4話からは男主人公から女主人公の話にバトンタッチとなります。
長船女学園学長室――
「うん? どうかした、あかねちゃん」
やや褐色の肌色をした女性が長船女学園学長室のソファで対面に座る和装の女性をあかねちゃんと呼び、声を掛ける。
「う、ううん、何でもないよ、なーちゃん。ちょっと悪寒がしただけだから」
和装に対してスーツの上に羽織を着ている女性、なーちゃんにあかねちゃんと呼ばれる女性は、ぞっと寒いものを背筋に這わせながら今尚、身体をブルブルッ、とふるわせながらそう返答する。
手に持っていたティーカップから紅茶が零れそうになる。
誰かが噂をしている? でも今のは噂されている様な感じじゃなかった。何か、第六感の様な……。
嫌な予感しかしない。
何故だか分からないがあの日……実姉から感じた気配とは別のナニかが青みがかった黒い長髪の女性の不安を掻き立てる。
「ひょっとして風邪? ちょっと止めてよね~今の時期に風邪なんて」
背中に薄っすらと汗が滲む。
命を脅かす様なモノではなく、ただ、こう、不快感が漂う。
どちらかというと貞操の危機が迫る、そんな女性としての本能が訴えかけてくる。
心配してくれている数年来からの親友に対し、
「本当に大丈夫だか――」
言いかけたところで、コン、コン、とドアをノックする音が扉の外から聞こえてきた。
小さくもなく、大きくもない、けれども聞き逃すことのない丁度よい音が。
「時間通りですね」
「そうですね。よし。いいぞ、入れ」
雑談を交えていた二人は飲みかけのティーカップをソーサーに戻し、職務に戻る。
「失礼します」
学長室に入室したのは一人のスーツ姿の女性。
枝毛が無く綺麗に整えられた漆黒のポニーテールを揺らし、目尻が上がったキリっとしたつり目をしている。
ムスッとし顔色一つ変えないではいるが表情金が壊死している訳ではなく生来のモノであり別段機嫌が悪い訳ではない。
ただ彼女を見た者は口をそろえてこう言う。
キツそう。と。
又、だがそれがいい、とも。
上はグレーのスーツジャケットに下は同色のボトムス。動き易い様パンツタイプのモノで、腰には御刀を帯刀する金具が装着されてはいるが、帯刀方法が刀使と違い鞘の
御刀と背広を着用している為か、より一層近寄りがたい雰囲気が青年期を迎えた女性から醸し出される。
「お久しぶりですね、
「お前も元気そうで何よりだな、小百合」
「ご無沙汰しております、朱音様、真庭学長」
小百合と呼ばれ帯刀する女性はあかねちゃんと呼ばれた和装の女性――
「世間話はまたの機会にして頂き、早速本題に移って頂いてもよろしいでしょうか?」
久方ぶりの来訪者の言葉に互いの顔を見合わせる朱音と紗南の二人。
少しばかり複雑な心境が表情に表れる。
咳払いし、仕切り直すかの様に朱音は口を開く。
「では、
入口を背に向けて立つ女性を百合園 小百合と呼び、岐阜から岡山まで彼女に足を運ばさせた理由を伝える。
「沖縄に、ですか? 確か沖縄には
「イヤイヤ、違う違う。今回お前に依頼するのはコッチで選抜した刀使二名の護衛。
それに伴う『S装備』開発に係わっている研究所職員の警護と施設防衛だ」
小百合が明後日の方向へと思い至った為、紗南はすぐさま正す。
……依頼される仕事の量、多いわね。
「表向きは日米合同による開発ですが
「ウチの生徒の他に職員全員を護衛するのはお前に負担が掛かり過ぎている事はこちらも重々承知している。だが、少数、ましてや単独でそれを遂行できる優秀な人材は残念ながら後にも先にもいない」
「施設内にいる
「良いんですか!?」
快く了承した小百合に朱音は驚きを隠せない。
彼女にもやらなければならない
「良いも悪いもありません。『
「ヨシ! なら、今回同行する刀使を紹介するとしよう……あーーエレンか、
室内正面のデスクに備え付けられた受話器を元の場所に戻すと学長室に一つしかないドアからノック音が鳴り、「エレンと薫デス!」と少女の声が続く。
「おう、入っていいぞ」
学長である紗南が二人の入室を許可する。
「失礼しマス!」
「失礼しま~す」
「あー紹介する。そっちの明るくて胸がデカい金髪娘が
「古波蔵 エレン、デス。長船女学園中等部二年デス。よろしくデス!」
紗南が紹介する長身の刀使―エレンに小百合は振り向き、視線を注ぐ。
黒いカチューシャで金色の長髪を纏め、制服は黒いリボンタイに白いブラウス、山吹色と桑茶に近い二色の変則的なジャケットを着用している。
プリーツスカートには焦茶で一本のラインが入り、右足にはサイハイソックスを履き、スカートとの間からガーターベルトが垣間見える。
左足はブーツソックスなのかルーズソックスなのか、若干弛んでいて左右非対称に履いており真っ先に目に付く金髪以外にも彼女は印象に残り易い。
何より注目すべきは彼女の豊満な胸部にある。
伍箇伝の制服はどれも特徴的なデザインだが胸部を強調している為かデザイナーが意図的にそうデザインしたかは不明だが余計に視線を注視させる。
中等部……二年?
