佐藤くんの大嫌い家族   作:痲歌論

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__そう怖い顔しないでよ...。私の力が効かなかった初めての人なんだから...。


帰還

大きな城を目の前にしておじいさんは立ち止まった。

「ここからは命の保証(ほしょう)はないぞ?それでも入るかい?」

「はい。僕の大事な友達のためです。」

裕樹(ひろき)がおぎゅうと話してる時の顔を、失うことなんてできない。

僕は意を決してこの大きな城の中に入った。

 

 

城の中はとても物静かで、ここにおぎゅうがいるとは思えなかった。

少し進むと階段が見えた。

僕は誘われるかのように、その階段を上って行った。

何分経っただろうか...。もう何段上ったかわからない。

終わりらしきものが見え、上りきると、大きな猫がいた。

「ふっふっふっふ...。まさかここまで来るとはなぁ...。それに、私の妖力が効かないとは、なにかの不具合(ふぐあい)か?」

これが正真正銘(しょうしんしょうめい)の化け猫...。

「そう怖い顔しないでよ...。私の力が効かなかった初めての人なんだから...。」

「あなたがおぎゅうのお母さん?」

「ええ。」

そう言いながら大きな猫は人の姿になっていく。

「どうやら、私の娘のおぎゅうに用があるじゃない...。あなたが先ほど言っていた、‘裕樹‘という人のため...。なんて人は面白いんでしょう。自分の心配だけしていればいいのに...。今、あなたはこれからおぎゅうの(えさ)になる。この意味、わかる?あなたはおぎゅうがこの世界を救うための第一歩としてその命を頂戴(ちょうだい)するのよ!!」

「はぁ...。さっぱり言ってることがわからない。この世界を救うため?だったらあなたが犠牲(ぎせい)になりなさいよ。」

「さぁ、行きなさい。おぎゅう!!!」

どんどんと僕の目線は高くなる。先ほどの大きな猫の...2倍以上の大きさの猫が出てきた。

これが...おぎゅうなの?なんとしてでも取り戻さなきゃ...。

「えい!!」

必ず僕はおぎゅうを裕樹のために取り戻す!!!

 

☆ ☆ ☆

 

今日も妖精(えるふ)は学校に来なかった。

俺__裕樹は学校に来ない妖精の家をほぼ毎日通っていた。でも、妖精は家にもいない。あいつはひとり暮らしで、あいつ以外に家に誰かがいることはない。

「はぁ...。なんであいつは今日も来なかったんだろ...。なんか言ってくれれば俺だって手伝うのに...。」

妖精の家に着き、ベルを押す。

.......

反応はない。

ドアノブに手をかけると開いてることに気づいた。

開けてみるとそこは今まで見たことのある妖精の部屋ではなかった。

燃える地面。一つ目の化け物。

この世では見られないような者がその場には広がっていた。

「なん...だこれ...。」

どういうことだ?なんで妖精の部屋がこんな風になってるんだ...。

ていうか、この化け物たちはいったいなに者なんだ...。

すると、後ろから老人の声が聞こえた。

「おや?君もおぎゅうを助けに来たのかい?」

驚きつつも、その声の方向に体を向ける。

「な、なんなんだあんたは!?それと...。今おぎゅうって言ったか?」

おぎゅう...。なんか妖精も同じことを言ってたな。

でも、おぎゅうって。なんか聞いたことあるような、ないような...。

「おや?あの子...。帰ってきよった。まさかあの女王を打ちのめすとはねぇ...。」

あの光景が映っていた方へと向き直すと、妖精ともう一人誰かがいた。

「はぁ...はぁ...はぁ...。や、やぁ裕樹。ほら、君の大事な人__おぎゅうだよ。」

妖精の肩を借りている人がこちらに顔を向ける。

すると、その人は俺を見ると顔がパッと明るくなり、妖精の肩から離れ、俺に抱き着いてきた。

「ぬ、(ぬし)!!」

猫耳としっぽ。俺のことを主と呼ぶこの子...。

___主は私と交尾したいのか?

___あの二人には...負けない。

そう言っていた子が俺の近くにいた。

伊織(いおり)砂亜菜(さあな)に恋愛面で敵対視していた人物。

化け猫の...。おぎゅう。

なんで忘れてしまったんだろう。忘れちゃいけない、家族のひとりだったのに。

俺の大事な家族。あのとき、伊織が雨の日に拾った猫から化けて牛丼が好きな人型の妖怪。

「おかえり...。おぎゅう。忘れててごめん。」

「大丈夫だよ...。主。私も母上の指示に従ってるだけだった。私も...自分で考えて...行動することをこれで知れた。」

「成長したんだな、おぎゅう。」

俺はおぎゅうを抱きしめた。それに応えるかのようにおぎゅうはさらに強く俺の体を抱きしめた。

妖精が少し笑いつつ俺に話しかけた。

「まったく、僕に感謝するんだよ?僕がこうしなきゃおぎゅうは帰ってこなかったんだから。」

「あぁ、ありがとう妖精。」

そう言うと、妖精は俺の後ろに視線を向けた。

それを俺は感じ取ると、首だけを動かして後ろを確認したが、あの老人はいなかった。

「実は、あのおじいさんも妖怪の人なんだよ。」

俺は妖精からそれを聞いて「えぇ!?」と大きく声をあげてしまい、妖精の隣の家の人がドアを開けてこちらを確認してきていた。

「ちょっと、裕樹。声でかい。ここの壁って案外薄いから気を付けて。」

「は、はいぃ...。て、ていうかおぎゅう?だんだん強くなってないかい?」

実を言うと、さっきからおぎゅうの抱きしめる力が少しづつ強くなっているのだ。

「そう...?私からしたら普通なんだけど...。」

「ちょちょ痛い痛い!!!!」

体が軋む(きしむ)音が俺の中で響いた。メキメキッという嫌な音が鳴る。

その音がおぎゅうにも聞こえたのか、力を緩める。だが、おぎゅうの形は変わらない。

妖精がぼそっとなにかを言う。

「ん?妖精なんて言った?」

「いや、なんでも?それと、おぎゅうおなか減ってるっぽいから牛丼食べさしてあげな。」

「あぁ、そうする。」

「それと、裕樹。あの二人との[婚約]の話。ちゃんと、決めてね。」

くっ...。それに関しては触れてほしくなかった...。




ご読了ありがとうございます。
作者の塩ボウズです。
見事、妖精の力によっておぎゅうを取り返すことが出来ました。
そして、これからはきっと伊織と、砂亜菜の猛攻撃が始まると思うので、乞うご期待!!
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