行こうと思うんや。
グロいヒルクラゲを付けなくても、ワイ自体が元からグロいヒルみたいな姿って自覚はあるんやから今更なんかもしれんけどな…
それにしても、仕事をして報酬を貰う訳でもなく、逆に貢ぐって状態になるあたり、容姿の格差社会って残酷やなぁ。
ワイがイケメンなら笑顔一つでええところを、グロメン種族のワームなせいで、そこまでせなあかんのやから。
いや、別にワイ下心が無ければそんな事せんでええんやけど、良いように使われる事が名門の美竜との唯一の接点維持の方法なんやから、下心はあるけど恋愛偏差値は分不相応なワイにはそれしかないねん。
未だにアネキの結婚が信じられんのや。
アネキとバハムート当主の息子って、ワイとセティスさんみたいな明らかな不釣り合いやで。
さて、お土産という名の貢ぎ物やけど、再び凍り付いた北極で、未だ不在の北極熊に変わって大繁殖している緑のペンギンを潰してゴッソリ持っていくのはどうやろか。
いや、やめとくか。
ニーズヘッグの妹が姉に泣き付くし。
あの妹、
「花飾りを付けたペンギン可愛くない?」って言われてもなあ。
ペンギンの頭部に取り付けてた花って、アレ、寄生して宿主の脳を操る奴やろ。
あの子曰く、「花の自我を奪う機能は削ってるらしいからセーフ」って事やけど、脳に食い込んだ根が耳や口からはみ出とる時点で、カワイイとは言えんで。
草がペンギンを餌にしとるんかとおもったら、逆にペンギンの脳に根を通して光合成した栄養を送り込むんやって。
頭が妙に大きいのはその為やったんやろうか。
アレがグロ可愛いならワイやってグロ可愛いやろ。
あかんわ。
自分で言ってて自分で傷付いたわ。
今は、ペンギンとアルラウネの子を画策したりしとるんやったか。
最終的にはペンギンが成る木が欲しいんやって。
それって、もはや木でもペンギンでも無いと思うけどな。
ワイが思うに、最初期に生まれた緑ペンギンが一番マトモやと思う。
日照量の低い北極で葉緑素ガン積みさせる意味はよく分かんないけどな。
今は天敵不在やからええけど、明らかに北の果てで生活するの向いてないであのペンギン。
南の果てなら大丈夫かと言われればそれも駄目やろうな。
多分、天敵が生まれたらすぐに絶滅すると思う。
ワイの非モテ感性では雌竜が可愛いと感じるものはよく分からん。
ここはニーズヘッグ妹の「ペンギンを嫌いな女の子はいません」を信じるしか無いんかな。
妹さん曰く、「姉さんにあげたら喜ぶんじゃない?」って事やが、ニーズヘッグ姉は普通にペンギン食べて妹にキレられてるから、ペンギン嫌いやろうしなあ。
ペンギンを謎生物に作り変えるのはよくて、ペンギンを食べるのは駄目な理由は分からんけど。
セティスさんのところに何匹か緑ペンギンを連れて行ったら、普通に気味悪がられたので、普通に捨てる事にした。
まあ、あのペンギンちょっとグロいしそうなるよな。
北極まで持っていくのが面倒やったんで、沈んだ国があった場所付近に放つ事にした。
元いた場所に返す必要も無いやろうしな。
何せ元々北の果てにいるペンギンは緑じゃないんやし。
ワイにも
…生態上最終的には絶対に無理になる事やけど、セティスさんにはなるべく無理せず長生きして欲しいからな。
新しく無茶苦茶深く広い海溝を作ったら、海流が大きく変化してこの辺りの流れが良くなった。
多分深さだけなら世界で一番深い海溝が掘れたんやないかな。
深く掘るだけやなくて、海溝の形状も色々拘った成果が出たで。
深海に沈み込む幾つもの海流の発生と共に、深海に流れる龍脈が集中して太くなっていたので、セティスさんにはかなり喜ばれた。
やったで。
◆
嘗てのアリャーケと言えばチーズ海苔だった。
今では干乾びたヒルクラゲと、グリーンペンギンが有名だ。
一時北の極地に大量発生したというグリーンペンギンは、今では普通のペンギンに取って代わられて完全に姿を消したが、遠く離れたこの地では我が物顔で闊歩している。
海が繋がっているとはいえ、なぜこのように離れた地にペンギンが住み着いたのか。
何故ペンギンが葉緑素を持つのか。
その必要性はそもそもあるのか。
それらは多くの国の研究者が日夜調べているが、明確な答えは未だ見つかっていない。
何処か海苔の風味を持つグリーンペンギンは、新たな人類の食用家畜に出来るかも知れない注目の生物故に、研究にも今後益々の熱が入るだろう。
問題は、アリャーケ東ルートと呼ばれる海路は、極めて流れが速く、急に深海に沈み込む海流が幾つもあるので、事実上の使用不可ルートである事だけだ。
アリャーケの北にある大陸から向かう為には、大きく遠回りする西ルートを使わなければならない事から、他の大陸にグリーンペンギンを運ぶ輸送コストが問題となるだろう。
リースペンギン
花輪(リース)を冠ったペンギン
花輪を構成している植物は本来の種は寄生植物で、宿主の脳を破壊して冬眠状態にさせ、長く苗床とする性質を持つが、リースペンギンに寄生している植物は、脳を破壊するどころか、脳に栄養を与えている。
極めて知能が高く、言葉を仕込む事も出来る。
花輪は父親から生まれたばかりの子供に授けられる。
花輪を授けられなかった場合には、少し賢い普通のペンギンになる。
もし他の生物に花輪を取り付けた場合は、その脳が破壊される。
植物が脳を破壊せずに栄養を与える仕組みは、リースペンギンの頭部から発せられる特殊な分泌物によるようだ。
鳴き声は「ネットラレー」
グリーンペンギン
葉緑素がみっちり詰まったペンギン。
日光浴が好きだが、一応肉食でもある。
干乾びたクラゲを集めて巣の材料兼食料とする。
鳴き声は無い。
元々の原産地で、普通のペンギンに取って代わられた理由はコミュニケーション能力の圧倒的不足。