どこからともなくボヨーンと効果音が鳴るのが聞こえて来る。
疲れてるのかしら、幻聴が……。
聞こえる筈はないのだが、エレンの明るい性格がそうさせるのか不思議とそう聞こえる。
金髪の所為で派手に見えるが長船女学園の制服をしゃんと着こなしている。
御刀は
「んで、そっちのちっこいピンク髪と胸、そして何もかもちっさいのが
「ちっさいを強調すんな! あーー同じく中等部二年の益子 薫だーー。ヨロシくふっ――!」
瞬間の刹那、薫の頭頂部に紗南の拳が落ちる。
荒魂の中でも小型サイズのねねはサッ、と薫の頭を踏み台にしてエレンの胸に飛び乗る。
よくあることなのでエレンは気にせずねねを受け入れる。
「ゴゥラッ! 薫! なんだその挨拶は! こう見えて小百合は美濃関のOGなんだぞ! 後輩らしく先輩を敬え!!」
……こう?
一瞬、引っ掛かる所があったが小百合は一先ず受け流す事とした。
それにしても真庭学長、益子さんへと移動する動きが速いわね。まだ現役で刀使やれれるのでは?
「痛っっ……! そ、そうならそうと言え、おばさn――グェエエッ!」
「ああ、いつもの事なので気にしないで下サーイ」
「ねねーー!」
バンッ! バンッ! と紗南の腕を何度も何度も意識が続く限りタッチする薫。
紗南の片腕は薫の首を絞め付け、もう片方の腕でしっかりとホールドされている。所謂チョークスリーパーだ。
紗南の身長は180㎝前後、対する薫は135㎝程しかない。その所為で体格差により、薫の身体は宙に浮き足をばたつかせる。
紗南と薫。そして朱音の雰囲気から察し、「その様ね」と、小百合は答えた。
「……改め、まし、て、益子、薫、death…………」
辛うじて窒息を免れ紗南の腕から解放された薫は短い自己紹介の後にバタリッ、とその場で倒れ込む。
益子 薫。先に紹介された古波蔵 エレンと同学年、つまり、中等部二年であり長船女学園に在籍する刀使である。
黒いリボンでピンク色のツインテールを結い、前髪にはピョコッとケモノの様なケモ耳が天井へ向いている。
眠たそうなジト目と両方の指先が五本とも解放された黒いグローブ、それと両脚にはワンポイントとして小さいリボンが入った白色のオーバーニーソックスを着用。
同じ長船女学園の制服を着ているのだがエレンと決定的に違うのが胸囲である。
僅かに膨らみかけてはいるが制服の上からではストーン、と平らに見え、サイズが合っていないのかジャケットもだらしなく肩から滑り落ちている。
襟に付けるリボンも薫の場合、制服に取り付けている。
長船女学園の生徒――先輩、同級生、後輩――や学長に至るまで周囲が抜群のプロポーションを誇り、克、彼女自身が小学生じみた体型である為、小さな刀使は思春期で成長期真っ只中な自分に僅かながら希望と絶望を抱いている。
背丈は違えど彼女と同じように慎ましい胸部を持ち合わせるポニーテールの女性は腹ばいの少女に手を差し伸べ、丁寧に身体を持ち上げて起こすと、一方的に争われた形跡が残る乱れた制服とピンク色の頭髪を小百合は直す。
「い、言っておくが、貧乳は、希少価値だからな……」
放っておいてもその内自分で如何にかしたのに。
そう言いたげな少女は照れ隠しでそっぽを向く。
「大丈夫よ。私と違い、貴女はまだ成長期なのだから」
「ね~ね~」
ねねと呼ばれる荒魂は姿形は小動物ではあるが尻尾にも両目と口に酷似した顔があり、遠めから見ればそれはコンセントプラグに見える。
刀使である以上、薫も御刀を持ち、銘は
ねねと祢々切丸、荒魂と御刀、この二者は縁も所縁もあるがそれは後日語られる事となる。
「装着テストの予定日は二日後。向こうに着いてからの詳細はこの用紙に記載されていますので、一度目を通しておいて下さい。チケットは手配してありますので明日ここでチケットを受け取り、公用車で空港まで行き、飛行機で沖縄に向かって下さい」
「何か質問はあるか?」
「空港まで直接向かってはいけないのですか?」
立ち上がった小百合は朱音からスケジュールが記載された用紙を受け取り目を通す。
沖縄に到着後の翌日からテストは実施される。
向こうへ着いてから直ぐにテスト開始、ではいくら刀使とはいえ未成年の彼女達には少々酷であるというもの。
滞在するホテルや施設周りの確認をしたい小百合にとっては学長達の配慮は有難いものである。
だが、朱音の発言にもある様に当日の移動時に此処長船女学園から公用車を使うことが腑に落ちない。
「ああ~今回は任務だし何より薫の御刀がな」
小百合は僅かに首を傾げる。御刀なら本人が帯刀していけばいいだけの事。何を問題視するのだろうか、と。
「薫の御刀は祢々切丸といって2メートルを超える代物デス! 移動に時間を要する場合には乗り物が必須デス!」
ああ、成程。それならば仕方ない。と小百合は納得する。
「分かりました。では明日定刻通り此方に伺わせていただきます」
「失礼します」と、一礼を済ますと彼女は来客用のスリッパで踵を返す。
静かに閉められた扉と御刀を持つ女性を見送ってから朱音や真庭学長と雑談をしていると「あ! 思い出しマシた」と、不意にエレンの抜けていた記憶がよみがえる。
「朱音様、紗南センセイ、失礼しマス。ほら薫、行くデスよ!」
「わかっ、てっ、うぉ、おおお……!!」
薫の短い腕を引っ張り、慌てて学長室を出るエレン。
紗南にチョークスリーパーを掛けられた時以上に身体が宙に浮き、寝そべる様に水平に固定され走る度上下に揺れる。
余程急いだのか扉の蝶番からギ―ギ―と悲鳴が漏れ、閉まる際にラッチボルトからもカチャリ、と音が鳴る。
扉が閉まったにも関わらず「サユリーン! 待って下サーイ!」と、エレンの呼び声が妙齢の女性達の耳に入る。
― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
長船女学園構内通路――
……荷造りは終えているし今は職務中。明日には出立する訳だし、岡山を観光する気になどなれないわね。さて、どうしたものかしら……。
「……――! ――ン! ――……!」
真庭学長に頼んで学園内の講堂を借りて鍛錬をするべきかしら?
「――リン! ――プ! スト――……!」
でもそれだと警備員の仕事が増えるだろうし。真庭学長も私が帰るまで学園に残る可能性も……。
「――ユリン!」
第一、此処では私は部外者。帯刀している私が町を出歩けば目立つ……。
「っと、ああ! 待って! 待って下サイ、サユリン! stop!stop!」
古波蔵さん……いつもあんなに声が大きいのかしら。
自分が呼ばれているとはつゆ知らず、後ろから足音が大きく近づいてくる。
ガシッ、と小百合の手が勢いよく捕まれる。その拍子に「ぐぇっ!」と後ろから短い声が聞こえる。
捕まれた手には痛みは無く、伝わる感触も柔らかいモノであった。
「……古波蔵さん? どうかしたのかしら?」
「サ、サユリンッ! 呼びかけたのに止まるどころか、どうして振り向いてもくれないのデスか!?」
この子は何を言っているのだろう。私は名前どころか名字も呼ばれていな――
そこで小百合は気付く。
「サユリン、とは私の事?」
「他にいまセンよ」
曇りのない澄んだ目でハニカミながらそう答える。
飄々としているのに真っ直ぐな目で自分を見つめる少女。
少し……苦手かな、この子の事。
「ところで、何あったのかしら」
「えっとデスね」
「短期間とはいえオレ達と行動を共にするんだ。そこそこ親睦は深めておかないとな!」
紗南とエレンに負わされたダメージが抜けきらないままだが、彼女の頭上や顔にはキラキラと小さな星々が出ているかの様に薫は握り拳を固めてジトっとした目を輝かせていた。
「薫はサボりたいだけデスけどねー」
「ねー」
ねねはエレンに同調すると「ねねー」と、薫の頭上からねねが小百合に飛びつく。
両の手で小皿を作る様に反射的にねねを受け止める。
あっ、この子荒魂だったわね……。
「どうかしたのかー?」
「いえ。私に懐くとは思ってもいなかったから」
手の平で屈託のない笑顔を見せる小さい荒魂。
無邪気そのものである小動物に不思議と小百合も張り詰めていた表情が和らぐ。
「んじゃ、決まりだな」
「そうですネ。善は急げというヤツデスね」
― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
長船女学園校門前――
「あっ!?」
「どうかしたの? 古波蔵さん」
「ん、ああ
進行方向から菫と呼ばれる一人の刀使が歩いて来る。
身長は200センチを超える超高身長と口元を覆い隠すマフラーを巻いており、一目見ただけで彼女だと分かる風貌の刀使。
「おや、
「違いマスよ。それよりスミスミこそ任務終わったんデスか?」
「カカカ、ああ、正解。それよりソッチの来客はどなたかな?」
「コチラは百合園 サユr……小百合さんデス。こんどの任務でご一緒するデスよ!」
今、あだ名で呼ぼうとしたわねこの子。
「百合園 小百合です。美濃関学院に在籍していた元刀使です。宜しくお願いします」
「ケケケ、卒業した先輩でしたか。ワタシは
菫は会釈せず、言葉だけを述べる。とてもじゃないが会釈できる状態ではないのだ。
何せ彼女の御刀――破邪の御太刀は全長465センチメートル、重量に至っては75キロもあるのだから、無理な話である。
今も破邪の御太刀をバーベルを担ぐように肩甲骨上部に乗せ、両手で支えている。
それに加え、動き回ることを可能としているのが日々欠かさず剣技を磨き続けた鍛錬と筋力トレーニングの賜物。
長船女学園に入学する前から鍛え続け、そして鍛え抜かれた身体は重量物を軽々と扱えるにまで彼女を
お陰で全身の隆起した筋肉に合わせ彼女の制服は特注サイズである。
天は二物を与えず、というが彼女にはそれが当て嵌まらない。
身体を鍛え成長させる才能、刀使として御刀に選ばれる才能、並みの刀使にはない剣術の才能。そして、戦闘センス。
だが、必ずしも怪我をしない訳じゃない。
人である以上何かしらの怪我は負う。
だから彼女は慎重を期して行動する。
この子も中等部、それも三年生……。
菫の超高身長に目が行きがちだが、エレン程ではないにしろ例に漏れず彼女もビッグな
極力、長船には来ない様にしよう。
サイズがAの女性は決意を固める。
「スミスミは凄いんデスよ! 何とッ! 単独で荒魂討伐の任務を請け負っているデスから!」
「確か二年前からだったから、中等部一年の頃からか? 若い内から良くやるよ、ホント」
「若いって、薫もワタシもまだまだ若いじゃないデスか」
「それより金城さん、貴女此処にいて大丈夫? 何か用事があったのでは?」
「ククク、ええ。ワタシはこれから任務完了の報告に行くからココで失礼させて貰いますよ」
「ええ、コチラも引き留めてしまいごめんなさいね」
「oh、sorry。また今度ネ、スミスミ!」
「おうーじゃあなー」
「ケケケ、ああ、じゃあな。
別れを告げると菫はゆっくりとした歩調で歩き出す。
小百合達三人と一匹もそれにつられる形で地面を蹴る。
元刀使を含む御刀使いの声が聞こえなくなったのを確認すると菫は立ち止まる。
「ンフフ、フフ、
マフラーの内側でほくそ笑み、舌なめずりする。
獲物を見つけた野獣のように眼光を鋭くし、口角を吊り上げ、巨女は笑う。
「そういや、元刀使なんだよな?」
ええ、と小百合は答える。
「だったらなんでまだ御刀持ってるんだ? 返納してないのか?」薫は更に質問を投げかける。
「あっ、それワタシも思ってマシた! ひょっとして返納した後、又授かったのデスか?」
そんな事あるのだろうか? 薫は首を捻る。
「いえ、学院生時代も今も同じ御刀よ」
「ンンー? 変デスねー。サユリンの御刀、確か
「しちしとう?」
「ねー?」
薫とねねが頭上に疑問符を浮かべながら同時に尋ねる。
「剣身の左右に三本ずつ段違いで枝刃が付いている御刀デスよ。特殊な御刀としてサユリンと一緒に以前授業で紹介されたじゃないデスか」
「ああーその時寝てたからなー」
「薫、授業中はちゃんと起きてなきゃダメ、デスよー」
「ねー!」
「授業なんてやってられん」
「……私、授業で取り上げられてたの?」
「Yes! 写真以外にも稽古の動画も撮影されていましたヨ! 凛々しくてとてもcoolでした!」
「ああ、思い出してきた。そういえば授業中に動画を見せられてたな。途中で寝たが、アレ、先輩が撮影されてのか」
…………確かに当時、授業中なのにビデオ撮影していたわね……。まさか、私を撮るだけならまだしも、剰え後輩の教材にされるなんて思いもよらなかったわ……。
「それにしても、二人とも仲がいいのね。入学してからの付き合いなのかしら?」
長船の凸凹コンビを目の当たりにして元美濃関のOGは湧き出た興味を言葉にする。
「Yes! 薫とは入学してからのBest Friendデス! 勿論、ねねもデスよー!」
「ねねー!」
「サユリンにとってのBest Friendは誰なんデスか?」
「私は――」
エレンの隣にいた小百合は今まで彼女達に向けていた顔をおもむろに正面に向ける。
「――いないわ。美濃関にいた時はずっと一人で過ごしてたから」
「……オイ、どうするんだ。空気が重くなっちまったぞ」
気だるげなピンク色の少女は晴れ晴れしい金色の少女の左わき腹を咎めるかの様に小突き、自分の顔まで引き寄せ、声を抑えヒソヒソと話す。
「sorry.まさかボッチだっただなんて思いもよらなかったデスよ」
「ねー」
空気を読んだのか、この時ばかりはねねも声を潜める。
「sorryデス、サユリン。気を悪くしないで下サイ」
「構わないわよ。貴方に悪気があった訳じゃないもの、気にしてないわ」
特に気にすることもなく、グレースーツの女性は淡々と言葉を口にする。
「それで、話を戻すとその七支刀ってのと先輩が今もってる御刀が違うってのはどうゆう事なんだ?」
「oh,そうデシた。サユリンの鞘の形状を見る限り七支刀ではなさそうなのデスが、そこのところどうなんデスか?」
人差し指を顎へ置き、上目遣いで考え出すと小百合に問いかける。
「そうね、色々とあって形状が変わったのよ。学長達から口止めされているから形状が変化した事については答える事ができないわ」
「それよりも」と、一言付け加え、
「本当に良かったの? 授業に参加しなくて私に付き添うだなんて」
「気にしなくていいぞ。今回の『S装備』開発は任務扱いにされてるからな。昨日から準備期間で授業や他の任務は免除される事になってるんだ」
「本当は薫がサボる口実が欲しくて紗南センセイに口八丁手八丁使って免除させたんデスよ。サボる事に関して薫の右に出る者はいませんネ」
ふぅ、と一拍置き「分かったわ。なら、エスコートお願いしようかしら」
「Yes!」
「おうー! 任せろ!」
「ねー!」
二人の刀使と一匹の荒魂は一人の刀使を連れ立ち町へと繰り出す。
次回、刀使ノ武芸者―修羅流転録
第5話 S装備